「秘密の毒林檎」

C.B

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秘密毒12
旦那さまは音に気づきそれを見た…。
「ん?!」
 鞠絵も気づいた。
ヒック!
「うわはぁあああ~~ぁああぁぁぁぁぁ!!!!!」
 2人が目で追う先、幹広の足下へ大切な大切なワインの
”空ビン”がコロコロと転がっていた…。
恐怖で力が抜けた鞠絵はその瞬間、
自重で髪の毛に吊られ激痛を走らせた!
「イタイィ!」
あまりの痛みに体勢を戻そうともがき、
蜜液は溢れるのを止め、普通の鞠絵に戻ってしまった…。
「ろうしません、ろうしません~
 許ちてェ~許ちてー、ああああん 
 るるしてぇ、、、
 幹広ぉ~~~
 ダ~リ~~ン あーーん 
 ぇぐぇぐむぁえはぁはぁハニ~って
 言ってくれたれすよぉ~~」
 その泣く姿はまるで小さな子供…
だが震えていたのは奴隷だけではない、
主とて人の子…。
幹広も震え額の筋肉がピクピク動き、
血管が浮き上がり…
今。
プッツーンっと…切れた。
「!!!! 大馬鹿者!!!!!」
 罵声を浴びせる旦那さま。
怒りに任せ鞠絵お気に入りメイド服の胸ぐらを掴み引き裂いた。
その行動に耐えるしかない鞠絵。
『ぁぁぁぁぁあぁぁああぁああ!』
 破れ乱れた服の上から麻縄を手に、
股を開かせきつくきつく縛り、
あっと言う間に括られていく鞠絵…。
縄の間の局所から邪魔な布地がまた破られ、
既に固い乳首とラビアをクリップで挟まれ、
それだけでも痛かった。
…だが、
チェーンの先に重りが下がり、
新品の麻縄は繊維が立ち、露出した肌を刺した!

秘密毒13
「ぎゃあんんんあああああんんああん」
「痛い痛いーーー、いやああああああああ~~」
 …そして、旦那さまは天井からフックを降ろし、
肉の塊りをガラガラと吊り上げていった。
…肉は足をばたつかせ、
願っていた至福がやっと訪れたと思ったが、
少し違うかもという微妙な思い…。
そして、上気した声で口走しった。
「あああん、ナナ…ナナ… バァ~
 あああああん、らんなさまぁ~
 ダァ~リ~~ン~…バナナラ~ダー~」
 痛くて、酔っていて、悲しくて、
気持ちよくて、ほんとに苦しくて、気分が悪くて、
でも、とても気持ちよくて、
興奮してる鞠絵は上手く喋れず
ただ涎をボトボト落としていた…。
「な、何を言っているーーー!!!」
 その言葉と酔った奴隷に、
ますます腹の虫が治まらなくなった旦那さま!
乗馬鞭を拾い、はだけた尻を打ちつけた。
揺れる鞠絵はそはそのたび叫び、
狂おしい快感に呑まれていった。

*秘密毒14

 鞠絵は激しい仕置きに一睡もできず、
ボロボロの身体のまま朝食をこしらえ、
旦那さまを待った。
身体のあちこちに血のにじむ痣が痛々しく残り、
椅子に座ろうものなら飛び跳ねるくらい
お尻が腫れているのが判っていた。
食卓の傍で立ちつくす鞠絵はチラリ時計を見た。
『?…そろそろ、起きてきても良さそうなのに…』
 と毎朝渡す新聞をソファに置き書斎に向かった。
 ドアをノックしようとしたが
半開きでロックされておらず、
ためらいながらも中に入って驚いた。
「だ、旦那さま…」
 幹広が目の前に立っていて、
せわしなくスーツケースに荷物を詰め込んでいたからだ。
最後のシャツを押し込み、ロックをかける音が響いた。
バン!
「…あ、あの、ご出張ですか?…」
 何も聞かされていない鞠絵は動揺し、声は震えた。
幹広がアンティーク調の机に向かい何か走り書きすると、
表からクラクションの鳴る音がした。

