6 / 36
6:涙のキス
しおりを挟む
6:涙のキス
普通こんな物を平然と扱えるのは、
すげ~田舎のばーさんか、
カブト虫の牝だと思い、
知らずにそうだと思い捕まえてしまう
雪国生まれの奴くらいしかいないとだろうけど、
イリはただの酔っ払いで、
平然とそれを摘まみニンマリ笑っていた。
少女たちはそれが大嫌いなのは
火を見るより明らかで、
大絶叫のまま一目散にバスルームから
飛び出して行った!
当然、後を追うイリ。
「ぉお嬢らまぁ~! ろしたんれすかぁ~
こんな時期にカブト虫の牝って珍しくないれすかぁ~
なのかな? らんれもいいやぁ~
もしかしれ、これぉ嬢らまの隠しペット~?
にょほほほ~窓からポイッしますか~
それろも、れ~れ~なんれ、逃げるんれす~」
カナの後をしつこく追い回すイリ。
「うわぁああ やめろ~~ バカ~~~」
シャワーを恐怖のあまり根元から千切ったミサキ。
水が勢い良く噴き出し、
あたりが水浸しになっていった。
ずるずるしたホースを鞭のように持ちイリを威嚇した。
狂ったように逃げ惑う少女たち。
部屋中にシャボン玉が飛び交い、
そこだけ切り取ればなんとも美しい光景ではあった。
「来るな! 寄るな! 悪霊退散~~~!!」
っと、アヤンは風呂桶で頭を守り、
シャンプーボトルからピンクの液体をエイエイっと
イリに向かってかけまくり、
バスルームからの水はこちらの
部屋にも浸水しはじめていた。
カナは一目散にマンションを出ようとしたが、
ロックを外しても重く開かないドアに涙目で、
「おもぃ! おもいょぉ~
のろぃ?!
イリの呪い?!
~なんで開かないこのドアめぇ~
えぇ~~ぃ ひらきなさーぃ!」
叫びながら体当するとドアはあっけなく開き、
万歳の格好でその場にこけてしまった。
ミサキは風に揺れるカーテンを不思議に思ったが、
イリのゴキブリに気が気で無く。
無謀にも窓から飛び出そうとした!
ガララッ!
「!!!」
すると、下にいる、ヒカルさん、シラさん、
眼鏡男が目を丸くしてこっちを見ていた。
一番驚いていたのはシラさんで、
ミサキはその制服姿を上から下へ、
下から上へ舐めるように見て”ビビリ”
目の前にいるコート姿の男と目が合った。
「うぉ♪」
シオンは猫に手を伸ばし捕まえていたが、
突然現れた裸の少女にときめき、
『ラッキィ~~やっぱデブ猫より 子猫こちゃんだよなぁ~
ウヒョヒョヒョ♪』
と、思ったのもつかの間、
ミサキはヘラヘラ顔の男を睨み、千切れたシャワーホースで
首を絞めあげると、顔を思いっきり蹴り上げた!
「ギァヤアアアア~ へんたぃーーーー!!!」
ミサキは叫んだ!
「ゲェ~! なんでだぁ~~!」
シオンは、少女の蹴り上げた足の間の
”天国”を見たまま
首に巻きつくホースを取ろうともがいた!
ミサキは、怒ったままの仁王立ちで、
変態金髪野郎の最期を見届けようとしていた。
シオンは梯子ごと地面を支点に洋館側へ弾かれ、
弧を描いた。
「わわわわ!!!!」
あっけに取られた下の三人は何もできず
見守るしかなかった。
梯子はマンションから離れ、
洋館へ倒れると見せかけ、マンション側へ
戻ろうとしつつ揺れ、
まっすぐ垂直に立ち止まってしまった。
ビョ~~~ン
プルプルプルル・・・
「お! おぉおお~」
奇跡の様子に下の三人は歓声を上げ拍手したが、
梯子は揺らぎゆっくりマンション側へ
倒れかけたが、ミサキが待ち構えていて、
再び蹴たぐったが、やっと裸の自分に気づいた。
「キャァアアアア イャ~~~ン
イリ~! もうやめろ~~」
っとカーテンにクルクル包まり体を隠した。
「ぁ・ぁ・ぁ・ぁ・ぁ・ぁ・・・」
シオンは怯え、
「どっちに倒れてもやばい!」
と、梯子にしがみ付き、半身丸見栄の姿に
下界の三人は、またため息を吐いたが、
シラさんが慌てて梯子を押さえようとしたのが仇となり、
ブンブン揺れはじめた!
