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第三章

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 リリーとリヒャルトの新婚生活はとても穏やかなものだった。

 ある晴れた日、庭からカンカンと何かを叩く音が聞こえ、窓から外を覗いたリリー。庭ではリヒャルトが木で何かを作っていた。何を作っているのか気になったリリーは彼のために紅茶を淹れ持って行く。

「何作ってるの?」
「ベビーベッド」

ベビーベッド・・・確かに必要だけどまだ早いんじゃ?どうして作り方知ってるんだろう。

疑問に思ったがその答えはすぐに見つかった。近くに本が広げられていてベビーベッドの作り方が載っていたのだ。その本には他に家具の作り方や、木で作る玩具の作り方等様々なDIYが掲載されている。先日リヒャルトが買っていた本はこれかと納得し何か手伝える事はないかと聞いた。そしてリリーはヤスリ担当になった。

 またある日、リヒャルトはリリーに多数の色が掲載されている冊子を見せてきた。

「子供部屋の壁色何色がいい?性別分かんないし黄色かなって思うんだけど、空色にして雲の絵を描くのも良さそうじゃない?」

子供部屋の色・・・ふむ。
黄色は好きだけど空色に雲もいいな。

ぱらぱらと冊子を捲り中身を見ると驚いた。黄色だけでもこんなに種類があるなんて驚きだ。

結局黄色を選んだ二人だったが悪阻で臭いがキツいため全部リヒャルトに塗ってもらった。


 またある日、お風呂から上がったリリーとリヒャルトは服を着てソファで寛いでいた。リヒャルトが何やら箱から瓶を取り出しリリーに見せる。

「コレ買ってみた。妊娠線予防クリームだって。赤ちゃんに話しかけながら塗るといいらしいよ。張ってきた胸に塗るのもいいんだって」

そういえば妊娠の本に書いてあったなと思い出す。まだ早い気もするが今から予防しといた方がいいのかもしれない。お言葉に甘えクリームを受け取ろうとしたが、ひょいっと瓶を高く上げられてしまい取る事が出来なかった。代わりに彼は自身の膝を叩き上に乗れと合図をした。

大人しく背面を向け膝に乗ると服を捲られる。
手の平でクリームを温めたリヒャルトは優しくリリーのお腹を撫でた。

「おーい元気かー。頑張って育つんだぞー」

まだ聞こえないと思うのに赤ちゃんに話しかけるリヒャルトが可愛くてクスクスと笑った。

クリームを追加したリヒャルトを見て首を傾げた。お腹は十分なのになぜ?彼は両手でリリーの胸をマッサージするように揉んだ。彼は胸の血流を良くするんだとか言っているが、胸の蕾を触られているわけではないのにリリーはムラムラしてしまう。実はリリー、妊娠してから性欲が強くなってしまったのだ。今まで誰かに触ってもらっていたから独りでした事が殆ど無い。独りで触ろうと思ったが出来ない理由があった。

「んーちょっと大きくなってきたんかな??」

でもどうしよう・・・ムラムラピークだ。

リリーは立ち上がり背面から前向きに変えリヒャルトに跨り彼の頬にキスをした。

「リヒャルト、えっちしよ?」

うッと息が詰まったリヒャルトは悶々とし眉間に皺を寄せたが、グッと堪えてリリーの肩を掴み、眉を八の字顔に曲げた彼女の顔と距離を取る。

「ダメ。本に書いてあったじゃん。イクと子宮が収縮されてお腹の赤ちゃんが苦しいって」

そうなのだ。そう本に記載されていたから独りでもしなかったのだ。こんなに性欲が強くなるなんて思わなかった。

「イかないようにするから」

「それは俺が無理だよ。絶対イかせると思う。リリー敏感なんだしさ。赤ちゃんに何かあったら怖くて無理。出産して落ち着いたらめちゃくちゃ抱くよ。いっはいイかせるから今は我慢して」

うう~と小さな唸り声を出しながらリヒャルトの肩に頬を当てムスッとし彼に寄りかかる。背中や頭を撫でられよしよしされると、つい我儘を言ってしまいそうになる口を閉じて我慢した。



 ある日の晩、ベッドに寝ていたリリーは隣にリヒャルトが居ない事に気が付き目を覚ました。

リヒャルトどこ・・・?

徐に起き上がり手探りで廊下を進み、明かりが灯る一階に下りるとソファに座るリヒャルトを見つけた。

今声を掛けようか、そっと近付いて驚かせようか悩み、驚かせる事に決めたリリーは気配を消して近付いたが、ある光景を目にして固まってしまう。なんと彼は自慰していたのだ。シコシコと手を上下に動かしていた。・・・それもそうだ。男は溜まると出さなきゃいけない。自然な行為であり、むしろこちらを気遣って眠っている間に済ませようなんて健気ではないか。

今日まで彼は凄く良くしてくれている。それなのに自分は何も恩返しが出来ていない。これは恩返しをするチャンスではないか。

そう思ったリリーは早速行動に出た。

「リヒャルト」
「ぅわああッ!!?」

突然話しかけられたリヒャルトは酷く驚いたが、直ぐに立ち上がり下着とズボンを上げてしまった。

茹でダコの様に顔を赤くし、バクバクと激しく鼓動する心臓を感じながら振り返ったリヒャルトは見られてしまった事に酷く動揺している。リリーはそんな彼の頭を撫で彼の肩を掴みゆっくりと座らせた。優しく唇にキスをしてズボンを下ろすと口で彼の下着を下ろしふにゃんと元気をなくした肉棒の先を咥えた。

