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4章 ささやかな日常

40.信じてあげてくれる?

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「やっぱ緊張するな…」

 アスタルト家次男ユーリは、ある場所にいた。

 その場所はとても広く、彼以外にも数人の大人数がいた。

 ユーリがその場所にいる理由…。

 それは、1週間前に遡る…。

 ーー1週間前
「なに?王国騎士団のを受けるだと?」
「は…はい…俺ももう18なんで、そろそろいいかと…」

 ユーリは父親であるガイアと話していた。

 それは"王国騎士団"の入団試験に関する事だった。


 ーー王国騎士団

 以前も解説したが、それはオルガリス王国の平和を守る騎士団。

 アスタルト家長男のサイガも属している。

 その騎士団に、ユーリも入団しようと考えていた。

 邸内では「ユーリが王国騎士団の入団試験を受ける」という話が広まり、その情報は既にリタ達の耳にも入っていた。

「え?ユーリお兄様が?」
「ええ…そろそろお兄様も進路を決める時期だからと、決心を決めたみたいよ」
「"王国騎士団"って、サイガ義兄さんがいる所だっけ?」
「そうだよ!この国を守っていると~ってもかっこいい人たちなのよ!」

 リタ、ティオ、サティもまさにユーリの騎士団志望の話で持ち切りだった。

「僕も驚いたよ…まさかユーリが騎士団に入りたいなんて…」

 3人が話している所でサイガがやってきた。

「お兄様!」
「サイガ義兄さんも、その入団試験?っていうのを受けた事あるんですか?」
「そりゃもちろん!受けて合格出来たから今は騎士団にいるんだよ!」

 当たり前の事を言っただけのサイガであったが、ティオにとってはそれも驚く事であった。

「それでしたら、私、試験当日にユーリお兄様の為にお弁当をお作りします!」
「いいねえ!リタの手作りならユーリ大歓迎だと思うよ!!」

 ーーそして現在

 試験会場は受験者の他にも受験者の家族や友人、恋人といった人物もいた。
 試験は闘技場で行われる為に観覧席があり、そこからの見学や応援も可能だからであった。

 その観覧席にはリタ、ティオを始めとしたアスタルト家が総出でユーリの試験を見に来ていた。

 最初は別室で筆記による試験であった為、闘技場にはいなかったが筆記を終えた今まさに、"実技"による試験が始まろうとしていた。


 そして闘技場の入場門よりユーリを含む受験者が入場してきた。

「あ、ティオ見て、ユーリお兄様よ!」
「ほんとだ!ユーリ義兄さ~ん!」

 ティオは呼び掛けたがユーリは返事がなかった。

 というのも、ユーリは今緊張しているからであり、緊張がピークに入り他の事が耳に入っていなかったのだった。


 実技試験に入ろうとしている今。

 受験者達の目の前には、試験官らしき30代後半から40代前半くらいの年齢の成人の男性が立っていた。

「一次試験お疲れ、これより、二次試験を開始する…二次試験は一対一の模擬戦をしてもらう…魔法の使用は許可し、そこに置かれている武器から好きなのを1つ選んで使用しても構わない…全身全霊を持って戦うんだ!但し、あくまで模擬戦、相手を死なせるような事が万が一無いように!」

 各自が各々で武器を選んでいる中、ユーリは剣を選んだ。

 そしていよいよ、模擬戦の組み合わせが発表された。


 ユーリの対戦は最後になってしまった。

 そして、ユーリの対戦相手は彼と同世代と思われる青い髪の少年だった。

「最後か…なんか待ちくたびれそうだな…」

 そんな中で、最初の試合が始まった。

 筋肉質な男性と細身の男性との戦いだった。

 筋肉質な男性の方は斧を持っていて、細身の男性の方はレイピアを持って戦っていた。

 筋肉質な男性は力任せに斧を振りかざす一方で、細身の男性は俊敏な動きで避けつつ攻撃を繰り出した。

 だが、押し返したのか、筋肉質な男性が勝利した。

 他の試合が進む中、各受験者が武器や魔法を駆使して戦い続けた後…。

 いよいよ、ユーリの番がやってきた。

 ユーリは緊張でいっぱいだったが、他にも緊張している者達がいた。

 そう、リタとティオであった。

「お姉ちゃん、ユーリ義兄さん大丈夫かな?」
「ティオ、お姉ちゃんはユーリお兄様を信じてるから、ティオも信じてあげてくれる?」
「うん!」


 そしてついに、ユーリの二次試験である模擬戦が始まった。
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