69 / 89
第三章
69
しおりを挟む「重婚しないか?」
「「「・・・は?」」」
ユリウスの提案に驚きを隠せない五人は唖然としてしまった。勘違いさせてしまったかと慌てたユリウスは手のひらを広げて訂正した。
「ち、違うよ?僕は君達と結婚したいんじゃなくてリリーとしたいんだ」
「いやそれは分かりますけど、どうしてですか?」
リヒャルトの言葉に一人で慌てて恥ずかしいとコホンと咳払いしたユリウスは彼らに丁寧に説明を始めた。
「僕はリリーに本気なんだ。彼女の生い立ちも影での仕事も昔娼館で働いていた事も君達との関係も団長から教えてもらった。全て知った上で彼女と結婚したいと考えている。
でも、残念なことに彼女は異性の好きが分かっていない。僕と一緒にいるのも、僕と恋人関係にあるのも”知らないから経験として”としか思われていない可能性がある。
このままでは先程のノエルと似たような状況があれば言葉巧みに操られて彼女は他の男へ行ってしまうかもしれない。
ノエルはさっき絶対安心出来る確約がほしいと言っていたね。僕はそれが結婚だと思っている。なにせこの国では重婚は認められてるけど離婚する事は生が死をわかつ時まで許されない。
だから僕は外堀を埋めて気付いたら結婚してましたに持っていく予定だ。不誠実なのは分かっているがこうでもしないと逃げられるって団長からアドヴァイスをもらって。・・・僕も彼女を諦めるつもりはないよ。
ただ、もし万が一この中の誰かが先にリリーと結婚した場合、後から僕もリリーと結婚する事を許可してほしい。僕も先にリリーと結婚していたとしても君達を受け入れると約束しよう。
つまりこれは同盟だ。どうだろうか」
少しの沈黙が続いた。
リリーのことは好きだが結婚まで考えていた者はこの中にどれくらいいるだろうか。
返事がない五人に気にせずユリウスは言葉を続けた。
「そもそも本来なら重婚なんて考えたくなかったんだけどね、団長に結婚の許可を貰いに行った時に影のシルヴィの話をされて重婚を覚悟した方がいいって言われたんだ」
「・・・あー、それは否めません」
なにせリリーが大好き過ぎてやばいシルヴィだ。彼は何がなんでもリリーと結婚すると断言している。
「でも、君達も否定出来ないだろ」
彼の言葉にピクッと反応した五人は再び黙ってしまった。
「結婚まで考えていないのならそれでいいよ。でもその場合は仕事以外でリリーに付き纏いでほしい。彼女には影と君達五人以外の男と会話しないでと伝えてある。将来僕と家族になる男以外が彼女と同じ空気を吸うなんて耐えられないからね」
ユリウスは笑顔なのに黒いオーラが出ている。
結婚・・・正直そこまで考えていなかった。
ただ好きでそばにいたいと思っていた者が多い。
「・・・貴族には難しい話かもしれないね。家の責任もあるだろうからよく考えて。時間はあるから。ただ、今承諾してくれたら僕の宝物を見せてあげる」
ユリウスが胸ポケットから手の平よりも大きいサイズの本を一冊取り出した。
「これは団長から買い取った複製なんだけど世界に団長と僕だけしか持っていない子供の頃から大人になるまでの絵姿・・・つまり、リリーの思い出のアルバムだよ」
・・・!?
「僕が初恋した時の歳のリリーや影の忘年会で羊のコスプレをした可愛いリリー。団長が想像して描かせた赤ちゃんの頃のリリー。百枚は超えている。僕の二ヶ月分の給与を注ぎ込んだんだ。どう?見たいでしょ?」
子供の頃の絵姿を見たってそんな・・・今の姿を目に焼き付ければいい話じゃないか・・・そんな・・・・・・。
ガタッと立ち上がったエレン。彼はユリウスの前に立つと手のひらを向けて握手を求めた。
「・・・君は伯爵家だけど重婚してもいいの?」
「所詮僕は三男ですしあの家に未練なんてないので」
交渉成立だ。ぐっと握手を交わした二人。
ユリウスが再び胸ポケットの懐から紙を出した。
そこには契約書の文字が堂々と書かれ、その内容は重婚の約束だった。
「随分と準備がいいですね」
「リリーと仲直りしたって聞いてこうなる事は予測出来たよ」
契約書の内容を確認したしたエレンは署名しユリウスの隣に座ると、彼からリリーアルバムを借りまじまじと見た。
「かわっかわいい・・・」
思わず口に出して感動してしまったエレン。
羊のコスプレをした子供の頃のリリー。子供の頃のそれは着ぐるみを被っていて眠っている姿が愛おしい。
「でしょ!こっちは大人の羊コスプレしたリリーだよ」
ペラペラとページを捲り大人羊リリーを見せたユリウス。今度は着ぐるみではなくモコモコの白生地で胸とお尻を隠し足首と手首だけモコモコ衣装のちょっとえっちなリリーの絵姿だ。
(・・・いい・・・!)
