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7:そしてキス
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7:そしてキス
恋する人の抱擁と長いキスで、
彼女の震えはおさまっていった。
「落ち着いた?」
「…まだ」
今度はイリがタカオミを抱きキスをした。
「寒いよ、風邪ひいちゃう」
「看病するもん」
「じゃなくって。部屋行って服着ないと」
「………」
タカオミを抱いたまま動こうとしないイリ。
「カナ…カナちんと抱き合ってた…」
「ぇ? 誰が? 誰と?」
「タカにぃ~!」
「えぇえええ 俺とあの子、カナちゃんと?
嘘だろぉ~身に覚えがない。
誓って言うがそんなことあり得ないぞ」
タカオミは自分の胸に手を当てた。
「…タカにぃ~丸い部屋でカナちんと
抱き合ってた…窓から見たもん… ヘックション」
「やべぇ 早く部屋へもどろ」
タカオミはイリをお姫様抱っこで軽々と持ち上げ
早足で歩くと、カナんちのドア越しに
ヒカルさんがこっち見てニヤつき、
グーにした親指を人差し指で挟み、卑猥に動かしているのが見えた。
「あ! まさか、あの人のやったおふざけを見たのか?
まじかぁ~おぃおぃ。
ほら、このオバサン。前に話した黒瀬ヒカルさん。
ギャラリーのオーナーだよ」
「天使ちゃんね~♪ こんばんは。
はじめましてヨロシクね♪
こら!タカなにやってんの、
こんな可愛い子泣かせて、早く部屋に入りなさい!」
ヒカルさんは、タカオミの描きかけの絵と、
そっくりなイリに、小さな羽をだぶらせた。
「ちょっ。ヒカルさんが!
後ろからハグした一瞬の事を、
イリが見ててこーなったんだよ!
俺のせいじゃないよ」
不服顔のタカオミ。
「おねーさん。おねーさんが… タカにぃの本当の… 恋人?」
イリはヒカルさんの目を見て言った。
「…そうよ。
そうねぇ~恋人。
ならいいわねぇ~って思うけど、
無いよそんなこと。安心しなさいな」
ヒカルさんはイリのほっぺをプニュプニュ押し、
納得させ、
「ほら、おでんの良い匂いがしてるわ~
お詫びしなさいあんたたち。
今晩は酒盛りね♪」
中の三人にそう言うと、手をポンっと打ち、
今度はその三人にヒソヒソ耳打ちした。
「あはぁ~ぃ♪」
っと、カナも、アヤンも、ミサキも
ニコニコとイソイソとイリを部屋の奥へ連れて行き、
ヒカルさんは入ってこようとする
タカオミを押し出した。
肩をポンポン叩くと、自分は中に入りドアを閉めた。
ガッチャン!
虚しく響くドアの音に、
「男子禁制? あ! あのオバハン今も
男だぞぉ~ヘーックショイィ~~」
取り残されたタカオミは寒くて凍えだしてしまった。
*
大きな三面鏡の前に立たさたイリ。
毛布が脱がされると、
寝室のウォークインクローゼットが開かれた。
バン!
センスの良いシンプルなタンスの引き出しが、
下から上に段差ができるよう次々に開かれ、
シュッ シュッ シュッ
アクセサリーが綺麗に並べられた小さな装飾箱も
中身をベッドに撒き散らかされた。
ジャラッラ~
「子猫ちゃんたち準備はいいかな?