そして、シオンだけをどこか遠く本当の天国?へ
ぶっ飛ばしてしまった!
「友よ星になれ。南無阿弥陀仏」
空を飛ぶ友人の軌跡を見つめ眼鏡男は合掌した。
「わはぁ~~ 飛んだわねぇ、飛んだ~~
すごぉ~~ぃ!
でも、赤ん坊?~小さいなぁ…
やばくない? あっはっはっは」
他人事のヒカルさんは、
ずれたビキニブリーフから見えていたシオンの”あれ”を
自分の小指の第二関節くらいを押さえ見比べ笑った。
年長のシラさんはヒーヒー言い、
梯子を死守し汗だくになっていたが、
トランポリンにデブ猫がポ~~ンポ~~ンと跳ね、
何度か繰り返したあと、
またマンションの部屋に戻るのを見て安心し、
「あぁ良かったマドちゃん。
じゃあ、これ返してくるから」
と、どこかへ去って行った。
*
「ギャッ!」
ドアからいきなり飛び出してきた裸の少女に
激突されたタカオミも一緒に転んでしまい、
なぜだか互いの股に顔を突っ込み苦痛の声で唸った。
そして、そこへ後を追うイリが瞳をキラキラ輝かせ、
シャボン玉に包まれやって来た!
「カナさまぁ~~ そんなとこれ寝るろ
風邪ひきますよぉ~
あらまぁ。はしたないれす!
殿方となんという格好なのれすかぁ~
そんらぉ嬢らまにはお説教をぉ~~ あらぁ?」
イリはふと、あっけに取られて
動けない双子の顔を見た。
「あらぁまぁ~こんら所にも虫ぃ~
お掃除お掃除~♪」
っと、シゲミの大きなホクロを掴み上げ、
「うわ! 何だコイツーイテテテテェ!」
焦ってその手を振り払おうとしたが、
イリの見せ付けるゴキブリに恐れおののき、
へたり込んでしまった。
目をゴシゴシしながら、イリはまだいる
”三匹目の虫”をシズオの顔に見つけた。
「あれれ~ なんか目がおかしいれす~
同じ人がだぶって見えらすよ~
ここは虫天国?
冬なのに元気いいれすねぇ~
カナらま虫好きにも困っらもんれす。
はいはい、おそうじ~」
言い終わると、ゴキブリの髭を口に咥えてしまった!
そして、両手で双子のホクロを掴み、
嫌がる二人を部屋に引きづり込もうとした。
「うわぁあああああ ギャアアア
ゴキブリ少女~~!
やめろ~やみてやみて ギャーー」
「ばか、やめろ! こら! 離せっバカ~~」
恐怖で力の出ない双子は入り口の壁を最後の力で掴み、
蟲女子から逃れようと必死だった。
『なんだ? 何が起こった? これはなんだろう・・・』
タカオミは、目の前にある”そこ”を見て、
『生暖かい精肉、切ったザクロや貝類など…
もしや、薔薇星雲!』
など等を想像していた。
そして、それがなんなのか直ぐに分かってしまった!
『うわぁあああ!』
カナのあそこが目の前に広がっていたのだ。
顔が赤くなる前にガバッと跳ね起きた。
しかし、もう顔は真っ赤だった。
『ん? これは?』
カナも、急に硬く山のようになったそこを
何だろうと思い、顔でこすってみた…。
『なんですの?…これなーに?』
そこをすりすりされ、
「うゎあああああ~~」
っと、下からごそごそ這い出す誰かにカナは驚き、
我にかえった。
「な、なにごとですのぉ~~~~
あぁ あらしとしたことが!
はだかーー
キャアアアア~」
カナは、イリとイリに引きずられる双子を
押しのけ部屋の奥へかけて行った。
「いったいぜんたい何事なんだよぉ~
まったくぅ」
まだ、真っ赤なタカオミは
恥ずかしいのを隠すように、
ジーンズをバタバタ叩き埃を払った。
「ん? ろしたの~~」
イリが振り向くと、口元の黒い物も揺れた。
「イリ?!」
イリと目があったタカオミにはそれが見えていなかった。
だけど、なぜ彼女がここにいるのか理解できなかった。
「タカにぃ~!!!」
やっと会えたタカオミに興奮したイリは
二つのホクロを離したが、
口のゴキブリは激しく揺れて飛び、
シゲミの左頬にベったりくっ付いた。
「ギャアアアアアアーーー」
叫ぶシゲミ。
「ウワァ~!!!
