【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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 お腹すいた・・・。

 出発してから大分時間が経ち夕焼け空が広がる中、リリーはルークとノエルと共に夕食の山菜採りをしていた。他三人は肉を確保するため別行動をとっている。

リリーは空腹とはまた別の戦いをしていた。
ルークとノエルが面白すぎるのだ。

「リリー見て!いっぱいキノコ採れたよ」
「・・・それ全部毒キノコ」

「見ろ!山菜だらけだ!」
「・・・それ全部毒草」

ガーンッとショックを受け落ち込む二人。
仕事中だから笑いたくないのに面白すぎて口を真一文字に結びプルプルと震えるリリー。
食べられる食材を見つけ丁寧に教える。

面倒を見ている騎士達は面白い。
真面目で一生懸命で個性がある。
そして皆優しい。素直。お人好し連中。

ルークはツンデレ系。ノエルはワンコ系。

ルークとノエルはリリーに教えられた通り食べられる食材を集めた。食材を確保した二人だがキョロキョロと辺りを見回し二人して青ざめた顔をしている。

どうした?と首を傾げるリリー。

「ここは・・・どこだ」
「採るのに夢中になり過ぎて戻る方向が・・・」

バッと二人に背中を向け笑いを堪えるリリー。

おバカさんだ・・・。

リリーは二人の手を握り野営の場所へ戻った。
ルークもノエルも大人しく手を繋いだまま着いてきた。戻ると既に豚を仕留めた三人が肉を焼いて待っていた。

「・・・仲良いな」

ウィルフレッドの言葉に顔を赤くしたルークが勢いよく繋いだ手を離した。

「違う。決して仲良しではない」

・・・言ってやりたい。
この二人が迷子になったと言ってやりたい。
言ったら、面白そうだ。

再びプルプルと震えるリリー。

「僕はリリーと仲良しだよね」

ねー。と首を傾けながら笑顔を向け握っていた手に力を込めてきたノエル。

まさかそんな事を言うとは思わなかったのでパチパチと瞬きをしたリリーは黙って頷いた。



 夕食を食べ終えた一行。外はもう暗い。
荷物を持ったリリーがどこかへ行こうとするのを見てウィルフレッドが声を掛けた。

「どこへ行くんだ」

「お風呂。・・・行く?」

パチパチと瞬きをする騎士達。
風呂があるのか?どこに?

宿泊施設等無かった筈なのにと疑問を浮かべながら自分達の臭さに嫌になっていた騎士達は荷物を持ってリリーの後を追う事にした。

少しどころではなく結構な距離を移動した。
こんな遠い所まで一人で行こうとしてたなんてと思う程に。

山道を登った先にある拓けた場所へと辿り着いた一行。
そこには満月に照らされ湯気が立ち上る温泉があった。

外での温泉が初めての騎士達は感動をしていた。まさか遠征で温泉に入れるとは思いもしなかったのだ。

感動している騎士達を余所に、リリーは彼らの目の前で全裸になった。全く気にせず温泉に入り目を瞑っている彼女を見て騎士達全員が深い溜息を吐いた。

異性として見られていない事は知っているが、女性としてどうなのか。

何かを諦めたかの様な表情をしながら騎士達も服を脱いで温泉に浸かった。

「生き返る」

心地よさそうに目を瞑り呟くウィルフレッド。他の騎士達も瞳を閉じてうっとりとしている。

リリーの隣にリヒャルトが座った。

「リリーは可愛い女の子がどういう子か知ってる?」

もっと恥じらいを持つべきだよと言ってやりたかったリヒャルト。てっきり知らないと言われるかと思っていたのに返ってきた言葉が意外だった。

「知ってる」
「・・・え?」

満月を見上げたリリー。
彼女が思い浮かべるのは愛おしい妹のナターシャのことだ。

「いつも笑っていて可愛い。相手を思いやれて聞き上手。ころころと表情が変わってずっと見てられる。一緒に居て心地が良い・・・私と真逆」

自分を蔑んだ言い方をしているのに、喋るその表情は無表情なのに、どこか穏やかでリリーから目が離せない騎士達。

リリーは何かを思い出したかのようにポンと手を叩いた。

「あと、巨乳」

プハッ!と笑い吹き出したリヒャルト。

「リリー気にしてたの?」

別にそこまで気にしてないけど胸が無いと出来ない潜入捜査もあるから仕事の入り具合が違うし・・・まあ?

