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第1章    王家と公爵家

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広々としたバルコニーには誰でも
休憩ができるようにと王室からの気使いで置かれた
小さな2人用のウッド調のテーブルと椅子があった




そこに腰をかけ、夜空を眺めた





「気持ちい」



ちょっとはしたないかもしれないけど
誰もいないと思い、ハイヒールを脱いで
少しひんやりした感覚が足裏に伝わる






履き慣れているものの何人もと連続で踊るのは
少しだけ疲れてしまった

このまま目を閉じたら寝てしまいそう‥




そう思った時、カツンっとバルコニーに音が聞こえた

さっと脱いでいたハイヒールを履き直した







「あ、ごめん」



バルコニーの入り口からレオンの姿が見えた




「あ、レオン様」


慌てて立ち上がろうとした



「待って、そのまま座ったままで」



そう制され、座り直した




目の前のテーブルに飲み物が入った
グラスを置かれた




「喉が渇いちゃって、マリアの分も
 もらってきたから、どうぞ」



そう言って、空いた椅子に座り
一口グラスに入った水を飲むレオン





「ありがとうございます、頂きます」



両手で持ちグラスに口を付けた
ひんやりとした水が口の中を冷してくれる





「‥‥」



「‥‥」





2人とも無言で空を見上げていた
でもその空間はどこも居心地が悪くはなかった












「‥ねぇ、初めて会った日の事覚えてる?」




隣に座るレオンが先に口を開いた




「‥はい。」



「あの時は本当にたまたま、部屋に僕1人しか
 いない時で使用人達も偶然他の仕事に
 取り掛かっていて運良くあの噴水のところに
 行くことができたんだ、普段は行かない場所」




真っ直ぐ前を見たまま優しい声で話すレオン




「君はあの場所によく居たのはずっと前から
 見ていたから知っていたんだけどね」





前から知っていた?私を?




「僕の部屋の窓からあの噴水のとこ、よく見えるんだ
 でも、どこの貴族の子だとか名前とかは
 知らなかったけどね」



「そう‥なんですね、あそこは水の音と
 お父様の仕事が終わった時にすぐ会えた場所で
 お気に入りの場所だったんです」



そう言いながらレオンの横顔を見た




視線に気づいたのかレオンが降り返った





「僕はちょうど用事があって寄宿学校から
 戻ってきてきたタイミングで君に出会った」




あの時はすごくキラキラした姿だったのに
今のレオン様は夜空に負けないくらい
まだ13歳というお年なのに大人な感じがした





「だから、何回かお城に来た時には
 お会い出来なかったんですね」



3年間の謎が解けた





「6年間の学校生活を終えて帰ってきたら
 父さんに、、いや、国王陛下に婚約式をやるからと
 君の肖像画を見せられた時は本当にびっくりした」



「びっくり‥ですか?」



「貴族同士で婚約をする時は大体
 昔から親交のある決められた相手か
 御令嬢達の社交界で気に入られた相手との婚姻が
 普通とされてる
 
 それは王家の僕も例外ではないよ」




王族はベルナール公爵家の令嬢が生まれた時は
王族に迎えるのか仕来り‥
でもお父様もお爺様も男兄弟しかいなかったから
その時は国外の皇女様か、ベルナール公爵家と並ぶ
もう一つの公爵家でもあるサエルシア公爵家の令嬢が
選ばれる事がある‥

そうお父様に教えてもらった




「君も知ってると思うけど
 ベルナール公爵家の令嬢はフィシャール家に
 嫁ぐのが決まりだ。でも今日みたいな婚約式にしか
 令嬢は相手の事をなにも知らされない。
 それが何故だかわかるかい?」


レオンは顔だけを向けていた体勢から
マリアに体ごと向けた




「そこまでは教えて頂いておりません。」




「ベルナール公爵家の令嬢に嫌だと言わせない為だ」




幼い頃から王族に嫁ぐと教えられているのに。
拒絶するベルナールの令嬢がいるのかと

それに公爵家以外の貴族が王族と関わりたくないと
思うのかなとちょっと考えてしまった




「6年間の寄宿学校は色々と学ぶ為に行くのとは
 別に令嬢に会わないようにする為だよ
 表に出て行う公務は絶対にさせてもらえない
 
 名前も国民に公表しない。」



(あ、教えてもらった名前はレオだった‥)




レオンはマリアのちょっと驚いた顔をみて
クスッと笑った





「マリア、僕の本当の名前はレオン
 レオン・D・フィシャールだよ」



「レオン・D・フィシャール‥」



「レオンでもいいし、愛称のレオでもいい

 マリア、さっきも言ったけど
 僕の婚約者になってくれて、ありがとう」



こんなにも嬉しそうにありがとうと言われると
思わなかった。



「婚約者と知らされる前の君に会えたあの時の
 僕はとても幸運だと思うんだ
 ベルナール公爵にもあとでお礼を言わなきゃだね」



お父様に‥?
なんかその時のお父様の姿を想像すると
おかしく思えてきた



「フフ‥」


クスクスと笑うマリアがあの時のマリアと重なって
レオンはこのままマリアがずっと僕のそばで
笑って居られるような存在であろうと

改めて心に誓った





それから今までの空白の時間を埋めるかのように
レオンの寮生活の話や剣術の話
マリアの好きな事、楽しかった話など
時間が許す限り2人は笑って楽しく過ごした









どれくらい話していたかわからないけど
バルコニーの扉が開き、レオンの側近が現れた




「レオン様、マリア様
 宴も最後になりました。
 お2人もホールへお戻りください」




(そういえば、私バルコニーの扉閉めてない‥)






レオンを見たマリア


レオンは立ち上がり、手を前に差し出した



「僕が閉めておくようにお願いしておいたんだ
 さぁマリア、最後のダンスは君と踊りたい
 

 僕と踊って頂けますか‥マリア」





ダンスに誘う姿はあの本に描かれていたような
王子様みたいだった‥







「喜んでお受け致します‥」



そう言ってレオンの手を取り、開いた扉に光る
眩しい世界にまた再び戻っていく






















レオン様、私も貴方の婚約者でとても嬉しいです




私の初恋はあなただったんだもの‥。







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