【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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第三章

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 ジョンとリリーの激しい攻防戦が繰り広げられている。剣戟の音が響き渡り会場全体が二人の見惚れる程の強さに興奮していた。両刀使いのリリーは素早い動きで攻撃をしかけ、軽やかな身のこなしでジョンからの攻撃をかわす。

かっこいい・・・!!

二人の戦いを見て大勢の騎士達が憧れを抱いた。

リリーが素早い攻撃を仕掛けそれをジョンが避けたが、彼のお尻の布が切れ、パンツが見えてしまった。

リリーは両刀を小脇に抱えると無言でジェスチャーをする。

パン・ツー・まる・見え

オマケで最後にあっかんべーをしてジョンを揶揄った。プツンと頭の糸が切れたジョンはリリーに笑顔を向けた。

「上等だよリリー。君の服もボロボロにしてあげる」

あ、怒らせちゃった。
リヒャルトの服がダメになると危惧したリリーはクルクルと上空へ回転しながらリヒャルトの前で着地をし、素早く上着を脱ぎ彼に着せた。

「リリー服着なきゃ!」

再びキャミソールとホットパンツ姿になってしまったリリーはリヒャルトの声がけを無視し、戦いが楽しいのか口角を上げジョンに挑む。

激しい戦いを繰り広げジョンの一撃が石床を砕いた。破片が飛び交い周囲の騎士達に当たりそうになるのを素早い動きで防ぐリリー。ピンクアメジストの髪が揺れキラキラと輝きを放ち騎士達を魅了していく。

お互い擦り傷だらけで服もボロボロだ。ジョンに至ってはパンツ一丁になってしまい左のお尻が見えてしまっている。リリーもまたほぼ裸の状態で局部や守るべき箇所だけかろうじて残っているくらいだ。だがもうすぐで胸の蕾が顕になってしまう。見えるか見えないかの瀬戸際に視線を外す事が出来ない騎士達はハラハラとしながらも見たいという緊張感からかドキドキしていた。

だがこの状況を数名の騎士達が許す筈がない。

ユリウスとオリヴァーがジョンの動きを止め、ウィルフレッドやエレン達がリリーの動きを止めた。

五人は直ぐにリリーを囲い周囲から見えなくし当初彼女が着ていたワンピースを頭から被せた。五人の間から服を着たリリーが現れるとあからさまに残念がる周囲の騎士達。その姿を確認したユリウスとオリヴァーはほっとため息を吐きジョンから離れた。

カツカツと近付き合ったリリーとジョン。
てっきりお互い良い戦いだったと褒め合うのかと思ったが、ジョンがリリーの口の中に両手の親指を入れ左右に引っ張った。

「よくも俺の服ダメにしてくれたね」

お互い様だろうとリリーも負けじとジョンの頬を引っ張った。

「このッじゃじゃ馬娘!良い男紹介してあげてる兄に向かって生意気な。君達本当にこの子でいいの!?」

「ひゃれひょひゃにょんひぇひゃい!」
(*誰も頼んでない!)

子供じみた二人の喧嘩にため息を吐いたルークがジョンからリリーを引き剥がした。

「はぁ。じゃあ今から自由時間って事で」

良い運動をしたジョンとリリーは一緒にお茶を飲むべくベンチへ向かった。


 お茶を飲み和んでから暫くが経った頃、ジョンがユリウスを連れリリーの前に現れた。ちなみに彼はまだボロボロのパンツ姿のままだ。隊長達が服を着てくださいと言っていたのだが本人のジョンが全く気にしないのでこのままで居る。

「リリーちょっとこっちにおいで」

ニコッと笑顔で言われたリリーは大人しく二人について行った。とは言っても休憩していた場所からほんの少し移動しただけで周囲には他の騎士達の姿が見える。なんなら会話が聞こえるくらいの距離に五人とオリヴァー達がこちらの様子を伺っていた。

「それじゃあちゃんと彼の話を聞いて決めるんだよ?」

ジョンはリリーの頭を撫でながら言い聞かせると、少しだけ離れ腕を組みながら観察し始めた。とんだ公開処刑と言える公開告白をする羽目になってしまったユリウスだったが、彼は緊張からか周りのことを考える余裕がなかった。

固唾を飲んだユリウスは緊張の面持ちでじっとリリーを見つめた。

「君を名前で呼ぶ権利を僕にください」

リリーは首を傾げた後に頷いた。そういえば彼はお昼の時にもリリーの名前を呼びかけてたのに、最後までは呼ばなかったなと思い出す。真面目な人だ。リリーから許可を得たユリウスは嬉しいのかあからさまに表情が和らいだ。その喜ぶ仕草がナターシャみたいだと妹を思い出したリリーは優しく笑った。

