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 ノイヴァンシュタイン公爵家の屋敷はお城かな?と思う程豪華だった。王城よりは小さいが騎士団寮よりは大きい。敷地内が広く門から屋敷までかなりの距離がある。大きい扉を開けると執事服を着た男の人達が列で並び挨拶をした。背後には二階へ繋がる大きい階段がある。中央にいる眼鏡をかけたダンディーなイケおじ様が微笑みながら近づいて来た。

「お帰りなさいませ坊っちゃま。・・・おや?お連れの方がいらっしゃるとは」
「あ、コハルです。よろしくお願いします」

 これからお世話になるのだから挨拶はしなくてはと思い慌てて名乗り、頭を下げた。

「とても美しいお嬢様ですね」

にっこりと微笑んでくれたイケおじ様はコハルの腕に拘束されていた痕を見つけた。表情を変えずにラウルを見つめる。その視線に気づいたラウルは着ていたジャケットを脱ぎイケおじ様に渡した。

「賊に襲われているところを助けた。客として扱え」
「かしこまりました」

 ラウルはそのまま数人の執事を連れ階段を上がって去ってしまった。残されたコハルはイケおじ様に客室まで案内してもらう事になり、公爵家の屋敷の中をきょろきょろと見学しながらついて行く。

案内された部屋はかなり広い。森の中で生活をしていた部屋の三倍はあるのではないかと思う程だ。何より、人が五人は余裕で寝れそうだなと思う程ベッドが大きかった。だがナチュラルな家具で統一されていてとても好きなインテリアだ。

「爺や俺、コハルの風呂用意するね」
「既にお客様用も御用意致しております」

後ろに着いて来ていたクルトとアルト。アルトが風呂の提案をするが、なんともう用意されていると言う。なんでも、本日は王城パーティの為ラウルがお持ち帰りをするのではと準備をしていたらしい。流石出来る執事は違うな。

爺やと呼ばれたイケおじ様はコハルに微笑んだ。

「私のことは爺やとお呼びください。コハル様が滞在中はご不満が無いよう努めさせて頂きます」

いやいや、私がお世話になるのに何を仰るのだ

「爺やさんどうかこき使って下さい!」

慌てて頭を下げると爺やは面白かったのかクスクスと笑っている。

今は独りでバスタブに浸かっている。クルトとアルトがお風呂の世話をしてくれると言ってくれたのだが丁重にお断りをした。改めて自分の腕を見ると拘束されていた手首に紐の痕の痣が出来ていた。触ると痛むが何もしなければ痛くは無い。だが見た目は痛そうだ。賊の男に触られた箇所を何度も洗った。すごく気持ち悪かった。もし助けが来なかったらと思うとゾッとする。

バスタブに浮かべられている花弁がゆらゆらと泳いでいて、それが心を次第に癒してくれる。

風呂から出たコハルはタオルで身体を巻き、用意してもらった新しい服を見て固まる。その原因は下着だ。先程見たところここに女性は居ない。何故ここに女性用の下着があるのか疑問だ。もしかしたら誰かのお古だったりして・・・。
そう思ったら急にこの下着に対して悪寒が走った。

上の下着は付けることが出来た。出来たのだが悲しい事にカップ数が自分よりもでかいのだ。カパカパする空間を見つめて自尊心が削られる。そして、この下着中々にエロい。総レースで作られている生地は肌が透けそうだ。でもとても上品で高級そう。コハルは流石に下の下着は捌けないと思い困った。そうだ、聞けば良いんだ。思いついたコハルはノーパンのまま用意してもらったワンピースを着用し扉を開けた。頭だけ扉から顔を出す。ドアの前に立っていたアルトを見つけ呼び出した。呼ばれたアルトは中に入り扉を閉める。

「あれ?クルトは?」
「兄貴は公の世話しに行った。んで、どうしたの?」

「あ、その、この下着って使い回してたりする?」

そう言ってパンティーを広げて見せる。
もしかしたらラウルがお持ち帰りした女性達用に使っている物じゃないかと思っていた疑問をぶつけるとアルトは笑い出した。

こっちは真剣なんだぞと頬を膨らますとアルトはコハルの頭を撫でた後、素早く下着を取ってしゃがみ込む。

「新品だから安心して?公爵家がそんなケチ臭い事する訳ないでしょ」
「じ、自分ではくよ!」

なんと下着を広げて足を通せと言われた。履かせてもらうなんて恥ずかしいこと出来ないと思い抵抗するが、下から見上げてくるアルトの顔面破壊力が凄い。水縹色の瞳が輝いている様に見える。結局その破壊力に負けてしまい履かせて貰うことにした。

「見ないでよ?」
「えー前に見てるんだから良いじゃん」

ケチーと言いながらアルトは下着を上まで上げ最後に生地がお尻に食い込まないようにお尻と下着の間に指を入れ、直してくれた。何だか慣れた手つきにむっとする。

「何で慣れてるの?」
「気になるの?かーわい」

履かせてもらった為自然と密着したいた二人。コハルが怒ったように立ち上がったアルトを見上げると彼は嬉しそうな顔をしてコハルの唇に自分の唇を重ねた。甘く痺れるキスに先程の気持ちが嘘のように無くなりそれを受け入れる。まるでもう何回もキスをしていたかのように自然に。もう少ししていたいなと思ったところでアルトが離れてしまった。

「今日は疲れたよね。続きはまた今度。部屋行こ?」

なんだ、続きはないのかと少し残念に思ってしまった。⋯て、何を考えてるんだか。

部屋に戻ると薄暗い月夜が窓辺からベッドを照らしている。コハルはベッドの中へ入った。アルトも隣で寝そべっている。

「一緒に寝るの?」
「アンタが寝るまで傍にいるね」

アルトの優しさが今日は特に嬉しかった。あんな怖い思いをして独りで眠れる自信が無かったから。

二人は向かい合い目を閉じる。時々アルトがコハルの頭を撫でたり、肩をとんとんとリズム良く叩いて心地が良い。あんなに眠れないと思っていたのに、コハルは夢の中へおちていった。
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