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八章 決意する少女
闘技場での戦い その3
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『では次の対戦ですっ!次はゲスト参加の女冒険者カナ対槍使いの冒険者ユーリですっ!!』
翌日、今日も私は開かれた闘技場のゲートの前で対戦相手と対峙していた。
相手もまだ反対側のゲートのゲートの前にいるため、顔や表情とかは分からないが、犬の半獣人の少年のようだ。
手には両手持ちの槍を持ち、見すぼらしい服を着ている。
冒険者と言っていたから、恐らくは以前の私と同様に偽の依頼で奴隷商人に捕まり、ここに売られて来たのだろう。
ミシェルさんは以前冒険者ギルド間で情報を共有して偽の依頼で捕らえられてしまう冒険者を減らすようにしているとは言っていたが、彼を見るにそれはまだ完全ではないようだ。
その姿は以前奴隷として囚われていた自分と重なって見える。
(そういう事ならどうにかして彼は殺さずに助けたいんだけど……)
そんな私の思いなど知る由もなく、ユーリという犬の半獣人の少年が槍を構えて向かってくる!
私も剣を抜いて走って近づくと彼の顔や表情が見て取れた。
歳は見た目からして私よりも少し歳下だろうか……?
冒険者としては駆け出しというわけではないと思うが、その表情には必死さが見て取れる。
優勝すればここから出られる、その思いだけを胸に勝ち進んできたのだろう。
そう、奴隷として戦わされていた以前の私のように。
彼の気持ちは痛いほどに分かる。
でも、だからと言って私も負ける訳にもいかないっ!
私も剣を構えながら走り、ユーリとの距離を縮めていくっ!
「やっ!!」
ユーリは走って来た勢いのまま突きを放ってきた!
「甘いっ!」
私は右へと避けると、走って来た勢いそのままに盾でユーリへと体当たりを当て、ユーリを押し倒す!
「うあぁ……っ!?」
ユーリの槍が手の届かない所に落ちているのを確認するとそのまま彼の上へと馬乗りになり喉元に剣先を突きつけた。
その際、彼の両腕は私の両足で踏みつけている。
「動かないでっ!あなたを殺したくはないの……」
藻掻き、私を押し退けようとしている彼を剣と言葉で制した。
「……なんで殺さないの?僕をどうする気?」
「私は目的があってここに来ているの。殺し合いがしたくて来ている訳じゃない。お願い、投降して」
観客から殺せコールが湧き上がる中、私はユーリと対話していた。
私の頭の中には以前同じ様に投降を促して舌を噛み切り自害してしまった女エルフの顔がよぎる。
お願い、投降して……。
私はあなたを殺したくはないの……。
「それは出来ない。僕にだって目的がある……っ!」
「そう……、なら仕方ない……。はっ!」
「うぐ……っ!?」
私は剣の柄をユーリの鳩尾へと叩きつけると彼はそのまま気を失った……。
私は彼の上から立ち上がり、落ちていた槍を拾って遠くへと放り投げるとそのまま様子を伺う。
(お願い、そのまま立ち上がらないで……)
『……ユーリ戦闘不能と判断っ!勝者カナぁぁぁぁーーーっ!!』
祈るようにユーリを見つめていると戦闘不能と判断されたのか私の勝利が確定した。
そして周囲から殺せコールとブーイングが湧き上がる中、私は剣を鞘へと収めると闘技場を後にした。
◆◆◆
「おい!カナっ!」
部屋へと戻る途中、私は後ろから何者かに声をかけられた。
後ろを振り向くと予想通りそこにはヴァインの姿があった。
「ヴァイン、何の用?」
「用というほどでは無いが、お前腕を上げたみたいだな。それにしても甘っちょろい戦い方だ。なぜとどめを刺さない?」
「これが私の戦い方よ。私は殺し合いがしたい訳じゃないっ!でも、今回はあんたには負けないっ!」
「面白い……っ!今度俺が勝ったらお前には俺の子を産んで貰う。それまで負けるんじゃねえぞ」
「誰があんたの子供なんか……っ!!」
「気の強い女は嫌いじゃない、ますます気に入った。お前を屈伏させ、俺の性奴隷に出来る時を楽しみにしている」
それだけを言い残し去っていくヴァインの背中を私は手が痛くなるほど握りしめ、そして睨みつけるのだった。
翌日、今日も私は開かれた闘技場のゲートの前で対戦相手と対峙していた。
相手もまだ反対側のゲートのゲートの前にいるため、顔や表情とかは分からないが、犬の半獣人の少年のようだ。
手には両手持ちの槍を持ち、見すぼらしい服を着ている。
冒険者と言っていたから、恐らくは以前の私と同様に偽の依頼で奴隷商人に捕まり、ここに売られて来たのだろう。
ミシェルさんは以前冒険者ギルド間で情報を共有して偽の依頼で捕らえられてしまう冒険者を減らすようにしているとは言っていたが、彼を見るにそれはまだ完全ではないようだ。
その姿は以前奴隷として囚われていた自分と重なって見える。
(そういう事ならどうにかして彼は殺さずに助けたいんだけど……)
そんな私の思いなど知る由もなく、ユーリという犬の半獣人の少年が槍を構えて向かってくる!
