1 / 123
お転婆姫、冒険者になる
トリエステ王国のお転婆姫
しおりを挟む
ここはトリエステ王国と言う国にあるトリエステ城の一室。
ある晴れた日、一人の少女が春の日差しが差し込む自室のベッドに寝転がり、ぼんやりと天井を眺め呟いた。
「暇だなぁ……」
その少女、あたし「ステラ・ムーン・トリエステ」は自分の銀色の長い髪をいじりながら呟いた。
別に何かをしていて、その休憩中と言うわけではなく、ただ単に暇なのだ。
なぜ暇なのかと言うと、やることがないから。
あたしはこのトリエステ王国の第三王女にして、四人兄妹の末っ子として産まれた。
だからと言う理由ではないけど、あたしには関係ないと言わんばかりに、堅苦しいテーブルマナーやダンスなど、面倒くさい習い事は全てサボり、十歳を過ぎた頃から騎士や兵士達に混じって剣の訓練ばかりしていた。
そしていつしか付いた通り名が「トリエステのお転婆姫」。
両親や兄や姉達もそれらの習い事をさせる事に諦めたのか、いつしかテーブルマナーやダンスの事は言わなくなり、二人の姉のように政略結婚に出される訳でもなく、跡取りも兄がいるため、生まれてからこの18年、訓練の時以外は主に城内にある自分の部屋や中庭に出たり、城内を散歩したりと自由気ままに生活を謳歌してた。
そのため、変に面倒なことはしなくて済む反面、剣の訓練が終わると暇なのだ。
勿論、姫として友好国からの来客や国賓が来ればそのお相手としてダンスパーティーや食事会に出席をしなければと思はなくもないのだけど、両親や兄はろくに踊れずテーブルマナーもなっていないあたしをそのような場に出す気も無いようで、その時も部屋や訓練場で過ごしていた。
勿論ダンスやテーブルマナーをきちんと学べばそのような場に出席を求められるとは思うけど、わざわざ自分からそのような面倒なことを覚えようとは思わない。
そもそも、覚える気があるのなら最初からサボらずに習得しているというものだ。
もっとも、下手にそのようなものを覚え、変な王子の下へと政略結婚のために嫁がされても困るのでこれはこれでいいような気がする。
が、その反面物凄く暇だ。
この部屋もそうだけど、あたしが住んでいるこのお城自体、あたしにとっては退屈でつまらない場所。
「何か面白い事ないかなぁ……」
今日も日課となっている騎士団や兵士達との剣の訓練を終え、ベッドに寝転がりなから誰に対してでもなく問うも、この部屋にはあたししかいない為その答えを返してくれる人は誰もいない。
あたしは退屈しのぎのためにベッドから起き上がって窓の外を見渡すと、城下街である「トリスタの街」が眼下に広がっていた。
そこには、多くの人々が行き来し、中には冒険者と思われる人の姿もいくつか見える。
彼らは何を話しているのかここからでは分からないけど、仲間同士で楽しく話をしたりして街を歩いていた。
「楽しそうだなぁ……。冒険者の人達はあたしみたいに退屈なんかじゃなくて、きっと毎日が充実して楽しいんだろうなぁ……」
窓枠に頬杖を付いて見ていると、思わずため息がもれる。
「……そうだ、あたしも冒険者になればいいんだ!」
名案だ!
あたしはそう思った!
しかし、いくら何でも仮にもこの国の第三王女が冒険者になるのは流石にマズイかもしれない……。
ならどうする……?