アァア・・・
ウワハハハハハハハハハ」
それを見て大笑いするシズオに、
憤慨してる姉は震えながら顔を近づけ、
これを取れと無言で圧力をかけた。
顔をフルフルさせ拒否する弟に、凄い形相で迫る姉。
二人は這いつくばったまま、
ゴキブリのように廊下を追いかけっこし、
消えて行ったが遠くで小さな弟の絶叫が響いた。
「タカにぃ~~
やっと逢えたぁあああ ア~~ンア~~ン」
立ちつくし、泣き出してしまったイリ。
「なんで、いったいなんでここにいる?
なんで泣くの?
なんで、ハ・ダ・カなんだよぉ~」
タカオミの疑問が次々と口をついたが、
とりあえず何か着せようと自分のセーターを脱いで
着せようとしたが、イリはそれを奪うように取ると、
「タカにぃ~ カナ…
カナカナカナカナカナっとお幸せに~
ビェ~~~ン」
っと、号泣し廊下を走りだした。
「えぇええええ? カナカナカナ??
お幸せってなんだよ? イリ~」
深まるばかりの謎にイリを追おうとすると、
着替えたアヤンが毛布を差し出した。
着ているジャージは体に合わずブカブカだ。
「タカにぃさん! なんで、彼氏さんがここに
いるのか分からないけど、
あたちイリの友だちでしゅ~
あの子今日ものすごい情緒不安なの…
だからお願いしましゅ」
ペコっと頭を下げたアヤンの後ろに、
カナとミサキも同じデザインのジャージ姿で、
モップとバケツを持ち不安そうにしていた。
「あ。ありがとぅ」
三人の顔を見て、まっしぐらにイリのとこへ走るタカオミ。
「こら! あんたたち!
何やってんのまったくもぅ~人騒がせな!」
ドアを盾にするよう、
イリとタカオミの様子を伺っている三人に、
やって来たヒカルさんは叱ろうとしたが、
ミサキは片手を顔の前に立て詫びるふうに頭と一緒に振り、
カナは口元に指を立てシーシー静かにしてと諭し、
アヤンはあっちあっちと廊下の先を指さした。
「ん? あらあら。
若い二人が暗がりで何してますか?」
と、微笑み、付いて来た眼鏡男は
ミサキと目が合い、あなたはこっちこっちと
手招きされ付いて行くと
部屋はビショビショで、
水は今も玄関へ流れ出ようとしていた。
濡れてない場所を探しながら歩くと、
壊れたシャワーからまだお湯が
ビュービュー噴き出ていて、あたりは湯気で真っ白だった。
「ねぇ これ直せない?」
ミサキは手を合わせ懇願した。
「えぇ~ 工具無い?
シーツとか紐とか針金とかあれば持ってきて。
補強くらいならできそうだけど。
24時間営業の水道修理屋に連絡したほうが早いな」
眼鏡男のメガネも曇り、
メガネを外し服の裾で拭うと、
図体がでかい割りにつぶらな瞳に
ミサキは笑いそうなるのをこらえた。
「わはぁっ。わっかりましたぁ~親方~
カナに言ってくる~ところで親方の名前は?」
「・・・僕は、大山田マスタツ。君は?」
「ぁ、あたしは鋤久音(スクネ)ミサキ~」
ミサキは走りかけたが、
振り返り壁越しに首だけ出してまた質問した。
「親方ぁ~あのさ、
さっきの”おまわりさん”って近所の交番の人?」
「親方じゃないってば…
あぁさっきの人、不知火さんのことか。
僕らシラさんって呼んでるんだけど、
あの人たたまたま居合わせただけだよ。
お咎め無いと思うから怖がらなくていいよ…
うんうん。
ちゅーか、早く戻って来いよ。
こりゃきっつい」
親方は仕方ないので、
座りこみ壊れた蛇口に指を突っ込み栓をしていた。
「そっか~ふ~ん ふんふんふ~ん プププ」
ミサキは口を尖らせたが、
ニヤっと笑うとカナの所へかけていった。
すると、入れ替わるようにのそのそデブ猫が現れ、
ジャグジーに湯が少ないのを確認すると…
中へヒョイっと入ってしまった。
ジャプーン バシャバシャ ちゃぽん…。
デブ猫はのほほんと湯に浸かり、
とても気持ち良さげに目を細めた。
「おぃこら! お前まさか…風呂か?
