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三章 恋に落ちた少年と少女
お正月とLOVEる
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今日はこの世界での一月一日……、元の世界で言うところの元旦。
この世界でもお正月の風習はあるようで、リビングには昨日町で買ったお正月用の料理が所狭しと並んでいる……のだけど、そのリビングが大変なことになっていた……。
昨日エミリーとルースさんが料理と一緒に買ってきた大量のお酒を昨晩から二人が一晩中飲み明かし、今現在その二人は酒瓶を抱きかかえて寝てしまっていた。
一方のユーリもまた、酔ったエミリーに無理矢理お酒を飲まされていたため、完全にダウンしてしまっている。
そう、この家は正月早々カオス状態となっているのだっ!
外は雪こそ降ってないものの、風が冷たいため窓は開けておらず、そのためリビングはかなりお酒臭い……。
このままじゃ、このニオイだけでわたしまで酔ってしまいそうだ……。
「うぷ……」
本当にニオイだけで酔ってきた……。
わたしはこの酒臭い家から避難するため、コートを着て外へと出かけることにした。
借家を出たわたしは、山の麓へとやって来ていた。
ここへは別に薪を拾いに来たと言うわけじゃなく、魔法の練習に来た。
以前ルースさんが言っていた、「如何に初級魔法でも、極めれば複数の敵を同時に狙える」という言葉を信じ、このロブスの町に滞在してから時間を見つけては練習していた。
「アイスニードル!」
五メートル先に突き刺してある木の棒へと向かってアイスニードルを放つ!
わたしの杖からは五本のアイスニードルが生み出されるが、それらは一つの木の棒へと向かって飛んでいく。
「はあ……、ダメだ……」
それを見てわたしは本日何度目かのため息をついた。
わたしの目標としては、生み出された五本のアイスニードルがそれぞれの木の棒へと当てることなんだけど、何度やっても一つの対象にしか飛んでいかない……。
ルースさんは頭の中でイメージをしろって言ってたけど、複数のことを同時にイメージしろっていうのが実際無理がある。
こうして修行や特訓をしていると、何かの拍子でいきなり出来るようになるというパターンもありそうだけど、実際にはそんなものは起こらない。
「まったく、マンガやアニメじゃあるまいし……」
誰に言う訳でもなく一人呟くと、ふととある考えが浮かんだ。
同時に五つのアイスニードルを操るんじゃなくて、一つづつ操ればどうだろう……?
例えば、生み出したアイスニードルを空中で留め、それを一本づつ撃ち出す……。
そうすれば同時とは言えないけど、複数の相手を狙うことができるかもしれない。
「……やってみよう」
物事はトライアンドエラーの繰り返し、確か学校の先生がそう言っていたような気がする。
「アイスニードル!」
わたしは再び魔法を唱え、アイスニードルを発生させると、そのまま空中に留める。
こうしてアイスニードルを空中に留めているだけでも分かったのだけど、かなりの集中力を要求させる……。
唱えたら勝手に飛んで行こうとしているものを、無理矢理留めているのだ、例えるなら進もうとしているものに対して無理矢理ブレーキをかけている感じ。
こ……これは早くしないと集中力が切れてしまう……!
わたしは頭の中で五本のアイスニードルの中の一本を動かすようにイメージする……。
すると、イメージした一本が少しではあるけど動かすことが出来ていた。
(よし……、まずはこの一本を撃ち出して……!)
先ほど動かした一本のアイスニードルのブレーキを解除して撃ち出すようにイメージする……!
すると、その一本が飛んでいったかと思ったらそれに続いて残りも全て飛んでいってしまった。
「はあ……、ダメだ……。難しい……」
わたしはまたため息をつくとその場へとへたり込んだ。
一本のアイスニードルのブレーキを緩めた瞬間、残りのアイスニードルも全て飛び出してしまった……。
例えるなら両手で纏めてギュッと握っていた物を、一つだけ飛ばすために握っていた手を緩めた瞬間、一本目が飛び出したのと同時にその隙間から他の四つも飛んで行ってしまったような感じ。
「うーん……、どうしたらいいんだろ……」
わたしはその場に座り込んで頭を悩ます。
一本目を撃ち出した瞬間にまたギュッとブレーキをかければいいのか、それとも一つ一つにブレーキをかけるようにイメージをすればいいのか……。
「はあ……、まだまだ課題だらけだ……」
この日は何度練習しても、結局その答えを見出すことが出来ないままわたしは借家へと戻ることにした。
◆◆◆
借家へと戻るとわたしは絶句した……。
なんと、ユーリとエミリーが抱き合って寝ていたのだっ!