 慌てた鞠絵は玄関へダッシュした。
シューズボックスから彼のお気に入りの靴に
ブラシをかけようとしたが、
その手前の靴をスッと取り出し
出かけようとする旦那さま…。
せめて、お見送りをと、後をくっついて行こうとしたが、
後ろ手に静止されてしまった…。
彼女は服こそちゃんと別のメイド服に着替えていたが、
顔や、手首。露出した肌に、
痛々しい傷痕を残していることを忘れていた…。
「あ…」
 鞠絵は頬をそっと触り、
「あ、あの。お帰りは?」
 と話しかけたが、無常にも玄関はバタンッと閉まった…。

秘密毒15
旦那さまの怒りは、
まだまだ収まっていなかった…。
彼は、呼んだタクシーの運転手に話しかけていた。
「おはようございます。
 古田さん。朝からすいません。後ろいいですか」
「いえいえ。お得意様は一人でも多いほうが、
 ありがたいですからね。
 近所の方だと、なおさらおつきあいしとかないと。
 今、開けますね」
「今日は、どこ行き?」
 車から出てきた、中年の古田と言う運転手は、
幹広の荷物をトランクに入れながら聞いた。
「空港までお願いします」
「かしこまりました。あ。開けますから。ほぃほぃ」
 古田さんの新サービスらしく、
ハイヤーのようにドアの開け閉めまでやっていた。
「あれ、今日は可愛い奥さんは出てこないの? 
 いつも仲が良くて羨ましいねぇー
 可愛いしさぁ うしし」
「いやー まだ寝てますよあいつは… ははは」
「お、昨晩も! ですかぁ~ はっはっは。
 私もね、若い時はこー見えてもすごかったんですよ~」
 幹広は適当に愛想笑いし、古田はバックミラーで
加賀家の様子を覗くように見て、
ゆっくり発進して行った。
残された鞠絵はウルウルしてきた目を押さえ、
ため息を吐きかけたが、拳をぎゅっと握り、
「掃除! 洗濯! 昼寝~! お買い物~!
 あ。今日は麗子とお昼の約束してたんだ…
 どうしよう、この顔…」
 玄関にある大きな鏡で自分を見つめたが、
悲しいやら、嬉しいやらの、にやけ顔で走りかけ、こけた…。
ドテッ!
「イッターーィ!」



 鞠絵はパタパタと忙しく家中を駆け回り、
家事をこなしていった。
ふと、書斎の前で立ち止まりドアノブを回した…。
『え?』
鍵はかかっていなかった…。

秘密毒16
普段ならおおせつかった掃除や、特別な時以外
許可無く、入ることのできない彼の書斎。
鍵をし忘れるなんてあり得なかった…。
「そうか! これは、掃除しろとの言いつけだ! 
 わーぃ♪」
「アイタタタタタタ!」
 飛び上がって喜んだら、体中が悲鳴を上げた…。
 旦那さまの部屋。
当たり前に旦那さまの物で溢れ、
当たり前に旦那さまの匂いがし、
残り香を胸いっぱいに吸い、
全ての開けられる書棚や、
サイドテーブルの扉を開け、
『空気の入れ替えをしなきゃ』
 カーテンを開こうとしたが、
うっとりして触っていた、旦那さまの椅子に腰かけ、
机に突っ伏し眠ってしまいたかった。
鞠絵は疲れ果てていた…。
その時、旦那さまが残していった書置きに気づいた。
そして、読んでしまった…。
『ああああ~ん………』
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「うわぁぁぁぁぁあああーーん」
 手から落ちる紙切れには、
|二週間出張! 香港・マカオ
とだけ書かれ、
力を無くした奴隷妻はズルズル床に崩れ落ち、泣いた…。

 優しかった旦那さま。
一生を賭け、尽くそうと誓った愛しの彼…
林檎を産むという驚愕の過去がある鞠絵…
あの、プレイルームのバナナは?! 
不可思議な思いが交錯していった…。
夢に見る旦那さまは、いつも優しく微笑み、
現実の夫は、鬼の仕打ちで彼女を苦しめている…。
『なぜ?』
『なぜ?』
『なぜ?』
 頭の片隅にある、あの真っ赤な林檎が
舌を長く伸ばし鞠絵あざけ笑い始めた。
「キャハハハハハハハアァー」
『あぁあぁああ…』
 そして、そして、体力と気力の限界は
『ふぁ~~』
彼女を深い眠りに誘っていった…。

