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10:誰にキスしたい?
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10:誰にキスしたい?
「え?え?え?ええ? 彼の知り合い?」
「これもらって下さい!」
トモヤは全速力でかけて行き、二個目の色違いロボを受け取ってしまったイリ。そのプラモは、弟が作ってくれたロボットアニメの主人公が乗る”戦士ライディン”のプレミアバージョンだった。
「あぁ~あの子っ、そうだ!弟の彼女とそっくりなんだ。きっと”由樹ミヨミ”ちゃんの、おにーちゃんだ! アサトめアタシのこと言いふらしてるなぁ~ あ。ト、トモヤくーん ダメ! 受け取れない~!」
慌てて後を追おうとしたが、殺気立ってる女子部員たちに阻まれてしまった。
「ちょっとあんた! 何、訳の分からないこと言ってる?」
「新入りちゃ~ん…」
「まさかまさか、色仕掛けで来るとは思わなかったわ…あんなエッチな声出して気をひくなんて~!」
「いやらしぃ~~~ったらありゃしない!」
「メス猫!」
「メス犬!」
「メス豚!」
「メス馬!」
「メ、メス~~…ん~」
フユミは全部言い尽くされたようで、続ける言葉に詰まってしまった。
[メスゴキブリ!]
『あ、なんかそれ言われたことがあるような…夢? ゴキブリ女だったっけ? あ~やだそれマジやだ~なんか頭のすみに悪夢が蘇りそう~ゾクゾクする~』
イリは雪の寒さとは違う、奇妙な震えに襲われ、自分を抱くとキョロキョロした。
[君それ取って]
[はい先生! メス!]
ミサキとアヤンは女子部員たちの背後に身を屈め、チャチャを入れた。
[ブホッ うぷぷぷぷぷぅ~~イリがゴキブリに反応した~ こりゃたまらん]
「だれ! 漫才してんの!」
エリリンが怒った。
「あたしの! あたしの! トモヤにちょっかい出さないで!」
「ちがうぅーーあたしのぉ~~」
「なんですってーー! 私のものよ!」
『お、内部キレチュが~』
『女なんて所詮こんなもん…その点男の俺はさっぱりしてるな ギャハ』
『…君はオンナ…おなご…ジ・ョ・シなの! 何度言ったら…つ、付いて無いれしょ?”アレ”』
『うん。付いてない”アレ”無念じゃ~。でもさ、アヤンちゃん。チンコ付けたいと思ったことない?』
『今する話じゃにゃーぃ!』アヤンは真っ赤になった。
『やっぱり?…でもさ、一回立ちションしてみたくね』
『…それは可能…』
「え~?」
ミサキはアヤンの思わぬ反応に声を荒げた。
「こら…お前らか~どっかいけ…」
フユミに気づかれた。
「あ。はーぃ」
「ほーぃほいほいのほぃ」
二人はコソコソとその輪から離れた。
「団結!」
リーダー格のフユミが背筋を正して言うと、
「さんはい!」っと、エリリンが音頭を取り、
「あたしたちのーートモヤなんです!!」皆は口を揃え言い直した。
「なんとか言いなさいよぉ イリ!さーん」
フユミやエリリンや、その他、大噴火中のお嬢さんたちはジリジリと、イリに詰め寄ったが、
「ア、アタシ。彼が居ます!
世界中で一番好きな彼が!
だから、他の人となんてあり得ませんから~!
色仕掛けなんてしてません!」
イリはきっぱり言い切った。
「なんですって~言わせておけば~他にも彼が居て、二股かける気ねぇ~」
「そんなこと絶対許さない!」
「許さないわ!」
「許さん!」
「モテモテだー 許せるはずはない!!」
「どうする?」
「どうもこうもないわ!」
「そうよそうよ」
「まだ、他に男がいるかも」
「そうね!」
「そうかも!」
「だとしたら!」
「メス猫よ!」
「メス犬ね!」
「メス豚だわ!」
「メス馬だ~!」
[メス駱駝よ~とかどう?]
[しっくりこねーわははは]
[先生! この右から三番目のこれは? メスシリンダーだね。は?]
[イマイチ…でも、さすが演劇部。声が通るな~]
[え~イマイチなのぉ~チェッ でもさ、にゃんだか一人一人言わせられる卒園式みたいだにゃ プッ]
と、暇そうな二人はぼそぼそぼそぼそ話していた。
「だから~ 二股とかじゃなくて。ちゃんと彼がいるんです! トモヤ君のことなんかなんとも思ってません! さっき存在を知ったばかりなのに」
イリはことさらに強く言い放った!