二人は姉弟で、服を着ているため裸で抱き合っている訳じゃないんだけど、それでもユーリが他の女の人に抱きついている姿を見ると、なんだかとても嫌な気持ちになってくる。
これが嫉妬と言うものなんだろうか、わたしの胸の奥底からトゲトゲとした感情が湧き上がり、渦巻いていた。
わたしの……わたしのユーリなのに……っ!
「ちょっとエミリーっ!ユーリを離してよ!ユーリはわたしのなのっ!ユーリはユーリで、あなたはわたしの彼氏でしょっ!?」
わたしは力付くで抱き合っている二人を引き離そうとするけど、そこはユーリもエミリーも冒険者。
思った以上に力が強く、非力なわたしではなかなか引き離せない……!
気が付いたらわたしの目からは涙があふれ出ていた……。
ユーリに裏切られた……。
まさにそんな気分だった。
「もういい!知らないっ!ユーリのバカっ!!」
わたしは泣きながら自分のマジックポーチから取り出したペンで、ユーリの顔にでっかく「バカ!浮気者っ!シスコンっ!!」となぐり書くと自分の部屋へと閉じこもったのだった……。
ーユーリー
「……リ」
「……ーリ!」
「ユーリ……っ!」
誰かに名前を呼ばれている……。
サナかな……?
僕いつの間にか寝ちゃってたんだ……。
お酒を飲まされたからだろうか、鈍く痛む頭を抱えながらうっすらと目を開くと目の前にいるのはサナじゃなくて姉さんだった。
「姉さん……?」
「ユーリ、やっと起きたわね……。それよりユーリ、あんたの顔……酷いことになってるわよ?」
「え……?」
姉さんに言われて鏡で自分の顔をみると、そこには「バカ!浮気者っ!シスコンっ!!」と書かれていた。
誰がこんな事を……!
「たぶん、それはサナの字ね……。目を覚ましたらあたしとユーリが抱き合って寝ていたからサナがそれを見て怒ったんでしょ……。酔い潰れていたとは言え、サナには悪いことをしたわ……」
「……僕サナのところに行ってくる!」
僕は顔に描かれた文字を消すと、すぐさまサナの部屋へと向かった。
サナの部屋の前へとやって来ると、中からは何の音もしない。
いるのかいないのかすらドアの前からじゃ分からない。
「サナ……いる……?」
ドアをノックして呼びかけるけど返事がない。
何度もサナへと呼びかけるも彼女は返事すら返してこない。
「サナ、入るよ……?」
僕はそう言い、ゆっくりとサナの部屋のドアを開けると、そこは普段綺麗に片付けている彼女にしては珍しく散らかっていた。
たぶん怒りに身を任せてやったのだろう、ノートや本は乱雑に投げ散らかされ、足の踏み場もなかった。
そんな中、僕がサナに一番最初に買ってあげた短剣や魔道士の腕輪だけはテーブルの上にキチンと置かれている。
今のサナは魔法をメインに戦っている上に、賢者の腕輪をつけているので、このダガーや魔道士の腕輪はもう必要ないはずなんだけど、僕との出会いを大切に思ってくれているのか、今でも捨てずに大切に持っているようだ。
そして、ベッドへと目をやると布団に潜っているのか、彼女がいると思われる所だけが妙に膨らんでいた。
「サナ……」
サナへと声を掛けると彼女の身体が布団越しではあるけど、ピクっと動いたような気がする。
「サナ、ゴメンね……。寝ていたとはいえサナを悲しませてしまったみたいで……。でも、僕はサナ一筋だ!それだけは信じてほしい……!」
「ユーリは悪くないよ……。だって姉弟でも仲の良い人達はいるし、抱き合っていても不思議じゃないもん。ただ、わたしがそれを見て変に嫉妬しただけだもん。嫌だよね……こんな嫉妬深い女なんて……。ユーリとエミリーは姉弟で仲が良いの知ってるのに……それをわたしは変に嫉妬して……ユーリに酷いことまでして……うう……ひっく……!ううぅぅ……っ!」
布団の中でサナのくぐもった泣き声が聞こえて来る……。
僕はそんなサナの被っている布団をゆっくりと捲ると、そこには目を赤く腫らし、頬を涙で濡らしたサナの姿があった。
