猫神様に嫁ぎます。ペットの猫が神様ぁぁっ⁈ 神様と交わるなんてっありえねぇ〜

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神界転生

新婚旅行〜麒麟と嫦娥の物語

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雲の乗り物に乗って南の地で南斗星君に仕える鈴兎の師匠を訪ねていく道中…

二人の頭上を飛び越していく獣に出くわした。

『蒼霊 久しぶりだなあー』

その耳にズシンと響く重い声色の主は 瑞獣の 麒麟だった。



『麒麟か! あいも変わらず無駄に飛び回っておるのだな』
 

『馬鹿を言えっ お前のように根暗で引きこもりの神ではないのだ…人間達が 我も我もと私の姿を見たがるのだよ…それこそ私が上古の尊神に与えられた役目ではないか』


二神獣共に絶大な力を持っていたが、
麒麟が陽気な幸運の瑞獣なら蒼霊は陰気な引きこもり瑞獣と天界の神々から認知されていた。

それはまるで蒼霊は人間達の崇拝も得られない木偶の坊のような認識とも言えなくもないが、当の蒼霊殿下は 天界の神々からの賛辞を受けようなどこれっぽっちも願ってはいなかった。



麒麟は二人の乗っている雲に並走するように速度を落として話しかけてきた。


『それは お役目ご苦労様…』


陽の気をふんだんに撒き散らしながら 蒼霊の嫌味も軽く受け流して



『ところで お前の横にいる 兎の小仙は 何者だ? 』

顔は竜 躰に稲妻を纏いながら胴体は馬か鹿のようにしなやかで全体を鱗が覆っている。長い尾は雄獅子か牛に似て足は馬の蹄のようだった。


   『我が妻よ』



『ほほうっ そうであったか! とうとう良き伴侶に巡り会えたのだな! 私はまたお前も 東王父と同じ蒼霊の墟の石から産まれたから 婚姻石に名が刻まれていないとばかり思っていたよ アハハハ』



『尊神と同等なわけがなかろうがっ!
尊神は全ての煩悩劫欲を超越した存在であらせられるのよ』



  『なるほどな…其方にとっての東華帝君は 唯一無二の存在だったな』


麒麟はさも愉快そうに蒼霊達の周りをぐるぐると囲うように旋回した。

『東王父は 全ての神が崇拝する唯一無二の存在だ!』



『そうめくじらたてなさんな、勿論お前の言う通りだが、まぁ‥』

麒麟はまぁの後の言葉を濁した。



鈴兎の知らない 知ることすら許されない神々の縁を二人は安易と話している。



『わかっているなら いちいち確認するな…』

蒼霊の瞳孔がキュッと縮む。




『アハハハ 久しぶりだから ちょっと揶揄ってみたくなったのよ…ところで 今から何処に行くのだ?』

『妻の師匠が我らの縁を結んでくれたらしいので礼儀を尽くそうと思ったのだ』



『ほぉ これはまた殊勝な心掛け…それでは私からも 二人の行く末が祥多かれと願っていようぞ   では、またいずれ…な』

麒麟はそう言うと 二人が乗る雲から離れていった。






南海の地は湿度が高く常に雷神の好む分厚い雲が立ち上がる。


蒼霊は 雲の中を突っ切るとびしょ濡れになり稲妻に撃たれないとも限らないと考え、本格的な雷雲に遭わないうちに地上に降りる事を選んだ。


『小糸、此処からは 地上に降りて其方の師匠に会いに行こう。』





厚い雲の隙間を縫って二人が降り立った地上は既に太陽が沈み 東南の夜空に月が出ていた。


『…何て美しい月!』

鈴兎はその場に立ち尽くし目を輝かせて月の光に魅入っている。



『 月が気に入ったか‥月をこの手に取ってお前にくれてやりたいところだが、それは叶わぬゆえ‥嫦娥の話しをしてやろう…』

     

       ˚✧₊⁎⁺˳✧༚˚✧₊⁎⁺˳✧༚


嫦娥はもともと仙女であったが 地上に降りて弓の名人と名高い人間の男と結婚したのだが‥
男は金母に気に入られてな…3000年に一回実る蟠桃…つまり不老不死の実を金母(西王母)から貰ったんだ。
だが、嫦娥は短命な人間になった事を悔やみ出してな、夫が金母から貰ったそれを盗んで食ったのさ…


『えっ それじゃ…夫はえらく怒ったのでは?』


『いや 夫は金母が気に入るほどの善人だからな、それより嘆き悲しんだのだよ…二人の愛より不老不死の命が大切だったのか‥とね』

蒼霊は鈴兎の手を引きながら 指先で空を切ると 丁度二人が並んで座る事ができるほどの長椅子を出して見せた。


『あらっ まぁ!』
鈴兎は もう蒼霊の元神を見ても怖がる事はない。

二人は並んで座り 再び蒼霊が続きを話しだす。


嫦娥は 夫の大切にしていたモノを盗んで飲んでしまった事の恥ずかしさと浅ましさで月に隠れてしまったのさ…


『えっ では ご主人は 一人取り残されたのですか?』

鈴兎は食い入るように 蒼霊に詰め寄った。



『うーん、まぁそうとも言えるが、小糸 夜空を見てみよ、』

月は天上近くまで昇り それまでは星々が夜の闇を支配していたがひかりの明るさに勝る月がそれに取って代わり目に見える星がいっきに少なくなっていた。



『わぁ 何て素敵な光!』

見上げる鈴兎の横顔が あまりに可愛らしく蒼霊は抱き寄せていた腕に力を込めた。

鈴兎もその僅かに感じる蒼霊の腕の動きに反応し 蒼霊にもたれ掛かり頭を預けた。


『殿下…嫦娥様とご主人はその後、どうなされたの?もう二度と会えないの?』


『いや 月がでる夜は毎日会えるであろう?所詮人と神は一緒にはなれないのだよ…だからそれを憐れんだ金母が人である男に不老不死の妙薬を授けたが…』


  『嫦娥様は…自ら望んで人になった…でも…ヒトって…』





  !…ヒト……人‥‥‥

鈴兎の表情が一瞬何かに困惑して強張る。





蒼霊はその事に気付かず夜空の月と星を眺めていた。




猫皇子‥このような場所で この時間に‥しかも女子(おなご)連れとは‥‥


      南斗星君‥










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