まだ小さな羽根の天使ちゃんを最高のレディにするよ!」
ヒカルさんはベッドに足を組んで座り手を叩いた。
「おぅ!」ミサキが言った。
「は~ぃ」カナが言った。
「ウキャ~」アヤンが言った。
毛布を脱がされたイリは、
三人プラス一名は総出で、
カナの持つ高校生にはあり得ない
ゴージャスな下着や、アクセサリー。
大人と子供の合間を縫うようなドレスを
次々に引っ張り出されあてがわれていった。
カナはメイクを施し、髪を整え、
ミサキはアヤンのチョイスした物を
ヒカルさんに見てもらい、
「違うな」っと、
首が横に振れるたびそれをポイと投げ、
別のをアヤンに要求し、
イリはまるで、舞踏会に遅れに遅れ、
焦って着替える12時前のシンデレラだった。
カナは最後にルージュを引き終え、
「よしっと~♪」
鏡で確認しご満悦だった。
アヤンはクローゼットから出てきて、
手に余るいっぱいの服を抱え、
頭や肩に下着が乗っかっていて、
ミサキは腕組みし遠目でうんうんとうなづいていた。
「すてき~~
あ~でも、もう一つ…もう一個、違うな…」
ヒカルさんはクローゼットに入り別のブーツに取り替え、
「よし完璧!」と、イリの両腕を叩いた。
三面鏡に写るイリは普段のイリとは、
まったくの別人になっていた。
自分たちが仕上げた素敵な作品とはいえ、
突然の変わり様に皆をうっとりさせた。
軽い巻き毛で、顔にかかる少し垂れた髪。
淡い化粧に、大きくなった目。
濡れて光る唇。
キラキラ輝く、イヤリングとネックレス。
ピンク色で、フワっとしたミニのワンピは、
胸元よりも背中が大きく開き、腰の辺りに大きな
薔薇が立体的に刺繍され、下着は上下とも黒で、膝上まである黒の長靴下。
靴は今年流行のハーフブーツという出で立ちに
仕上げられていた。
「渡したく無い!! イリ~ ブヒ~ン ブヒヒヒ~ン」
っと、雄たけびを上げ
興奮したミサキが飛びつこうとした。
「早く行って! この獣は押さえておきます。
こらミサキ~! 君は女子なの、女の子~!」
アヤンはその何処に隠れてるのか分からない
謎の怪力で、ミサキを押し倒し羽交い絞めにしていた。
「いゃ~なんか、男兄弟ばっかでやんちゃに
育ったからかなぁ~
死んだ兄貴がたまに乗り移るみたい…
冗談だよ冗談だってば~
あはははは」
「ハイハイ じゃれないの、見届けるよ!」
ヒカルさんは皆の尻を叩きイリの手を取った。
*
唐突にドアは開き、イリが出てきた。
彼女はぼんやりしていたが、
その素敵な変わり様にほんの数分で着替えた
とは思えず、うっとりとするタカオミだった。
「……魔法?」
言葉に詰まったタカオミがやっと口を開けると、
ドアが少し開いた。
「うふふ。あとは、若い方に任せて
ふたりっきりでどうぞ~」
と、ヒカルさん。
「ごら、あんちゃん!
イリ泣かせたら、俺の兄貴共々
殴り込みに行くからなそのつもりでな!」
「ファイトー イリ~! あとで、
おでん食べに来てね~時間があればだけど
うふふ~♪」
と、アヤンは持っていたフェイクファーのコートと、
マフラーを差し出した。
タカオミは照れながら一つのマフラーを二人でまわし、
イリにコートをかけ、手を取り、
「きれいだよイリ」
と、ふっくらした、プルプル唇にキスしようと
顔を近づけた。が、ドアが中から叩かれた。
コンコンコン
「?」
振り向くとドアの隙間から伸びた手に
ある物を見て、真っ赤になった。
「あ。忘れてた。はい。
あなたのベッドの落し物~ リンゴは最悪だから」
ヒカルさんが囁き、六個の繋がったコンドームを垂らしていた。
タカオミはそれを奪い取り、
「拾ってくんじゃね~」
っと、イリをまたお姫様抱っこし
焦って自分の部屋に帰って行った。
「しかし、カナちゃんだっけ…
あんたほんとに高校生?
あれ、みんな一流ブランドのだよね。
(宝石にいたっては、全部本物だろう)
…凄すぎる」
「はい」
ニコニコして言う彼女の
はんぱないバックボーンにヒカルさんは唸った。
「じゃあ掃除だ。掃除しよう~手伝ってあげる。
あれ、そう言えばあのでかいのどこ行った?」
「あ。忘れてた! 親方じゃなくて、
眼鏡さんはバスルームでーす。
工具持ってかなきゃ
あ~あと水道屋まだ来ないかな~
カナもっかい電話して~」
「おっけー」
カナは携帯で水道屋にまた連絡し、
忘れられていた眼鏡男は
蛇口に指を突っ込んだまま身動きもできず。
チョロチョロ飛び出す湯を浴び冷や汗をかいていた。
「まだか、まだなのか、これが今日の僕の天命か!
僕はこう見えても忙しい身…
熱いのも苦手なのだが、
なんか冷えてきた!
しぬぅ~~しんじまぅ~
風呂場で凍死する~
寒すぎると器官が凍って息が止まるってさ!