「なななな! なんですって!!!」
「眼中にないですって~~~!」
「あたしたちのトモヤになんて失礼な暴言!」
エリリンが、ものすごい邪気を発した!
「うわーーん なんて言えばいいんですかぁ~~~」
困ったイリは、すぐそこにいる友に助けを求めたが、二人はただイリを見て微笑み、拳を突き出し”ガッツだぜ!”と言ってるみたいだった♪
「怒ったぞー」
[ムキーーー!]
「同じく~!」
[フンガフンガ~ キーッキッキッキ]
「トモヤ様になんて言い草なの!」
[ドッドーン! ド! ドーン]
「あたしよりブスのくせして!」
[シャラララーン チーン!]
「そうよそよ!」
[ドドドドドドッド ドグワーーーーン!!]
[あんな女子にはなりたくないわね~]
[だね~]
っと、部員たちのセリフに小さな声で、合いの手を入れまだまだ楽しんでいた。
「あ~~~~!」
フユミがどこか遠くを見て叫んだ。
「………彼今頃、泣いてるかもー! ト、トモヤにこの最低の”メ・ス・動・物・園”のこと報告しなきゃ! 純粋な彼は騙されているの!」
フユミの語学ボキャブラリーは最低のようだった…。
「そうよそうよ、可愛そうなトモヤ」
「あたしが真っ先に行って、この弾けそうな胸で抱きしめるの! キャーー まっててートモヤ~~」
フユミは真っ先に走りだした。
「あ! ずるいフユミ! あたしの先を越す気ね! そうはさせない~」
エリリンのボサボサ髪が風に流れると、眼鏡の奥にちゃんとあった”大きな目”がギラン!ギララリンと赤く光り、その他女子も一緒に去って行った。
「ふぅ~ ハハハハァ~ やっと居なくなったぁ~ 助けてよーも~」
イリが冷や汗を拭い二人に抗議すると、
「いやぁ~ アイリ君。しっかり見せてもらいました。恋する女たちの、まさに”呪い”がこれから天災のように降ってきますことよ~お楽しみでございますな♪ むふふふふぅ」
ミサキは変な言葉使いで、悪戯な目をしていた。
「イリちんも、モテモテだぁ~ トモヤ君。あの子かこいぃねぇ~告白によろめきまちた?」
「かっこいい? そうかなぁ~ 弟の彼女にそっくりで、可愛いって思っただけだよ。そんなことある訳ないじゃん! そんなこと…タカオミとアタシの間に誰かが割り込むなんて無いですぅ~!」
「おぉ~乙女もだんだん強くなるなぁ~ これぞ恋の力!」
「だねぇ~ そだねぇ~ いいねぇ~イリには最愛の人が居て」アヤンはぼそっと呟いた。
「んふふふっふ。ありがとう、とーってもありがとう~♪ でも、いっつもお世話になってばかりのお二人さん! そろそろ、アタシにもお世話させようって思わないの? 次はだーれ~?」
今度はイリが悪戯な目でアヤンを指さし、ミサキを指さし、「どっち? どっち~?」と二人を交互に指さした。
「んー俺も恋したい! でも、恋って何?
絞められて落ちる感じに似てるって死んだ一番上の兄貴が言ってたけど? そんなことしてみろ! 近づく奴は誰でもブチノメ~ス! かかってこーぃ!」
その言葉に二人ともガッカクリ肩を落とし、
「あんたさー。どこまでもまっしぐらに脳が筋肉ね…いわゆる脳筋(のうきん)」と、イリが言い、
「うんうん。そーなのよ。好かれてる子がいたのに、全然気が付かないんだから…ダメなの。いきなりは無理ね。もっと大人にしてあげないと」アヤンが含みのある事を言った。
「え? あぁ~~~~! 昔の道場の?そう言えばそんな話あったね~どうなったんだっけミサキさん!」
「ほんっとおバカなんだから」
アヤンは腕組みしてミサキを見た。
「え? 誰のことだよ、身に覚えが…ん~あるとすれば、俺はあいつに負かされたから、腹が立って修行に修行を重ね俺はついに勝った! 肋骨をへし折ってやった。ヤッホ~で、それっきりチビは来なくなった~ザマーミロだ! もっとも、俺の母上にも相手の親にも、こっぴどく叱られたけどな…でも、それて小学生のときだぞ? 今は大勢本物のライバルがいるがな。もっと修行せねば! ウォリャーー!」ミサキは空手の型を取り始め、
「ダメ…この子まだダメ。今、恋を知ったら、世界がひっくり返って元に戻る! え? 元にもどっちゃだめじゃん あはははは」イリは自分の言ったことがつぼに嵌りミサキの肩をバシバシ叩いた。
「なに笑ってんだ? あはははは」ミサキも釣られた。
「うわぁーー 大人ぶってりゅ~毎日変な妄想してるのどこの誰? さっきのよろめきは色っぽすぎたよ。こっちが焦ったわ!」アヤンはイリにジャンプして、デコピンした。
「アイタタタタ~今の痛い、痛いぃ~ひどいよぉ~~ミサキ~アヤンが苛める~でも、ごめん。ごめんなさいイロイロほんっとに、ほんとに反省してます…でも、そんなこと言うアヤンはどーなのぉ~ちっちゃくて可愛いのに! そーいう話が一切無いじゃない。こっちだって、イロイロ気を遣ってあげたいのにぃ~~~別の気ばっか遣わせないでよ~! 本日こそ、具体的なお話を聞かせてもらいましょうか?」
イリはおでこをさすり、ミサキはアヤンの肩に顔を乗せ、賛成っと挙手した!