「サナ……」
「いや……!見ないで……!わたしの顔、今酷いことになってるから……っ!!」
布団を捲られたサナは、再び布団を被ろうとするも、僕はそれを許さず、サナの両手を布団から引き離し、そのまま彼女の両手を自分の手で押さえつけた。
「ユーリ……?」
「バカだなサナは……。僕が好きなのはサナだけだよ。確かに姉さんとは仲はいいけど、サナの思っているような関係になるわけないじゃないか。それに、姉さんも僕の事をただの弟としか思ってないからね。それに……、その……僕が愛しているのはサナだけだよ」
僕はそっとサナの唇にキスをすると、泣きはらした目を隠す事もなく、僕へと抱きついてきたサナをしっかりと抱きしめると、そのままベッドへと押し倒したのだった……。
「ユーリ、ゴメンなさい……。わたし、ユーリを信じることが出来なかった……。エミリーはユーリのお姉さんだって分かってるのに……ユーリがエミリーと抱き合ってるのを見たら急に不安になって……」
「ううん、気にしないで……。まあ、でも僕のほうにも落ち度があったからそこはおあいこってことで……」
「でも……!」
サナは自分が悪いと言おうとすると、僕はサナの言葉を遮るように唇を塞いだ。
「ん……」
「んっ……!?ん……!んん……っ!はぁ……っ!」
しばらくキスをすると、サナの顔はすぐに蕩けたような表情へと変わった。
そんなサナの顔を見た僕は微笑むと、ギュッと彼女の身体を強く抱きしめてきた。
「サナ……愛してるよ……」
「うん……わたしも」
そして、お互い見つめ合うと、どちらからともなく引き寄せられるようにお互いの唇をそっと重ね、愛し合ったのだった……。
この世界でもお正月の風習はあるようで、リビングには昨日町で買ったお正月用の料理が所狭しと並んでいる……のだけど、そのリビングが大変なことになっていた……。
昨日エミリーとルースさんが料理と一緒に買ってきた大量のお酒を昨晩から二人が一晩中飲み明かし、今現在その二人は酒瓶を抱きかかえて寝てしまっていた。
一方のユーリもまた、酔ったエミリーに無理矢理お酒を飲まされていたため、完全にダウンしてしまっている。
そう、この家は正月早々カオス状態となっているのだっ!
外は雪こそ降ってないものの、風が冷たいため窓は開けておらず、そのためリビングはかなりお酒臭い……。
このままじゃ、このニオイだけでわたしまで酔ってしまいそうだ……。
「うぷ……」
本当にニオイだけで酔ってきた……。
わたしはこの酒臭い家から避難するため、コートを着て外へと出かけることにした。
借家を出たわたしは、山の麓へとやって来ていた。
ここへは別に薪を拾いに来たと言うわけじゃなく、魔法の練習に来た。
以前ルースさんが言っていた、「如何に初級魔法でも、極めれば複数の敵を同時に狙える」という言葉を信じ、このロブスの町に滞在してから時間を見つけては練習していた。
「アイスニードル!」
五メートル先に突き刺してある木の棒へと向かってアイスニードルを放つ!
わたしの杖からは五本のアイスニードルが生み出されるが、それらは一つの木の棒へと向かって飛んでいく。
「はあ……、ダメだ……」
それを見てわたしは本日何度目かのため息をついた。
わたしの目標としては、生み出された五本のアイスニードルがそれぞれの木の棒へと当てることなんだけど、何度やっても一つの対象にしか飛んでいかない……。
ルースさんは頭の中でイメージをしろって言ってたけど、複数のことを同時にイメージしろっていうのが実際無理がある。
こうして修行や特訓をしていると、何かの拍子でいきなり出来るようになるというパターンもありそうだけど、実際にはそんなものは起こらない。
「まったく、マンガやアニメじゃあるまいし……」
誰に言う訳でもなく一人呟くと、ふととある考えが浮かんだ。
同時に五つのアイスニードルを操るんじゃなくて、一つづつ操ればどうだろう……?
