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第二話 リハビリテーション
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一般的にはリハビリテーションとは、以下の様に引用される。
身体的、精神的、社会的に最も適した生活水準の達成を可能とすることによって、各人が自らの人生を変革していくことを目指し、且つ時間を限定した過程である。
私の上半身は筋肉増強剤のおかげで、引き締まった肉体になっていた。施すとこはなかった。下半身は安静にしておく必要があった為、特に太ももの筋力が著しく低下していた。ここを鍛えて、メンタル面の向上、ソーシャルスキルの向上を図るのである。
また私は東邦大学総合病院の存在は知っている。しかし自分の居る特別室の位置が、この施設のどこにあるのか分からない。だから二重扉を開けてリハビリテーション室に行く間に場所を確認しておきたいと考えていた。
しかし今日になっても教授陣は一向に病室に来ない。太陽は大分傾いて来ている。看護師を呼んでブラインドを閉めてもらおう、そのついでに教授陣の動向を聞き出そう。
ナースコールを押して暫くしたら看護師が入って来た。知らない顔だ。
「ブラインド、閉めるんですよね、ちょっと待ってください。はい、教授達ですか?これくらいの時間に来る予定になってます」と答えると、水を置いて出て行った。
日差しはかなり弱くなり、快適になった。
六人の教授達が揃うのは中々難しいということか。夕方と言えば外来がひと段落する頃か、ならば納得がいく。
ブラインドからオレンジの明かりが洩れて、私の身体を照らす。
そう言えば、私の持ち物はどこに行ったのだろう。事故にあった時の服装を思い返した。上下ジャージにスニーカー。持ち物は書類とカギ。以上。
書類を郵便ポストに投函する事だけを考えていたので、極めて軽装で外に出たのであった。今着ているのは寝巻きで私物ではない。
ジャージ類はどこに行った?特にカギは何種類もキーホルダーに掛けているので、今にも取りに行きたいと、悶えている時、二重扉から教授陣が特別室に入って来た。
いきなり注射針が静脈に達し、ひんやりとしたものが流れ込んで来た。暫くして私は意識が遠のく中、麻酔にかかった事が分かったのであるが、ベッドの上でぐったり、意識がなくなった。
ここからは第三者視点で時が進んで行く。
私は仰向けになってベッドに横たわっている。それを囲む様に教授陣が立っていた。テーブルの上には注射器が、たくさん並べられていた。
私はリハビリテーション室に行かずにここの特別室で施術を施される様だ。
先ずは下半身膝上から腹筋、背筋に四人の教授陣で注射針を刺す。これを五十ヶ所程打たれた。当然痛みはない。これは筋肉増強剤だろうか。
次第に腹部、腿、背中の筋肉が発達し出し、皮下脂肪が減少し出した。かつてとは見違える筋肉質なむきむきとした肉体を手に入れた。
次の二種類の注射器は針が長く、鼻腔から一本一本慎重に注射針を中の液体を刺して脳に直接刺していった。
これはサイボーグ化した足を得て、社会的、精神的に充実させるためのリハビリテーションが施してあった。
十五本ずつ刺し液体を注入し施術は終わった。徐々に麻酔が切れ、少しずつ意識が戻っていった。
うつらうつらとする中で、酷い頭痛と筋肉痛に驚き、教授陣に鎮痛剤を要求した。静脈注射で鎮痛剤は施され、徐々に身体中を巡り鎮痛作用で、身体は楽になっていった。
その後、黒くサイボーグ化した部分に包帯が巻かれ、異様な箇所を隠していった。鼻からは血が垂れていったので、真綿を詰められた。
「この身体の痛みはどれくらい続くのか」と問うと「一週間位だ」言われた。そして自分が穏やかな安定した精神を持ち、反抗的態度が皆無になっていることに気がついた。
一週間の間に痛みは和らぎ、特別室の中でサイボーグの足の歩行訓練をした。違和感なく歩く事が出来る様になり、駆け足も試みこちらも違和感なく出来た。
朝昼晩提供される食事も残さず食べて、身体は健康体になっていった。
ある朝、また知らない看護師から東病棟のリハビリテーション室に一人で行く様に言われた。どうやら大分信頼を得た様で私は嬉しくなった。