少し遠くからその笑顔を見たオリヴァーの胸が抉られた。もう自分にはあの笑顔が向けられない・・・。

ユリウスは片膝を地面につき、リリーの手を優しく握った。

「初めて会った時からずっと貴女が好きです。僕と結婚を前提にお付き合いして下さい!」

「いいよ」

「も、もちろんまだ僕のことを知ってもらえてないからこれから時間をかけて好きにさせ・・え?」

断られると思い込んでいたユリウスは諦めたくなくて言葉を続けた。だがまさかのOKに唖然としてしまう。

「普通に付き合うのと結婚を前提にって何が違うの?」

「・・・えと、僕は君とずっと一緒にいたいから結婚したいけど、まだ僕のことを知らないだろうから知って好きになってほしくって・・・・・・つまり、婚約期間のことかな?」

「・・・わかった。結婚しよう」

「え?え?嬉しいけど・・・自分で言うのもなんだけど僕は執着心が強いし嫉妬もするよ?夫以外には君の肌を他の男に見られたくもないし触られたくもないんだ。後悔してほしくないからどのくらいか見極めてもらってそれでも良いならと思うんだけど・・・一生離さないと思うし」

「結婚したら他の男に触られないようにするね。・・・仕事辞めたら王都から離れた場所に家があるからそこに住むの。落ち着いたら一緒に暮らす?」

「・・・僕の部屋もあるのかな?」

「大丈夫。部屋数いっぱいあるしお風呂も広いよ」

「嬉しいな。寝室は一緒に使おう。子供が増えても安心だね・・・あれ?こんなに幸せがトントン拍子でいいのかな?」

これは夢か?と自分の頬を抓ったユリウス。やっぱり痛いやと涙目になりながら笑う彼に微笑むリリー。


そんなリリーを見て青ざめる男達。


ふざけるな。今まで自分がどんな思いで君の近くに居たと思う。どれ程好きで、ただそばに居たいと願っていただけなのに、生きている君の隣に居られるだけでいいと思っていたのに、こんなにもあっさり他の男と結婚するとか言うなんて、散々いろんな男に触れられるのを我慢していたのに、それもしないって簡単に言うなんて、大好きだから、大切だからこんなに我慢してるのに・・・信じられないッ・・・許せない!!!


五人は真顔でリリーに近づくと彼女を見下ろし棘のある言葉を送った。

「ふざけるのもいい加減にしなよ」
「結婚するとかそんな簡単じゃないから」
「色んな男に触られといて今更一人とか無理でしょ」
「異性の好きがわからないくせに結婚など口にするものじゃない」
「ユリウス様こいつはぶっ飛んでるんだ正気の女を探すべきです」

その後も次々とリリーの文句を言い続ける五人。リリーは次第に顔を俯かせた。

どうしてそこまで言うの?
まるで自分には幸せになる資格がないばりに話す五人にリリーの自尊心が削られる。


私は結婚しちゃいけないの?
誰かと付き合っちゃいけないの?
恋人作っちゃいけないの?
幸せになっちゃいけないの?


「おい!やめるんだ!!」

オリヴァーの声が響きハッとなった五人はそこでやっとリリーが泣いていることに気付いた。リリーの大きな瞳から大粒の涙が溢れ流れている。ポロポロと次から次へと止まることなく。その表情を見て息が詰まったユリウスが咄嗟にリリーの腕を引き寄せ抱き締めた。

「大丈夫。大丈夫だからね」

もっといい言葉が出ればいいのに言葉が見つからない。ただ泣き止んで欲しくて、自分が告白したせいで彼女が傷ついてしまった事が苦しくて背中を撫で続けた。

でも、腕の中からリリーが消えてしまった。

「リリー・・・?」

姿が見えなくなってしまった彼女を探すがどこにもいない。

「なに俺の妹泣かしてくれちゃってんの」

ジョンは可愛い部下に殺気を放ち睨みつけるが彼らの表情を見て盛大なため息を吐いた。

五人は絶望的な表情で立ち尽くしていたのだ。


違う。泣かせたいわけじゃなかった。
ただもっとちゃんと考えて選んで欲しかった。
簡単に決めて欲しくなかった。
相手が自分じゃないことが腹立たしくて嫉妬して彼女を傷つけてしまった。


その日以降、リリーは五人を避けるようになった。

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