【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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第二章

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 へにゃっと笑ったリリーをぎゅっと抱き締めたノエルは良かったと呟きながら彼女の首筋に顔を埋めた。そんな彼の頭を撫でながら彼のノートに“人に嫌われる事が苦手な可愛い臆病者”
と追記しようと決めたリリー。

あ!と思い出した彼女はノエルを体から離し首を傾げながら見下ろすノエルを真っ直ぐ見つめた。

「さっき何でも言う事聞くって言った」

「・・・はい。言いました」

「皆の記憶から私がお漏らししちゃった記憶消して?殴ってでもいいから」

「「「それは無理」」」

全員に否定をされ「え!?」と驚いたリリー。まさかのノエルまで否定をした。無理もない。彼らにとっては人のお漏らし現場を初めて目撃してしまった。しかもあの時の状況とその相手がリリーであるという事から忘れられるわけが無い。

「それ意外でなにかありますか?」

うっと考えたリリーは近くにある枕を抱え、それに顔を埋めた。何を言い出すのか様子を見ていると次第に彼女の耳が赤くなっていく。

「・・・じゃあ、またしてくれる?部屋じゃ汚れちゃうから風呂場かホテルとかで」

埋めていた枕から顔を上げチラッとノエルを見るとノエルは顔を真っ赤に染めていた。視線が合うとコクコクと頷いている。

よかった。
またあの気持ちいいのしてもらえる。

リリーは恥ずかしいけどあの快楽が忘れられなかった。もう一度して貰えると決まり嬉しくなり抱いていた枕に向かって微笑む。

だがその枕をウィルフレッドに取られてしまった。見上げるとベッドのすぐそばでウィルフレッド、エレン、リヒャルトが仁王立ちをし見下ろしている。

「あれくらい俺にも出来る」
「あんなん俺も余裕だし」
「して欲しかったらいつでも相手するよ」

堂々と宣言する三人にリリーは流石だと心の中で拍手を送った。モテる彼らの経験は唯ならぬものだろう。性欲が溜まったら是非お願いしようとリリーは彼らに小指を突き立てた。その小指を見ながら首を傾げた三人。不思議そうに見つめている。

「約束。お願いしたらしてね?」

リリーから期待の眼差しを受けた三人は深いため息を吐きながらその小指に自身の小指を絡めた。

すると今まで黙って聞いていたルークが横になったままリリーの腕を引き寄せ顔を近付けさせた。

「貴様の貞操観念はどうなっているんだ。先程まで泣いていたくせに。自分だけ何もしないのが馬鹿らしくなった。これからはしたい時にキスをするからな。挨拶と同じ頻度でも文句言うなよ」

意外な発言をしたルークに困った顔を向けたリリー。自分にだけその表情を向けて来た彼女に対し眉間に皺を寄せたルークはグッと歯を噛み締めた。所詮自分は彼女に好かれていない。他の仲間と違い親しくなろうとしなかったから。

だが次のリリーの言葉を聞いて険しい表情が和らいだ。

「任務中はダメ。仕事の時以外ならいいよ」

「・・・それならここに頻繁に来ることになるぞ」

「来たい時に来ればいい」

「貴様のプライバシーはどうなる」

よかった。自分だけ拒否をされた訳じゃないと分かったルークは掴んでいたリリーの手を緩めた。

「影の仕事はいつ死ぬか分からない。明日死ぬかもしれない。会える時に会うことは悪い事じゃない」

実際に後悔する仲間を見てきたリリー。
影の命は時限爆弾と一緒。
いつか死んでも、あの時会っていればと後悔するよりは会える時に会ってくれる人と一緒にいる時間を大切にしたいと思っている。

ぎゅっとリリーの手を再び握ったルークは眉間に皺を寄せリリーを見上げた。

「なら会うぞ」

頷いたリリーはトイレに行くためベッドを降りた。その間にベッドから降りたノエルは服についたシワを伸ばす。

「ノエル!」

突然リリーが大きい声を出しながら戻って来たのでビクッと肩を揺らした。彼女はノエルのそばに近付くとキッと彼を睨みあげた。何があったと動揺する騎士達。ノエルもおどおどしている。

「ノエル吸いすぎ!内出血になっちゃった。次はあんなに吸わないで」

口を開け舌を出したリリー。赤い舌先が赤紫色に変色している。おしっこを漏らしそうになりイヤイヤと顔を振った時、離すまいとノエルが強く吸ったせいで出来てしまったのだ。