*秘密毒17
 静かで爽やかな朝。
あたり一面に芝生が広がる森林公園は
朝もやに煙っている。
そばを南北に伸びた幹線道路には、
銀杏の木が整然と並び、
ここは季節により色を変える、素敵な高級住宅街だった。

 ジョギングをする人や、犬を散歩させている人が
ちらほら見えている普通の朝だったが、
そんな、公園の隅。木々の生い茂る駐車場に
身を隠すように一台の車が停まっていた。

 エンブレム入りのキャップを深めにかぶり、
伸びた髪を後ろでひっつめた、ガタイの良いドライバーは、
右手にはアンテナの様な物を持ち、
外へ向けながら微調整を繰り返していた…。

 男はふいに、付けているインカムを押さえニヤリ笑うと、
座席下に置いてある、複雑な機械のスイッチを切り、
外に出していた小さなアンテナを素早くしまった。
助手席に置いていた携帯から電話をかけ、
白く霞む住宅の一廓を見つめていた。
男が見つめる先。
そこは”加賀谷家のベランダ”だった…。
「…私だ。このまま帰宅する。
 何か急な用件はないか?」
『お、お疲れさまです。社長…。
 特に何もありませんので、
 ゆっくりお休みください…』
 丁寧な口調の女が出て話した。
「時間がかかったな」
『あ。いえ、掃除をしていて携帯の場所まで
 走りましたので、少し慌ててしまって…』
「ふふ、そうか」
『…あ』
「…なんだ?」
『…いえ、奥さまからご伝言がありました…
 私宛に直接…』
「あの話か?…」
『はい…』
「ならいい、起きたら電話しておく。
 では、おやすみ。何かあったら起こして構わない」
『はい、お休みなさい”主さま”
 お気をつけてお帰りください…』

秘密毒18
「うむ」
 男はフフンと鼻を鳴らし電話を切ろうとしたが、
急に相手の名を呼んだ。
「聡美!」
 聡美も切ろうとしていたが、携帯に耳を当て直した。
『…はっ、はい!』
「スカートを、まくれ…」
『…は、はい…』
「欲情したな?」
「…俺の電話で欲情したな!」
『ぷんぷん牝を匂わせているな?』
『そ、そ、そんなことはありません…、
 さ、聡美はずっと言いつけを守って、
 我慢しております…』
「…ぁ? 我慢してる? だと…」
『ぁぁぁぁ、いえ違います。
 主さま、使う言葉を間違えました。
 我慢ではありません、
 我慢などしておりません!
 へ、平常心です!』
「…スカートは捲り上げたろうな?」
『ご、ご命令のままにしております…』

 女のいる場所は、センスの良い小奇麗なオフィス。
彼女は朝一番にやってきて
主さまの部屋を掃除すると言う、大役をおおせつかり、
溝口重治とネームプレートの置かれた、デスクの角で
”股”をこすりつけると勝手に決めた日課も、
こなそうとしていて、主の電話に慌てたのだ。

 聡美はクールで優秀な秘書。
主さまこと”溝口”に飼われている従順なメス犬の一人…
溝口のためならなんでもできる奴隷秘書だった…。
女は喉が渇いてきたのか、
かすれて熱っぽい声になり身体をくねらせている…。
「今日はお前に自由をやろう…」 