例えば、生み出したアイスニードルを空中で留め、それを一本づつ撃ち出す……。
そうすれば同時とは言えないけど、複数の相手を狙うことができるかもしれない。
「……やってみよう」
物事はトライアンドエラーの繰り返し、確か学校の先生がそう言っていたような気がする。
「アイスニードル!」
わたしは再び魔法を唱え、アイスニードルを発生させると、そのまま空中に留める。
こうしてアイスニードルを空中に留めているだけでも分かったのだけど、かなりの集中力を要求させる……。
唱えたら勝手に飛んで行こうとしているものを、無理矢理留めているのだ、例えるなら進もうとしているものに対して無理矢理ブレーキをかけている感じ。
こ……これは早くしないと集中力が切れてしまう……!
わたしは頭の中で五本のアイスニードルの中の一本を動かすようにイメージする……。
すると、イメージした一本が少しではあるけど動かすことが出来ていた。
(よし……、まずはこの一本を撃ち出して……!)
先ほど動かした一本のアイスニードルのブレーキを解除して撃ち出すようにイメージする……!
すると、その一本が飛んでいったかと思ったらそれに続いて残りも全て飛んでいってしまった。
「はあ……、ダメだ……。難しい……」
わたしはまたため息をつくとその場へとへたり込んだ。
一本のアイスニードルのブレーキを緩めた瞬間、残りのアイスニードルも全て飛び出してしまった……。
例えるなら両手で纏めてギュッと握っていた物を、一つだけ飛ばすために握っていた手を緩めた瞬間、一本目が飛び出したのと同時にその隙間から他の四つも飛んで行ってしまったような感じ。
「うーん……、どうしたらいいんだろ……」
わたしはその場に座り込んで頭を悩ます。
一本目を撃ち出した瞬間にまたギュッとブレーキをかければいいのか、それとも一つ一つにブレーキをかけるようにイメージをすればいいのか……。
「はあ……、まだまだ課題だらけだ……」
この日は何度練習しても、結局その答えを見出すことが出来ないままわたしは借家へと戻ることにした。
◆◆◆
借家へと戻るとわたしは絶句した……。
なんと、ユーリとエミリーが抱き合って寝ていたのだっ!
二人は姉弟で、服を着ているため裸で抱き合っている訳じゃないんだけど、それでもユーリが他の女の人に抱きついている姿を見ると、なんだかとても嫌な気持ちになってくる。
これが嫉妬と言うものなんだろうか、わたしの胸の奥底からトゲトゲとした感情が湧き上がり、渦巻いていた。
わたしの……わたしのユーリなのに……っ!
「ちょっとエミリーっ!ユーリを離してよ!ユーリはわたしのなのっ!ユーリはユーリで、あなたはわたしの彼氏でしょっ!?」
わたしは力付くで抱き合っている二人を引き離そうとするけど、そこはユーリもエミリーも冒険者。
思った以上に力が強く、非力なわたしではなかなか引き離せない……!
気が付いたらわたしの目からは涙があふれ出ていた……。
ユーリに裏切られた……。
まさにそんな気分だった。
「もういい!知らないっ!ユーリのバカっ!!」
わたしは泣きながら自分のマジックポーチから取り出したペンで、ユーリの顔にでっかく「バカ!浮気者っ!シスコンっ!!」となぐり書くと自分の部屋へと閉じこもったのだった……。
ーユーリー
「……リ」
「……ーリ!」
「ユーリ……っ!」
誰かに名前を呼ばれている……。
サナかな……?
僕いつの間にか寝ちゃってたんだ……。
お酒を飲まされたからだろうか、鈍く痛む頭を抱えながらうっすらと目を開くと目の前にいるのはサナじゃなくて姉さんだった。
「姉さん……?」
「ユーリ、やっと起きたわね……。それよりユーリ、あんたの顔……酷いことになってるわよ?」
「え……?」
姉さんに言われて鏡で自分の顔をみると、そこには「バカ!浮気者っ!シスコンっ!!」と書かれていた。
誰がこんな事を……!