リハビリテーション室向かった先には多くの患者、理学療法士、看護師がいた。非常に大きな施設となっていた。リハビリテーションの器材、器具が揃っていた。
一人の中年のスリムな理学療法士から声を掛けられた。
「こんにちは、山下と言います、今日一日よろしくお願いします。高本さんはリハビリテーションではなく、トレーニングをやってもらいます、どうぞあちらへ」
最新の物を置いてあるとあって、見たことのないマシンで、黒光りするフレームで、勿論、名前、使い方がわからなかった。
山下氏はこちらが指定する器具で、トレーニングをして様子を見て負荷を増減していこうということになった。
器具一覧
上半身/ラットプルマシン、チェストプレス、ペックフライマシン、インクラインフライマシン、リアデルトマシン、ラテラルレイズ、ショルダープレス、ロウイングマシン、など。
下半身/スクワットマシン、ベルトスクワットマシン、レッグプレスマシン、レッグエクステンションマシン、プローンレッグカール、など。
山下氏の選んだマシンで器具を操作し、筋力トレーニングを行った。一通り休憩しながら水分補給をしつつ、午後一時頃には終わった。トレーニング結果は教授陣に渡すとの事であった。
私はリハビリテーション室を離れて、部屋の二重扉を開けて中に入った。
我ながら良く筋力が付き、足のバランスが取れる様になり、方向感覚もあり、コミュニケーションも取れ、かつての自分と比較してかなりバージョンアップしている気がした。
恐らくこの辺の変化したデータの数値を見て、何かを決定しようと教授陣は考えているのではないかと想像した。
夕方を待って教授陣が特別室に入ってくると、それぞれデータシートを手に持っていた。
「素晴らしいデータだ、これから一週間に一回、必ずデータ取得テストを受けて欲しい。必ず、今日からスタートだから今から家に帰って欲しい」
外は夕刻。夕日が陰りだしている。
と改めて見ると外には砂が降っている。こんな光景いつからだ。気づかなかった。
教授陣はこの異変に特別驚きもせず淡々としていた。
女の看護師に手を引っ張られて、出入り口まで連れて来られると、背中を押す様に上下ジャージにスニーカー、書類とカギと一緒に病院の外に突き飛ばされた。
身体的、精神的、社会的に最も適した生活水準の達成を可能とすることによって、各人が自らの人生を変革していくことを目指し、且つ時間を限定した過程である。
私の上半身は筋肉増強剤のおかげで、引き締まった肉体になっていた。施すとこはなかった。下半身は安静にしておく必要があった為、特に太ももの筋力が著しく低下していた。ここを鍛えて、メンタル面の向上、ソーシャルスキルの向上を図るのである。
また私は東邦大学総合病院の存在は知っている。しかし自分の居る特別室の位置が、この施設のどこにあるのか分からない。だから二重扉を開けてリハビリテーション室に行く間に場所を確認しておきたいと考えていた。
しかし今日になっても教授陣は一向に病室に来ない。太陽は大分傾いて来ている。看護師を呼んでブラインドを閉めてもらおう、そのついでに教授陣の動向を聞き出そう。
ナースコールを押して暫くしたら看護師が入って来た。知らない顔だ。
「ブラインド、閉めるんですよね、ちょっと待ってください。はい、教授達ですか?これくらいの時間に来る予定になってます」と答えると、水を置いて出て行った。
日差しはかなり弱くなり、快適になった。
六人の教授達が揃うのは中々難しいということか。夕方と言えば外来がひと段落する頃か、ならば納得がいく。
ブラインドからオレンジの明かりが洩れて、私の身体を照らす。
そう言えば、私の持ち物はどこに行ったのだろう。事故にあった時の服装を思い返した。上下ジャージにスニーカー。持ち物は書類とカギ。以上。
書類を郵便ポストに投函する事だけを考えていたので、極めて軽装で外に出たのであった。今着ているのは寝巻きで私物ではない。
ジャージ類はどこに行った?特にカギは何種類もキーホルダーに掛けているので、今にも取りに行きたいと、悶えている時、二重扉から教授陣が特別室に入って来た。
いきなり注射針が静脈に達し、ひんやりとしたものが流れ込んで来た。暫くして私は意識が遠のく中、麻酔にかかった事が分かったのであるが、ベッドの上でぐったり、意識がなくなった。