秘密毒19
『ま、まさか、そ、そんな…』
「嬉しいだろう? 番号を教える…」
『いやです、いやです、
 主さまだけが私を自由にして良いお方です…
 このままで、どうかこのまま…』
「20067」
「もう一度言うか? 外せ…」
『…………』
「おまえの、そこがどうなっているか教えろ…
 それによっては許さんでもない…」
『そ、そんな』
「濡らして無いなら、外しても問題は無いだろう?
 もう、何日になる?
 そろそろ風呂に入って綺麗にしたくないか?
 …ふふふ」
『ぁぁ…』
 二人の間に沈黙が流れた。
「返事をしろ…」
『……は、はい』
 女は貞操帯に取り付けられている
数字合わせのロックを解き、
音を立てて外すと、床に落とした。
ガチャン!
『は、外しました…』
「…お前のいやらしい牝に、事務用品を挿せ…
 なんでもいいから挿し込め! くくく」
『だ、駄目です…』
「なんだと?」
『言うことを聞くと…そ、その瞬間から溢れてきますぅ…』
「いいからやれ!」
『ぁぁぁぁ』
 問答無用の会話は続き、
聡美は動揺し、雑多な物で溢れているデスク上の
鉛筆立てを倒してしまった。
ガラララーッ
そして、
極太マジックペンを掴んでいた…。

 女が何かを探す音に、溝口はまたほくそえんだ。
「見つかったかな? くっくっく
 …お前の報告も楽しみにしているからね?
 では。 おやすみ」
 携帯を切った男は、
加賀屋家を見ながら呟いた…。
『ふふふ…おやすみ”鞠絵”…』
 溝口は鞠絵! 鞠絵の名前を知っていた!!
男の乗ったワゴンは急発進し、
朝もやに消えて行った。


*秘密毒20

 静かで爽やかな朝から刻々と太陽は昇り、
加賀谷家の電話が鳴ったが、
留守電に切り替わりメッセージが流れた。
『はい加賀谷です。
 幹広も鞠絵も出かけております…御用の方は…』
 そして、今度は鞠絵の携帯にも特有のメロディーが流れたが、
それも切れ、鞠絵はどちらの呼び出し音にも気づくことなく、
すやすや床に突っ伏し眠っていた。



 ここらは雑多なビルが立ち並ぶオフィス街。
朝の死んだような街から徐々に、
大勢が行き交う、生きた街に変わり、
高速道路は既に渋滞しはじめていた。
そんなビル郡の一つのビルの最上階に、
知らなければ来れない、
【会員制SMクラブ ナイトメア・オブ・ヘブン】はあった。
「せっかくの休みなのに! 寝てる時間なのにぃーっ」
 と、ご機嫌斜めの麗子女王さま。
目がきつく、きつーく吊り上がっていた!
…客にとってはこの上ない状況なのだろうが、
いましがた急に連絡が入り、
マネージャーからどうしてもと、
午前中から、ごり押しの客を押し付けられてしまっていたのだった。
 顧客ナンバー麗子の13号さまは、
上客で羽振りも良く、断ることが出来なかった…。
適当にあしらえば良いかと、鞭を揮われていたが
さすがに3時間も拘束されると退屈になってくる。
だが、彼女の鞭使いは正確で、
それを感じさせないのがプロ? というところだろうか…。
「あれれ~」
バシッ! ビシ! ババンッ!
「うわぁあああああ。じょ女王さま~~! 
 くぅううううう」
バシ! バッバシン!
「鞠絵ちゃんたら何してるのかしら…」
 ビシ!
「ぎゃ」
 バンッ バッシーン!!

