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一章 異世界に飛ばされた女子高生

ホーンラビット

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 タガーを腰に差したわたしは、ユーリに連れられそのまま街を出ると近くにある森へとやって来ていた。

 ここに来た目的はエミリーから課せられた課題の一つ、ホーンラビットを倒すため……なんだけど……。

「ほら、サナそっちにホーンラビットが行ったよっ!」

「う……、うん……」

 ホーンラビット……、どう言うものなのか気にはなっていたけど、その容姿を見たわたしは手にナイフを握ったまま固まってしまっていた……。

 そのホーンラビットという動物はウサギに小さな角がついているだけで、見た目は元の世界にいたウサギとほぼそのまま。

 違いがあるとすれば額に小さな角があることと、毛色が緑色な事くらい。

 こんな可愛い動物を倒せだなんてユーリもエミリーは鬼だ……っ!

「サナ、こんなにいるんだからホーンラビット十頭くらいすぐに倒せるよ」

 そう、わたしの周りにはホーンラビットが何故か群れをなしてまとわりついている。
 その数は二十頭近くはいる。

 確かにユーリの言う通り倒そうと思えばすぐにでも倒せる。
 でも、そのためにはホーンラビットの身体にこのナイフを突き立てなければいけない。

「うう~……」

 わたしは思わず手にしたナイフとホーンラビットを見比べる……。

 こ、こんなので斬りつけられたり痛いよね……?

 ナイフで切られればわたしだって痛いのだ、ホーンラビット達も痛くないはずがない!

(ダメだ……!わたしには出来ない……っ!)

 ナイフを腰に差した鞘へと仕舞うとそのまましゃがみ込み、一頭のホーンラビットを抱きかかえる。

 すると、その体温が手に伝わって来た。

「あの、サナ?何してるの……?」

「ああ~……、可愛い……!ねえユーリっ!この子持って帰ったらダメかなっ!?」

 抱きかかえたホーンラビットがつぶらな瞳でわたしを見つめながら鼻をヒクヒクとさせている。

 あまりの可愛さにわたしはお持ち帰りを提案してみた。

「はぁ~……。あのねサナ……。そのホーンラビットを持って帰ってもきっと姉さんに殺されて食材になるだけだと思うよ……?」

「そんな……、ヒドイ……っ!その時はユーリも一緒にエミリーにこの子を殺さないでって頼んでよ……っ!!」

 わたしは深くため息を付いているユーリにしゃがみ込んだまま上目遣いで見つめる……。

 こんな可愛い子を殺してしまうなんでなんて酷いよ……!

「そうは言うけどねサナ……、なんで姉さんがホーンラビットを課題に入れているか分かる?」

「何でって……、虐待?」

「違うよ……。ホーンラビットは旅の食料に向いた動物なんだよ。首をはねて血抜きをした後に、毛皮を剥いで調理する……。そのためにはまずは倒さないといけない」

「そ……、そんな……っ!」

 こんな可愛いウサギを殺して食べるんて……!

「サナ、旅をするにはまずは食料が必須になる、それはわかるね?」

「う、うん……」

「街で食料をかってもいいけど、荷物になるしお金もかかる……。ならどうするかと言うと野生動物や時には倒した魔物を調理して食べる、これが一番なんだ。そして、ホーンラビットはその食料に適した動物って事。だから倒すだけじゃなくて捌き方を覚えることも必須なんだ、分かる?」

「ユーリの言っていることは分かるけど……、でも……」

 改めてホーンラビットへと目を向ける……。

 見た目も可愛くつぶらな瞳でわたしを見てくるホーンラビット……。

 これを倒して……、倒して……!

「やっぱりわたしには無理……!さ、お逃げ」

 わたしはホーンラビットを手放すとそのまま森の奥へと去っていった。

 これでいいんだ……、やっぱりわたしにはあんな可愛いホーンラビットを殺すなんて出来ない……!

「はぁ~……、ダメだこりゃ……。ん……?」

 そんなわたしを見てユーリは深くため息を付い付いていると森の奥の方から何かガサガサ物音が聞こえてきた。

 新しいホーンラビットなのかな……?

 だが、この時のわたしは気が付かなかった……。

 ユーリが険しい顔をしてその茂みの方へと目を向けていた事に……っ!
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