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 人生初の王城のパーティーはとてもキラキラしていて気持ちが上がる。男女比は確かに男の人が多いがそれでも女性は沢山いた。独りでいる女性はいないがそんなものだろう。

 今コハルは壁際にてパーティー用の貴族衣装に着飾ったウォルトと二人でいる。皇族系列である彼はこの様な行事には騎士としてではなく貴族として参加しなくてはならないらしい。

 ロイドとルイスは中二階にある玉座に居て上から不審者が居ないか、コハルに変な虫が寄り付かないか睨みを効かせながら監視をしていた。その玉座には皇子であるメイディウスが座っており側近であるダビレアや第二騎士団団長のジュフェリーと副団長のジークバルトが皇子を囲うように守っていた。

不思議なことにここにユリウスの姿が見えない。ウォルトに聞くと彼は一時帰国をしているらしい。どうりで最近寮に来ないわけだ。

彼等はコハルの存在に気づくが仕事中の為持ち場を離れることなく集中している。だがジークバルトだけがコハルの方向へ体を向けじーっと見つめていた。グレーのクルクルとした前髪が彼の目を隠し目線が合っているのか分からない。ジュフェリーに注意されても彼は体の向きを変えることなくコハルを見続けていた。

頭一つ分背が高い彼はコハルからしたら目立っている。こちらを見ている気がして目が合っているのか分からないけど笑顔で軽く手を振ってみた。すると彼は表情は変えていないが小さく両手で手を振り返してくれた。

何だか可愛いとクスクス笑う。

「あまり笑わないでください。虫が寄ります。ほら眉間にシワを寄せて?練習です」

いったい何の練習だろうと疑問を抱きながらウォルトに言われた通り眉間にシワを寄せたり口を膨らましたりただ指示に素直に従った。それが面白いのかウォルトはとても甘い笑顔で笑いながらコハルの両頬を手で包み込む。

「こんなパーティー早く終わってほしいな。早く貴女と二人きりになりたいです」

あまーーいっ!何て甘い雰囲気を出すんだウォルト君。恥ずかしい。絶対顔が赤くなっている。

「っ!ウォルト様!見つけましたわ!」

突然甲高い女性の声が聞こえたと思ったらウォルトが後ろから女性に抱きつかれていた。何事かと驚くとコハルはその女性から睨まれてしまった。

「・・・グレイ王女様」
「もう!クリスティーナとお呼びください」

 王女様?

 ウォルトが王女様と言ったその人物は点数を付けるなら正に百点満点の美女だった。さらさらと長いプラチナブロンドを靡かせ大きくてクリクリな碧眼の瞳が輝いている。それに、巨乳だ。抱き抱えているウォルトの腕にご自慢の巨乳を押さえつけている。正直に言うとウォルトと彼女は見た目が美男美女のお似合いのカップルだ。

「そこのお前、無礼であるぞ」
「あ、申し訳ございません」

王女様から睨みつけながら言われたコハルは慌てて深くお辞儀をした。王女様の前で一般市民が頭を下げない事は無礼である。その事はコハルでも分かる。

一方抱きつかれたままのウォルトは顔面蒼白で鳥肌を立てていた。ウォルトの女性恐怖症は相変わらず治ってはいない。コハルだけが許せる相手だった。

クリスティーナ・グレイ王女様は近隣国の王女様で背後には数人のイケメン達が待機している。皆彼女の夫達とのこと。流石美女の夫だけあって皆イケメンだ。

「早く私の夫になって下さいな」
「・・・申し訳ございません」

とても積極的なクリスティーナ王女に対しウォルトは目を合わせないまま必死に笑顔を作り会話を続けている。会話らしい会話にはなっていないが。

「私に素っ気ない態度を取るなんて貴方様だけですわ。本当に貴方が欲しい。心の底から愛しています」

 王女様からの愛の告白にコハルの胸はもやもやした。

 ダンスの曲が流れ始めるとクリスティーナ王女は待ってましたとばかりにウォルトをダンスへ誘う。立場上断れないウォルトだがコハルをこのまま独りにしてしまう訳にはいかないと思いコハルと視線を合わせる。なんとなく事情を把握したコハルが困り笑顔で頷くとウォルトは中二階にいるロイド達へ目配せをした後、申し訳なさそうな顔をしながらクリスティーナ王女と二人でダンスホールへ向かった。

独りになってしまったコハルはとりあえず壁の花になる事を決めた。ふと中二階に居るロイド達を見ると彼等と目が合い、ルイスが何やら部下に命じている。恐らくは誰かを付けてくれるのだろう。ここへ来る前に一人になる事はないと言われたから。楽しく話せる相手だといいな。これからやって来るであろう騎士を探すべくキョロキョロしているとあっという間に騎士ではない見知らぬ着飾った男達に囲まれてしまった。

「お名前を教えて下さい」「夫は何人いますか」「私を夫にして下さい」「宜しければこの後抜け出しませんか」

一斉に男達に群がられ一方的に話しかけられ困惑するコハル。助けを求めたいが自分よりも背の高い男達に囲まれ中二階が見えない。自力で抜け出さないといけないと思ったコハルはとっさに「あ!あれは!?」と大声を出して指を遠くへさした。彼等は一斉に指差す方向へ顔を向けた。その間に背後にあった扉を開けテラスへ出た。

なんか、すんごい疲れた。

はあ。とため息を吐きながら肩を落とす。

「生憎だかここは俺専用だ」

低い声が聞こえた。誰もいないと思っていたテラスには既に先客が居たようで更にがっかり落胆する。とりあえず謝ろうとゆっくりと顔を上げると、そこには以前毒蜂から救ってくれた極上黒髪イケメンの、のいう゛ああぁんしゅたいん様がいた。



***

 ウォルトはクリスティーナ王女とダンスをしている最中もコハルの事が気になりずっとコハルの方向へ顔を向けていた。王女の会話など気にもとめないその態度が面白くない王女は彼の気を向かせようと必死である。

 何なの!?あの女よりも私の方が美しいのになぜウォルト様は私を見てくれないの?

「ウォルト様?私の話を聞いていまして?」
「あ、申し訳ございません」

 ああこのお顔本当に美しい。謝罪している顔も何て素晴らしいの!
 ・・・あの女、邪魔ね。


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