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スライムとにんげんちゃん
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数百年の事だ。
魔族が住んでいた世界と、にんげんちゃんが住んでいる世界の境界が、何の前兆もなく閉じてしまい大騒ぎになった。
頭の良い魔族とにんげんちゃんが原因を調べていたが、結局分からずじまい
帰る場所を失ってしまった魔族は、人間界で暮らす道を模索した。
ある魔族はにんげんちゃんから離れた所に住処を作り、違う魔族はにんげんちゃんと共に暮らす事を選んだ。
「あぁ! 水霊様! お待ちしておりました!」
このスライムは、にんげんちゃんと仲良く暮らす道を選んだ魔族である。
透明な身体を左右に揺らして、村の偉いにんげんちゃんに朝の挨拶をすると、嬉しそうに目を細めて返事をしてくれた。
そのまま、いつものように村の奥へ歩いていくと、にんげんちゃん達の明るい声がする。
「水霊様! おはようございます!」
「すいれいさま! お花あげる!」
「水霊様!」
水霊様、彼等にそう呼ばれるようになったのは、スライムが持つ特別な能力のおかげだ。
かつてこの村は、朽ち果てる寸前だった。
周囲の木々は枯れ、土地はカラカラに痩せ細り、人々は飢餓に苦しんで
そんな時に、住処を探していたスライムがやってきたのだ。
最初の頃こそ村人達から邪険にされていたが、スライムは気にしなかった。
何も出来ずに死を待つ彼等が、可哀想で仕方なかったのだ。
なのでスライムは、自らの特殊な力を使って、この地を蘇らせる事にした。
たっぷりと魔力を湛えたスライムの体は、土に、木々に、汚れた泉に染み込んで、かつての生命力を取り戻していく
萎びた苗は即座に芽吹いて栄養の詰まった作物になり、枯れた木々には瑞々しい果実が生る。
沢山の力を使ったせいで随分と小さくなってしまったが、恵みだ、奇跡だと喜ぶ声を聞いて、スライムは満足そうに体を揺らす。
その日から、にんげんちゃんは村を救ったスライムに深く感謝して、水霊様と敬う様になったのだった。
──水霊伝承より一部抜粋。
魔族が住んでいた世界と、にんげんちゃんが住んでいる世界の境界が、何の前兆もなく閉じてしまい大騒ぎになった。
頭の良い魔族とにんげんちゃんが原因を調べていたが、結局分からずじまい
帰る場所を失ってしまった魔族は、人間界で暮らす道を模索した。
ある魔族はにんげんちゃんから離れた所に住処を作り、違う魔族はにんげんちゃんと共に暮らす事を選んだ。
「あぁ! 水霊様! お待ちしておりました!」
このスライムは、にんげんちゃんと仲良く暮らす道を選んだ魔族である。
透明な身体を左右に揺らして、村の偉いにんげんちゃんに朝の挨拶をすると、嬉しそうに目を細めて返事をしてくれた。
そのまま、いつものように村の奥へ歩いていくと、にんげんちゃん達の明るい声がする。
「水霊様! おはようございます!」
「すいれいさま! お花あげる!」
「水霊様!」
水霊様、彼等にそう呼ばれるようになったのは、スライムが持つ特別な能力のおかげだ。
かつてこの村は、朽ち果てる寸前だった。
周囲の木々は枯れ、土地はカラカラに痩せ細り、人々は飢餓に苦しんで
そんな時に、住処を探していたスライムがやってきたのだ。
最初の頃こそ村人達から邪険にされていたが、スライムは気にしなかった。
何も出来ずに死を待つ彼等が、可哀想で仕方なかったのだ。
なのでスライムは、自らの特殊な力を使って、この地を蘇らせる事にした。
たっぷりと魔力を湛えたスライムの体は、土に、木々に、汚れた泉に染み込んで、かつての生命力を取り戻していく
萎びた苗は即座に芽吹いて栄養の詰まった作物になり、枯れた木々には瑞々しい果実が生る。
沢山の力を使ったせいで随分と小さくなってしまったが、恵みだ、奇跡だと喜ぶ声を聞いて、スライムは満足そうに体を揺らす。
その日から、にんげんちゃんは村を救ったスライムに深く感謝して、水霊様と敬う様になったのだった。
──水霊伝承より一部抜粋。
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