「うっ…さ~むぃねぇ~ おっと本家モテモテちゃんを連れ戻して水虫んとこ行かなきゃね~」っと、カナを口実に、アヤンは逃げ去った。
「あ! あぁああ! いるだろ? いるな? そのごまかし方ってアヤン特有の癖だ! 子供の頃から知ってる俺を騙せるとでも思ったか~幼馴染を舐めんな~」ミサキはアヤンを追い、
「え~~うそぉ~ 誰よ、誰、だれっ~キャーーーー」っと、イリも追いかけた。
イリたちの居る場所から少し離れた、こんもりとした雪の山に、たくさんの小枝がさっきからずっと不自然にヒョコヒョコ動いていた。正体はもちろん馬鹿コンビだったが、落ちた衝撃で怪我していて、ヤスヒロは鼻血を止めようと、両方の穴にティッシュを詰め、耳の付け根から血を流しボロボロで、ヨシノブは額から顎まで幅広でまっすぐな擦り傷を作り、頭から血を垂らしていた…。
「え?!」
ドキドキドキドキドキ…
少年は脇腹あたりを押さえ、鼓動を高まらせていた。
「え?え?え?ええ? 彼の知り合い?」
「これもらって下さい!」
トモヤは全速力でかけて行き、二個目の色違いロボを受け取ってしまったイリ。そのプラモは、弟が作ってくれたロボットアニメの主人公が乗る”戦士ライディン”のプレミアバージョンだった。
「あぁ~あの子っ、そうだ!弟の彼女とそっくりなんだ。きっと”由樹ミヨミ”ちゃんの、おにーちゃんだ! アサトめアタシのこと言いふらしてるなぁ~ あ。ト、トモヤくーん ダメ! 受け取れない~!」
慌てて後を追おうとしたが、殺気立ってる女子部員たちに阻まれてしまった。
「ちょっとあんた! 何、訳の分からないこと言ってる?」
「新入りちゃ~ん…」
「まさかまさか、色仕掛けで来るとは思わなかったわ…あんなエッチな声出して気をひくなんて~!」
「いやらしぃ~~~ったらありゃしない!」
「メス猫!」
「メス犬!」
「メス豚!」
「メス馬!」
「メ、メス~~…ん~」
フユミは全部言い尽くされたようで、続ける言葉に詰まってしまった。
[メスゴキブリ!]
『あ、なんかそれ言われたことがあるような…夢? ゴキブリ女だったっけ? あ~やだそれマジやだ~なんか頭のすみに悪夢が蘇りそう~ゾクゾクする~』
イリは雪の寒さとは違う、奇妙な震えに襲われ、自分を抱くとキョロキョロした。
[君それ取って]
[はい先生! メス!]
