【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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第二章

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 リヒャルトの部屋へ戻った騎士達はこの後彼の部屋で酒を呑む為に食べ物や飲み物を持参しようと各自自室へ一旦帰った。現在リヒャルトの部屋には彼のシャツを着たリリーとリヒャルトの二人きり。前ボタンを止めシャツの袖を捲りワンピース仕様となった彼女の姿をリヒャルトは見続けてしまっている。

(・・・かわいい)

「今日のデート楽しかった」

素直にデートの感想を言ったリリー。
リヒャルトは大したことしてないじゃんと微笑みながら彼女の頭を撫でた。それでも楽しかったと気持ちを伝えたくて背伸びをした彼女は彼の唇に軽いキスをした。

心臓の音が速くなるのを感じる。

リヒャルトはそっと彼女の頬に手を添えて今度は自分から唇と唇を合わせた。優しく触れて離し、角度を変えてゆっくりと近づけ触れた。少しだけ舌を出しゆっくりとリリーの下唇を舐める。

あけて?

その気持ちが伝わったのか彼女の口が少しだけ開いた。ゆっくりとその隙間に舌を入れ直ぐに触れた彼女の舌を絡める。

やばい。キスだけなのに気持ちいい。

リリーは顔を離すとリヒャルトの手を両手で握りティアラに教わった技を仕掛けた。

「リヒャルトえっちしよ?」
「え・・・」

まさかの申し出に固まってしまったリヒャルト。リリーはそんな彼をジッと見つめ視線を落とした。

「やっぱりヤダ?」

「嫌じゃないけど・・・後悔しない?」

頷いたリリーにリヒャルトはギュッと彼女を抱き締め耳元で囁く。

「じゃあ、皆を追い出してからね」



 ベッドに腰掛け膝の上にリリーを背面で座らせ仲間達が来るのを待つリヒャルト。うるさい心臓を落ち着かせる為にリリーの肩に額を当て息を深呼吸を繰り返している。

(落ち着け俺。リリーは初体験を済ませたいだけで俺の事好きじゃないんだからのめり込むな。・・・処女だから優しくしなきゃ。絶対嫌な思い出にさせない。五回くらい指で中イキさせれば解れて痛くないんかな・・・中出しは・・・途中で聞こう。リリーはまだ仕事続けたいかもだし。うん、そうだよな。えと、隊長クラスになれば養えるくらい稼げるよね?次の昇進試験いつだっけ?今でも贅沢しなければ養えるけど・・・いやまずはどうやって離れさせなくする?めちゃくちゃ気持ちよくさせて俺の事しか考えなくさせて、中出ししてって言わせるしかない?でも嫌がる事はしたくないし大事にしたい。まずは自分の気持ち伝えなきゃだよな・・・うわっめっちゃ恥ずかしい!)

うるさい心臓を落ち着かせようとしているのにどんどん煩くなっていく。リリーを抱える腕に力を込めグリグリと肩に付けた額を擦るリヒャルト。

コンッコンッ

部屋の扉がノックされた。入室を促すと仲間の四人が入って来る。その手にはワインボトルや簡易軽食がある。彼らはバックハグをされている状態のリリーと彼女の背後で顔を俯かせているリヒャルトを見て首を傾げた。

何があったんだ?

だがリリーは瞳を輝かせて四人を見上げた。これから自分は初体験出来るんだぞと興奮している。

「リヒャルトとえっちするの」

「「「・・・・・・はあ?」」」

全く何を言っているんだか。リヒャルトが頷くわけないだろうと肩を竦めた彼らだが相変わらず顔を上げないリヒャルトを見てもしかしてと不安になった。

「そういうわけだから今日は解散って事で。ごめん、呑みはまた今度しよ」

キュッとリリーを抱く腕に力を込めたリヒャルトが耳を赤くしながら仲間たちを見上げた。信じられないと驚愕する者。眉間に皺を寄せる者等彼らは様々な反応をしている。

エレンがリリーの腕を掴みリヒャルトから離そうとその腕を引っ張るが、リヒャルトによって動かすことが出来ない。

「その話を聞いて大人しく帰ると思ったの?リリーはリヒャルトじゃなくてもいいんでしょ。僕が相手になるから部屋移動しよ」

ピクッと反応したリヒャルトは顔を上げ鋭い目付きでエレンを睨んだ。

「・・・エレンいつも譲ってくれるじゃん。今回も譲ってよ」

「僕にも譲れないものはあるよ。リヒャルトこそいつも優しいんだし譲ってよ」

「むり。これだけは譲れない」

仲が良いはずの二人がお互い鋭い視線をぶつけ合っている。彼らの様子にルークとノエルはアワアワと戸惑い焦る。スっとウィルフレッドがリヒャルトとリリーの前でしゃがみ込みリリーを見上げた。