風呂に入りたかっただけかなのか?!
これが目的だったのか~!
なんて猫だぁ…まったくぅ~」
眼鏡男はうなだれ、
猫は鼻歌でも歌うように喉を鳴らしはじめた。
ゴロゴロゴロゴロ~♪
*
イリは廊下の突き当たり、
明り取りの踊り場でセーターを抱え
うずくまっていた。
「イリ」
そっと近づき肩を抱くと震えて、泣いているのが分かった。
「もう。大丈夫・・・」
そして、毛布をかけ抱きしめたが、
拒否するような素振りのイリをこちら側に向け、
毛布の中を覗くようにキスをした。
今日のキスは涙の味がした。
普通こんな物を平然と扱えるのは、
すげ~田舎のばーさんか、
カブト虫の牝だと思い、
知らずにそうだと思い捕まえてしまう
雪国生まれの奴くらいしかいないとだろうけど、
イリはただの酔っ払いで、
平然とそれを摘まみニンマリ笑っていた。
少女たちはそれが大嫌いなのは
火を見るより明らかで、
大絶叫のまま一目散にバスルームから
飛び出して行った!
当然、後を追うイリ。
「ぉお嬢らまぁ~! ろしたんれすかぁ~
こんな時期にカブト虫の牝って珍しくないれすかぁ~
なのかな? らんれもいいやぁ~
もしかしれ、これぉ嬢らまの隠しペット~?
にょほほほ~窓からポイッしますか~
それろも、れ~れ~なんれ、逃げるんれす~」
カナの後をしつこく追い回すイリ。
「うわぁああ やめろ~~ バカ~~~」
シャワーを恐怖のあまり根元から千切ったミサキ。
水が勢い良く噴き出し、
あたりが水浸しになっていった。
ずるずるしたホースを鞭のように持ちイリを威嚇した。
狂ったように逃げ惑う少女たち。
部屋中にシャボン玉が飛び交い、
そこだけ切り取ればなんとも美しい光景ではあった。
「来るな! 寄るな! 悪霊退散~~~!!」
っと、アヤンは風呂桶で頭を守り、
シャンプーボトルからピンクの液体をエイエイっと
イリに向かってかけまくり、
バスルームからの水はこちらの
部屋にも浸水しはじめていた。
カナは一目散にマンションを出ようとしたが、
ロックを外しても重く開かないドアに涙目で、
「おもぃ! おもいょぉ~
のろぃ?!
イリの呪い?!
~なんで開かないこのドアめぇ~
えぇ~~ぃ ひらきなさーぃ!」
叫びながら体当するとドアはあっけなく開き、
万歳の格好でその場にこけてしまった。
ミサキは風に揺れるカーテンを不思議に思ったが、
イリのゴキブリに気が気で無く。
無謀にも窓から飛び出そうとした!
ガララッ!
「!!!」
すると、下にいる、ヒカルさん、シラさん、
眼鏡男が目を丸くしてこっちを見ていた。
一番驚いていたのはシラさんで、
ミサキはその制服姿を上から下へ、
下から上へ舐めるように見て”ビビリ”
目の前にいるコート姿の男と目が合った。
「うぉ♪」
シオンは猫に手を伸ばし捕まえていたが、
突然現れた裸の少女にときめき、
『ラッキィ~~やっぱデブ猫より 子猫こちゃんだよなぁ~
ウヒョヒョヒョ♪』
と、思ったのもつかの間、
ミサキはヘラヘラ顔の男を睨み、千切れたシャワーホースで
首を絞めあげると、顔を思いっきり蹴り上げた!
「ギァヤアアアア~ へんたぃーーーー!!!」
ミサキは叫んだ!
「ゲェ~! なんでだぁ~~!」
シオンは、少女の蹴り上げた足の間の
”天国”を見たまま
首に巻きつくホースを取ろうともがいた!
