【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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 王宮の地下にある会議室の一室に見目麗しい騎士達が五人集められていた。彼らを招集したのはこの男、王宮騎士団団長のジョン・アーノルド。黒髪に琥珀色の瞳を持つ美丈夫だ。

そんな彼は集めた可愛い部下達の虚無感でいっぱいの態度に溜息を吐いた。彼らはここ最近、任務は確実にこなすがそれ以外でぼーっとしてる事が多く、今もシャキッとしていない。

「君達どうしちゃったのさ。俺が紹介した娼館行ってる?一発やってシャキっとしなさいよ」

上司の指摘にこのままではいけないと思った銀髪碧眼の男、ウィルフレッド・オブリージュが姿勢を正した。

それに続くのはプラチナブロンドにアメジストの瞳を持ったエレン・オルレアン。

「気に入ってた子が辞めちゃってから行ってないなー」

そう言いながら気だるそうに立ち上がり壁に背を預けたピンク髪にピンクの瞳を持つリヒャルト。

白髪に蜂蜜色の瞳を持った最年少の美青年ノエル・スフォルツァがリヒャルトの隣で姿勢を正した。

最後に紫色の長い髪をひとつに束ね金色の瞳を持つ美丈夫、ルーク・サヴォイアが騎士団長のジョンに問いかける。

「任務ですか?」

「そうそう!気だるげな君達に特別合同実戦&訓練ー!君達は“影”の事知ってるかな」

“影”とは王宮の暗殺部隊。敵の内部情報を取得する為潜入捜査をしたり表出に出来ない仕事を裏でこなす謎に包まれた組織。

「影って一人一人が相当の実力の持主なんだよね。そんな彼等の技を今の君達が身につければかなり強くなるはずだよ。てことでお呼びします!影のリーダーどうぞ!」

「「「ッーー!?」」」

団長のジョンが軽く手を広げた先に音もなく男と女が突然現れた。現れた男の姿に驚く。団長と全く同じ顔をしているのだ。黒髪に琥珀色の瞳。背丈も体格も全く同じ。違うのは服装だけ。男と女は東南にある小陸国の忍のような黒い装いをしている。

一緒に現れた女にも目を奪われた。ピンクアメジストの髪と瞳。美人とも可愛らしいともとれる整った顔。無表情なのにどこか憂いを帯びた雰囲気を出している。

(((・・・小さいな)))

ここにいる男達の平均身長は百八十センチ後半。だが現れた女は百六十にも届かない程身長が低かった。まだ少女なのかと疑い騎士達は女を凝視した。だが女は見目麗しいと評される男達からの視線を受けてもなお無表情を貫いている。そして目線を合わせない。

「紹介するね。こちら俺の双子のジャック。影のリーダーでこれから君達がお世話になる人だから無礼の無いようにね」

「影のリーダー、ジャック・アーノルドだ。早速だが今回の任務について説明をする」

驚くことに影のリーダーと団長は声まで一緒だった。無言のまま女が中央にあるテーブルへ大きな紙を広げた。その中身は何処かの図面の様だ。女は図面を広げると再び影のリーダー、ジャックの一歩後ろで待機をする。

「これは裏カジノの図面だ。ここを取り仕切る商会は人身売買、違法奴隷、闇取引等の悪行を働いており政府から潰すようお達しが下った。

任務は簡単だ。潜入し帳簿を奪いここの頭諸共腐ってる連中を片付けること。客以外なら殺して構わない。今回影は俺とリリーしか動かない。後はお前達に任せるから好きに動くといい。この任務でお前達の実力を見る。そして今後の方針を決める。

そうだな・・・おい、そこの銀髪。お前がリリーをエスコートし正面から入れ」

淡々と説明をした影のリーダー、ジャックに対し銀髪呼ばわりされたウィルフレッドが片手を上げて発言の許可を求めた。

「なんだ銀髪」

「ウィルフレッド・オブリージュです。リリーと言うのは?」

「ん?ああ。こいつがリリーだ。愛嬌がなくて胸もないけど、お前達よりは強いから何かあったらリリーに頼るといい」

「「「!?」」」

ジャックは背後に待機していた女を前に出すと彼女の頭上に自身の顔を乗せながら、無遠慮に背後から両手で彼女の胸を揉みしだいた。確かに胸が小さいのだろう膨らみがない。だが騎士である彼らには有り得ないその行動に唖然とし嫌悪感を出すが、当事者であるリリーと紹介された女は相変わらずの無表情。リアクションもない。

「発言の許可を」

「何だプラブロ」

「プラ・・・ブロ・・・?」

「プラチナブロンドだからプラブロ」

ジャックから変なあだ名を付けられてしまったエレンは咳払いをし改めて異議を唱える。

「エレン・オルレアンです。失礼ですが少女に危険な任務をさせるのは如何かと」

これに対しジャックはきょとん顔の後肩を竦めた。

「影はガキからジジイまでいて年齢は幅広い。こいつはガキの頃栄養が足りてなかったから全部がちっこいが歳ならお前達と同じか上だ」

信じられないといった表情でリリーを見つめる騎士達。それでもリリーは彼等と一度も目を合わせず、ずっと図面を見ていた。

「でも俺達よりこの子が強いってのはちょっとなー」

ピンク髪のリヒャルトがリリーに近づき、視線を合わせようと顔を近づけた。手の平ひとつ分空いた距離の近さだ。これには流石のリリーもリヒャルトと目を合わす。初めて目を合わせたリリーとリヒャルトは同じ色合いの瞳を、お互い探る様に見つめた。

大抵の女はリヒャルトと目を合わせると顔を染めたりと良い反応をするのに対し、リリーは全くそんな気がない。

リリーは明らかに華奢だ。健康的な細さだが騎士である彼等と比べるまでもなく弱く見える。それなのに自分達よりも強いだと?影のリーダーの冗談だとしか思えない。

騎士団団長のジョンがリヒャルトの肩を掴みリリーから引き剥がした。

「ま、実力を見ればわかるよ。実際リリーが本気出したら俺も負けるかも」

ジョンの言葉が信じられない騎士達はリリーを二度見した。自分達が憧れる程、団長は強い。影のリーダーは冗談では無かったということか?それでも信じられない。

「日程は五日後ここ集合。それまでに図面を頭に入れておくこと。じゃ、“散”」

突然音もなく消えたジャックとリリー。居なくなってしまった空間に唖然とする騎士達。

騎士団長はこれから起こる物語に期待しニヤニヤしている。

騎士達が求めていた娼婦がリリーであることに気が付くまで、あともう少し。

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