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 清々しい快適な午前中を動物達と過ごし、午後になった今は暇なのでキッチン掃除をすることにした。

 二日連続で会ったイケメン’ズは何処から来たのだろう。もしかしたら近くに街があるのかな?探検してみたいけど武器も何もないし、道に迷ったら怖い。この家が唯一この世界で生き抜く場所だと信じている為、独りで外へ行く勇気は持っていなかった。でもずっとここに居るのもつまらないので勇気が百パーセントになったら外に出ようと思う。


 コンッ コンッ

 玄関からノックの音がした。直ぐにドアを開けるのが怖かったのでドア越しに「どちら様ですか」と聞くとウォルトと名乗ったので玄関のドアを開ける。騎士服を着ていない白いシャツと黒のパンツ姿の、爽やかでかっこいいウォルトがいた。

「こんにちはウォルト君。騎士服姿じゃない格好も素敵ですね。えと、どうして今日も?」

「こんにちは。昨日団長が話していたと思うのですが・・・?」

 ・・・しまった!聞いていなかった時の話か

「ごめんなさい。実はサンドイッチに夢中で話を聞いていなかったです」

 本当にごめんなさいと頭を下げるとウォルトは困り笑顔で説明をしてくれた。

 騎士団の上官に神獣と共にいる女性がいるという報告後、監視対象となった為、暫くの間毎日ロイド、ルイス、ウォルトの三人が休日返上で様子を見に来る事になり、二つ返事でコハルが了承した為、今日はウォルトが来たという。彼は相変わらずのコハルの足だし服装にどこを見ていいのか困り、顔を伏せている。コハルは全く気にしていない。

 何というブラック企業。何だか急に罪悪感が・・・

「休日返上だなんてそんな、三人に申し訳ないです。それに彼女さんや奥さんが可哀想です。今からでも何とかならないですか?様子を見に来る間隔を空けるとか」

 イケメンを見れるのは嬉しいけれど、毎日来られたら昼にお風呂を入れない等不便だし、正直ぐうたら出来ないから嫌だ。
 そんなコハルをきょとん顔で見ているウォルト。

「それなら問題はありません!私達は独身で、恋人もいませんから」
「え!?そんなにかっこいいのに」

 そんなにかっこいいのに恋人もいないなんて、やんごとなき事情があるのだろうか。と聞きそうになったのを堪えた。あまりプライベートを聞くのも下品だと思ったので。

「団長は女性に興味がないですし、ルイス様は婚約者の方が他界された以降はその様な話は聞いてません。ちなみに私は女性が苦手でして・・・」

 なるほど。ロイドさんは男性が好きでルイスさんは好きな人が他界。それは辛いな。
 しかし、他二人の話をしちゃうウォルト君は少し口が軽いのだろうかと思ってしまったが、彼が女性恐怖症とカミングアウトをしたので慌てて距離をとった。

 休日返上に恐怖対象を監視だなんて苦痛このうえない。なんでも彼は幼少期に数多の女性から言い寄られ、襲われた事もあったと言う。顔が良いと色々大変だな。

「大丈夫ですか?この位の距離なら怖くないですか?」

 必死に自分は襲いませんアピールをし、ウォルトも今は大丈夫だと言ってくれた。

「宜しければこちらを受け取って下さい」

 ウォルトが差し出した袋の中には黒と白のつばの広い帽子が二つと、シンプルだけど刺繍が施された可愛らしいロング丈のワンピースが三着入っていた。デザインは一緒で薄桃色、クリーム色、若竹色と色違いだ。

 コハルの姿がどうも気になったので三人でお金を出し合って、ここに来る前にウォルトが購入してくれたと言う。もちろんコハルはお金を持っていない為、一度断ったが彼等の為だと言われ、お言葉に甘える事にした。

「ウォルト君だけでも誰かと代わることは出来ないのですか?いくらお仕事でも苦手なものに近づくのは精神的負担になるでしょう」

 私はゴキブリが大の苦手で、仕事だからと言ってゴキブリの観察を間近で見ろと言われたら辞職する。しかも休日返上でそんな事絶対にしたくない。

 ウォルトは少し眉間に皺を寄せてコハルを見た。

「・・・私もいい加減克服したいので、コハルが良かったら付き合ってほしいです」

 偉い!私なら絶対ゴキブリに克服しようなんて思わないのになんて向上心のある美丈夫王子様だ。

「私でよかったら克服出来るまでずっとお付き合いしますよ」

 コハルの言葉に微笑んだウォルトは、着替えを勧めた。2階に上がりクリーム色のワンピースを着る。足首が見える丈のワンピースは着やすくて、動きも楽だった。

 ウォルトに見せると「よく似合ってますよ」と王子様スマイルで褒められた。

「それじゃあ最初のリハビリは会話からし始めましょう!」
「はい!よろしくお願いします。先生」

 年下イケメンに先生呼ばわりされて上機嫌のコハルである。

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