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七章 恋する少女
勇者リーナ
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翌日……、と言っても昼ぐらいだが、私はザクスと共にサーミラの冒険者ギルドで食事を取りながら、眉間にシワを寄せて魔物のリストが書かれていた紙を見ていた……。
コカトリスやドラゴン、ワイバーンの居場所は大体なら知っている……。
しかし、残りの魔物……、ハイドラやリッチ、イービルアイがどこにいるのかさっぱりわからないのだ……。
「おい、カナ……。いつまでも紙を見てないでメシを食ったらどうだ……?いらないのなら俺がもらうが……?」
「ダメ……っ!!」
ザクスがフォークを伸ばして私の料理を取ろうとしてきたので、お皿を退けてそれを躱す。
しかし、その時に魔物のリストの紙が下へと落ちてしまった。
ありゃ……、落としちゃった……。
「この紙貴女のですよね?落としましたよ」
一度お皿をテーブルに置いて、紙を拾おうとすると一人の女性が落とした紙を拾い上げ、手渡してくれた。
その女性は水色の髪に銀色に輝く鎧と剣を背負った凛とした人間の女性だった。
「すみません……ありがとうございます」
私はその女性から拾ってもらった紙を受け取ろうとすると、その女性の手が止まる。
どうやら、紙に書かれた魔物のリストを見ているようだ……。
「あなた方はハイドラを探しているのですか……?」
「え……?あ、はい……」
急に尋ねられ、私は思わず言い淀んでしまう……。
「実は私もこれからハイドラを倒しに行く所なのです。居場所も知っていますし、良ければ共に行きませんか……?」
ㇵイドラを倒しに行く?しかも居場所まで知っているだって……っ!?
渡りに船とはこの事だが……、いくらなんでも都合が良すぎる……。
まさか、リーツェの時みたいな奴隷商人の類だろうか……?
「それは大変助かりますが……、その前にあなたは一体何者なんですか……?」
「そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね……。私はリーナ。勇者です」
は……?
勇者……?
え……?勇者って実在するの……?
「リーナ……だったか……?勇者ほど胡散臭い者はいない。それこそ野盗でも身なりを整えて自称勇者と名乗ればその時点で勇者だ」
「そうですね……。自称勇者はたくさんいます……。ですが、私は正真正銘本物の勇者です」
「……証明するものはあるのか?」
「残念ながら、証明するものはありません……。強いて言えばこの勇者にしか抜けない神剣くらいしか……」
リーナさんは背負っていた剣を外すと、一度剣を少し抜き、鞘へと納めた後ザクスに手渡した。
つまり自分が勇者なのだと証明するため抜いてみろと言うことだろう。
ザクスはその剣を受け取り、抜こうとするが剣は鞘に収まったまま全く抜けない……!
試しに私も抜こうとしてみたが全く抜けなかった……。
私は剣をリーナさんへと返すと、彼女は剣を背負い直していた。
「私が勇者だと言うことを信じて頂けましたか……?」
「あ……ああ……」
「疑ってすみません……。実は私は以前、偽の依頼に騙されて奴隷にされてしまった事があるので……」
勇者にしか抜けない剣が存在し、実際リーナさんは抜けるが私とザクスは抜けない以上彼女が本物の勇者だと信用するほかないようだ……。
何にしろ奴隷商人の類では無いことにひとまず安堵をした。
「そう言うことでしたか……。お気持ちをお察しいたします……。さぞ辛い目に合われたことでしょう……」
「あの……それでハイドラはどこにいるのですか……?」
「ハイドラはここより南東に向かったエルドラという遺跡の潜んでいるという噂です。話では頭が幾つもある巨大な大蛇で人を丸呑みにしてしまうほどの巨体のようです。さらに、そのハイドラが吐き出す猛毒は如何なるものをも溶かしてしまうほど強力だと聞き及んでいます」
え……?
頭がいくつもあって人を丸呑みにするほどの大きさ……?
しかもどんな物をも溶かしてしまう程の毒液……?
な……なにそれ……。
「どうするんだ、カナ……?俺としてはそんなのと戦うのは遠慮したい所だが……」
「い……行くよ……」
うう~……、やだよ~、本当は行きたくないよ~……!