「リリーいいよ。悪阻もあるっしょ。大丈夫だからッ」

止めようとするリヒャルトの指に自分の指を絡め優しく微笑む。

「大丈夫」

亀頭を舌先でチロチロと舐め優しく食む。筋を上下に舐め奥まで咥えると舌で刺激していく。ガチガチに膨れ上がり元気になった肉棒を口技で刺激しながら彼を見た。リヒャルトは顔を歪め快楽に耐えていた。その表情が可愛く思い、もっと気持ちよくなってほしいと頑張る。

「ッーーでるッ」

咄嗟にリリーの口から肉棒を抜き彼女の顔にかけた。

「ッー・・・危ねぇ口の中に出すとこだった・・・大丈夫?気持ち悪くない?」

リヒャルトは時々悪阻で吐いているリリーを見ていた為、自分の精液で気持ち悪くなってしまわないか心配になった。

たしかに口に出されたら吐いてしまうかもしれないと思ったリリーはそこまで気を使ってくれるリヒャルトの優しさが嬉しくなり、ニコニコと笑顔を浮かべ少しでも恩返しが出来たと嬉しそうに笑っている。

膝の間でなぜか喜んでいるリリーが可愛くて仕方ないとリヒャルトは撫でまくりたい気持ちを抑えティッシュを濡らし彼女の顔を拭いた。

「ありがとう・・・でも、もうしなくていいよ。俺だけ気持ちよくなるの不公平じゃん」

「大丈夫。素股も出来るよ?リヒャルトが触らなければいい」

「・・・・・・・・・それは、生殺しだよ」



 今日は妊婦健診の日。ひとりで行くつもりだったのにリヒャルトがついて来てくれた。一通り検査を受け医者の話を聞いているのだが医者は前回いなかったリヒャルトの存在が気になるようでチラチラと彼を見ている。看護師さん達は仕事中の為平然を装っているが、リヒャルトのイケメン振りに頬を染めながらチラチラと彼を見ていた。隣に座るリヒャルトは検査結果はまだかと不安になりその表情が堅い。

「うん。順調に育っていますね・・・失礼ですがそちらの方は?」

医者が咳払いをしながら問うとリヒャルトは問題ない事に安心し深く息を吐いた後、堂々と答えた。

「リリーの夫で、この子の父親です」

「それはよかった。万が一に備えてお父様の血液検査をしたいのですが宜しいですか」

「・・・あーえーと・・・俺とお腹の子に血の繋がりはないんです。リリーとはほんと最近結婚しました。ちゃんと責任持って育てます」

リヒャルトは何も悪い事をしていないのに申し訳なさそうな、気まづそうな顔をしている。だがそんな彼を医者や看護師達は状況を察したのか、うるうるキラキラとした尊敬の眼差しで見つめていた。医者がリリーに向き直りほのぼのとした表情を向ける。

「とっても素敵な旦那様ですね。妊娠中は何が起こるか分からない。そばで支えてくれる人がいるのはとても心強いものです。お二人なら素敵なご両親になれるでしょう。妊娠後期になったらパパママ教室があるから是非一緒にいらして下さい」

「パパママ教室?」

「ええ。沐浴やオムツ替えの練習と授乳指導を行います」

「わかりました。リリー受けよう」

「うん」

「それでは一ヶ月後にまたいらして下さい」

 病院を出てすぐ、リリーは自らリヒャルトの手を繋いだ。妊婦健診の時にお腹の子を育てると第三者に堂々と言ってくれたことが嬉しかった。その気持ちを伝えたい。

「リヒャルトありがとう。好き」
「ん。俺も」

なんだか彼を愛おしく感じてしまう。

・・・どうしよう。すごく甘えたい。
こんな一通りの多い所で甘えてもいいのだろうか。リヒャルトは周りに見られるのが嫌だろうか。

もじもじと指をいじるリリー。何か言いたい事があるのだろうと察したリヒャルトだったが、リリーの行動を待った。

リリーはそっとリヒャルトの胸元に顔と両手を当てキュッと彼の服を掴み体を密着させる。すーっと深くリヒャルトの匂いを嗅いで甘えたいという気持ちを落ち着かせた。彼の匂いはすごく落ち着く。寝ている時もこの匂いを嗅ぐと心地よく眠れる。すりすりと頬擦りをし、満足したリリーは顔を離して彼の顔を見ずに恋人繋ぎをし帰ろうと足を進めた。手を引っ張られたリヒャルトは顔に熱が集中した為景色を見て気持ちを落ち着かせようとするが耳まで真っ赤に染まった熱は中々すぐに治まらない。そんな二人を街人が微笑ましく見守っていた。




 ある日、今日はリヒャルトがハンターデビューをする日だ。妊娠中に生活費を稼いで出産したら最低でも四ヶ月は付きっきりで子育てをする予定らしい。本当は一緒について行きたかったのだがリヒャルトから断固として拒否されてしまった。依頼を受けるつもりは無いと言ってもギルドは輩が多いから母体に響くと謎なことを言っていた。

体調が良いリリーはゆっくりと街中を散歩している。賑わう街中は活気がよく出店が出ていた。果物でも買おうか。そう思い店を探しながら歩いていたら突然背後から男に抱きしめられた。

「キャーッ!強姦魔ー!」

リリーではない近くを歩いていた女性が叫び、周囲の人々が何だ何だと騒ぎ立てる。包丁やフライパンを持って強姦魔を倒そうと住民が駆けつけて来る姿を見たリリーは手の平を見せて彼らを制止した。振り返り抱きついている男を見上げて優しく笑う。


「エレン、久しぶり」

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