秘密毒21
「ぐぇええええ」
「まさか、約束を忘れたのかしら、もうぅ!」
 バン! ビシッビシッ!
「す、すごいですぅ~~! 
 あああもっと僕に罰をくださぁあああぃいい」
バンバンバシバシビシビシビシシッ!! 
「壊して、壊して、ぶっ壊してぇくださーいぃ!!! ヒィー」
 携帯の最中、麗子が無意識に揮う一本鞭は、
脂ぎった中年男にヒットしまくり、苦痛の快感でうめいている。
「じょ、女王~麗子さまぁ~
 ~鞠絵さまはお留守なんですかぁ~ハァハァ…」
「うん、そうみたい…
 あの子最近寂しそうだから、お昼ご飯食べる予定にしててね」 
 鞭の音がまた強烈に響き、尻側から固くなったあれに直撃し、
声も出せずうずくまる男。
「グ………!!!!!!!!」
「わわわ、ごめんなさーい。
 ごめん、ごめん、考え事しながら打ってたわ。だ、大丈夫ぅ?」
「ぁぁぁぁ、なんてお優しい麗子さまぁ…
 私のようなマゾ下僕に、もったいないですぅ~」
 男は蚯蚓腫れの顔から血を滲ませながら、
傷を見る麗子の太ももに擦り寄り頬づりし、
垂れる血を付けてしまった。
『あぁあぁぁぁぁぁぁあ…、
 れ、麗子さまぁ~ハァハァ。お、御聖水も、く、くださいぃ~~』
「あ”こら! 何してんだお前~~~!! 
 ばっちぃーー、汚ねぇ~~なぁー!!
 て、言うかな、お前ぇ~~!!
 こんな朝早くから予約入れるんじゃない!
 この大馬鹿者!!」
 と、罵り。
先が尖り踵は十五センチはある
真っ赤なヒールで、腹を蹴り上げた。

秘密毒22
「ぐぇ………ぁぁぁぁ」
 中年男はこの上ない至福の絶頂に達し、ブリーフの中に射精した。
 足の上に巻きつくように転がる物体をやっと払いのけ、
13号の背にどっかり腰を落とし、足を投げ出しストレッチを始める
思案気なご様子の麗子女王。
『…心配だわ…鞠絵ちゃん…』
 壁のデジタル時計からプレイ終わりを告げる鳥が、
ポッポッポーポッポーと顔を出した。
「あ、おしまいでーす。麗子の下僕ナンバー13号の俊彦ちゃまー。
 またおいでください。
 でもね、もう、朝からは無理だと思ってくださいねぇ…フン」
 男は麗子の尻の下から切なげに言った。
「れ、麗子さまぁ~~ お、お聖水はぁー…」
「あぁ~ん? 今日は駄目だと言っているだろう?
 …すいません、お疲れなので延長無しで」
 一変してビジネスライクになり、一礼しとっとと化粧室に向かうと
また鞠絵の携帯にメールを入れた。
[鞠絵ちゃ~ん。
 忙しいんだろうけど、約束覚えてるかなぁー? 
 一時に、表通りに新しく出来た
 【ラ・カフェ】ですからね。
 お忘れなく~。 あなたの麗子]
 麗子は鞠絵を大学時代から見ていて、
あまりの変わり様に驚いていた…。
『あの、旦那がドSだったとは…』
 そして、躾けられてしまった鞠絵ちゃんの
メイド服に首輪写真を見せられたとき。
同じ趣味だったのねーーっと、
腰を抜かしそうになった…。
けど、…私はSM歴は長い、色んな経験をしてきたつもりだ…。
女王さま業もあくまで副業で、
仕事として割り切ってないとやっていけない
部分もしっかりある…。
覚えたての蜜の味とはまったく別次元…。
鞠絵ちゃんが、旦那を愛するが故の、
ピュアな思いは、何かあった時、
簡単に壊れてしまうのではないかと予感していた…。
そして、鞠絵からの久しぶりの誘いが、
まさにそれなのではとドキドキしていた…。

*秘密毒23
 ケロケロ♪ ケロケロ♪ ケロケロロロ♪
ケケロロロロロ~ ケロロロロロロロロロロ~ン♪…
蛙の鳴くような携帯の着信メロディーが
ずっと鳴っていたが、
蛙の合唱に、やっと目覚めた鞠絵だった。