「そうだ……!変装をしようっ!」
あたしのこの銀色のロングヘアーの髪型を変え、剣の練習に着ている服でも着て変装すればきっとバレないはず。
「そうと決まれば早速、実行よ!」
あたしは急いでドレッサーへと向かうと、そこからからハサミを取り出し、ロングヘアを躊躇うこと無く切ってショートヘアへと髪型を変えた。
次に首の辺りにある三日月と小さな星を組み合わせたようなの痣をチョーカーで隠す。
最後に、服装もドレスを脱ぎ捨てて剣の練習に着ている厚手の服へと着替えると姿見の前に立った。
「うん、これなら一目であたしだとは分からないわね」
そこに映っているのは今までのステラ・ムーン・トリエステではなく、一人のショートヘアーの冒険者風の女の子。
名前はどうしよう……流石に今の名前を使うわけには行かないわね……。
何か偽名を考えないと……。
(う~ん……)
その場で腕組みをして考えること十数分……。
「よし!思いついたっ!今日からあたしは『ルーナ・ランカスター』よっ!」
「何が『思いついた!』ですか、ステラ様……」
突然後ろから聞き覚えのある人物から声をかけられ、あたしは恐る恐る後ろを振り向いた。
「く……クロト……?いつからそこにいたの……?」
すると、開かれたドアの前に青い鎧に身を包んだ黒髪の青年の姿があった。
「そうですね、ステラ様が姿見の前でうんうんと頭を悩ませている時からでしょうか?」
ぜ……全然気が付かなかった……。
「ちょっと!ノックくらいしなさいよっ!曲がりなりにもあたしはトリエステの第三王女でレディなのよっ!?」
「ご自分で"曲がりなり"と仰いますか……。コホン……、ドアは何度もノック致しました。ドアの前でお声もお掛けしました。ですが、ステラ様のお返事がありませんでしたので、何かあったのではと思い、ご無礼は承知で入らせていただきました」
「うぐ……」
クロトの返答にあたしは言葉を詰まらせる。
彼の名は「クロト・ローランド」
あたしの幼馴染にしてお目付け役である我が国の勇敢なる騎士の一人。
幼馴染と言っても正確にはあたしの兄上で、次期国王の「エルト・ソル・トリエステ」の幼馴染であって、どちらかと言うとあたしは兄上のオマケとしてクロトとその妹、アリアと一緒に幼い頃よく遊び回っていた。
そんな彼は従騎士となった頃から同期の人たちとは頭一つ飛び出しており、正式に騎士とった今では、トリエステ王国騎士団の有望株にして将来は騎士団長の最有力候補だったりする。
剣の腕もかなり立ち、あたしが練習で何度挑もうとも決して勝てなかった。
クロトの同期には勝てるのに……。
そんな事は置いておいて、クロトはあたしの父上であるトリエステ国王に自らあたしのお目付け役を名乗り出たらしく、父上はそれを承認。
しかも幼馴染なのをいいことに、アレはダメコレはダメ、ああしろだの、こうしろだの、かなり口うるさい。
周りからの評価も人気も高いようだけど、あたしから言わせればただの口うるさい幼馴染だ。
しかも、あたしよりも少し年上で力も強く、あたしの両親や兄上とも仲が良いため、尚更たちが悪い。
「それで、ステラ様は髪を切ってそのような格好までされてどうするおつもりですか?」
「クロト、あたしは冒険者になるわっ!」
クロトの問にあたしは逆に開き直って高らかに宣言した!
すると、クロトはため息をつきながら首を横に振っていた。
「あのなステラ……、冗談は休み休みにしてもらおうか……」
クロトはドアを閉めてこちらへと歩いて来る。
そして、ため息を付きつつあたしのささやかな胸を指さすと敬語から一転、タメ口であたしに話しかけてきた。
彼は他の人がいる時には敬語だけど、あたしと二人きりのときは大体タメ口で話かけてくれる。
コレはあたしから頼んだことで、幼馴染に他人行儀みたいに敬語を使われるのはなんか寂しいと言うと、他に誰もいない時にこうしてタメ口で話してくれる。
それはいいのだけど……。
「どうしてあたしの胸を指さすのかしら……っ!?」
あたしはクロトを睨みつけると、彼は腕組みをしてあからさまに胸から視線を逸らした。
「気のせいだ。それよりステラ、冒険者になるとはどう言うことだ。仮にもお前はこの国の第三王女様なんだぞ?騎士団の訓練だけならまだしも、冒険者になったとあっては流石に国王様も王妃様も黙ってはいないぞ……」
「冒険者のほうが楽しそうだからよ!」
「……ステラに何かあったら俺は騎士団長からは勿論、トリエステ王や王妃様、さらにエルトにまで責任を追及されるんだぞ?」
「あら、そんなに心配ならクロトもあたしに付いてくればいいでしょ?それならクロトはあたしをすぐ近くで見張れるし余計な心配もしなくて済む。あたしはこの退屈なお城から飛び出して冒険者になれる。まさにウィン・ウィンじゃない!」
