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三章 旅立つ少女

オウルベア

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 オウルベア……。

 立ち上がるとその身長は2メートルを超える魔物だ。

 茶色の毛並みを持つ身体の上には、同じく茶色の頭はフクロウというより、ミミズクに近い。

 顔には嘴が付いているものの、その中には鋭い肉食獣の牙が生えていた。
 さらに、白い毛の胸部と腹部にはフクロウのような茶色い模様が入っている。
 振り上げた丸太のように太い腕の下には短い鳥のような翼が付いていた。

「風よ!彼の者を斬り裂け……!『ウインドブレード』っ!!」

 私はオウルベアにウインドブレードを唱えた!

 しかし、私の魔法の威力が弱いのか、真空波がオウルベアを切り刻むが、かすり傷程度のダメージと、オウルベアの体毛や腕の下に付いている翼のようなものを切り刻んで散らす程度に終わった。

 それでも、ダメージを受けたことに腹がたったのか、オウルベアは怒ったような鳴き声をあげながら私へと目掛けて走り出し、振り上げた右腕が物凄い勢いで振り下ろされる!

「く……っ!?」

 その攻撃をどうに避けると、オウルベアの黒く鋭い爪が地面を抉り取る。
 右腕での攻撃を外したオウルベアは今度は左腕を振りかざすも、その左腕に魔力の弾が直撃する。

「カナ!一人で飛び出すとかバカかお前は……っ!?」

「バッシュさん……っ!?」

 後ろを振り向くと、魔銃を持ったバッシュさんの姿があった。
 何の考えもなしに飛び出して来たため、バッシュさんからの援護があった事に内心ホッとする。

「でも、そう言うのボクは嫌いじゃ無いかな……っ!」

 いつの間にか走って来ていたミーナがオウルベアの両脚を斬り裂く。

「カナ!今のうちにオウルベアにトドメを……っ!」

「はあっ!!」

 脚を斬りつけられ、前のめりに倒れたオウルベアの首を私は渾身の力を込めて斬り落としたっ!

「はあ……!はあ……っ!ふう……」

 剣身に付着したオウルベアの血を振り払うと、剣を鞘へと納めた。

「あ……あの……。危ない所を助けていただきありがとうございます……」

 先程まで腰を抜かしていた冒険者がおずおずと私の所へとやって来た。
 さっきまでは気が付かなかったけど、その冒険者は茶髪のショートヘアーの髪型をした、犬の半獣人の女の子で手には槍が握られていた。

「あ、誰かと思ったらリリアじゃない。大丈夫……?」

「はい、ミーナさんも危ない所をありがとうございます……!そちらの僧侶の方も本当にありがとうございます……っ!」

 リリアという、見た目は私よりも少し歳が下だろうか、その女の子は水飲み鳥のように何度も何度も私やミーナ、バッシュさんに頭を下げていた。

「その嬢ちゃんはミーナの知り合いか?」

 魔銃を大きな十字架へと仕舞ったバッシュさんがこちらへと近付いてきた。

「あ、うん。この子はリリア。リーツェの新人冒険者だよ。でも何で一人でいたの……?」

「えっと……、それは……、その……」

「どうせ、ニルスと変に張り合ったんでしょ……」

「う……、は……はい……」

 リリアさんは、図星を突かれたのかしょんぼりと肩を落としていた。

 それにしても、ニルスって誰だろう……?
 名前からして男の人だろうか?

 リリアさんの彼氏か何かかな……?

 まあ、私には関係のない事だけど……。

「そんなことより馬車は俺達を置いてさっさとリーツェに行っちまったみたいだぜ……」

 林道を見ると、既に馬車の姿はなく、巻き添えを食らうのを恐れて逃げたのだろう……。

「しょうがない……、なら歩いてリーツェまで行こうか……。ここからならリーツェまでそう遠くはないしね」

 馬車に置いていかれた私達はリーツェへと歩いて向かうのだった。
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