黙って頷いたリリー。

何がツボに入ったのか笑い続けているリヒャルト。彼は彼女が胸の大きさを気にする乙女心を持っていると思わなかったのだ。人間味がある事にどことなく安心した。無口で無表情で心が無いと思っていたから。

「見る分には大きい方が良いけど、好きな女の胸の大きさ気にする男は少ないんじゃない?」

それは・・・慰めているのか?
要は男はやっぱり巨乳好きで合っているという事だろう。
よく分からないけど彼なりの優しさを見せているのだろうと悟ったリリーは無言でリヒャルトの頭を撫でた。

「・・・ねぇ、リリー娼館で働いてたでしょ?俺達客だったんだけど覚えてる?」

今まで黙って聞いていた他の騎士達はリヒャルトの発言に驚愕した。まさかその事を彼女本人に聞くとは思ってもみなかったから。

平静でいられず彼女を伺う騎士達。
リリーは黙ったまま頷いた。
ゆっくりと一人一人に向かって指を差した。

「みんな良い人」

リリーが覚えてくれていた事に驚きと嬉しさと恥ずかしさが込み上がる騎士達。

リリーが彼らを覚えていたのは、頻繁に指名をしてくれていたからだ。

リリーは次いでエレンとノエルを指さした。

「物くれた。お菓子や花・・・だから、好き(だった)」

わかりやすく嬉しそうな表情をするエレンとノエル。他三人は悔しそうに顔を歪め後悔した。

「チップは嬉しくなかったのか?」

チップしかあげたことがなかったウィルフレッド。リリーは真っ直ぐ彼を見つめた。

「一番嬉しい。でも、見慣れてる」

なんと言っても影で働くリリーは金銀財宝は見慣れている。お金を貰うのは嬉しいが自分じゃ買えない貴族御用達の高級菓子等目を楽しませてくれる物が嬉しかったのだ。

それを聞いたエレンとノエルは心の中でガッツポーズをとった。

良かった。持って行って良かった。悩んで良かった。喜んで貰えていて良かった。

「・・・ほんと、俺も何か渡しとけば良かった・・・。誰が一番指名してた?」

リヒャルトに言われ、リリーが指をさしたのは、ルークだった。

「ばっ!墓まで持って行け!個人情報漏洩だぞ!」

ゲラゲラと笑う他の騎士達。
顔を真っ赤にしながら怒ったルークはリリーに近付き彼女の頬を引っ張った。

(・・・やわらかい)

むにむにとリリーの頬を触るルーク。

「あはは!むっつりスケベー」

リヒャルトの揶揄いに文句を言っているルーク。二人はぎゃあぎゃあとじゃれ合い始めた。

「リリーにお願いしたい事があるんだけど、いいですか?」

ノエルの問に何だろうと首を傾げるリリー。
彼は照れくさそうに頬をかいた。

「前みたいに抱きしめて欲しいんだけど・・・やっぱダメだよね?ごめん。忘れて下さい」

なんだ、そんなことか。
ゆっくりとノエルに近付いたリリーは彼の膝の上に乗り、腕を首に絡め抱きしめた。彼の肩に顔を乗せピッタリとくっついたリリー。

驚いたノエルだがやがて彼女の体に腕を回し抱きしめた。

「懐かしい・・・やっぱりリリーはちっちゃいなあ」

抱きしめるとすっぽりとおさまってしまうリリー。

「・・・胸が?」
「っもう!デリカシーないんだから。違います。体全体が小さいんです!・・・それにこの匂い、好きだったなあ」

リリーの首や耳付近に鼻を寄せ匂いを嗅いでは抱きしめる力を込めるノエル。擽ったいその行為に身をよじるリリーだが、次第にノエルの体温が心地良く眠くなってきた。欠伸をし目を擦る。

「眠くなりました?」

ノエルの問に頷くリリー。
聞いて来たノエルが逆に慌てた。

「ちょ、ちょっと待って下さい。運びたいけど今湯から出られない。すぐ落ち着かせるから」

裸のリリーを抱きしめ匂いを嗅いだだけで元気になってしまったノエルのノエル。それに気付いていたリリーは一人で上がるから大丈夫だと彼の頭を撫で離れようとした・・・が離れられない。ガッシリとした腕に捕らわれて身動きがとれないのだ。

頭上にクエッションマークが飛び交う。

「今日は僕と一緒に寝ましょう?」

美青年の上目遣いワンコ攻撃を仕掛けてきたノエルだが、リリーが頷く前にいつの間にか湯から上がっていたウィルフレッドがノエルからリリーを引き剥がし彼女を湯から出した。

「ダメだ、今日は俺と寝る。俺が雇ったんだから俺に権利がある」

「職権乱用じゃない?」

エレンの言葉を無視してリリーの手をとり移動するウィルフレッド。リリーは何でもいいから早く寝たいと大人しく彼の後をついて行った。


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