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 早朝

「あんた、その格好恥ずかしくないの?」
「ん?全然恥ずかしくないですよ!私が暮らしていた所では当たり前の格好ですから」

 コハルは昨日ユリウスから頂いたデニムパンツと白シャツを着用して作業をこなしていた。デニムパンツは少しキツめではあったが、デニムは伸びるので気にならない程度だ。デイジーはおそらく脚の形が分かってしまうのが恥ずかしくないかと思っているのだろう。だがコハルにとっては全くもって気になることではない。

 現在、朝の食堂ではコハルとデイジーが朝食の準備をしている。ただいつもと違うのは、ここにユリウスがいることだ。
 彼は護衛を連れて食堂の席に着き、スケッチブックに絵を描いている。意外な事に彼の趣味は絵を描くことで、白シャツとデニムパンツ姿で働くコハルを描きたいと申し出た。コハルは断る理由がなく許可をしたが、許可をした後で後悔をした。ずっと見られているのは何だか居心地が悪い。

 前かがみになりながらテーブルを拭いていると背後から視線を感じた。上半身だけ後ろを振り返ると食堂の入口には朝の鍛錬を終えた騎士達が固まってこちらを凝視している。クスクスとユリウスの笑い声が聞こえ何事かと彼を見るとニンマリ顔をしながら手を動かしていた。

 コハルは気にもとめていないのだが騎士達はズボンを女性が履いているのを見たことがなかった。脚のラインが分かり、前かがみになっている為お尻の形もはっきりと分かってしまう。気のせいかもしれないが女性に免疫のない男達は一番大切な所がくい込んでいる様にも見えてしまう。あまりにも刺激的な視界に思わず見続けてしまい、中には鼻血が出てしまっている者もいた。

「なんだ、やっぱり痴女じゃないか」

 聞きなれない声の言葉に思考が固まった。

 痴女?今、痴女って言われたの?

 何が起きているのか考えられず声のする方向に視線を向けると、そこには見慣れた騎士達より頭ひとつ分背が高く、淡い栗色ロングヘアに瞳の下にホクロがある色っぽいお姉さんがいた。いや、喉仏が見えているので限りなく女性的な顔をした男の人がいた。
 前方にいた騎士達はその存在に気づくと一斉に道をあけた。

 もしかしたら偉い人かもしれない。でもこの人が私の事を痴女って言ったんだよね?え。どこが痴女?というか誰ですか?

 混乱しているとその人は真顔のまま近づき下から上へ、上から下へとコハルを見た。その行動に不愉快を感じたコハルだが大人な対応をとるために軽く挨拶をした。相手の返事を聞く間もなく厨房へ向かおうと方向転換をしたが、その人に手を掴まれてしまった。

「ちょっと待ちなよ。挨拶してそれだけ?俺の事気にならないの?」

「とくには。仕事の途中ですので用がないなら失礼します」

 内心びびりまくりのコハルだが表に出さないよう淡々と話す。そんなコハルの態度に彼は肩を震わせながら大笑いをし始めた。

 なにこの人、すごく恐いイケメンなんだけど。

本能で関わってはいけないと思い腕を振りほどこうと手を動かすが全然離してくれない。

「てっきり男好きの痴女だと思ってたのに俺を見て素っ気なくするのって作戦?いいねぇ。物語が湧いてきた!」

 笑顔で掴んでいる手に力を込めてくる男が本気でやばい人だと思い、反対の手で思いっきりチョップをかましてやろうと思ったら変態男の手をいつの間に居たのかジークバルトが離してくれた。彼はその人よりも背が高く、背後に隠れた変態男の姿が見えなくなりほっとした。

「ジークバルトさん?」

 彼は無言のままこちらを向くと手のひらを体の中心で立て、ごめんねとジェスチャーしてくれる。

「助かりました。ありがとうございます」

 ジークバルトに笑顔を向けるとひょこっと変態男が顔を出して態とらしく唇を尖らし文句を言った。

「邪魔するなよジークバルト。もう少し話させろよなー」

 ぶーぶーと文句を言っている変態男をどうどうとおさえているジークバルト。この状況誰かどうにかしてください。

「ジュフェリー団長!?どうしてここにいるんですか!」

 ウォルトの声が食堂に響き渡った。
 団長?ロイドさん以外にも団長がいるんだ。え、この変態さんが団長?

 混乱しているとウォルトが近づいてきて大丈夫かと気にかけてくれる。大丈夫だよと伝えると彼は安堵のため息を吐いた後コハルを背後に隠し少し険しい表情で変態を睨みつけた。

「第二騎士団団長のジュフェリー様と副団長のジークバルト様がなぜここにいるのですか?」

「いやー、一目見たくてね。そしたら格好がもう痴女だし、なのに俺の事見ても興味なさそうだし、すごくいい執筆のモデルになりそうなんだよ!」

 変態は第二騎士団の団長さんでジュフェリーと言うらしい。彼は興奮しながら意味の分からない事を言っている。

 痴女ってなによ!痴女って!

 コハルはぷりぷり怒りながらも仕事中の為早く作業しなくてはと変態をほおっておいて食堂に行こうと足を進めたその時、お尻に違和感を感じた。驚いて後ろを振り向くと先程の変態が両手でコハルの尻を揉んでいるのだ。しかもその手はどんどん中心へ近づき最終的には一番大事なところを撫でられてしまった。

 !?!?!?!?!?

 声にならない悲鳴とはこの事である。あまりにも突然の事で固まってしまったコハルをジュフェリーは首を傾げて不思議そうに見ている。

「あれ?何も感じない?それにしても小さい尻だな。もう少し大きい方が俺好みなんだけど」

 もみもみもみ なでなでなで さわさわさわ

 周りも状況がつかめない中、触り続けるジュフェリーに対しやっと自分がなにをされているのか理解したコハルは後のことを考えずに彼の股間を思い切り蹴りあげた。

 「ってーー!!!!!」

 ジュフェリーは自身の股間を手で押えながら床に転がりのたうち回っている。そのあまりの痛さを想像した他の騎士達も自身の股間をおさえた。

ジークバルトは無表情で拍手をしていて、ユリウスは大笑いをしていて、ウォルトは顔面蒼白である。

コハルも自分の行動にやってしまったと焦り慌てて床に転がっているジュフェリーに謝罪をした。

「ご、ごめんなさい!やりすぎました」

 ジュフェリーはあまりの痛さに悶絶していて返事をする事が出来ない。ウォルトは焦っているコハルの肩に手を置いて慰めようとしているが、彼の方が泣きそうな顔をしている。

「コハル大丈夫ですか!?気持ち悪かったですよね。守ることが出来ず申し訳ございませんっ」
「ウォルト君泣かないで?私も突然の事で理解する事が遅くなっちゃって」

 でも正直のたうち回っている変態を見てすっきりしている事は内緒だ。

「何事だ?」

 とんだ修羅場にロイドとルイスが現れてその場はおさまった。

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