「あのな……、俺は騎士団としての仕事もあるんだぞ?そんな暇があると思うか?」
「ならクロトも冒険者になればいいじゃない」
あたしはそう言うと、クロトは額に手を当てて再びため息をついた。
「はぁ……。ステラ、お前は俺の話を聞いていたのか……?」
「聞いていたわよ?でも、あたしのお目付け役も大事な仕事なんでしょ?自分から名乗り出たくらいなんだから、さぞかし大事な役割なんでしょうねぇ~。だけど、クロトが来ないというのならそれならそれでいいわ。そうしたらあたしは羽を広げて伸び伸びと冒険者生活を謳歌してみせるわ」
あたしは目を閉じると、その場でくるくると回転してみせる。
そう、お目付け役という枷を外されたあたしは自由になるのよ。
「はぁ……分かったよ。ステラに付き合うよ。世間知らずなお姫様を放っておいたらどんなトラブルに巻き込まれるか分かったものじゃないからな……」
「それ、どういう意味よ……っ!」
クロトはあたしの我が儘に遂に折れ、首を縦に振るも、あたしは彼に食ってかかる。
「そのままの意味だ」
「……まあいいわ。クロトが来てくれるというのならあたしも安心だわ。一人じゃ内心心細かったけど、あなたが来てくれるのなら心強いわ」
「その代わり、俺が危険だと判断したらいくらステラでも全力で止めるからな」
「ええ、わかったわ。それと、冒険者をしている間はあたしはステラじゃないわ。ルーナ・ランカスターよ!」
「はいはい、好きにしてくれ……」
「それじゃあ、クロト!さっそく街に出発よっ!」
あたしはクロトの手を取ると部屋を飛び出したのだった。
ある晴れた日、一人の少女が春の日差しが差し込む自室のベッドに寝転がり、ぼんやりと天井を眺め呟いた。
「暇だなぁ……」
その少女、あたし「ステラ・ムーン・トリエステ」は自分の銀色の長い髪をいじりながら呟いた。
別に何かをしていて、その休憩中と言うわけではなく、ただ単に暇なのだ。
なぜ暇なのかと言うと、やることがないから。
あたしはこのトリエステ王国の第三王女にして、四人兄妹の末っ子として産まれた。
だからと言う理由ではないけど、あたしには関係ないと言わんばかりに、堅苦しいテーブルマナーやダンスなど、面倒くさい習い事は全てサボり、十歳を過ぎた頃から騎士や兵士達に混じって剣の訓練ばかりしていた。
そしていつしか付いた通り名が「トリエステのお転婆姫」。
両親や兄や姉達もそれらの習い事をさせる事に諦めたのか、いつしかテーブルマナーやダンスの事は言わなくなり、二人の姉のように政略結婚に出される訳でもなく、跡取りも兄がいるため、生まれてからこの18年、訓練の時以外は主に城内にある自分の部屋や中庭に出たり、城内を散歩したりと自由気ままに生活を謳歌してた。
そのため、変に面倒なことはしなくて済む反面、剣の訓練が終わると暇なのだ。
勿論、姫として友好国からの来客や国賓が来ればそのお相手としてダンスパーティーや食事会に出席をしなければと思はなくもないのだけど、両親や兄はろくに踊れずテーブルマナーもなっていないあたしをそのような場に出す気も無いようで、その時も部屋や訓練場で過ごしていた。
勿論ダンスやテーブルマナーをきちんと学べばそのような場に出席を求められるとは思うけど、わざわざ自分からそのような面倒なことを覚えようとは思わない。
そもそも、覚える気があるのなら最初からサボらずに習得しているというものだ。
もっとも、下手にそのようなものを覚え、変な王子の下へと政略結婚のために嫁がされても困るのでこれはこれでいいような気がする。
が、その反面物凄く暇だ。
この部屋もそうだけど、あたしが住んでいるこのお城自体、あたしにとっては退屈でつまらない場所。
「何か面白い事ないかなぁ……」
今日も日課となっている騎士団や兵士達との剣の訓練を終え、ベッドに寝転がりなから誰に対してでもなく問うも、この部屋にはあたししかいない為その答えを返してくれる人は誰もいない。
あたしは退屈しのぎのためにベッドから起き上がって窓の外を見渡すと、城下街である「トリスタの街」が眼下に広がっていた。
そこには、多くの人々が行き来し、中には冒険者と思われる人の姿もいくつか見える。
彼らは何を話しているのかここからでは分からないけど、仲間同士で楽しく話をしたりして街を歩いていた。
「楽しそうだなぁ……。冒険者の人達はあたしみたいに退屈なんかじゃなくて、きっと毎日が充実して楽しいんだろうなぁ……」
窓枠に頬杖を付いて見ていると、思わずため息がもれる。
「……そうだ、あたしも冒険者になればいいんだ!」
名案だ!
あたしはそう思った!
しかし、いくら何でも仮にもこの国の第三王女が冒険者になるのは流石にマズイかもしれない……。
ならどうする……?
