【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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第三章

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 あの日直ぐに彼女の家へ訪ねたが扉が開くことはなかった。その日以降彼女を訪れるが会えない日が続いた。昔彼女の笑顔が忘れない日もあったが、今ではあの泣き顔が脳裏に焼き付き離れない。

 影の訓練が唯一彼女と接せる機会だった。
だが彼女は訓練前も訓練後も姿を見せない。
訓練中は表情で必要最低限の言葉だけ話す。
私語を話すと無視されてしまう為彼らは関係のある事だけを積極的に話すが、淡々と無表情で受け答えするだけの彼女の態度に胸が抉られた。

他の影達もリリーが五人を避けているのを察し何も言ってこない。むしろ面白がって影達は積極的に五人からリリーを遠ざけた。そしてリリーが居ない時だけ話しかけてくるようになった。

そんな日が続き彼らのやる気スイッチに蓋がされ、生気が感じられないくらい、彼らの元気がなくなった。究極の撫で肩ですか?と質問されるくらい肩を落とし膝を抱えて項垂れている。

今日も影の訓練があり、時間より早めに来たがリリーと会えずどんよりする五人の近くでシルヴィが欠伸をしながら体を伸ばした。

「・・・ねえ、リリー何か言ってかなった?」

リヒャルトの問いにシルヴィは腕を伸ばしながら横目で彼らを見てニヤリと笑う。

「知らなーい。僕そこまで嫌われたことないし」

グサッと五人の心臓に矢が貫通した。
そう、シルヴィの言う通りリリーに嫌われてしまった。あからさまに避けられている。

「僕的に好敵手がいなくなってラッキー♪嫌われてくれてありがとー!って感じ」

グサッと二本目の矢が刺さった。
鼻の奥がつんとし目頭が痛くなる。
五人は影の室内訓練場内で悲壮感を漂わせながらゴロンと転がった。


 リリーを泣かせてから一ヶ月が経ち、彼らはジョンに呼び出された。執務室の中で一列に並ぶ元気のないイケメン部下の様子を見たジョンは頬杖をしながらトントンと机を叩いた。

「君達もうすぐ昇格試験があるってのにそのやる気のなさはどうした事かね。まだリリーと仲直りしてないの?」

シュンと落ち込んだ五人を見てジョンは彼らに追い打ちをかけた。

「リリーなら大丈夫だよ。ユリウスとデートを重ねて良い感じだから」

落ち込む彼らの表情から血の気が引き面白がるジョン。

「まあでもリリーに結婚は早いって言っておいたから今はデートだけだよ。ユリウスは初だからまだ手出ししてないはずだし。でも君達にはどうでもいい話だったね!とりあえず師弟関係良好の為に仲直りしたいって感じかな?」

グッと眉間に皺を寄せ黙り込む五人。

・・・嫌だ。リリーが自分以外の男のものになるなんて考えたくもない。

ジョンはクスクスと笑って五人にアドヴァイスを送った。

「リリーはね逃げ足早いから、彼女が逃げるより早く捕まえちゃいなよ。あの子受け入れ体質だからちゃんと謝れば許してくれるんだからさ」

リリーより早く動いて彼女を捕まえる。
次の訓練後全員でリリーを捕まえる計画を立てた五人であった。



***


 影の野外訓練日当日。この日彼らはいつもよりも気合いが入っていた。今日こそはリリーを捕まえる。その思いから頑張って鬼のような指導の訓練をこなした。

そして訓練後、リリーが姿を消すよりも前にノエルが指をさし大声を上げた。

「リリーあそこに大量の金貨が!」

え?どこ?

思わず動きを止めノエルが指さした方向を見るが何もない。だがその一瞬の隙にウィルフレッドが背後から抱きつきリリーの身動きを取れなくした。もがくリリーだったがウィルフレッドに強く抱き締められ二人して地面にお尻をついた。肩が濡れている事に気付き固まるリリー。ぐすぐすとウィルフレッドが泣いているのだ。

「ウィル?」
「避けないで。嫌わないでくれ」

泣き虫ウィルの再来である。
先程大声を出したノエルがリリーの前へ回り込み目線の高さを合わせた。目が合うとギョッとする。なんとノエルも泣いているのだ。ガバッと前からノエルに抱きしめられた。

「ごめんなさい。リリー、ごめんなさい!」

物凄い罪悪感がリリーを襲った。
彼らの言葉に傷ついたのは事実だが、ここまで彼らを傷つけるつもりはなかった。ただ無視をし続けたら気まづくなり、終わりが分からなくなってしまっていたのだ。

「ごめんね」
「リリー傷つけてごめん」
「すまなかった。反省している」

エレン、リヒャルト、ルークが左右にやって来ると彼らはリリーの手を握ったり頬を撫でたりしながら謝った。

リリーは自分の行為が子供だったと思い、ため息を吐いた。

「・・・私も大人気なかった。ずっと無視し続けるのも疲れちゃった。ごめんね」

「それじゃあ・・・仲直り成立?」

「うん」

心配な面持ちでリリーを見つめたリヒャルトだったが彼女からの許しを得ると嬉しさのあまりに彼女の唇にキスをした。エレンも直ぐに変わって欲しかったが我慢出来なくなり彼女の頬にキスを落とした。だがやはり頬じゃ物足りず自身に顔を向かせ唇にキスをしてリリーを感じだ。