ミサキは、怒ったままの仁王立ちで、
変態金髪野郎の最期を見届けようとしていた。
シオンは梯子ごと地面を支点に洋館側へ弾かれ、
弧を描いた。
「わわわわ!!!!」
あっけに取られた下の三人は何もできず
見守るしかなかった。
梯子はマンションから離れ、
洋館へ倒れると見せかけ、マンション側へ
戻ろうとしつつ揺れ、
まっすぐ垂直に立ち止まってしまった。
ビョ~~~ン
プルプルプルル・・・
「お! おぉおお~」
奇跡の様子に下の三人は歓声を上げ拍手したが、
梯子は揺らぎゆっくりマンション側へ
倒れかけたが、ミサキが待ち構えていて、
再び蹴たぐったが、やっと裸の自分に気づいた。
「キャァアアアア イャ~~~ン
イリ~! もうやめろ~~」
っとカーテンにクルクル包まり体を隠した。
「ぁ・ぁ・ぁ・ぁ・ぁ・ぁ・・・」
シオンは怯え、
「どっちに倒れてもやばい!」
と、梯子にしがみ付き、半身丸見栄の姿に
下界の三人は、またため息を吐いたが、
シラさんが慌てて梯子を押さえようとしたのが仇となり、
ブンブン揺れはじめた!
そして、シオンだけをどこか遠く本当の天国?へ
ぶっ飛ばしてしまった!
「友よ星になれ。南無阿弥陀仏」
空を飛ぶ友人の軌跡を見つめ眼鏡男は合掌した。
「わはぁ~~ 飛んだわねぇ、飛んだ~~
すごぉ~~ぃ!
でも、赤ん坊?~小さいなぁ…
やばくない? あっはっはっは」
他人事のヒカルさんは、
ずれたビキニブリーフから見えていたシオンの”あれ”を
自分の小指の第二関節くらいを押さえ見比べ笑った。
年長のシラさんはヒーヒー言い、
梯子を死守し汗だくになっていたが、
トランポリンにデブ猫がポ~~ンポ~~ンと跳ね、
何度か繰り返したあと、
またマンションの部屋に戻るのを見て安心し、
「あぁ良かったマドちゃん。
じゃあ、これ返してくるから」
と、どこかへ去って行った。
*
「ギャッ!」
ドアからいきなり飛び出してきた裸の少女に
激突されたタカオミも一緒に転んでしまい、
なぜだか互いの股に顔を突っ込み苦痛の声で唸った。
そして、そこへ後を追うイリが瞳をキラキラ輝かせ、
シャボン玉に包まれやって来た!
「カナさまぁ~~ そんなとこれ寝るろ
風邪ひきますよぉ~
あらまぁ。はしたないれす!
殿方となんという格好なのれすかぁ~
そんらぉ嬢らまにはお説教をぉ~~ あらぁ?」
イリはふと、あっけに取られて
動けない双子の顔を見た。
「あらぁまぁ~こんら所にも虫ぃ~
お掃除お掃除~♪」
っと、シゲミの大きなホクロを掴み上げ、
「うわ! 何だコイツーイテテテテェ!」
焦ってその手を振り払おうとしたが、
イリの見せ付けるゴキブリに恐れおののき、
へたり込んでしまった。
目をゴシゴシしながら、イリはまだいる
”三匹目の虫”をシズオの顔に見つけた。
「あれれ~ なんか目がおかしいれす~
同じ人がだぶって見えらすよ~
ここは虫天国?
冬なのに元気いいれすねぇ~
カナらま虫好きにも困っらもんれす。
はいはい、おそうじ~」
言い終わると、ゴキブリの髭を口に咥えてしまった!
そして、両手で双子のホクロを掴み、
嫌がる二人を部屋に引きづり込もうとした。
「うわぁあああああ ギャアアア
ゴキブリ少女~~!
やめろ~やみてやみて ギャーー」
「ばか、やめろ! こら! 離せっバカ~~」
恐怖で力の出ない双子は入り口の壁を最後の力で掴み、
蟲女子から逃れようと必死だった。
『なんだ? 何が起こった? これはなんだろう・・・』
タカオミは、目の前にある”そこ”を見て、
『生暖かい精肉、切ったザクロや貝類など…
もしや、薔薇星雲!』
など等を想像していた。
そして、それがなんなのか直ぐに分かってしまった!
