猫神様に嫁ぎます。ペットの猫が神様ぁぁっ⁈ 神様と交わるなんてっありえねぇ〜

アーキテクト

文字の大きさ
上 下
13 / 24
神界転生

新婚旅行〜麒麟と嫦娥の物語

しおりを挟む
雲の乗り物に乗って南の地で南斗星君に仕える鈴兎の師匠を訪ねていく道中…

二人の頭上を飛び越していく獣に出くわした。

『蒼霊 久しぶりだなあー』

その耳にズシンと響く重い声色の主は 瑞獣の 麒麟だった。



『麒麟か! あいも変わらず無駄に飛び回っておるのだな』
 

『馬鹿を言えっ お前のように根暗で引きこもりの神ではないのだ…人間達が 我も我もと私の姿を見たがるのだよ…それこそ私が上古の尊神に与えられた役目ではないか』


二神獣共に絶大な力を持っていたが、
麒麟が陽気な幸運の瑞獣なら蒼霊は陰気な引きこもり瑞獣と天界の神々から認知されていた。

それはまるで蒼霊は人間達の崇拝も得られない木偶の坊のような認識とも言えなくもないが、当の蒼霊殿下は 天界の神々からの賛辞を受けようなどこれっぽっちも願ってはいなかった。



麒麟は二人の乗っている雲に並走するように速度を落として話しかけてきた。


『それは お役目ご苦労様…』


陽の気をふんだんに撒き散らしながら 蒼霊の嫌味も軽く受け流して



『ところで お前の横にいる 兎の小仙は 何者だ? 』

顔は竜 躰に稲妻を纏いながら胴体は馬か鹿のようにしなやかで全体を鱗が覆っている。長い尾は雄獅子か牛に似て足は馬の蹄のようだった。


   『我が妻よ』



『ほほうっ そうであったか! とうとう良き伴侶に巡り会えたのだな! 私はまたお前も 東王父と同じ蒼霊の墟の石から産まれたから 婚姻石に名が刻まれていないとばかり思っていたよ アハハハ』



『尊神と同等なわけがなかろうがっ!
尊神は全ての煩悩劫欲を超越した存在であらせられるのよ』



  『なるほどな…其方にとっての東華帝君は 唯一無二の存在だったな』


麒麟はさも愉快そうに蒼霊達の周りをぐるぐると囲うように旋回した。

『東王父は 全ての神が崇拝する唯一無二の存在だ!』



『そうめくじらたてなさんな、勿論お前の言う通りだが、まぁ‥』

麒麟はまぁの後の言葉を濁した。



鈴兎の知らない 知ることすら許されない神々の縁を二人は安易と話している。



『わかっているなら いちいち確認するな…』

蒼霊の瞳孔がキュッと縮む。




『アハハハ 久しぶりだから ちょっと揶揄ってみたくなったのよ…ところで 今から何処に行くのだ?』

『妻の師匠が我らの縁を結んでくれたらしいので礼儀を尽くそうと思ったのだ』



『ほぉ これはまた殊勝な心掛け…それでは私からも 二人の行く末が祥多かれと願っていようぞ   では、またいずれ…な』

麒麟はそう言うと 二人が乗る雲から離れていった。






南海の地は湿度が高く常に雷神の好む分厚い雲が立ち上がる。


蒼霊は 雲の中を突っ切るとびしょ濡れになり稲妻に撃たれないとも限らないと考え、本格的な雷雲に遭わないうちに地上に降りる事を選んだ。


『小糸、此処からは 地上に降りて其方の師匠に会いに行こう。』





厚い雲の隙間を縫って二人が降り立った地上は既に太陽が沈み 東南の夜空に月が出ていた。


『…何て美しい月!』

鈴兎はその場に立ち尽くし目を輝かせて月の光に魅入っている。



『 月が気に入ったか‥月をこの手に取ってお前にくれてやりたいところだが、それは叶わぬゆえ‥嫦娥の話しをしてやろう…』

     

       ˚✧₊⁎⁺˳✧༚˚✧₊⁎⁺˳✧༚


嫦娥はもともと仙女であったが 地上に降りて弓の名人と名高い人間の男と結婚したのだが‥
男は金母に気に入られてな…3000年に一回実る蟠桃…つまり不老不死の実を金母(西王母)から貰ったんだ。
だが、嫦娥は短命な人間になった事を悔やみ出してな、夫が金母から貰ったそれを盗んで食ったのさ…


『えっ それじゃ…夫はえらく怒ったのでは?』


『いや 夫は金母が気に入るほどの善人だからな、それより嘆き悲しんだのだよ…二人の愛より不老不死の命が大切だったのか‥とね』

蒼霊は鈴兎の手を引きながら 指先で空を切ると 丁度二人が並んで座る事ができるほどの長椅子を出して見せた。


『あらっ まぁ!』
鈴兎は もう蒼霊の元神を見ても怖がる事はない。

二人は並んで座り 再び蒼霊が続きを話しだす。


嫦娥は 夫の大切にしていたモノを盗んで飲んでしまった事の恥ずかしさと浅ましさで月に隠れてしまったのさ…


『えっ では ご主人は 一人取り残されたのですか?』

鈴兎は食い入るように 蒼霊に詰め寄った。



『うーん、まぁそうとも言えるが、小糸 夜空を見てみよ、』

月は天上近くまで昇り それまでは星々が夜の闇を支配していたがひかりの明るさに勝る月がそれに取って代わり目に見える星がいっきに少なくなっていた。



『わぁ 何て素敵な光!』

見上げる鈴兎の横顔が あまりに可愛らしく蒼霊は抱き寄せていた腕に力を込めた。

鈴兎もその僅かに感じる蒼霊の腕の動きに反応し 蒼霊にもたれ掛かり頭を預けた。


『殿下…嫦娥様とご主人はその後、どうなされたの?もう二度と会えないの?』


『いや 月がでる夜は毎日会えるであろう?所詮人と神は一緒にはなれないのだよ…だからそれを憐れんだ金母が人である男に不老不死の妙薬を授けたが…』


  『嫦娥様は…自ら望んで人になった…でも…ヒトって…』





  !…ヒト……人‥‥‥

鈴兎の表情が一瞬何かに困惑して強張る。





蒼霊はその事に気付かず夜空の月と星を眺めていた。




猫皇子‥このような場所で この時間に‥しかも女子(おなご)連れとは‥‥


      南斗星君‥










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...