 明るかった空はどっぷり暮れ、まさかの深夜になっていた…。
「ふはぁ… ???」
 目をぱちくりさせ、床に寝ている自分に驚き、
がばっと起き上がったが節々が痛く、
身体全体が燃える様に熱かった。
そして、旦那さまの無言の出張を思い出し、
「痛い! 痛い! 痛い! 旦那さま~~」
「あーん、痛いよ痛いぃいい、痛いよ~~
 ~身体は痛くても我慢します。
 でも、心が痛いですぅ~~」
 と、また泣き出してしまった。
 エグエグと鼻をすすりながら
「麗子ちゃーーーん!」
 っと、慌ててあちこちあるポケットを探り
携帯を取りかけると、
液晶の明るい画面に
叩かれた跡が生々しい鞠絵を照らした。
麗子はすぐに出てくれた。
「ああああああああああああああん~」
 泣きじゃくる鞠絵に返す言葉が見つからず、
ただ黙って聞く麗子。
少し落ち着いたところで、やっと声をかけた。
『大丈夫?』
「えぐえぐ……身体が痛くて、熱くて、えぐえぐ…」
『! どうしたの。病気? 怪我? 事故? 旦那は?』
「だ、だんなさまぁ~~~~
 ああんあんあん だんなさまはぁ~~
 あーんあんあん、出張でいないぃ~~
 あーんあんあん~」
 また泣き出してしまい。心配でたまらなくなった麗子は、
『行くから!』
「うん」
『待っててすぐそっち行く』
「うん、うん」

*秘密毒24
 上着を羽織りバッグを抱えた麗子は、
自宅マンション地下の駐車場へ走った。
車に乗り込み、バックで発信させようとした瞬間。
入ってきたセダンと接触してしまった。
ガコンッ!
「あっちゃ~、こんなときにぃ~」
 ぶつけられた相手怒った顔で車から降りて来て、
助手席には、彼女だか奥さんだかが座っていた。
麗子が謝ろうと男の顔を見た瞬間、その男は凍りついた…。
麗子は気づきいてしまった。
そしてドアは開こうとはせず、
「ごめんなさーぃ」
 と、謝った。
そして、威厳のある低い声で囁いた…。
『7号…緊急事態だ。 このまま、行かせてくれ。
 この借りは仕置きで返す』
「すいません。友人が死にそうなの! 
 私は1200号の鮎川です」
 続けて今度はわざと大きな声で話した。
「おぉ それはいけない! なら後でいいので
 ここに電話してください」
 と、名刺を麗子に渡し、
男はプライドを保つ振りをしながら
『はい。麗子女王様…』
 と、囁き返し、サササッと自分の車に戻り道を譲った。
麗子のスポーツカーは、タイヤの空回る凄い音と排ガスを残し、
さっそうと走り去って行った。

 後に残った7号は助手席の女に怪訝な顔をされ、
必死で弁解するの姿がバックミラーに写っていた。



 ほんのちょっとの差だった。
【警備保障 OKシャングリラ】とロゴが書かれた
ボックスカーには6人の警備員姿の男たちが乗り、
助手席に座るリーダー格の男は携帯で連絡をし、
そこを左だと指示した。

秘密毒25
路地に入ろうと向きを変えた車。
「主さま、作戦Aを決行します」
『うむ、そうか、痕跡は残すな。いいな、くれぐれも慎重に…』
「了解。主さまのために!」
 鞠絵の泣く声は溝口たちにも知れていた。
溝口を主さまと呼ぶ謎の集団は、
鞠絵の家の様子を毎日交代で探っていたのだ。

 公園の駐車場で、鞠絵の家に仕掛けた盗聴器から変化を伺い、
彼らの言う【作戦A】は実行に移されようとしていた。
「子供たち、上手くやれ! 
 あの、女は俺さまの物…可愛そうなメス犬…。
 じっくり調教してやれるぞ。くふふふ。
 待ってろよ鞠絵! …お前の天国は近い…」
 溝口は携帯を隣に控えているメイドに渡し、
自宅の屋敷内の広大な庭園。
その一角に設置した大きな檻で、
飼っている動物に餌を与えていた…。
「うーっくっくっく!!!」
「鞠絵。鞠絵。まりえ、まりえーー!!」
「あああああ、いくぞ、いくぞ餌を出すぞ! 
 しっかり飲み干すんだ!」
 溝口は餌と称し、牝犬に自分の大きな男性自身を含ませ、
射精しようとしていた。
暗がりの檻の中には牝犬…
裸の女が首輪をされ入れられていた。
それは秘書の聡美だった…。
体中が泥にまみれ、
白い体液があちこちに飛散し…
それは、複数の男たちに弄ばれた後のように見えた。
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