ノエルは自分を見上げて見せつけるように出されたリリーの舌を指で触った。

「本当だ・・・ごめんなさい。これは痛い?」

くにくにと触るノエル。リリーは溢れてくる唾液の居場所がなくなり彼の手を離そうと、彼の腕を掴み押し返そうとするが力が強くて離すことが出来ない。

「いひゃうないよ、ひゃなひへ」

口内を刺激されどんどん唾液が溢れていき遂には口の端から溢れてしまった。すかさずノエルがそれを舐め取りそのままキスをして来た。じゅるじゅるとリリーの唾液を飲み込むノエル。リリーはその行動に驚き彼の胸を叩き止めるように説得する。助けてくれたのはリヒャルトだった。

「もう!ノエル狼化しすぎ。散々苛めたくせにまたするとかどうかしてる。リリー舌見して・・・うわ、本当に内出血してる」

「やり過ぎだ」

リヒャルトとウィルフレッドがノエルを叱った。怒られたノエルはシュンと肩を落としブツブツと言い訳をしている。

だってリリーが可愛いから。頬を膨らませて見上げてくるリリーが可愛いから。また次もあるって言われているようで嬉しかったから。


 その後ベッドで眠ってしまったリリー。
帰ろうとした騎士達だったが、帰ることがだるくなり結局泊まることにした。

ベッドで眠ったのはリリーとリヒャルトとルークの三人。その他はソファで寝ている。深夜過ぎに喉が乾き目が覚めたリリーがキッチンへ入った。戻ろうとしたらソファで横になり眠ていたと思っていたウィルフレッドと目が合った。

彼は無言のまま見てくるだけ。
リリーはどうしたのだと首を傾げ彼に近付いた。

「眠れないの?」


「・・・君は・・・どれ程俺を知っている?」


突然の問いに困惑したリリー。
何かあったのかとウィルフレッドを見つめた。

ウィルフレッドは先程まで夢を見ていた。
両親や周囲から愛され大切にされる兄妹。
自分が手を伸ばしてもその手は誰にも掴まれる事なく宙を浮く。

そんな虚しくなる夢を見てしまった。
貴族パーティーの時にリリーが語ったエレンの人となりを聞いて羨ましいと思ってしまった。自分も誰かにあの様に見て欲しかった。

俯いたウィルフレッドの頭に手を置いたリリーは母親が子に愛情を注ぐように優しく頭を撫で、頬を親指で撫でた。これはナターシャが落ち込んでいた時にすると喜んでいた仕草だ。

「ウィルフレッドはクールで凄く真面目。ぶっきらぼうに見えて情熱的。素っ気ないふりをしていても面倒見がいい。話を聞いていないようでよく聞いてる。仕事に忠実。リーダー気質で平等に人を見る事が出来る。猫が好き。ウィルフレッドは特別。ここにいる五人それぞれ特別な個性がある」

リリーの言葉がじんじんと胸を刺激し心に染みてくる。自分は特別。誰かに自分を知ってもらう事がこれ程嬉しいとは思わなかった。

「・・・俺は猫より犬派だ」

照れ隠しで言ってしまった。
本当はありがとうと言いたかった。

「そうなの?猫真似した時おかわりされたから」

以前リリーが猫のコスプレをしてウィルフレッドに縋った同日、彼からご褒美として猫真似をして欲しいとお強請りをされた事があった。だからてっきり猫が好きだと思っていたのに。

「あれは・・・」

君が可愛かったから。
今まで猫を可愛いと思ったことが無かったのにあの日以降街で見かける猫が可愛く見えるようになってしまった。

リリーと出会ってから彼女の影響が大きい。
こうして頭を撫でられるのに抵抗をする気になれない。むしろ嬉しく思ってしまう。以前だったら他人に触られる事が嫌だったのに。

「一緒に寝よう」

ん。と腕を広げリリーを見上げたウィルフレッド。リリーはなぜ?と首を傾げた。だってベッドには自分が寝るスペースがあり温かく快適に眠れる。ウィルフレッドの上だと固いだろう。

「俺は明日死ぬかもしれない。君が嫌じゃなければ一緒に寝たい」

死を前提に話されては頷くしか出来ないリリー。大人しく彼に抱かれて眠りについた。

そんな彼女を薄目を開けて見つめる人物がいる。

(・・・おもしろくない)


さて、それは誰でしょう。
ひとりとは限りません。

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