【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ

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「・・・コハル、どうしたのですかコレ。誰かに・・・襲われた?」

ウォルトの言葉に勢いよくロイドとルイスが立ち上がり彼の隣へ移動した。そして、ウォルトが指をさす先にあるコハルの首筋にハッキリと赤黒く咲いてしまったキスマークを見つけ固まった。

「ああ、コレね。実は毒蜂に刺されちゃって親切な人が毒を吸い出してくれたの。危うく死んじゃうところでした」

 助かって良かったです。ヘラヘラ笑うコハルとは対照的に三人は黙り、険しい顔で怒っている様に見える。

 コハルはこの世界の毒蜂を知らない。ここいらの毒蜂は針が太く、一度刺されると穴が目立ちその周囲は膨れ上がるのだ。しかし、実際にはラウルがコハルに見つからない様に腕を伸ばして爪をたてていただけなので爪痕は既に消え、毒蜂に刺された跡は無く、結構強めに吸われたのであろうキスマークのみあった。

「え?ちょっ・・いたたたた!」

 ウォルトが無言のまま持っていたハンカチでそのキスマークを消す勢いでコハルの肌を強く擦る。その痛みに強めの口調でやめてと言って漸く擦るのを止めてくれた。キスマーク辺りの肌が赤くなっても未だ目立つ跡に眉を寄せる。

「まだ目立つな」

 そう言ったのは意外にもロイドで、ウォルトが再びハンカチで擦ろうとするのを察し内心で悲鳴を上げたらルイスが止めてくれた。感謝の眼差しを向けていると彼はすぐ隣で跪き、腕や足を隠している服を捲り他に跡がないか確認している。

 こんなところで何してるんですか!

 店中で何をしているんだと恥ずかしくなり慌てて服を元に戻す。ルイスが肌を確認している間、ロイドとウォルトが壁になり周りから見れないようにしていた事は知らない。

「コハル、それ以外何もされていませんか」

 思い切り頷いた。噴水広場まで道案内をしてくれたり本当に良い人だったと伝えると三人は無言のまま目で会話をしているかのように見つめ合って、頷き合い、漸く席に戻った。

「私と席を交代しよう」
「え?どうして・・・はい」

 隣に座っていたロイドが提案してきた。コハルが座っていた席は通路側で周りの様子が良く見えていた。可愛らしいインテリアや他のテーブルに運ばれるデザートの盛り付けを楽しく見ていたのでこの席のままが良かったのだが、ロイドの圧が凄かった為大人しく席を交代した。高身長で体格の良い彼等と壁に挟まれ周りの景色を楽しめなくなり、周囲からもコハルの姿が見えないほどに隠れる。

「今から私達が言う言葉を復唱して誓ってください」

 ルイスの言葉にどうしてかと聞こうと口を開いたら直ぐに言葉が述べられるので慌ててその言葉を復唱した。

・一人で出歩かない
・三人のそばを離れない
・他所の男に愛想を振りまかない

「これを守れなかった時はお仕置きですよ」

 なんだ、この程度のものかと少し安心し、約束した。

「お待たせしました」

 うわーかわいいっ!

 ウェイターが注文したデザートを運んでくれた。目の前に来た可愛らしい盛り付けと美味しそうなフォンダンショコラが乗ったプレートに感動し、持って来てくれたウェイターに笑顔でお礼を言ったら少し驚かれた後、直ぐに笑ってくれて彼はテーブルから離れた。

 さあ食べましょう。気分よくフォークを手に持つと、隣に居るロイドから腕が伸ばされ頬を軽く抓られた。

 なぜ?

「言ったそばから約束を破ったな」
「いけない人ですね」

 何を破ったのだろうと首を傾げる。どうやら先程ウェイターに礼を言った事がダメだったらしい。いやいや、人としてお礼を言うのは当然でしょうと抗議をしたらため息を吐かれた。

「だからってあんなに笑顔で言わなくてもいいじゃないですか」
「コハル、お仕置き確定です」

 ええー、理不尽。

「お仕置きってなんですか?」

 狼狽えながらルイスに聞くと内容を決めていなかった様で、ロイドの意見を待つ。彼は少し考える素振りを見せてからコハルのフォンダンショコラが乗った皿を手に取った。

「罰としてコレは私が食べよう」

 思わぬ罰に驚愕し必死で止める。

「やだ、やだやだ!それだけは勘弁してください」

 普段のコハルでは見れないであろうその慌てぶりが可愛くてルイスとウォルトは微笑ましく見ている。ロイドは自分のモンブランとフォンダンショコラを見比べていた。

 この人絶対食べたいだけだっ!

なんの罰にするか決める前に、先にデザートを食べてしまおうという結論になった。

 フォンダンショコラを真ん中で割ると、トロリと中のチョコが流れ、お皿に広がる。感動しながら流れが止まるまで見続け、口に入れた。
 濃厚なチョコの味が口いっぱいに広がる。思ったほど甘くなく、とても食べやすくて美味しい。コハルの好きなビターチョコの味だ。

 ふとルイスが食べているシフォンケーキに目がいった。それは子供の頃から何度も母親と一緒に作っていたケーキだった。

「懐かしいな・・・」

 母との楽しかった日々を思い出し、口角が上がる。コハルの呟きに気づいていた三人は何が懐かしいのか理由が聞きたい様だ。

 コハルが母との思い出を語ると彼等はとても驚いた顔をしている。

「驚いたな、ケーキを作れるのか」

 ロイドの言葉に首を傾げる。別に簡単なケーキが作れるくらいどうって事ないのでは?