「君は俺達の仲を壊したいのか?」

そんな事あるわけないだろうと顔を横に振ったリリーは考えた。いかに自分が我儘だったかを認めしゅんと視線を落とす。

「・・・ごめん。初めての人は優しい人がいいって思ってた。貴方達が優しいの知ってるから甘えちゃった。ごめんなさい」

素直に謝罪したリリーに対しウィルフレッドは優しい眼差しを向けた。だがリリーは顔を上げ何かを決意したのか勢いよく立ち上がった。

「やっぱりその辺の男にする!」

「「「なんでそうなるんだよ!!」」」

全員からツッコミを入れられたリリーはリヒャルトとエレンによりベッドの上で正座を強いられる。大人しくちょこんと正座したリリーは仁王立ちをして見下ろしてくる二人から叱責をくらった。ガミガミと小姑の様に怒る二人に対しリリーはどうしてそんなに怒るのか、そしてなぜ先程の様に喧嘩になるのか不思議だった。

そういえば昔ジャックが処女は価値が高いと言っていた気がする。もしかしたら処女を相手にするのは男からしたら凄く気持ちのいい事なのかもしれない。だから取り合いになるのかと自分の中で解決させたリリーはパンッと手を叩いた。

「それじゃあ、皆でする?」

全員とすれば取り合いにならないだろう。喧嘩が起こらず平穏に解決出来ると思ったリリーだったが先程まで勢いよく小言を続けていたエレンとリヒャルトがピタッと口を閉じた。その表情は明らかに怒っている。

あれ?間違えた?と二人の剣呑な雰囲気にたじろいだリリーは眉を八の字にし二人を見上げた。

「人の気も知らないで」
「何言ってくれちゃってんの」

「ッーー!?ーー!?!?」

リヒャルトがリリーのこめかみに拳を当て全力でグリグリ攻撃をした。エレンはリリーの口の中に両手の親指を突っ込み、全力で彼女の頬を横に引っ張った。そこには今迄振り回されていた分の怒りも含まれている。急激な痛みに襲われたリリーは逃げようと体をバタバタさせるが頭と顔が痛すぎてもがく事しか出来なかった。

暫く罰を与えられやっと解放されたリリーの瞳には涙が溜まっている。そんなリリーをそっと抱えたウィルフレッドが床に胡座をかき、その上にリリーを座らせた。

「今のは君が悪い。今日は誰ともしないと約束するんだ」

大人しく頷いたリリーを見たウィルフレッドは優しく微笑んだ。

「良い子だ。ほら、二人に何て言う?」

エレンとリヒャルトを見上げたリリー。二人はまだ怒っているのか眉間に皺を寄せ腕組みをしながら見下ろしてくる。未だ涙が溜まっている瞳で見上げたリリーはまるで子犬が叱られ、怒らないでとお願いをしている様だった。

「ごめんなさい」

「「・・・はあ~。」」

物凄く深いため息を吐いたエレンとリヒャルトはもういいよと言ってくれた。やっと状況が落ち着いたことに安心をしたルークとノエルは安堵のため息を吐くとウィルフレッドとリリーの両サイドに座り陣取る。

向かいに座ったリヒャルトとエレンは自分達の間の床を叩いてリリーにアピールをした。

「ウィルの足痺れるからリリーこっちに来なよ」

大人しく言うことを聞き動こうとしたリリーの体をウィルフレッドが止めた。

「俺は構わない。先程まで喧嘩をしていたんだ。仲良くなる良い機会だろ?」

ニヤッと嫌な笑顔を浮かべたウィルフレッド。
エレンとリヒャルトはお互い目を合わせるとバツが悪そうに視線を逸らし大人しく隣りで座ることにした。

 その後暫く酒を飲みながらカードゲームを楽しんだ。いつの間にかウィルフレッドの腕の中で眠ってしまったリリーをどうしようか悩む騎士達。リヒャルトがベッドに寝かせなよと提案したのだが彼らからの許可がおりない。

「僕の部屋に連れてくね」

立ち上がったエレン。その手を掴んだリヒャルトがエレンの腕を引っ張り、再び彼を座らせた。

「エレンはダメだよ。その辺の男で済ませるならいっそとか言って寝てるリリー犯しそうだし」

「・・・・・・凄い。よくわかったね」

ニコッと笑ったエレンに対しマジかよと顔を歪ませたリヒャルト。実際エレンは今夜リリーとしてしまおうと思っていた。誰かに先起こされるくらいなら自分がしてしまおうと。エレンは流石に付き合いが長いだけあるとリヒャルトの考えに感心する。

「リヒャルトもダメだよ?」

「さすがに寝てる子にしないよ・・・・・・」

いや、いっそしてしまって既成事実だとか言って離れられなくするか?と考えてしまったリヒャルトは顎に手を当て斜め上を見た。

そんな二人を他所にすっとリリーを抱えたまま立ち上がったウィルフレッドは上着を彼女に被せ、姿が見えないように隠した。

「行くぞ」

「行くってどこに?」

「寮の中で一番安全な場所だ」

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