ここからは第三者視点で時が進んで行く。
私は仰向けになってベッドに横たわっている。それを囲む様に教授陣が立っていた。テーブルの上には注射器が、たくさん並べられていた。
私はリハビリテーション室に行かずにここの特別室で施術を施される様だ。
先ずは下半身膝上から腹筋、背筋に四人の教授陣で注射針を刺す。これを五十ヶ所程打たれた。当然痛みはない。これは筋肉増強剤だろうか。
次第に腹部、腿、背中の筋肉が発達し出し、皮下脂肪が減少し出した。かつてとは見違える筋肉質なむきむきとした肉体を手に入れた。
次の二種類の注射器は針が長く、鼻腔から一本一本慎重に注射針を中の液体を刺して脳に直接刺していった。
これはサイボーグ化した足を得て、社会的、精神的に充実させるためのリハビリテーションが施してあった。
十五本ずつ刺し液体を注入し施術は終わった。徐々に麻酔が切れ、少しずつ意識が戻っていった。
うつらうつらとする中で、酷い頭痛と筋肉痛に驚き、教授陣に鎮痛剤を要求した。静脈注射で鎮痛剤は施され、徐々に身体中を巡り鎮痛作用で、身体は楽になっていった。
その後、黒くサイボーグ化した部分に包帯が巻かれ、異様な箇所を隠していった。鼻からは血が垂れていったので、真綿を詰められた。
「この身体の痛みはどれくらい続くのか」と問うと「一週間位だ」言われた。そして自分が穏やかな安定した精神を持ち、反抗的態度が皆無になっていることに気がついた。
一週間の間に痛みは和らぎ、特別室の中でサイボーグの足の歩行訓練をした。違和感なく歩く事が出来る様になり、駆け足も試みこちらも違和感なく出来た。
朝昼晩提供される食事も残さず食べて、身体は健康体になっていった。
ある朝、また知らない看護師から東病棟のリハビリテーション室に一人で行く様に言われた。どうやら大分信頼を得た様で私は嬉しくなった。
リハビリテーション室向かった先には多くの患者、理学療法士、看護師がいた。非常に大きな施設となっていた。リハビリテーションの器材、器具が揃っていた。
一人の中年のスリムな理学療法士から声を掛けられた。
「こんにちは、山下と言います、今日一日よろしくお願いします。高本さんはリハビリテーションではなく、トレーニングをやってもらいます、どうぞあちらへ」
最新の物を置いてあるとあって、見たことのないマシンで、黒光りするフレームで、勿論、名前、使い方がわからなかった。
山下氏はこちらが指定する器具で、トレーニングをして様子を見て負荷を増減していこうということになった。
器具一覧
上半身/ラットプルマシン、チェストプレス、ペックフライマシン、インクラインフライマシン、リアデルトマシン、ラテラルレイズ、ショルダープレス、ロウイングマシン、など。
下半身/スクワットマシン、ベルトスクワットマシン、レッグプレスマシン、レッグエクステンションマシン、プローンレッグカール、など。
山下氏の選んだマシンで器具を操作し、筋力トレーニングを行った。一通り休憩しながら水分補給をしつつ、午後一時頃には終わった。トレーニング結果は教授陣に渡すとの事であった。
私はリハビリテーション室を離れて、部屋の二重扉を開けて中に入った。
我ながら良く筋力が付き、足のバランスが取れる様になり、方向感覚もあり、コミュニケーションも取れ、かつての自分と比較してかなりバージョンアップしている気がした。
恐らくこの辺の変化したデータの数値を見て、何かを決定しようと教授陣は考えているのではないかと想像した。
夕方を待って教授陣が特別室に入ってくると、それぞれデータシートを手に持っていた。
「素晴らしいデータだ、これから一週間に一回、必ずデータ取得テストを受けて欲しい。必ず、今日からスタートだから今から家に帰って欲しい」
外は夕刻。夕日が陰りだしている。
と改めて見ると外には砂が降っている。こんな光景いつからだ。気づかなかった。
教授陣はこの異変に特別驚きもせず淡々としていた。
女の看護師に手を引っ張られて、出入り口まで連れて来られると、背中を押す様に上下ジャージにスニーカー、書類とカギと一緒に病院の外に突き飛ばされた。
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