ミサキとアヤンは女子部員たちの背後に身を屈め、チャチャを入れた。
[ブホッ うぷぷぷぷぷぅ~~イリがゴキブリに反応した~ こりゃたまらん]
「だれ! 漫才してんの!」
エリリンが怒った。
「あたしの! あたしの! トモヤにちょっかい出さないで!」
「ちがうぅーーあたしのぉ~~」
「なんですってーー! 私のものよ!」
『お、内部キレチュが~』
『女なんて所詮こんなもん…その点男の俺はさっぱりしてるな ギャハ』
『…君はオンナ…おなご…ジ・ョ・シなの! 何度言ったら…つ、付いて無いれしょ?”アレ”』
『うん。付いてない”アレ”無念じゃ~。でもさ、アヤンちゃん。チンコ付けたいと思ったことない?』
『今する話じゃにゃーぃ!』アヤンは真っ赤になった。
『やっぱり?…でもさ、一回立ちションしてみたくね』
『…それは可能…』
「え~?」
ミサキはアヤンの思わぬ反応に声を荒げた。
「こら…お前らか~どっかいけ…」
フユミに気づかれた。
「あ。はーぃ」
「ほーぃほいほいのほぃ」
二人はコソコソとその輪から離れた。
「団結!」
リーダー格のフユミが背筋を正して言うと、
「さんはい!」っと、エリリンが音頭を取り、
「あたしたちのーートモヤなんです!!」皆は口を揃え言い直した。
「なんとか言いなさいよぉ イリ!さーん」
フユミやエリリンや、その他、大噴火中のお嬢さんたちはジリジリと、イリに詰め寄ったが、
「ア、アタシ。彼が居ます!
世界中で一番好きな彼が!
だから、他の人となんてあり得ませんから~!
色仕掛けなんてしてません!」
イリはきっぱり言い切った。
「なんですって~言わせておけば~他にも彼が居て、二股かける気ねぇ~」
「そんなこと絶対許さない!」
「許さないわ!」
「許さん!」
「モテモテだー 許せるはずはない!!」
「どうする?」
「どうもこうもないわ!」
「そうよそうよ」
「まだ、他に男がいるかも」
「そうね!」
「そうかも!」
「だとしたら!」
「メス猫よ!」
「メス犬ね!」
「メス豚だわ!」
「メス馬だ~!」
[メス駱駝よ~とかどう?]
[しっくりこねーわははは]
[先生! この右から三番目のこれは? メスシリンダーだね。は?]
[イマイチ…でも、さすが演劇部。声が通るな~]
[え~イマイチなのぉ~チェッ でもさ、にゃんだか一人一人言わせられる卒園式みたいだにゃ プッ]
と、暇そうな二人はぼそぼそぼそぼそ話していた。
「だから~ 二股とかじゃなくて。ちゃんと彼がいるんです! トモヤ君のことなんかなんとも思ってません! さっき存在を知ったばかりなのに」
イリはことさらに強く言い放った!
「なななな! なんですって!!!」
「眼中にないですって~~~!」
「あたしたちのトモヤになんて失礼な暴言!」
エリリンが、ものすごい邪気を発した!
「うわーーん なんて言えばいいんですかぁ~~~」
困ったイリは、すぐそこにいる友に助けを求めたが、二人はただイリを見て微笑み、拳を突き出し”ガッツだぜ!”と言ってるみたいだった♪
「怒ったぞー」
[ムキーーー!]
「同じく~!」
[フンガフンガ~ キーッキッキッキ]
「トモヤ様になんて言い草なの!」
[ドッドーン! ド! ドーン]
「あたしよりブスのくせして!」
[シャラララーン チーン!]
「そうよそよ!」
[ドドドドドドッド ドグワーーーーン!!]
[あんな女子にはなりたくないわね~]
[だね~]
っと、部員たちのセリフに小さな声で、合いの手を入れまだまだ楽しんでいた。
「あ~~~~!」
フユミがどこか遠くを見て叫んだ。
「………彼今頃、泣いてるかもー! ト、トモヤにこの最低の”メ・ス・動・物・園”のこと報告しなきゃ! 純粋な彼は騙されているの!」
フユミの語学ボキャブラリーは最低のようだった…。
「そうよそうよ、可愛そうなトモヤ」
「あたしが真っ先に行って、この弾けそうな胸で抱きしめるの! キャーー まっててートモヤ~~」
フユミは真っ先に走りだした。
「あ! ずるいフユミ! あたしの先を越す気ね! そうはさせない~」
エリリンのボサボサ髪が風に流れると、眼鏡の奥にちゃんとあった”大きな目”がギラン!ギララリンと赤く光り、その他女子も一緒に去って行った。
「ふぅ~ ハハハハァ~ やっと居なくなったぁ~ 助けてよーも~」
イリが冷や汗を拭い二人に抗議すると、
「いやぁ~ アイリ君。しっかり見せてもらいました。恋する女たちの、まさに”呪い”がこれから天災のように降ってきますことよ~お楽しみでございますな♪ むふふふふぅ」
ミサキは変な言葉使いで、悪戯な目をしていた。
「イリちんも、モテモテだぁ~ トモヤ君。あの子かこいぃねぇ~告白によろめきまちた?」
「かっこいい? そうかなぁ~ 弟の彼女にそっくりで、可愛いって思っただけだよ。そんなことある訳ないじゃん! そんなこと…タカオミとアタシの間に誰かが割り込むなんて無いですぅ~!」
「おぉ~乙女もだんだん強くなるなぁ~ これぞ恋の力!」
「だねぇ~ そだねぇ~ いいねぇ~イリには最愛の人が居て」アヤンはぼそっと呟いた。
「んふふふっふ。ありがとう、とーってもありがとう~♪ でも、いっつもお世話になってばかりのお二人さん! そろそろ、アタシにもお世話させようって思わないの? 次はだーれ~?」
今度はイリが悪戯な目でアヤンを指さし、ミサキを指さし、「どっち? どっち~?」と二人を交互に指さした。
「んー俺も恋したい! でも、恋って何?