私も剣を抜いて走って近づくと彼の顔や表情が見て取れた。
歳は見た目からして私よりも少し歳下だろうか……?
冒険者としては駆け出しというわけではないと思うが、その表情には必死さが見て取れる。
優勝すればここから出られる、その思いだけを胸に勝ち進んできたのだろう。
そう、奴隷として戦わされていた以前の私のように。
彼の気持ちは痛いほどに分かる。
でも、だからと言って私も負ける訳にもいかないっ!
私も剣を構えながら走り、ユーリとの距離を縮めていくっ!
「やっ!!」
ユーリは走って来た勢いのまま突きを放ってきた!
「甘いっ!」
私は右へと避けると、走って来た勢いそのままに盾でユーリへと体当たりを当て、ユーリを押し倒す!
「うあぁ……っ!?」
ユーリの槍が手の届かない所に落ちているのを確認するとそのまま彼の上へと馬乗りになり喉元に剣先を突きつけた。
その際、彼の両腕は私の両足で踏みつけている。
「動かないでっ!あなたを殺したくはないの……」
藻掻き、私を押し退けようとしている彼を剣と言葉で制した。
「……なんで殺さないの?僕をどうする気?」
「私は目的があってここに来ているの。殺し合いがしたくて来ている訳じゃない。お願い、投降して」
観客から殺せコールが湧き上がる中、私はユーリと対話していた。
私の頭の中には以前同じ様に投降を促して舌を噛み切り自害してしまった女エルフの顔がよぎる。
お願い、投降して……。
私はあなたを殺したくはないの……。
「それは出来ない。僕にだって目的がある……っ!」
「そう……、なら仕方ない……。はっ!」
「うぐ……っ!?」
私は剣の柄をユーリの鳩尾へと叩きつけると彼はそのまま気を失った……。
私は彼の上から立ち上がり、落ちていた槍を拾って遠くへと放り投げるとそのまま様子を伺う。
(お願い、そのまま立ち上がらないで……)
『……ユーリ戦闘不能と判断っ!勝者カナぁぁぁぁーーーっ!!』
祈るようにユーリを見つめていると戦闘不能と判断されたのか私の勝利が確定した。
そして周囲から殺せコールとブーイングが湧き上がる中、私は剣を鞘へと収めると闘技場を後にした。
◆◆◆
「おい!カナっ!」
部屋へと戻る途中、私は後ろから何者かに声をかけられた。
後ろを振り向くと予想通りそこにはヴァインの姿があった。
「ヴァイン、何の用?」
「用というほどでは無いが、お前腕を上げたみたいだな。それにしても甘っちょろい戦い方だ。なぜとどめを刺さない?」
「これが私の戦い方よ。私は殺し合いがしたい訳じゃないっ!でも、今回はあんたには負けないっ!」
「面白い……っ!今度俺が勝ったらお前には俺の子を産んで貰う。それまで負けるんじゃねえぞ」
「誰があんたの子供なんか……っ!!」
「気の強い女は嫌いじゃない、ますます気に入った。お前を屈伏させ、俺の性奴隷に出来る時を楽しみにしている」
それだけを言い残し去っていくヴァインの背中を私は手が痛くなるほど握りしめ、そして睨みつけるのだった。
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