ヘビは苦手だよ~……っ!
しかもそんな巨体を持つヘビなんて見たくもないよ~……!
しかし、行かなければハイドラの猛毒袋は手に入らないので、行くしか無い……。
それに、ヤパーニへと行く船が来るのにまだ一週間くらいあるし……。
「そう言えば、まだお二人のお名前をお聞きしていませんでしたね。もしよければ教えていただけませんか?」
リーナさんに言われ、自己紹介してなかったことを思い出す。
「名乗り遅れました、私はカナで、こちらがザクスです」
「ザクスだ、よろしくな」
「こちらこそよろしくお願い致します。見た所お二人は仲が良さそうですが、恋人かご夫婦ですか……?」
ふ……夫婦……っ!?
いや……でも元の世界に帰れず、または帰らずにこのままこの世界に留まるとなるとザクスと結婚って可能性も……!
じゃあ……ウエディングドレスを着て……ラウルの教会で式をあげて……。
いや、デキ婚という可能性も……!
私は冒険者をやめてギルドのホールで働いて……、家ではザクスの帰りをご飯を作りながら待つの……。
そして、私が作った料理を美味しそうに食べるザクスの顔を眺めて、夜は一緒にお風呂に入って、寝るときは同じベッドに入って……、そして毎晩子作りなんかしちゃって……。
きゃーー……っ!もうやだーー……っ!!
子供は何人作ろうかな……。
多いほうがいいのかな……。
ザクスは子供何人欲しいのかな……。
お休みの日はベビーカーを押して街に買い物に行ったり……。
「そんな……ザクス……。毎晩だなんて私、身体が持たないよ……。でも、ザクスが望むなら私は何人でも産むから……」
私は手で赤くなった顔を隠しながら、身体をクネクネとよじらせる……。
私は幸せな家族計画の妄想を心の中で盛大に膨らませていた……。
「あの……カナさんは何をなさっているのでしょうか……?」
「気にするな……。あと、俺達は結婚はしていない。一応は恋人同士だ」
「は……はあ……」
勇者のリーナが仲間となり、私が妄想から帰ってきた後サーミラの南東にあるというエルドラという遺跡を目指すのだった……。
ちなみに妄想から帰ってくるのに小一時間はかかったのだった……。
コカトリスやドラゴン、ワイバーンの居場所は大体なら知っている……。
しかし、残りの魔物……、ハイドラやリッチ、イービルアイがどこにいるのかさっぱりわからないのだ……。
「おい、カナ……。いつまでも紙を見てないでメシを食ったらどうだ……?いらないのなら俺がもらうが……?」
「ダメ……っ!!」
ザクスがフォークを伸ばして私の料理を取ろうとしてきたので、お皿を退けてそれを躱す。
しかし、その時に魔物のリストの紙が下へと落ちてしまった。
ありゃ……、落としちゃった……。
「この紙貴女のですよね?落としましたよ」
一度お皿をテーブルに置いて、紙を拾おうとすると一人の女性が落とした紙を拾い上げ、手渡してくれた。
その女性は水色の髪に銀色に輝く鎧と剣を背負った凛とした人間の女性だった。
「すみません……ありがとうございます」
私はその女性から拾ってもらった紙を受け取ろうとすると、その女性の手が止まる。
どうやら、紙に書かれた魔物のリストを見ているようだ……。
「あなた方はハイドラを探しているのですか……?」
「え……?あ、はい……」
急に尋ねられ、私は思わず言い淀んでしまう……。
「実は私もこれからハイドラを倒しに行く所なのです。居場所も知っていますし、良ければ共に行きませんか……?」
ㇵイドラを倒しに行く?しかも居場所まで知っているだって……っ!?
渡りに船とはこの事だが……、いくらなんでも都合が良すぎる……。
まさか、リーツェの時みたいな奴隷商人の類だろうか……?
「それは大変助かりますが……、その前にあなたは一体何者なんですか……?」
「そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね……。私はリーナ。勇者です」
は……?
勇者……?
え……?勇者って実在するの……?
