【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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第二章

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 室内の訓練場へ移動をした一行。
シルヴィが二メートルはあるゴリマッチョの大男ヴォルフガングを呼んだ。呼ばれた彼は陽気に笑っている。

「これから寝技を教えるね。武器が手元に無くって押さえ込まれた時の脱出方とか攻撃の技とか結構役立つから。あ、背負い投げは出来る?」

シルヴィの発言に騎士達は首を傾げた。
出来ると思うが実際に経験がない。
シルヴィがやり方をルークに教えた。
そしてルークはヴォルフガングの腕を掴み背負い投げをしようとするがビクともしない。

そもそも体格が違うんだ。こんな大柄な男相手には無理じゃないかと不満を抱いたルーク。
リリーが彼に代わりヴォルフガングの腕と胸ぐらを掴むと呆気なく背負い投げた。

「小は大を制すってね。力だけじゃダメなんだよ」

その後背負い投げや寝技を身につけるべく訓練を励む騎士達。彼らは向上心の塊だ。

リリーはエレンとペアになって彼に寝技を教えていた。

エレンがリリーに組み敷かれていて身動きが取れないでいる。自分よりも体が小さく、何よりもいつも自分が組み敷くはずの女性にまったく抵抗が出来ず、普段から余裕の笑顔をしている彼の表情が少しだけ歪む。

「脚を絡めて捻ってみて?」

グイッ

リリーに言われた通り動いたエレン。今度はすんなりとリリーを組み敷く事が出来た。上手く動いた褒美としてリリーは組み敷かれている状態のまま、下から手を伸ばし彼の頬を撫で、頭を撫でた。

「擽ったいな・・・」

先程の懸垂の時もそうだが、エレンは擽ったがりやさんなんだなと思ったリリー。楽しいことを思いついたリリーは無表情のままエレンに寝技をかけ脇腹をつついた。

「っやめ」

抵抗するエレンを押さえ脇腹など身体中擽った。

やめて欲しけりゃ技をかけろ。

必死に動きやっと自分の意思で技を掛ける事が出来たエレンは組み敷いたリリーを、顔を赤らめ荒い呼吸しながら見下ろした。

玩具のように弄ばれ悔しい気持ちになったエレンはリリーを押さえ込んでいる手に力を込め彼女の首筋に顔を埋めた。

チクッと痛みを感じたリリー。
顔を離したエレンは彼女の首筋に咲いた痕を見つめた。

心が満たされる感情が芽生え今度は違う場所に咲かせようかと再び顔を近づけたが、シルヴィが彼を蹴って退かした。

「ちょっと!なに痕つけてんのさ。任務に支障が出たらどうすんの、この顔だけ野郎が」

あーもー!と叫びながらリリーの首筋を袖で拭くシルヴィ。

(僕は・・・今なにを・・・?)

シルヴィの行動で自分が何をしていたのか理解したエレンは少し混乱した後、すぐにいつもの彼に戻った。

「おい、これはどうした」

リリーが次は誰に寝技を教えようか考えていたらルークがリリーの首筋に咲いている痕を指摘した。他の騎士達も集まる。

あきらかなキスマーク。

リリーは犯人であるエレンを指さした。
勢いよく彼を見た騎士達。
エレンは何食わぬ顔で笑っていた。

「どうやってコレ消すの?」
「内出血だから直ぐには無理だろう」

まじまじとキスマークを見つめながら考える騎士達。彼らは何故か嫌な気分になった。別に彼女が好きなわけでは無い。ただ白い肌に目立って不愉快なのだ。

「イタズラされたから仕返しただけだよ?」

仕返しだと?
彼らはエレンの首を見た。
どこにも痕がないではないか。

何かを察したリリーが手を叩いた。

「痕つければいい?」

「「「・・・・・・え?」」」

さっそくリリーがエレンの首を掴み彼を屈ませ吸血鬼のように首筋に噛み付こうとしたところで体が持ち上げられた。リヒャルトがリリーを抱え上げたのだ。

「何でそう発想が斜め上なの?エレンはほっといて俺と寝技やろ」

「えー、僕リリーとがよかったんだけどな」

リリーに痕をつけられるのかと驚いたエレンだったが、付けられないならそれはそれで少し残念に思ってしまった。

「貴様は私とやるぞ」
「うん。よろしくね」

結局エレンはルークと寝技の訓練をした。
こうして一日で寝技をマスターした騎士達であった。


***

ー翌日ー

 今日も訓練開始時間より早くやって来た騎士達。室内の訓練場では影達が各自訓練をしたり自由に行動をしている。

その中で奥の端にピンクアメジストの髪と青みがかった銀髪が丸まって眠っているのを見つけた。

二人に近付こうとした騎士達だったが、素通りしようとしていたティアラが彼らを見つけた途端興奮した様子で話しかけてきた。

「丁度いいところに来たわね!今からリリーを尋問するわよ!」

尋問・・・?

黙ってティアラに続く騎士達。
眠っているリリーとシルヴィの前で仁王立ちをすると、大声を出した。

「起きなさーーい!」

うるさいティアラの声にもぞもぞと動き出した二人。

「・・・まだねむい・・・にゃあ・・・」

目を擦るリリーは寝惚けている。

「あら、まだ猫なの?ふふっ昨日のリリー凄い人気だったわよね。チップが物凄くて女の子達からの嫉妬が凄かったんだから」

「・・・変な客はいなかったの?」

ノエルが不安そうな顔で問うた。

「変態はいたけど上手くあしらってたわよ?」

(やっぱりいたんじゃないか・・・)

騎士達は面白くなさそうに眉を寄せた。

「それどころじゃないのよ!リリーが男を持ち帰ったんだから!」

「「「・・・は?」」」


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