「次は私だ」

顎を持ち上げて上を向かせたルークは味わうようにゆっくりと丁寧にキスをした。久しぶりに感じだリリーの感覚にうっとりと目を細め甘い視線を彼女に向ける。

「次は僕ですよ!」
「俺だ」

ノエルとウィルフレッドがリリーを取り合いながらキスをした。

もっと君に好かれたい。
君に触れたい。
愛おしすぎて抑えられない。

されるがままになっていたリリーだったがある事を思い出し五人に真剣な顔を向ける。

「・・・皆の言葉が正しかった。普通の人は色んな人に触られないみたい。子供の頃から当たり前だったから知らなかった。だから本で勉強したの。私からも触らないようにするから皆も仕事以外で触らないで?」

ピタッと動きを止めてしまった五人。
ショックを受け“触らないで”の言葉が頭の中でループされる。

リリーはあの時彼らに言われた言葉がショックで普通は何だと考えた。子供の頃から影として娼婦として働いていた彼女にとって他人に触れられる事に対し何の疑問がなかったのだ。周りも平気で裸になったり触れ合ったりしている大人を見て育った為それが当然なのだと思っていた。だからリリーは本屋へ行き“これが一般常識!”“コミニュケーション能力向上方”等様々な本を読んで勉強した。

無反応な彼らを不思議に思い見上げるとリリーはギョッとし瞠目してしまう。五人全員の瞳から涙が溢れていたのだ。あのルークまでもが泣いている。

どうして?彼らの言った通りにしようとしてるのにどうして泣いてるの?目に何か入ったの?

「・・・俺に触られるの嫌?嫌いになった?」

傷ついた顔をしたリヒャルトがリリーを見つめた。その瞳はうるうると涙が溜まっており、瞬きをすると流れ落ちそうだ。リリーは慌ててリヒャルトの目に手の平を当て涙を拭った。

「違う。でもよく思わない人が殆どだって本に書いてあったから」

顔に触れているリリーの手をギュッと握り締め体を引き寄せると彼女の胸元に顔を埋める。

「リリーに触らないと死んじゃう病だから無理」

・・・そんな病気あるわけない。
そう思うが顔を埋めたまま離さないリヒャルトが何だか可愛く思えて来た。すぐ横でエレンが膝立ちをしリリーの手を握るとその手を自身の頬に寄せた。

「僕もその病気だよ。しかも重症なんだ。もうリリーを傷つけないと約束する。だからそばにいさせて?今まで通り触れ合わなきゃ死んじゃうよ」

「触らないでなんて二度と言わないでほしい」

ギュッと反対の手をウィルフレッドに握られリリーは戸惑った。

「でも私普通じゃないんでしょ?今からちゃんとしとかないと変な人って思われちゃう」

落ち込むリリーの頭をギュッとノエルが抱き締めた。

「違う!リリーはそのままでいいんです。僕が悪かったんです」

「・・・私のただの嫉妬だ。正気じゃないと言ったのも真に受けないで欲しい。すまなかった。貴様が許してくれるまで謝り続けるから今まで通り接してくれ」


もう五人の事は許しているがそれでは今の自分から変わる事は出来ないだろう。どうしようと首を傾げたリリーを見てルークが眉を寄せ顔を自分に向かせた。

「それなら私達と影以外の男に触れない。肌を見せないと決めるのはどうだ」

「ユリウスもダメ?」

「・・・あの方も特別に許可しよう。だがそれ以外の男はダメだ。そう決めれば変わり者だと思われないだろう・・・たぶん」

苦渋の決断だがなと言ったルーク。
ふむ。変わり者だと思われないならいいだろう。リリーは納得し彼らに向かって微笑んだ。

「わかった。皆とは今まで通り接する。触るし触られる。これまで通り、ね?」

だから泣かないでと落ち着かせるために笑った。体から顔を離し見上げたリヒャルトの表情が叱られた後に許しを得た子供の時のナターシャに似ていて微笑む。

礼を言おうとしたリヒャルトよりも先にウィルフレッドが動いた。彼は仲間からリリーを奪うと彼女を地面に組み敷き、奪うように唇と唇を重ねたのだ。

「ん・・・ウィル・・・?」
「不足している」

舌を絡め離すと彼の舌はリリーの首筋を舐めた。ピクッと反応するリリーの頭をエレンが優しく撫でる。

「次の休み一緒に過ごそう?」

リリーはウィルフレッドからの刺激に耐えつつもエレンを見上げた。

「ユリウスとデートするの」

「・・・へえ。どこに何時集合?」

「噴水広場に十一時」

「そうなんだ。じゃあ今夜泊まるね」

頷いたリリーにキスをしたエレンは舌も絡ませ彼女を堪能し始めた。

「ちょっと!俺もしたい!」
「僕もです!いつも二人ばかり狡いです!」
「少しは自制しろ!」

ウィルフレッドは彼らを無視してリリーの襟の布を捲り鎖骨下にキスをして、ちゅうと吸い上げた。赤い蕾の跡が出来満足そうに微笑む。その跡を見た四人は自分も付けたいと彼女の服に手をかけた。服を脱がし始めた五人に驚いたリリーはもがいた。先程まで沢山汗をかいたし汚いから見られたくない。

ゲシッとシルヴィがまとめて彼らを蹴飛ばしリリーを救った。彼はリリーをお姫様抱っこの状態で抱き上げると額に青筋を浮かべて彼らを見下ろした。

「仲直りした瞬間に襲わないでよね!たった一ヶ月なのに飢えすぎだっつーの!」

リリーを奪われた五人はガルルルと険しい表情をしリリーに腕を伸ばすがひょいっとシルヴィが避けた。

「「「そのウサギ返せ!」」」

「オオカミかよ!」

ウサギを抱えて走るキツネとそれを追いかける五人のオオカミの追いかけっこが始まった。


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