「リーナ……だったか……?勇者ほど胡散臭い者はいない。それこそ野盗でも身なりを整えて自称勇者と名乗ればその時点で勇者だ」
「そうですね……。自称勇者はたくさんいます……。ですが、私は正真正銘本物の勇者です」
「……証明するものはあるのか?」
「残念ながら、証明するものはありません……。強いて言えばこの勇者にしか抜けない神剣くらいしか……」
リーナさんは背負っていた剣を外すと、一度剣を少し抜き、鞘へと納めた後ザクスに手渡した。
つまり自分が勇者なのだと証明するため抜いてみろと言うことだろう。
ザクスはその剣を受け取り、抜こうとするが剣は鞘に収まったまま全く抜けない……!
試しに私も抜こうとしてみたが全く抜けなかった……。
私は剣をリーナさんへと返すと、彼女は剣を背負い直していた。
「私が勇者だと言うことを信じて頂けましたか……?」
「あ……ああ……」
「疑ってすみません……。実は私は以前、偽の依頼に騙されて奴隷にされてしまった事があるので……」
勇者にしか抜けない剣が存在し、実際リーナさんは抜けるが私とザクスは抜けない以上彼女が本物の勇者だと信用するほかないようだ……。
何にしろ奴隷商人の類では無いことにひとまず安堵をした。
「そう言うことでしたか……。お気持ちをお察しいたします……。さぞ辛い目に合われたことでしょう……」
「あの……それでハイドラはどこにいるのですか……?」
「ハイドラはここより南東に向かったエルドラという遺跡の潜んでいるという噂です。話では頭が幾つもある巨大な大蛇で人を丸呑みにしてしまうほどの巨体のようです。さらに、そのハイドラが吐き出す猛毒は如何なるものをも溶かしてしまうほど強力だと聞き及んでいます」
え……?
頭がいくつもあって人を丸呑みにするほどの大きさ……?
しかもどんな物をも溶かしてしまう程の毒液……?
な……なにそれ……。
「どうするんだ、カナ……?俺としてはそんなのと戦うのは遠慮したい所だが……」
「い……行くよ……」
うう~……、やだよ~、本当は行きたくないよ~……!
ヘビは苦手だよ~……っ!
しかもそんな巨体を持つヘビなんて見たくもないよ~……!
しかし、行かなければハイドラの猛毒袋は手に入らないので、行くしか無い……。
それに、ヤパーニへと行く船が来るのにまだ一週間くらいあるし……。
「そう言えば、まだお二人のお名前をお聞きしていませんでしたね。もしよければ教えていただけませんか?」
リーナさんに言われ、自己紹介してなかったことを思い出す。
「名乗り遅れました、私はカナで、こちらがザクスです」
「ザクスだ、よろしくな」
「こちらこそよろしくお願い致します。見た所お二人は仲が良さそうですが、恋人かご夫婦ですか……?」
ふ……夫婦……っ!?
いや……でも元の世界に帰れず、または帰らずにこのままこの世界に留まるとなるとザクスと結婚って可能性も……!
じゃあ……ウエディングドレスを着て……ラウルの教会で式をあげて……。
いや、デキ婚という可能性も……!
私は冒険者をやめてギルドのホールで働いて……、家ではザクスの帰りをご飯を作りながら待つの……。
そして、私が作った料理を美味しそうに食べるザクスの顔を眺めて、夜は一緒にお風呂に入って、寝るときは同じベッドに入って……、そして毎晩子作りなんかしちゃって……。
きゃーー……っ!もうやだーー……っ!!
子供は何人作ろうかな……。
多いほうがいいのかな……。
ザクスは子供何人欲しいのかな……。
お休みの日はベビーカーを押して街に買い物に行ったり……。
「そんな……ザクス……。毎晩だなんて私、身体が持たないよ……。でも、ザクスが望むなら私は何人でも産むから……」
私は手で赤くなった顔を隠しながら、身体をクネクネとよじらせる……。
私は幸せな家族計画の妄想を心の中で盛大に膨らませていた……。
「あの……カナさんは何をなさっているのでしょうか……?」
「気にするな……。あと、俺達は結婚はしていない。一応は恋人同士だ」
「は……はあ……」
勇者のリーナが仲間となり、私が妄想から帰ってきた後サーミラの南東にあるというエルドラという遺跡を目指すのだった……。
ちなみに妄想から帰ってくるのに小一時間はかかったのだった……。
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