「たぶん、それはサナの字ね……。目を覚ましたらあたしとユーリが抱き合って寝ていたからサナがそれを見て怒ったんでしょ……。酔い潰れていたとは言え、サナには悪いことをしたわ……」
「……僕サナのところに行ってくる!」
僕は顔に描かれた文字を消すと、すぐさまサナの部屋へと向かった。
サナの部屋の前へとやって来ると、中からは何の音もしない。
いるのかいないのかすらドアの前からじゃ分からない。
「サナ……いる……?」
ドアをノックして呼びかけるけど返事がない。
何度もサナへと呼びかけるも彼女は返事すら返してこない。
「サナ、入るよ……?」
僕はそう言い、ゆっくりとサナの部屋のドアを開けると、そこは普段綺麗に片付けている彼女にしては珍しく散らかっていた。
たぶん怒りに身を任せてやったのだろう、ノートや本は乱雑に投げ散らかされ、足の踏み場もなかった。
そんな中、僕がサナに一番最初に買ってあげた短剣や魔道士の腕輪だけはテーブルの上にキチンと置かれている。
今のサナは魔法をメインに戦っている上に、賢者の腕輪をつけているので、このダガーや魔道士の腕輪はもう必要ないはずなんだけど、僕との出会いを大切に思ってくれているのか、今でも捨てずに大切に持っているようだ。
そして、ベッドへと目をやると布団に潜っているのか、彼女がいると思われる所だけが妙に膨らんでいた。
「サナ……」
サナへと声を掛けると彼女の身体が布団越しではあるけど、ピクっと動いたような気がする。
「サナ、ゴメンね……。寝ていたとはいえサナを悲しませてしまったみたいで……。でも、僕はサナ一筋だ!それだけは信じてほしい……!」
「ユーリは悪くないよ……。だって姉弟でも仲の良い人達はいるし、抱き合っていても不思議じゃないもん。ただ、わたしがそれを見て変に嫉妬しただけだもん。嫌だよね……こんな嫉妬深い女なんて……。ユーリとエミリーは姉弟で仲が良いの知ってるのに……それをわたしは変に嫉妬して……ユーリに酷いことまでして……うう……ひっく……!ううぅぅ……っ!」
布団の中でサナのくぐもった泣き声が聞こえて来る……。
僕はそんなサナの被っている布団をゆっくりと捲ると、そこには目を赤く腫らし、頬を涙で濡らしたサナの姿があった。
「サナ……」
「いや……!見ないで……!わたしの顔、今酷いことになってるから……っ!!」
布団を捲られたサナは、再び布団を被ろうとするも、僕はそれを許さず、サナの両手を布団から引き離し、そのまま彼女の両手を自分の手で押さえつけた。
「ユーリ……?」
「バカだなサナは……。僕が好きなのはサナだけだよ。確かに姉さんとは仲はいいけど、サナの思っているような関係になるわけないじゃないか。それに、姉さんも僕の事をただの弟としか思ってないからね。それに……、その……僕が愛しているのはサナだけだよ」
僕はそっとサナの唇にキスをすると、泣きはらした目を隠す事もなく、僕へと抱きついてきたサナをしっかりと抱きしめると、そのままベッドへと押し倒したのだった……。
「ユーリ、ゴメンなさい……。わたし、ユーリを信じることが出来なかった……。エミリーはユーリのお姉さんだって分かってるのに……ユーリがエミリーと抱き合ってるのを見たら急に不安になって……」
「ううん、気にしないで……。まあ、でも僕のほうにも落ち度があったからそこはおあいこってことで……」
「でも……!」
サナは自分が悪いと言おうとすると、僕はサナの言葉を遮るように唇を塞いだ。
「ん……」
「んっ……!?ん……!んん……っ!はぁ……っ!」
しばらくキスをすると、サナの顔はすぐに蕩けたような表情へと変わった。
そんなサナの顔を見た僕は微笑むと、ギュッと彼女の身体を強く抱きしめてきた。
「サナ……愛してるよ……」
「うん……わたしも」
そして、お互い見つめ合うと、どちらからともなく引き寄せられるようにお互いの唇をそっと重ね、愛し合ったのだった……。
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