山桜記 陰謀渦巻く北信越のご城下 幕府御庭番の目を潜り御家騒動断絶を乗り越えられるか‼️

あとがき

下前田御城下　宿場町　打身　挫き　切り傷さまざまな病いに効能があるとされる源泉の湯治場で彦四郎は露天の湯に浸かりながら自由を得た我が道に満足していた。
武家の身分に縛られず、土地に縛られず　我が身一つ養っていけば良い。

元神鶴藩の浪士はどうしていようか…
萩は駒姫の身の回りの世話をする奥女中として大聖寺藩江戸上屋敷に奉公が決まり、仁吉、助蔵は御側御用取継加納久通配下に取り立てられ、桃吾は南町奉行所配下の与力として召し抱えられた。


賑わいを見せる湯治場は裸になれば身分の上下はわからない。

賑やかな湯畑を離れ　そろそろ座敷で、と思っていると、

「彦さん　もうあがるのかい？　」

聞き覚えのある声に露天風呂の端を見上げると、湯煙で顔は定かではないが、彦四郎の今の同士だった。


「新田様…」

「〝新田様〟はよして下さいよ、左馬之助でも、佐助でも…そうお呼び下さい。」

吉宗直属幕府御庭番衆新田左馬之助が　水埜彦四郎が下前田に逗留していると聞きつけ　馳せ参じた。


「して、左馬之助殿、江戸表から何か？」


「いや、上様が　〝彦四郎が長く諸国を巡って諸藩の内情を事細かく伝え及ぶは、まことに　忠義もの〟と　お喜びなのだが、たまには登城して顔を見せよ、と仰せなのだ、しかるにその方の働き良くば、我等の働きかすんでしまうゆえ、ちと　江戸表で羽目を外そうぞ…な、ハハハハハハ～」






　　　　　　　　　　　　　2022.5.25   完