絞められて落ちる感じに似てるって死んだ一番上の兄貴が言ってたけど? そんなことしてみろ! 近づく奴は誰でもブチノメ~ス! かかってこーぃ!」
その言葉に二人ともガッカクリ肩を落とし、
「あんたさー。どこまでもまっしぐらに脳が筋肉ね…いわゆる脳筋(のうきん)」と、イリが言い、
「うんうん。そーなのよ。好かれてる子がいたのに、全然気が付かないんだから…ダメなの。いきなりは無理ね。もっと大人にしてあげないと」アヤンが含みのある事を言った。
「え? あぁ~~~~! 昔の道場の?そう言えばそんな話あったね~どうなったんだっけミサキさん!」
「ほんっとおバカなんだから」
アヤンは腕組みしてミサキを見た。
「え? 誰のことだよ、身に覚えが…ん~あるとすれば、俺はあいつに負かされたから、腹が立って修行に修行を重ね俺はついに勝った! 肋骨をへし折ってやった。ヤッホ~で、それっきりチビは来なくなった~ザマーミロだ! もっとも、俺の母上にも相手の親にも、こっぴどく叱られたけどな…でも、それて小学生のときだぞ? 今は大勢本物のライバルがいるがな。もっと修行せねば! ウォリャーー!」ミサキは空手の型を取り始め、
「ダメ…この子まだダメ。今、恋を知ったら、世界がひっくり返って元に戻る! え? 元にもどっちゃだめじゃん あはははは」イリは自分の言ったことがつぼに嵌りミサキの肩をバシバシ叩いた。
「なに笑ってんだ? あはははは」ミサキも釣られた。
「うわぁーー 大人ぶってりゅ~毎日変な妄想してるのどこの誰? さっきのよろめきは色っぽすぎたよ。こっちが焦ったわ!」アヤンはイリにジャンプして、デコピンした。
「アイタタタタ~今の痛い、痛いぃ~ひどいよぉ~~ミサキ~アヤンが苛める~でも、ごめん。ごめんなさいイロイロほんっとに、ほんとに反省してます…でも、そんなこと言うアヤンはどーなのぉ~ちっちゃくて可愛いのに! そーいう話が一切無いじゃない。こっちだって、イロイロ気を遣ってあげたいのにぃ~~~別の気ばっか遣わせないでよ~! 本日こそ、具体的なお話を聞かせてもらいましょうか?」
イリはおでこをさすり、ミサキはアヤンの肩に顔を乗せ、賛成っと挙手した!
「うっ…さ~むぃねぇ~ おっと本家モテモテちゃんを連れ戻して水虫んとこ行かなきゃね~」っと、カナを口実に、アヤンは逃げ去った。
「あ! あぁああ! いるだろ? いるな? そのごまかし方ってアヤン特有の癖だ! 子供の頃から知ってる俺を騙せるとでも思ったか~幼馴染を舐めんな~」ミサキはアヤンを追い、
「え~~うそぉ~ 誰よ、誰、だれっ~キャーーーー」っと、イリも追いかけた。
イリたちの居る場所から少し離れた、こんもりとした雪の山に、たくさんの小枝がさっきからずっと不自然にヒョコヒョコ動いていた。正体はもちろん馬鹿コンビだったが、落ちた衝撃で怪我していて、ヤスヒロは鼻血を止めようと、両方の穴にティッシュを詰め、耳の付け根から血を流しボロボロで、ヨシノブは額から顎まで幅広でまっすぐな擦り傷を作り、頭から血を垂らしていた…。
「え?!」
ドキドキドキドキドキ…
少年は脇腹あたりを押さえ、鼓動を高まらせていた。
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