「そうだ……!変装をしようっ!」
あたしのこの銀色のロングヘアーの髪型を変え、剣の練習に着ている服でも着て変装すればきっとバレないはず。
「そうと決まれば早速、実行よ!」
あたしは急いでドレッサーへと向かうと、そこからからハサミを取り出し、ロングヘアを躊躇うこと無く切ってショートヘアへと髪型を変えた。
次に首の辺りにある三日月と小さな星を組み合わせたようなの痣をチョーカーで隠す。
最後に、服装もドレスを脱ぎ捨てて剣の練習に着ている厚手の服へと着替えると姿見の前に立った。
「うん、これなら一目であたしだとは分からないわね」
そこに映っているのは今までのステラ・ムーン・トリエステではなく、一人のショートヘアーの冒険者風の女の子。
名前はどうしよう……流石に今の名前を使うわけには行かないわね……。
何か偽名を考えないと……。
(う~ん……)
その場で腕組みをして考えること十数分……。
「よし!思いついたっ!今日からあたしは『ルーナ・ランカスター』よっ!」
「何が『思いついた!』ですか、ステラ様……」
突然後ろから聞き覚えのある人物から声をかけられ、あたしは恐る恐る後ろを振り向いた。
「く……クロト……?いつからそこにいたの……?」
すると、開かれたドアの前に青い鎧に身を包んだ黒髪の青年の姿があった。
「そうですね、ステラ様が姿見の前でうんうんと頭を悩ませている時からでしょうか?」
ぜ……全然気が付かなかった……。
「ちょっと!ノックくらいしなさいよっ!曲がりなりにもあたしはトリエステの第三王女でレディなのよっ!?」
「ご自分で"曲がりなり"と仰いますか……。コホン……、ドアは何度もノック致しました。ドアの前でお声もお掛けしました。ですが、ステラ様のお返事がありませんでしたので、何かあったのではと思い、ご無礼は承知で入らせていただきました」
「うぐ……」
クロトの返答にあたしは言葉を詰まらせる。
彼の名は「クロト・ローランド」
あたしの幼馴染にしてお目付け役である我が国の勇敢なる騎士の一人。
幼馴染と言っても正確にはあたしの兄上で、次期国王の「エルト・ソル・トリエステ」の幼馴染であって、どちらかと言うとあたしは兄上のオマケとしてクロトとその妹、アリアと一緒に幼い頃よく遊び回っていた。
そんな彼は従騎士となった頃から同期の人たちとは頭一つ飛び出しており、正式に騎士とった今では、トリエステ王国騎士団の有望株にして将来は騎士団長の最有力候補だったりする。
剣の腕もかなり立ち、あたしが練習で何度挑もうとも決して勝てなかった。
クロトの同期には勝てるのに……。
そんな事は置いておいて、クロトはあたしの父上であるトリエステ国王に自らあたしのお目付け役を名乗り出たらしく、父上はそれを承認。
しかも幼馴染なのをいいことに、アレはダメコレはダメ、ああしろだの、こうしろだの、かなり口うるさい。
周りからの評価も人気も高いようだけど、あたしから言わせればただの口うるさい幼馴染だ。
しかも、あたしよりも少し年上で力も強く、あたしの両親や兄上とも仲が良いため、尚更たちが悪い。
「それで、ステラ様は髪を切ってそのような格好までされてどうするおつもりですか?」
「クロト、あたしは冒険者になるわっ!」
クロトの問にあたしは逆に開き直って高らかに宣言した!
