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七章 恋する少女

幻視の魔鏡 ②

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「な……っ!?」

 私達は驚愕した……っ!

 幻視の魔鏡の前に現れたそれは姿形どころか、身にまとっている装備まで瓜二つだった……。
 これがあの幻視の魔鏡の秘密だと言うのだろうか……っ!?

 驚き、戸惑っている私達に対し、鏡の前に現れたもう一人の私はライトニングボルトの呪文を、もう一人のザクスは魔力弓を構えている……っ!

「逃げろ……っ!!」

 ザクスの声に私達は入ってきた扉から洞窟内へと走って逃げる……!開けっ放しにされた扉からからはライトニングボルトと魔力の矢が飛び抜けていく……っ!


 ◆◆◆


 どれくらい戻ってきただろう……?
 後ろを振り向くと、追手の姿はなかった。

「はあ……!はあ……っ!な……何あれ……?あれも魔物……?」

 私は息を切らせながらその場へとへたり込む……。
 まさかもう一人の私達が出現するとは思いもよらなかった……。

「分からん……。何かのマジックアイテムのような気もするが……。だが、これであの鏡を盗みに行った奴らが全滅した理由が分かったな……」

「どういう事……?」

「つまり、あの鏡を取りに行った奴等は同士討ちではなく、あの鏡の能力で生み出された自分達と戦って全滅したと言うことだ……」

「……っ!?」

「俺の推測だが、ほぼ間違いないだろう……」

 もう一人の自分たちを生み出し、同士討ちをさせるなんて……。

「あの現れた私達ってどのくらいの能力を持っているんでろう……?もし、私達と全く同じ能力だとしたら……?」

 私が呟いた疑問にザクスが息を呑む……。

「こちらが強ければ強いほど、鏡によって生み出された俺達も強いと言うことか……。なんてこった……!自分達と戦って勝てってか……っ!?」

「仲間が多ければ多いほど敵と味方の区別も付かなくなるのか……。そして、その末の同士討ち……」

 私がポツリと呟いた言葉にザクスは言葉を失っていた……。

 どうする……?
 どうすればもう一人の私達に勝てる……?

 私がもう一人のザクスと戦う事になったら……私は偽物とは言え、もう一人の恋人を殺す事が出来るだろうか……?

 もしかすると、生みだされた偽物にはそのような躊躇などないのかもしれない……。

「カナ、どうする……?」

 ザクスが私に問う……。

 手は……無い事はない……。
 かなり危険だが……同士討ちを避けれる手が一つだけある……。

「私が一人で行く……」

「な……っ!?カナ正気か……っ!?」

「二人で行っても他の人達みたいに同士討ちにしかならない……。なら、それを避けるために一人で行くしか無いよ……」

「理屈は分かるが……」

「それに……、偽物であっても私はザクスとは戦いたくないの……、お願い……」

 それに、これは私が集めているものなので、私がやらないといけない事のはず……。

「わかったよ……。お前は一度言い出したら聞かないからな……」

 流石ザクス、私のことをよく分かっているようだ……。

「だが、その代わり危なくなったら躊躇せずに引き返すんだ」

 私はザクスの言葉に静かに頷く……。


 ◆◆◆


「どうだ……?もう一人の俺達はいるか……?」

 扉の前へと戻ってきた私達は開きっぱなしの扉からそっと中の様子を伺う……。

「ううん、……、誰もいないよ……」

 私はそっと中の様子を伺ってみる……。

 どうやらもう一組の私達はいないようだ。
 映し出す対象がいなくなれば消えると言うことだろうか……?

「カナ……、無理だけはするなよ……?」

「うん……」

 ザクスの言葉に私は頷く……が、もう一人の自分と戦って本当に勝てるのだろうか……?

 もし負けたら……、死んだら……。
 そう思うと手足が震える……。

「カナ、絶対に勝てるおまじないをしてやろう。目を閉じろ」

 目を……?
 私はザクスの言う通り目を閉じてみる。
 すると……。

「……っ!?」

 突然私の唇に柔らかなものが押し当てられる……。
 驚いて目を開くと私の唇にザクスの唇が重ねられていた。

 ザクスは何度もキスをしながら私を優しく抱きしめてくれる……。
 ザクスのキスで私は力をもらったような気がした……!

「カナ……、死ぬなよ」

「うん……。行ってくるね……!」

 私は意を決して扉の中へと入っていく……。

 扉を締め、ゆっくりと前へと歩いていくと幻視の魔鏡から眩い光が放たれ、鏡の前にもう一人の私が現れた……!

 私は……負けない……っ!
 私の中にはザクスの想いが宿っているから……っ!!
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