今の僕の場合なら体温が
下がって心停止かぁぁぁあ~
なんだか…めまいがする…
ゼェゼェ
息ができない
ミサキーーー!
早く戻ってこーぃ!」
顔はやつれ叫び疲れていると、
デブ猫がジャグジーから出てきて
ホカホカの湯気を立て
濡れた体で甘えるよう、
体を押し当ててきた。
「ニャ~ン ニャニャ~ン~ ニャニャンニャ~ン」
「な、なに? なんだよ。まさか、体を洗えと?」
「ゴロゴロゴロゴロ ニャ~ン♪」
デブ猫はそのとおりだと言わんばかりに甘えた声で鳴いた。
*
カナの呼んだ水道屋は困惑していた。
「まただ」
「どした?」
「風呂のシャワー壊れたから修理しに来てくれって二回も」
「えー説明した?」
「はい。でもね、声が可愛くてさ~おしとやかで。
行ってあげたくなっちゃう~」
「声の可愛いのは顔に比例してることが多いからな…
じゃなくて、うちは水道屋だけど
蛇口は直しませんっ!」
そう、カナが携帯でかけたのは
水道屋は水道屋でも、
市の”水道局”だった…。
*
アパートに戻ったタカオミは、
ヒーターが付けっぱで暖められた部屋に安心し、
イリをベッドに降ろした。
手にコンドームを下げたままなのに気づき、
慌ててズボンのポケットにねじ込むと、
『ふたりっきりの部屋だ!』
っと思った。
いつもはどうってことない二人の時。
だけど、イリの魔法にかけられたタカオミは
落ちつかずそわそわし、
「ちょっと待ってって、ぉお茶入れてくる。
イリは紅茶だね」
声が上ずり急に動こうとしたとたん、
外して無いマフラーに引っ張られ、
イリが倒れそうなのを押さえた。
そして、二人はベッドの上で重なってしまい、
タカオミの手は柔らかい彼女の胸に触れ、
慌てて引っ込めた。
そしたら、
イリに腰をギュッと抱かれてしまった。
『!』
「タカにぃ~ アタシのこと好き?」
イリの目は真剣だった。
恋する人の抱擁と長いキスで、
彼女の震えはおさまっていった。
「落ち着いた?」
「…まだ」
今度はイリがタカオミを抱きキスをした。
「寒いよ、風邪ひいちゃう」
「看病するもん」
「じゃなくって。部屋行って服着ないと」
「………」
タカオミを抱いたまま動こうとしないイリ。
「カナ…カナちんと抱き合ってた…」
「ぇ? 誰が? 誰と?」
「タカにぃ~!」
「えぇえええ 俺とあの子、カナちゃんと?
嘘だろぉ~身に覚えがない。
誓って言うがそんなことあり得ないぞ」
タカオミは自分の胸に手を当てた。
「…タカにぃ~丸い部屋でカナちんと
抱き合ってた…窓から見たもん… ヘックション」
「やべぇ 早く部屋へもどろ」
タカオミはイリをお姫様抱っこで軽々と持ち上げ
早足で歩くと、カナんちのドア越しに
ヒカルさんがこっち見てニヤつき、
グーにした親指を人差し指で挟み、卑猥に動かしているのが見えた。
「あ! まさか、あの人のやったおふざけを見たのか?
まじかぁ~おぃおぃ。
ほら、このオバサン。前に話した黒瀬ヒカルさん。
ギャラリーのオーナーだよ」
「天使ちゃんね~♪ こんばんは。
はじめましてヨロシクね♪
こら!タカなにやってんの、
こんな可愛い子泣かせて、早く部屋に入りなさい!」
ヒカルさんは、タカオミの描きかけの絵と、
そっくりなイリに、小さな羽をだぶらせた。
「ちょっ。ヒカルさんが!
後ろからハグした一瞬の事を、
イリが見ててこーなったんだよ!