すると、クロトはため息をつきながら首を横に振っていた。
「あのなステラ……、冗談は休み休みにしてもらおうか……」
クロトはドアを閉めてこちらへと歩いて来る。
そして、ため息を付きつつあたしのささやかな胸を指さすと敬語から一転、タメ口であたしに話しかけてきた。
彼は他の人がいる時には敬語だけど、あたしと二人きりのときは大体タメ口で話かけてくれる。
コレはあたしから頼んだことで、幼馴染に他人行儀みたいに敬語を使われるのはなんか寂しいと言うと、他に誰もいない時にこうしてタメ口で話してくれる。
それはいいのだけど……。
「どうしてあたしの胸を指さすのかしら……っ!?」
あたしはクロトを睨みつけると、彼は腕組みをしてあからさまに胸から視線を逸らした。
「気のせいだ。それよりステラ、冒険者になるとはどう言うことだ。仮にもお前はこの国の第三王女様なんだぞ?騎士団の訓練だけならまだしも、冒険者になったとあっては流石に国王様も王妃様も黙ってはいないぞ……」
「冒険者のほうが楽しそうだからよ!」
「……ステラに何かあったら俺は騎士団長からは勿論、トリエステ王や王妃様、さらにエルトにまで責任を追及されるんだぞ?」
「あら、そんなに心配ならクロトもあたしに付いてくればいいでしょ?それならクロトはあたしをすぐ近くで見張れるし余計な心配もしなくて済む。あたしはこの退屈なお城から飛び出して冒険者になれる。まさにウィン・ウィンじゃない!」
「あのな……、俺は騎士団としての仕事もあるんだぞ?そんな暇があると思うか?」
「ならクロトも冒険者になればいいじゃない」
あたしはそう言うと、クロトは額に手を当てて再びため息をついた。
「はぁ……。ステラ、お前は俺の話を聞いていたのか……?」
「聞いていたわよ?でも、あたしのお目付け役も大事な仕事なんでしょ?自分から名乗り出たくらいなんだから、さぞかし大事な役割なんでしょうねぇ~。だけど、クロトが来ないというのならそれならそれでいいわ。そうしたらあたしは羽を広げて伸び伸びと冒険者生活を謳歌してみせるわ」
あたしは目を閉じると、その場でくるくると回転してみせる。
そう、お目付け役という枷を外されたあたしは自由になるのよ。
「はぁ……分かったよ。ステラに付き合うよ。世間知らずなお姫様を放っておいたらどんなトラブルに巻き込まれるか分かったものじゃないからな……」
「それ、どういう意味よ……っ!」
クロトはあたしの我が儘に遂に折れ、首を縦に振るも、あたしは彼に食ってかかる。
「そのままの意味だ」
「……まあいいわ。クロトが来てくれるというのならあたしも安心だわ。一人じゃ内心心細かったけど、あなたが来てくれるのなら心強いわ」
「その代わり、俺が危険だと判断したらいくらステラでも全力で止めるからな」
「ええ、わかったわ。それと、冒険者をしている間はあたしはステラじゃないわ。ルーナ・ランカスターよ!」
「はいはい、好きにしてくれ……」
「それじゃあ、クロト!さっそく街に出発よっ!」
あたしはクロトの手を取ると部屋を飛び出したのだった。
10
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ
柚木 潤
ファンタジー
実家の薬華異堂薬局に戻った薬剤師の舞は、亡くなった祖父から譲り受けた鍵で開けた扉の中に、不思議な漢方薬の調合が書かれた、古びた本を見つけた。
そして、異世界から助けを求める手紙が届き、舞はその異世界に転移する。
舞は不思議な薬を作り、それは魔人や魔獣にも対抗できる薬であったのだ。
そんな中、魔人の王から舞を見るなり、懐かしい人を思い出させると。
500年前にも、この異世界に転移していた女性がいたと言うのだ。
それは舞と関係のある人物であった。
その後、一部の魔人の襲撃にあうが、舞や魔人の王ブラック達の力で危機を乗り越え、人間と魔人の世界に平和が訪れた。
しかし、500年前に転移していたハナという女性が大事にしていた森がアブナイと手紙が届き、舞は再度転移する。
そして、黒い影に侵食されていた森を舞の薬や魔人達の力で復活させる事が出来たのだ。
ところが、舞が自分の世界に帰ろうとした時、黒い翼を持つ人物に遭遇し、舞に自分の世界に来てほしいと懇願する。
そこには原因不明の病の女性がいて、舞の薬で異物を分離するのだ。
そして、舞を探しに来たブラック達魔人により、昔に転移した一人の魔人を見つけるのだが、その事を隠して黒翼人として生活していたのだ。
その理由や女性の病の原因をつきとめる事が出来たのだが悲しい結果となったのだ。
戻った舞はいつもの日常を取り戻していたが、秘密の扉の中の物が燃えて灰と化したのだ。
舞はまた異世界への転移を考えるが、魔法陣は動かなかったのだ。
何とか舞は転移出来たが、その世界ではドラゴンが復活しようとしていたのだ。
舞は命懸けでドラゴンの良心を目覚めさせる事が出来、世界は火の海になる事は無かったのだ。
そんな時黒翼国の王子が、暗い森にある遺跡を見つけたのだ。
*第1章 洞窟出現編 第2章 森再生編 第3章 翼国編
第4章 火山のドラゴン編 が終了しました。
第5章 闇の遺跡編に続きます。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる