上 下
151 / 200
七章 恋する少女

魔鳥、コカトリス

しおりを挟む
 翌朝……、私達はコカトリスがいると思われる場所へと馬に乗って進んでいた。

 その道中、進めば進むほど木や草は減り、中には石化した草や虫、動物の姿が目につくようになる……。
 これって……やっぱりコカトリスに石化させられたんだよね……?

 草は葉脈の一つ一つ、虫は足や触覚、動物に至っては毛の一本一本まで完全な石とされている。

 置く場所を変えれば精巧な彫刻に見えなくもないが、これらは魔物によって石化させられた動植物なのだから恐ろしい。

「いいですか……?コカトリスはとても獰猛で攻撃性が高く、自分の縄張りに入ってきたものには容赦なく襲いかかる凶暴な魔物です。しかし、一番の脅威は石化させる唾液と嘴です。ヤツが唾液を吐いてきたらすぐに逃げて下さいっ!それを少しでも浴びたり、嘴で突かれたりすると身体がすぐに石にされてしまいます」

「分かりました」
「分かった」

 目的の場所へと進みながら、私とザクスは宗真さんから説明を受ける。
 唾液に嘴か……、もしそれを受けたら……。

 石化された自分を思い浮かべ思わずゾッとする……。

 いや……、ダメだ……!
 玉藻と約束したんだ……!必ず三人で無事に帰ると……っ!!

 更に進んでいくと、遠くで何者かが動いていた。
 その何者かは遠目で見ると大きな鶏に見えなくもない……。

「あれです……、あれがコカトリスです……。ここから先は馬を降りて歩いて行きましょう」

 私達は馬を降り、コカトリスへと近づく……。

 しかし、コカトリスは私達を見つけると、鶏のようなドラゴンのような甲高い鳴き声をあげると私達へと襲いかかってきた……!

 その背の高さは1.6メートルくらいだろうか、高さは私とほぼ同じくらいで、鶏のような上半身と翼を持ち、ドラゴンのような下半身と尻尾を持つ魔物で、体長は尻尾の先まで入れると2メートル近くはありそうな魔物だった……!

 これがコカトリス……!?
 思ったよりは小さい……。

「先手必勝!『ウインドセイバー』っ!!」

 私はウインドセイバーを唱える!

 しかし、コカトリスに素早く避けられてしまう!
 思ったよりも素早い……っ!?

「く……っ!」

「ならこれでどうだ……っ!!」

 攻撃が当たらず、険しい顔をしている私の横で、今度はザクスが魔力弓を構えると、数本の魔力の矢も放つ……っ!

 しかし、コカトリスは空へと飛び上がると、魔力の矢をも振り切ってしまった……!

「気をつけて下さい!コカトリスは見た目以上に素早い魔物です!炎で羽を燃やせば飛べなくなりますっ!!」

「分かりました!『ファイヤーバレット』っ!!」

 私は威力よりも命中率を重視したファイヤーバレットを放つ……が、コカトリスの飛行速度は早く、すべて避けられてしまった……!

 くそ!なんて素早い……っ!!

「カナ!エンチャントだ!俺に炎のエンチャントをしてくれっ!!」

「分かった!『エンチャントファイヤー』っ!!」

 ザクスは私から炎の付与魔法を得ると、再び魔力弓を構え、炎の力が宿った魔力の矢を放った!

 しかし、コカトリスは素早く、ある程度は追尾能力のある魔力の矢と言えど簡単に振り切られてしまうっ!

 すると今度は自分の番だと言わんばかりにコカトリスは急降下を始め、鋭い脚の爪で襲いかかってくる……っ!!

「うあ……っ!?」

 私はそれをどうにか避けようとしたが、肩を掴まれてしまった……!

 しかし、幸いにも掴まれたのは鎧だった為、ダメージこそなかったが、コカトリスの脚に掴まれたの部分は破壊されてしまっていた……。

「鎧が……っ!?」

 クイーンホーネットやキングビートルの甲殻で作られた鎧が……っ!?

 おまけに鉄の鎧まで混ぜられて強度は更に上がっているはずなのにそれをいとも簡単に破壊するなんて……。

 く……!どうやらコカトリスの脚の力はクイーンホーネットやキングビートルを簡単に握りつぶせるほどの握力があるということらしい……!

「カナ!大丈夫か……っ!?」

「大丈夫……!鎧を壊されただけ……っ!」

 しかし、これがもしも鎧のところではなく身体の方だったら……?
 あの鋭い爪で肉が抉り取られていたかも知れない。

 そう思うと見た目こそ小柄だが、コカトリスの恐ろしさを実感する。

「これ以上はやらせない!『朱雀召喚』っ!!」

 宗真さんが御札を上へとかざし、印を結ぶと燃え盛る火の鳥が現れ、コカトリスを襲う!

 さすがのコカトリスも火の鳥からは逃れる事ができず、その炎で身体を身体を焼かれながら地上へと落ちてきた……!

 暫くコカトリスは燃えていたが、やがて火が消えると、風切羽を失ったコカトリスが立っていた。

 こうなればこちらのものだ!

「『ウインドセイバー』っ!!」

 再びウインドセイバーを唱える……!

 しかし、羽こそ失ったがコカトリスの素早さそのものは高く、あっさりと避けられてしまった。

 なんてすばしっこい……!

「俺に任せろっ!!」

 ザクスが再び魔力の矢を放つと空を飛べなくなったコカトリスへと命中する……!

 しかし、身体を覆う羽根が強靭なのかダメージを受けている感じではない……。

「ならこれで……っ!!」

 ならばと私は弓を構え、風のエンチャントをかけた矢を放つっ!

 矢は風魔法の影響で通常よりも早く飛び、コカトリスの目を射抜く!

 やった……っ!

 ダメージを受け、怒ったコカトリスは悲鳴を上げると、怒りをあらわにしながら私へと向かって来る……!
 ならその前にもう片方の目を撃ち抜くのみ……!

 再び弓を引いてコカトリスの目を狙う……が、思ったよりもコカトリスの脚が速い……っ!?

 私のすぐ目の前にコカトリスの嘴が迫る……!

 やられる……っ!?
 石に……される……っ!?

「危ない……っ!!」

 もうダメだと思ったその時、私は誰かに突き飛ばされたのだった……!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...