俺のせいじゃないよ」
不服顔のタカオミ。
「おねーさん。おねーさんが… タカにぃの本当の… 恋人?」
イリはヒカルさんの目を見て言った。
「…そうよ。
そうねぇ~恋人。
ならいいわねぇ~って思うけど、
無いよそんなこと。安心しなさいな」
ヒカルさんはイリのほっぺをプニュプニュ押し、
納得させ、
「ほら、おでんの良い匂いがしてるわ~
お詫びしなさいあんたたち。
今晩は酒盛りね♪」
中の三人にそう言うと、手をポンっと打ち、
今度はその三人にヒソヒソ耳打ちした。
「あはぁ~ぃ♪」
っと、カナも、アヤンも、ミサキも
ニコニコとイソイソとイリを部屋の奥へ連れて行き、
ヒカルさんは入ってこようとする
タカオミを押し出した。
肩をポンポン叩くと、自分は中に入りドアを閉めた。
ガッチャン!
虚しく響くドアの音に、
「男子禁制? あ! あのオバハン今も
男だぞぉ~ヘーックショイィ~~」
取り残されたタカオミは寒くて凍えだしてしまった。
*
大きな三面鏡の前に立たさたイリ。
毛布が脱がされると、
寝室のウォークインクローゼットが開かれた。
バン!
センスの良いシンプルなタンスの引き出しが、
下から上に段差ができるよう次々に開かれ、
シュッ シュッ シュッ
アクセサリーが綺麗に並べられた小さな装飾箱も
中身をベッドに撒き散らかされた。
ジャラッラ~
「子猫ちゃんたち準備はいいかな?
まだ小さな羽根の天使ちゃんを最高のレディにするよ!」
ヒカルさんはベッドに足を組んで座り手を叩いた。
「おぅ!」ミサキが言った。
「は~ぃ」カナが言った。
「ウキャ~」アヤンが言った。
毛布を脱がされたイリは、
三人プラス一名は総出で、
カナの持つ高校生にはあり得ない
ゴージャスな下着や、アクセサリー。
大人と子供の合間を縫うようなドレスを
次々に引っ張り出されあてがわれていった。
カナはメイクを施し、髪を整え、
ミサキはアヤンのチョイスした物を
ヒカルさんに見てもらい、
「違うな」っと、
首が横に振れるたびそれをポイと投げ、
別のをアヤンに要求し、
イリはまるで、舞踏会に遅れに遅れ、
焦って着替える12時前のシンデレラだった。
カナは最後にルージュを引き終え、
「よしっと~♪」
鏡で確認しご満悦だった。
アヤンはクローゼットから出てきて、
手に余るいっぱいの服を抱え、
頭や肩に下着が乗っかっていて、
ミサキは腕組みし遠目でうんうんとうなづいていた。
「すてき~~
あ~でも、もう一つ…もう一個、違うな…」
ヒカルさんはクローゼットに入り別のブーツに取り替え、
「よし完璧!」と、イリの両腕を叩いた。
三面鏡に写るイリは普段のイリとは、
まったくの別人になっていた。
自分たちが仕上げた素敵な作品とはいえ、
突然の変わり様に皆をうっとりさせた。
軽い巻き毛で、顔にかかる少し垂れた髪。
淡い化粧に、大きくなった目。
濡れて光る唇。
キラキラ輝く、イヤリングとネックレス。
ピンク色で、フワっとしたミニのワンピは、
胸元よりも背中が大きく開き、腰の辺りに大きな
薔薇が立体的に刺繍され、下着は上下とも黒で、膝上まである黒の長靴下。
靴は今年流行のハーフブーツという出で立ちに
仕上げられていた。
「渡したく無い!! イリ~ ブヒ~ン ブヒヒヒ~ン」
っと、雄たけびを上げ
興奮したミサキが飛びつこうとした。
「早く行って! この獣は押さえておきます。
こらミサキ~! 君は女子なの、女の子~!」
アヤンはその何処に隠れてるのか分からない
謎の怪力で、ミサキを押し倒し羽交い絞めにしていた。
「いゃ~なんか、男兄弟ばっかでやんちゃに
育ったからかなぁ~
死んだ兄貴がたまに乗り移るみたい…
冗談だよ冗談だってば~
あはははは」
「ハイハイ じゃれないの、見届けるよ!」
ヒカルさんは皆の尻を叩きイリの手を取った。
*
唐突にドアは開き、イリが出てきた。
彼女はぼんやりしていたが、
その素敵な変わり様にほんの数分で着替えた
とは思えず、うっとりとするタカオミだった。
「……魔法?」
言葉に詰まったタカオミがやっと口を開けると、
ドアが少し開いた。
「うふふ。あとは、若い方に任せて
ふたりっきりでどうぞ~」
と、ヒカルさん。
「ごら、あんちゃん!