「料理は結構好きですよ?手の込んだ料理やデザートは出来ないけど自立していたので簡単なものならある程度は作れますよ」

 そういえば今まで三人に女子アピールをしてこなかったのでここぞとばかりに言ってみた。普段は頂いてばかりだが私だってやる時はやるのだぞと。

 ・・・。
 凄いねとか、偉いねとか言ってもらえるかなと少し期待していたが彼等は愕然としているだけであった。

「あの、そんなに意外でした?」

 そんなにも何も出来ない人に見られていたのかと少し悲しくなる。

「あ、いや女性が料理をするなんて聞いたことがなくて驚きました」

 ウォルトの言葉にコハルが驚きました。
 女性が料理をするなんて聞いたことがない?そんなこと有り得ないのでは・・・。料理が苦手であまりしない人はいても、多少なりとも多くのご家庭では女性が料理や家事等をしているのでは?

「そんな細い腕で包丁が持てるんですか?」

 ちょっとウォルト君、バカにしすぎよ?

「野菜の千切りとか得意なんだから。こうシュババッて切っちゃうよ」

 手で包丁を真似て縦に振る。右利きなので左手は猫の手で獲物を押さえるふり。高速で振っていたら左手に当たり、ウォルトがそれだと自分の手を切ってますよと笑い、穏やかな空気が漂う。

 コハルはフォンダンショコラを一口分スプーンですくい上げロイドの口元へ運んだ。

「ロイドさん、コレと悩んでいたでしょ?はい、どうぞ」

 ロイドが戸惑いを見せたのは一瞬で、差し出されたケーキを口に入れた。兄弟が多かったコハルは人に食べさせる事に慣れていて、ロイドの口に入ったスプーンに付いているチョコを食べやすい様に角度をつけて彼の口からスプーンを抜いた。

 美味しいですよねと同意を求めれば彼は小さく頷き、口を動かして味わっている。コハルは特に意識せず同じスプーンを使い再び食べた。自分の口に入ったスプーンを使っているコハルを見続けるロイド。彼はお返しに自分のモンブランを一口分スプーンに乗せコハルの口元に運んだ。

 自分がすることには慣れているので抵抗は無いが、されることは経験も少なく、ましてや相手がロイドだと羞恥心が込み上げる。

 コハルは差し出されたモンブランではなくお皿に乗っているモンブランに腕を伸ばした。

「じゃあこっちを頂き・・・」
「ダメだ。・・・お仕置きはこれにする」

 モンブランが乗ったお皿を遠くに置かれ届かなくなってしまった。ちょん ちょんと差し出されたモンブランが唇に当てられている。ロイドを見ると面白そうに笑っていた。彼の楽しそうな表情にいよいよ顔に熱が集中する。これがお仕置きなら安いものだと羞恥心を抑え、こうなったらヤケクソだと「あーん」と小さい声を出してそれを口に入れた。

 そのモンブランの美味しさに先程の羞恥心はどこへ行ったのやら、瞳をキラキラさせ美味しいと顔で表現をし口を動かす。

 「なるほど、これがお仕置きですか」と前置きをしルイスがシフォンケーキに刺さったフォークを差し出す。恥ずかしいけれど一度やってしまえばあっという間だし、大丈夫だと自分を納得させ口を開けようとしたら

「コハル、あーん?」

 まさかのルイスが「あーん」と言ったものだから羞恥心が再びこみ上げる。言い慣れていないのだろう可愛らしい発音に心臓が鷲掴みにされた。何とか心を落ち着かせ、差し出されたシフォンケーキを咥え咀嚼して彼を見ると満足気な顔をしてフォークを舐めていた。

 やめてほしい。悶え死にそうです。

 自暴自棄になり最後はウォルトだと彼を見ると既に持っているスプーンにクリームたっぷりのショートケーキが乗っていた。しかし斜め向かいに座っている為かなり身を乗り上げなければ届かないだろうと思い、席を立ち彼の隣に移動をしてしゃがんだ。顔の位置はテーブルと同じ位の高さになる。躊躇ったウォルトだが徐にそのショートケーキをコハルの口に運ぶ。

 クリーム多くて甘そうだな。
 少し億劫になりながらもそれを口に入れると意外なことに甘さが控えめだった。スポンジが濃厚で感動する程美味しい。「もう一口下さい」とお願いをし、頂いた。あまりの美味しさに何度も美味しいと口にし笑顔でウォルトを見ると優しい顔をしているウォルトと目が合った。彼はコハルの口の端に付いてしまったクリームを指で拭き取ると、その指についたクリームを舐めたのだ。顔から火が出る思いにかられ礼を言った後、慌てて席へ戻り真っ赤になっているであろう顔を両手で隠す。

「もう絶っ対約束を守ります」
「是非そうしてくれ」

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