『うわぁあああ!』
カナのあそこが目の前に広がっていたのだ。
顔が赤くなる前にガバッと跳ね起きた。
しかし、もう顔は真っ赤だった。
『ん? これは?』
カナも、急に硬く山のようになったそこを
何だろうと思い、顔でこすってみた…。
『なんですの?…これなーに?』
そこをすりすりされ、
「うゎあああああ~~」
っと、下からごそごそ這い出す誰かにカナは驚き、
我にかえった。
「な、なにごとですのぉ~~~~
あぁ あらしとしたことが!
はだかーー
キャアアアア~」
カナは、イリとイリに引きずられる双子を
押しのけ部屋の奥へかけて行った。
「いったいぜんたい何事なんだよぉ~
まったくぅ」
まだ、真っ赤なタカオミは
恥ずかしいのを隠すように、
ジーンズをバタバタ叩き埃を払った。
「ん? ろしたの~~」
イリが振り向くと、口元の黒い物も揺れた。
「イリ?!」
イリと目があったタカオミにはそれが見えていなかった。
だけど、なぜ彼女がここにいるのか理解できなかった。
「タカにぃ~!!!」
やっと会えたタカオミに興奮したイリは
二つのホクロを離したが、
口のゴキブリは激しく揺れて飛び、
シゲミの左頬にベったりくっ付いた。
「ギャアアアアアアーーー」
叫ぶシゲミ。
「ウワァ~!!!
アァア・・・
ウワハハハハハハハハハ」
それを見て大笑いするシズオに、
憤慨してる姉は震えながら顔を近づけ、
これを取れと無言で圧力をかけた。
顔をフルフルさせ拒否する弟に、凄い形相で迫る姉。
二人は這いつくばったまま、
ゴキブリのように廊下を追いかけっこし、
消えて行ったが遠くで小さな弟の絶叫が響いた。
「タカにぃ~~
やっと逢えたぁあああ ア~~ンア~~ン」
立ちつくし、泣き出してしまったイリ。
「なんで、いったいなんでここにいる?
なんで泣くの?
なんで、ハ・ダ・カなんだよぉ~」
タカオミの疑問が次々と口をついたが、
とりあえず何か着せようと自分のセーターを脱いで
着せようとしたが、イリはそれを奪うように取ると、
「タカにぃ~ カナ…
カナカナカナカナカナっとお幸せに~
ビェ~~~ン」
っと、号泣し廊下を走りだした。
「えぇええええ? カナカナカナ??
お幸せってなんだよ? イリ~」
深まるばかりの謎にイリを追おうとすると、
着替えたアヤンが毛布を差し出した。
着ているジャージは体に合わずブカブカだ。
「タカにぃさん! なんで、彼氏さんがここに
いるのか分からないけど、
あたちイリの友だちでしゅ~
あの子今日ものすごい情緒不安なの…
だからお願いしましゅ」
ペコっと頭を下げたアヤンの後ろに、
カナとミサキも同じデザインのジャージ姿で、
モップとバケツを持ち不安そうにしていた。
「あ。ありがとぅ」
三人の顔を見て、まっしぐらにイリのとこへ走るタカオミ。
「こら! あんたたち!
何やってんのまったくもぅ~人騒がせな!」
ドアを盾にするよう、
イリとタカオミの様子を伺っている三人に、
やって来たヒカルさんは叱ろうとしたが、
ミサキは片手を顔の前に立て詫びるふうに頭と一緒に振り、
カナは口元に指を立てシーシー静かにしてと諭し、
アヤンはあっちあっちと廊下の先を指さした。
「ん? あらあら。
若い二人が暗がりで何してますか?」
と、微笑み、付いて来た眼鏡男は
ミサキと目が合い、あなたはこっちこっちと
手招きされ付いて行くと
部屋はビショビショで、
水は今も玄関へ流れ出ようとしていた。
濡れてない場所を探しながら歩くと、
壊れたシャワーからまだお湯が
ビュービュー噴き出ていて、あたりは湯気で真っ白だった。
「ねぇ これ直せない?」
ミサキは手を合わせ懇願した。
「えぇ~ 工具無い?