イリ泣かせたら、俺の兄貴共々
殴り込みに行くからなそのつもりでな!」
「ファイトー イリ~! あとで、
おでん食べに来てね~時間があればだけど
うふふ~♪」
と、アヤンは持っていたフェイクファーのコートと、
マフラーを差し出した。
タカオミは照れながら一つのマフラーを二人でまわし、
イリにコートをかけ、手を取り、
「きれいだよイリ」
と、ふっくらした、プルプル唇にキスしようと
顔を近づけた。が、ドアが中から叩かれた。
コンコンコン
「?」
振り向くとドアの隙間から伸びた手に
ある物を見て、真っ赤になった。
「あ。忘れてた。はい。
あなたのベッドの落し物~ リンゴは最悪だから」
ヒカルさんが囁き、六個の繋がったコンドームを垂らしていた。
タカオミはそれを奪い取り、
「拾ってくんじゃね~」
っと、イリをまたお姫様抱っこし
焦って自分の部屋に帰って行った。
「しかし、カナちゃんだっけ…
あんたほんとに高校生?
あれ、みんな一流ブランドのだよね。
(宝石にいたっては、全部本物だろう)
…凄すぎる」
「はい」
ニコニコして言う彼女の
はんぱないバックボーンにヒカルさんは唸った。
「じゃあ掃除だ。掃除しよう~手伝ってあげる。
あれ、そう言えばあのでかいのどこ行った?」
「あ。忘れてた! 親方じゃなくて、
眼鏡さんはバスルームでーす。
工具持ってかなきゃ
あ~あと水道屋まだ来ないかな~
カナもっかい電話して~」
「おっけー」
カナは携帯で水道屋にまた連絡し、
忘れられていた眼鏡男は
蛇口に指を突っ込んだまま身動きもできず。
チョロチョロ飛び出す湯を浴び冷や汗をかいていた。
「まだか、まだなのか、これが今日の僕の天命か!
僕はこう見えても忙しい身…
熱いのも苦手なのだが、
なんか冷えてきた!
しぬぅ~~しんじまぅ~
風呂場で凍死する~
寒すぎると器官が凍って息が止まるってさ!
今の僕の場合なら体温が
下がって心停止かぁぁぁあ~
なんだか…めまいがする…
ゼェゼェ
息ができない
ミサキーーー!
早く戻ってこーぃ!」
顔はやつれ叫び疲れていると、
デブ猫がジャグジーから出てきて
ホカホカの湯気を立て
濡れた体で甘えるよう、
体を押し当ててきた。
「ニャ~ン ニャニャ~ン~ ニャニャンニャ~ン」
「な、なに? なんだよ。まさか、体を洗えと?」
「ゴロゴロゴロゴロ ニャ~ン♪」
デブ猫はそのとおりだと言わんばかりに甘えた声で鳴いた。
*
カナの呼んだ水道屋は困惑していた。
「まただ」
「どした?」
「風呂のシャワー壊れたから修理しに来てくれって二回も」
「えー説明した?」
「はい。でもね、声が可愛くてさ~おしとやかで。
行ってあげたくなっちゃう~」
「声の可愛いのは顔に比例してることが多いからな…
じゃなくて、うちは水道屋だけど
蛇口は直しませんっ!」
そう、カナが携帯でかけたのは
水道屋は水道屋でも、
市の”水道局”だった…。
*
アパートに戻ったタカオミは、
ヒーターが付けっぱで暖められた部屋に安心し、
イリをベッドに降ろした。
手にコンドームを下げたままなのに気づき、
慌ててズボンのポケットにねじ込むと、
『ふたりっきりの部屋だ!』
っと思った。
いつもはどうってことない二人の時。
だけど、イリの魔法にかけられたタカオミは
落ちつかずそわそわし、
「ちょっと待ってって、ぉお茶入れてくる。
イリは紅茶だね」
声が上ずり急に動こうとしたとたん、
外して無いマフラーに引っ張られ、
イリが倒れそうなのを押さえた。
そして、二人はベッドの上で重なってしまい、
タカオミの手は柔らかい彼女の胸に触れ、
慌てて引っ込めた。
そしたら、
イリに腰をギュッと抱かれてしまった。
『!』
「タカにぃ~ アタシのこと好き?」
イリの目は真剣だった。
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