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11-3:真夜中のキス

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11-3:真夜中のキス


 正確には男が一人混じった女ばかりの集団で、女たちの着るテカテカ光る服の背に、それぞれ
【悪】読書感想ブンブンブン【夢】と、刺繍された文字が入っていて、男は手に持つ物を地面でガリガリ言わせながら歩いていた!
「総長の! イテッ!」
「青柳さんだろ」
「すいやせん、青柳さん。ついに着きましたね」
 袖に”セツコちゃん”と刺繍した女は叩かれた頭をさすっていた。
「…だな」
「で、どっち~行きやしょ?」
 青柳はメモを覗き、
「………それ見てくらぁ」
 と、がに股で肩を大きく揺らし、駅前の案内ボードを見に行った。
「へぃ!!」
 女たちは次々に返事をし、青柳と言う男にかしずいているようだったが、
『セツコ~ あいつ大丈夫かぁ~?』
 集団の一人が小声で耳打ちした。
『バカヤロウ! 今は信用してくっついて行くしかねぇ~だろ。うちらの隊長。取り戻してくれる唯一のお方なんだぞ』
『だけどさー あいつ、住所知ってるのかぁ~? 超怪しいぃ~んだけど…』
 タチコちゃんが文句を垂れ始めると、
『どんだけ、電車乗り換えたと思ってんだよ。しかも、レディースのうちらがなんで電車移動? ケッ』
 カズコちゃんがそれに加わりブツブツ言い出した。
『しょーがねーだろ~遠出ツーリングするレディースなんかいねーっつーの』
 セツコは皆をなだめようとしたが、
『腹減った~ 腹減った~ 腹減った~』
 太ったマサコちゃんも混ざり、他の女たちもワーワーブーブーと不満を爆発させはじめた。
セツコは腹になんか入れたら落ち着くかと、下っ端のヤスエちゃんを売店に行かせると、
『あ。うち~宿原いきたーぃ』
 チカちゃんが言うと、
『渋谷110-1 本館!』
『まんモスだらけ~』
『東京ニャワー登りてぇ~~』
『オールドサザエ~!』
『なにそれ~?』
『うち、お昼休みの名物番組の鑑賞券もってんだけどぉ~』
『いきてぇ~~』
『うちも、うちも!』
『ディスティニーランドォ~』
『おぉーーー♪』
 観光名所? が次々にあがり、
『あほか! うちらは観光に来たわけじゃねぇ~ 宿原なんか行ってみろ~タケノコ族の再来か~なんて言われて…言われる?…そして…ブレイクする~? かも~♪ キャ~ だな。そーだな~せっかく来たんだから行く~? 行っちゃおっか~♪』
 とか、セツコちゃんもハシャギ始め、ヤスエちゃんが買ってきた。お菓子とか、パンとか、牛乳を配らせ、駅前の改札はいつの間にか、うんこ座りではしゃぐレディース達の輪が出来てしまっていた…。

 長い時間案内ボードの前でイラついてた青柳が、何気に振り向くと…
「おろ!? オロロロ~」
 女たちは一人残らず居なくなっていた…。

 あたりをキョロキョロ見回してると、パラララララ~♪ パララ~♪ と、3連ミュージックホーンで”エリーゼのために”の可憐な曲が、爆音で鳴り響いた!
青柳が携帯に出るとパララ~♪ は止まり、
『青柳さーん。うちら、ちょい観光いってきやーっす♪ 家分かったら、教えてください。この方が早かったすねぇ~じゃそーいうこって』
 セツコちゃんはそう言うと一方的に切ってしまい、一人っきりで心細くなった青柳は、見知らぬ街の空を見上げ、目から出そうな”汗”をこぼさないようふんばった!
「うぉおおおー! ここどこだ~~! 住所しらねぇ~メモ忘れた~俺のばかぁ~!!」
 泣ききながら自分の頭を木刀!で叩いていると、それを離れた所から見ていたバーさんが制服姿のおにーさん二人に、
「あいつ! あいつよ~ 町の平和を乱す不貞の輩よぉ~ 逮捕して! たひほぉ~ ふがふが」
 入れ歯の口で指さすと、青柳は警官に職質だと言いわれ、交番にを連れて行かれてしまった…。
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Chic Novels
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