シーツとか紐とか針金とかあれば持ってきて。
補強くらいならできそうだけど。
24時間営業の水道修理屋に連絡したほうが早いな」
眼鏡男のメガネも曇り、
メガネを外し服の裾で拭うと、
図体がでかい割りにつぶらな瞳に
ミサキは笑いそうなるのをこらえた。
「わはぁっ。わっかりましたぁ~親方~
カナに言ってくる~ところで親方の名前は?」
「・・・僕は、大山田マスタツ。君は?」
「ぁ、あたしは鋤久音(スクネ)ミサキ~」
ミサキは走りかけたが、
振り返り壁越しに首だけ出してまた質問した。
「親方ぁ~あのさ、
さっきの”おまわりさん”って近所の交番の人?」
「親方じゃないってば…
あぁさっきの人、不知火さんのことか。
僕らシラさんって呼んでるんだけど、
あの人たたまたま居合わせただけだよ。
お咎め無いと思うから怖がらなくていいよ…
うんうん。
ちゅーか、早く戻って来いよ。
こりゃきっつい」
親方は仕方ないので、
座りこみ壊れた蛇口に指を突っ込み栓をしていた。
「そっか~ふ~ん ふんふんふ~ん プププ」
ミサキは口を尖らせたが、
ニヤっと笑うとカナの所へかけていった。
すると、入れ替わるようにのそのそデブ猫が現れ、
ジャグジーに湯が少ないのを確認すると…
中へヒョイっと入ってしまった。
ジャプーン バシャバシャ ちゃぽん…。
デブ猫はのほほんと湯に浸かり、
とても気持ち良さげに目を細めた。
「おぃこら! お前まさか…風呂か?
風呂に入りたかっただけかなのか?!
これが目的だったのか~!
なんて猫だぁ…まったくぅ~」
眼鏡男はうなだれ、
猫は鼻歌でも歌うように喉を鳴らしはじめた。
ゴロゴロゴロゴロ~♪
*
イリは廊下の突き当たり、
明り取りの踊り場でセーターを抱え
うずくまっていた。
「イリ」
そっと近づき肩を抱くと震えて、泣いているのが分かった。
「もう。大丈夫・・・」
そして、毛布をかけ抱きしめたが、
拒否するような素振りのイリをこちら側に向け、
毛布の中を覗くようにキスをした。
今日のキスは涙の味がした。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
イラスト部(仮)の雨宮さんはペンが持てない!~スキンシップ多めの美少女幽霊と部活を立ち上げる話~
川上とむ
青春
内川護は高校の空き教室で、元気な幽霊の少女と出会う。
その幽霊少女は雨宮と名乗り、自分の代わりにイラスト部を復活させてほしいと頼み込んでくる。
彼女の押しに負けた護は部員の勧誘をはじめるが、入部してくるのは霊感持ちのクラス委員長や、ゆるふわな先輩といった一風変わった女生徒たち。
その一方で、雨宮はことあるごとに護と行動をともにするようになり、二人の距離は自然と近づいていく。
――スキンシップ過多の幽霊さんとスクールライフ、ここに開幕!
巡る季節に育つ葦 ー夏の高鳴りー
瀬戸口 大河
青春
季節に彩られたそれぞれの恋。同じ女性に恋した者たちの成長と純真の話。
五部作の第一弾
高校最後の夏、夏木海斗の青春が向かう先は…
季節を巡りながら変わりゆく主人公
桜庭春斗、夏木海斗、月島秋平、雪井冬華
四人が恋心を抱く由依
過ぎゆく季節の中で由依を中心に4人は自分の殻を破り大人へと変わってゆく
連載物に挑戦しようと考えています。更新頻度は最低でも一週間に一回です。四人の主人公が同一の女性に恋をして、成長していく話しようと考えています。主人公の四人はそれぞれ季節ごとに一人。今回は夏ということで夏木海斗です。章立ては二十四節気にしようと思っていますが、なかなか多く文章を書かないためpart で分けようと思っています。
暇つぶしに読んでいただけると幸いです。
亡き少女のためのベルガマスク
二階堂シア
青春
春若 杏梨(はるわか あんり)は聖ヴェリーヌ高等学校音楽科ピアノ専攻の1年生。
彼女はある日を境に、人前でピアノが弾けなくなってしまった。
風紀の厳しい高校で、髪を金色に染めて校則を破る杏梨は、クラスでも浮いている存在だ。
何度注意しても全く聞き入れる様子のない杏梨に業を煮やした教師は、彼女に『一ヶ月礼拝堂で祈りを捧げる』よう反省を促す。
仕方なく訪れた礼拝堂の告解室には、謎の男がいて……?
互いに顔は見ずに会話を交わすだけの、一ヶ月限定の不思議な関係が始まる。
これは、彼女の『再生』と彼の『贖罪』の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる