【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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 リヒャルトの言葉に賛同した騎士達は使節団や使用人に手伝ってもらい一日をかけ領民に豚男子爵家の金と物資を渡した。

良い事をした後は気持ちが良い。
領民からヒーローのように扱われ見送られた騎士達だが、その後実力不足に後悔をする。

いきと比べて移動速度がかなり遅いのだ。

数日間かけて見覚えのある村が見えた。
いきで賊に襲われていた村だ。
やっとここまで来れた。

騎士達は安心し、ちょっと寄っていこうと話し合い村へ向かった。

ピンクアメジスト色の髪を見つけて驚く騎士達。

リリーだ。リリーがいた。

彼女は仕留めた豚を引き摺り村人達へ渡していた。村人達に気に入られているのか数人がリリーを取り囲み礼を言っている。

「お兄ちゃん!」

一人の少女がリヒャルトに駆け付けて来た。
賊に人質となっていたあの少女だ。
少女の行動で騎士達の存在に気が付いた村人達は助けてくれたヒーロー達の姿に黄色い声をあげた。

少女を抱き上げたリヒャルトは笑顔で頭を撫でると少女は嬉しそうに笑う。
微笑ましい姿にうっとりとする村人達。

騎士達の存在に気づいた筈のリリーだが、彼女は気にせず魚を干す作業を始めている。

知り合いなのに全くこっちを気にしない態度に少し寂しくなる騎士達。

師弟関係なのだから挨拶くらいしてくれてもいいのに・・・。

騎士達はリリーに近付いた。
弟子である騎士達から話しかけようと思ったのだ。

「リリー何してるの?」

エレンが笑顔で話しかけた。

「休みだから・・・ボランティア?」
「・・・なんで疑問形?」

救済活動?ボランティア?どっちが正しい言葉だろうと悩んだリリーは首を傾げながら喋った。

「リリーちゃんあれやってー!」

リヒャルトに抱かれた少女が可愛い笑顔をリリーに向けた。近付いたリリーは無言で手の平を少女に向けると、どこからともなく花を出し、少女の耳上へその花をさした。

「きゃー!ありがとー!」

屈託のない笑顔を浮かべる少女の頭を撫でたリリーは地面に置いていた荷物を背負った。

「もう行ってしまわれるのかい?」

近くに居た老夫婦がよぼよぼと重たそうに腰を上げた。

「我々の為に支援をして下さり誠に感謝したします。食料の確保やあの様な高級品まで頂き我々に生きる希望を与えてくださった。貴女様の幸せを我々は願っております」

一斉にリリーに頭を下げる村人達。
騎士達は見つけてしまった。
村の中心に祭り上げられた袋。あれは子爵家から奪った物だ。リリーを見ると、腰周り全体にあった袋が半分程無くなっていた。

リリーは村人達が頭を上げるまで待った。
そして目が合った彼らに手の平を振り、スタスタとジャングルへ向かって歩き出した。

ウィルフレッドが慌てて追いかけ彼女の腕を掴んだ。

なに?

首を傾げて見上げるリリー。

「君を雇いたい!俺達を明明後日までに王都へ連れてってくれ。金は払う。約束する」

パチパチと瞬きをするリリーと他の騎士達。
リリーは連休で暇だしお金が稼げるならいいかと承諾した。



 村人達への別れを告げた騎士達はジャングルの入口で待っていたリリーへ近付いた。顎に手を当て考え事をしている。

リリーは彼らが今日この村へ着いたのを考慮し移動速度を計算していた。今までのペースで行ったら相当時間がかかるだろう。

「待ってて」
「・・・?」

リリーの指示で動かず待っている騎士達。
彼女はどこからか凄く長くて巨太い蔓を持って来た。

騎士達を密集させ持ってきた蔓を彼らにグルグルと巻き始めたリリー。

騎士達は何をするんだろうと同じ方向に首を傾げて不思議がっていたが、何となく嫌な予感がして次第に冷や汗が止まらなくなる。ノエルが怯えた様子でリリーを伺った。

「リリーまさかとは思うけどもしかして・・・もしかして・・・・・・」

リリーは大丈夫だと親指を立てた。

グインッ!

「「「ぎゃ~~~っ!!!」」」

リリーは器用に騎士達を繋いだ蔓を上手く操り、素早く木と木を移動させて行く。ヨーヨーのコマの様にビュンビュンと回転しながら移動して行く騎士達。気絶でもしたのか悲鳴も徐々に聞こえなくなった。

ここまで移動出来たら問題無いだろうと暫く進んだ先で騎士達を地面に下ろしたリリー。

グルグルと目を回し上半身を揺らしている騎士達を見て思わず吹き出しそうになるのを堪えた。

「ふふ」

それでも笑いが込み上げて仕方がないリリーは彼らに背を向けて笑いを抑える。

突然聞こえたリリーの笑い声にハッとし咄嗟に彼女を見上げた騎士達だったが、彼女が背中を向けているため顔が見れなかった。

「うっ!やばい・・・吐きそうです」
「おい!吐くな!今吐いたら私に当たる!」

チラッと振り返ったリリー。
青ざめた顔のノエルとそんなノエルを別の意味で青ざめた顔で見るルークを見てしまいバッと勢いよく前に向き直し笑いを堪えるリリー。
顔を両手で押さえ必死に自分に言い聞かせる。

いけない。今は仕事中、仕事中・・・仕事中。

切り替えたリリーは無表情で彼らに巻き付けていた蔓を切った。解放されたノエルが慌てて駆け出し少し離れた所で吐いている。

リリーがノエルの背中をさすり落ち着かせた。
吐いた姿を女の子に見られてしまったノエルは別の意味でショックを受けている。だがそんな事は気にしないリリー。彼女はポカリの実を騎士達へ配った。

 水分補給をし平衡感覚を取り戻した騎士達は先頭を進むリリーに必死について行った。

ぶら下がっている蔓と蔓を使いターザンの様に器用に移動して行く。

時々こちらを気にしながらスピードを落として様子を見てくれる彼女に安心感を覚え着実に進んで行った。

 日が暮れた頃、木々に覆われたジャングルでは視界が暗くなるのが早い。手元が見づらくなってしまったリヒャルトが次の蔓を上手く掴む事に失敗をし、悲鳴をあげながら泥沼へ落下してしまった。

「っ~~最悪っ!!」

沼から這い上がったリヒャルトは全身泥だらけになってしまい、今日はここまでだとリリーが言った。


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