感動が隠せないエレンの表情を見た四人にも欲が現れた。
「・・・ユリウス様俺もサインする」
「・・・リヒャルト、君凄く悔しそうな顔してるけど本当にいいの?」
声を掛けてきたリヒャルトの表情は苦言を申していた。
「本当は俺、独り占めしたい・・・めっちゃ嫉妬深いから。でも確かにユリウス様が言った通りリリーの性格上どっか行っちゃうくらいなら確実に隣にいられる方法をとる」
「うん。交渉成立だねこれからよろしく」
ギュッと握手を交わし契約書に署名したリヒャルトは直ぐにエレンの隣へ行き絵姿に目を通し感動した。次いでノエルも契約を結び絵姿を見る。
「残る二人は高位貴族だからやっぱり難しいよね」
公爵家のルーク。侯爵家のウィルフレッド。
しかもルークは長男だ。二人の立場上難しく、今すぐ決められる決断ではないだろう。眉間に皺を寄せグッと堪える二人。酷な事を告げてしまったとユリウスも顔を歪めコーヒーを飲んだ。
「リリーにはこの事秘密にしてね」
コンッ コンッ
個室の扉が叩かれた。ユリウスが扉を開けると不安そうに見つめてくるリリーの姿。
「・・・もう大丈夫?」
「うん。ノエルとも解決したよ」
そうなの?
ユリウスの背後にいるノエルを見ると彼はエレンとリヒャルトと共に一冊の本を夢中で読んでいた。こちらに気がついたノエルはリリーに向かって駆けつけると、ギュッと抱きしめリリーの頬にキスをする。
「さっきは困らせてごめんなさい」
「落ち着いた?」
「はい!絶対幸せにしますね」
「・・・?・・・?・・・」
31
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説
【R18】転生先のハレンチな世界で閨授業を受けて性感帯を増やしていかなければいけなくなった件
yori
恋愛
【番外編も随時公開していきます】
性感帯の開発箇所が多ければ多いほど、結婚に有利になるハレンチな世界へ転生してしまった侯爵家令嬢メリア。
メイドや執事、高級娼館の講師から閨授業を受けることになって……。
◇予告無しにえちえちしますのでご注意ください
◇恋愛に発展するまで時間がかかります
◇初めはGL表現がありますが、基本はNL、一応女性向け
◇不特定多数の人と関係を持つことになります
◇キーワードに苦手なものがあればご注意ください
ガールズラブ 残酷な描写あり 異世界転生 女主人公 西洋 逆ハーレム ギャグ スパンキング 拘束 調教 処女 無理やり 不特定多数 玩具 快楽堕ち 言葉責め ソフトSM ふたなり
◇ムーンライトノベルズへ先行公開しています
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ドS騎士団長のご奉仕メイドに任命されましたが、私××なんですけど!?
yori
恋愛
*ノーチェブックスさまより書籍化&コミカライズ連載7/5~startしました*
コミカライズは最新話無料ですのでぜひ!
読み終わったらいいね♥もよろしくお願いします!
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
ふりふりのエプロンをつけたメイドになるのが夢だった男爵令嬢エミリア。
王城のメイド試験に受かったはいいけど、処女なのに、性のお世話をする、ご奉仕メイドになってしまった!?
担当する騎士団長は、ある事情があって、専任のご奉仕メイドがついていないらしい……。
だけど普通のメイドよりも、お給金が倍だったので、貧乏な実家のために、いっぱい稼ぎます!!
5人の旦那様と365日の蜜日【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる!
そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。
ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。
対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。
※♡が付く話はHシーンです
【R18】寝取られ願望がある旦那様のご要望で、年下の美しい国王陛下に抱かれることになった夜。
yori
恋愛
「お願いだよ、ミア。私のために、他の男に抱かれてきておくれ」
侯爵夫人であるミア・ウィルソンが、旦那様にお願いされて、年下の美しい国王陛下と閨を過ごすことに。
そうしたら、国王陛下に指示されて、色んな事に目覚めてしまうそんなお話。
※完結済み作品「転生先のハレンチな世界で閨授業を受けて性感帯を増やしていかなければいけなくなった件」の数年後、ルーク王国が舞台。ですが、登場人物とか出てこないので、読まなくても全然大丈夫です。
※終始えっちしています。何でも許せる方のみ読んでください……!
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる