上 下
72 / 77
おまけ 後日談

お料理大作戦!

しおりを挟む
 ーサナー

 ユーリの子供を妊娠して安定期に入った頃、わたしはとある事に頭を悩ませていた……。

 その頭を悩ませている事というのが、わたしの料理。

 わたしは料理を作るのが好きだ。 
 でもユーリやお姉ちゃんが言うには、わたしの料理は劇物らしく、特にお姉ちゃんからは下手に食べれば命の危険すらあると言われた。

 子供が産まれれば離乳食を作る機会は必ず訪れる。
 しかし、劇物と言われたわたしの料理を子供に食べさせるわけには行かない……。

「これはいよいよ本気で料理をどうにかしないといけないかな……」

 わたしは悩みに悩んだ末、とある人に料理を教えてもらうことにした。


「……という訳でわたしに料理を教えてくださいっ!」

 わたしは仕事の合間を縫ってお姉ちゃんとグレンさんに頭を下げてお願いすることにした。

「まあ……、そういう事なら厨房スタッフとして経験を重ねてみるか……?」

「グレンさん、ダメですよっ!紗奈を厨房に立たせたら死者が出かねませんよ!」

「な……っ!?」

 お姉ちゃんの言葉を聞き、グレンさんは絶句していた。

「ち……違うもんっ!わたしだって旅をしてた時に何回かは料理したことあるよっ!」

「……紗奈がそこまで言うのなら、あなたの料理見せてもらうわよ」

「いいよ!わたしの料理を見て驚かないでよねっ!」

「はいはい……、どうせ別の意味で驚かされそうだけどね」

 お姉ちゃんはため息をつきながらも、腕組みをして冷ややかな目でわたしを見ていた。

 くう……!絶対にお姉ちゃんの鼻を明かしてやるんだからっ!!

 わたしは持てる技量を全て注ぎ込んで調理を開始した!

 そして……。


「出来たよっ!」

「こ……これは……っ!」

「なんてこった……!まさかこんなものが……っ!」

 わたしが作った料理にお姉ちゃんもグレンさんも驚愕していた。

 ふふん、どうよ……!わたしが本気を出せばこんなもんよっ!

 わたしが作ったフルコースの数々……、まず一品目は小手調べ的な感じで作った前菜のプレーンオムレツ!

 次に、サラダのドレッシング和え!スープは魚のスープ!デザートはアイスクリームを使ったパフェ!飲み物は野菜や果物を使ったミックスジュース!
 そして、メインディッシュはワインでフランベをして焼き上げ、お手製のソースをかけたウサギ肉のステーキっ!

 どうよ……、この完璧な料理の数々は……!

「紗奈……、一つ聞きたいんだけど、この黒い塊は何……?」

「お姉ちゃん見てわからないの?プレーンオムレツだよ!」

「それじゃあ……サナちゃん、この野菜と思われるものにかかっている如何にも毒々しいこの紫色のものはなんだ……?なんだか、このかけられているヤツのせいか、みるみるうちに野菜が萎びて行っているんだが……」

「それはわたしのお手製ドレッシングですよグレンさんっ!」

「じゃあ、この魚が毒の沼地みたいなものに浸かったいるのは何よ……?何だか魚の身が溶け落ちてるんだけど……」

「それは魚を使ったスープだよ、お姉ちゃん!」

「じ……じゃあ……、このパフェグラスに入れられたドス黒い物は何だ……?」

「グレンさん、それはパフェです!」

「紗奈、このコップに入っているドロっとした見るからにヤバそうな色をしているのは何……?」

「お姉ちゃん、知らないの?ミックスジュースだよ!」

「な……なら、この炭化したものの上にスライムみたいなものが乗せられているものは……?」

「グレンさんお目が高いですね、それが今回のメインディッシュ、ウサギ肉を使ったステーキです!今回はわたしのオリジナルソースをかけてみましたっ!」

 ふふん、どうよ!
 これならお姉ちゃんもグレンさんもわたしの腕を認めざるを得ないでしょっ!

「サナちゃん……」

「はい!なんですかグレンさんっ!」

「君は二度とキッチンに立っちゃダメだ……」

「んな……っ!?」

「そりゃそうよね……、こんなもの食べさせられたら死人が出るわ……」

「ゆ……ユーリは食べても死ななかったよっ!」

「ユーリ……罰ゲームか何かで紗奈の手料理を食べさせられたのね……なんて不憫な子……」

 お姉ちゃんは右手で口元を押さえながらホロリと涙を滲ませていた。

「ちょっとお姉ちゃん……!そこまで言うの失礼じゃない……っ!?」

「いや……、流石にこれを見せられたらフォローのしようがない……」

 グレンさんまで……!

「そこまで言うのならわたしに料理を教えてよっ!」

「……済まない、俺ではサナちゃんの力にはなれそうもない。完全な力不足だ」

「私もよ……。紗奈のこの壊滅的な料理の腕をまともにするのは私では無理よ……」

 ガーン……っ!

 わたしはショックのあまりその場に崩れ落ちた……。

 そして、これから数日後、冒険者ギルドのホールに「離乳食」というメニューが追加されたのだった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました

竹桜
ファンタジー
 自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。  転生後の生活は順調そのものだった。  だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。  その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。  これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

処理中です...