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3章 魔法&剣術指導

36.今の幸せを続けたいから!

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 ヴィンツェルト学院の最終試験…。

 それは、"面接"であった。

 まずはリタの面接から始まった。

 リタは暗い場所にいた。その場所こそが面接の場所であったから…。

 リタの周りには6.7名の教員、学院関係者がいて緊張していた。

「ではこれより、面接を始めます」

 教師陣の席の真ん中、リタの目の前にいたのはヴィンツェルト学院の校長であった。
 見た感じ温厚で優しい雰囲気であるものの、その威圧さにリタは内心驚いていた。
 校長はそんなリタを見るなり、彼女の今の気持ちを察していた。そんな状態だからこそ校長は無理にその緊張をほぐそうとはせずにゆっくりと話を進めていくのだった。

「リタ・アスタルト…君はなぜ我が校を選んだのですか?」
「え?」

 校長は唐突にリタに質問をした。

「なぜ我が校を選んだのですか?」

 同じ質問をまたしてきた。
 無論聞いていなかったわけではなかったが、それ以外の質問を先にしていなかった事にリタはビックリしていたのだった。

「え?あの?」
「君の事なら既に分かっております」

 校長はそう言うと、目の前でステータスのような物が浮かび上がってきた。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 リタ・アスタルト

 ・12歳
 ・3月20日生
 ・領主アスタルト家次女
 ・治癒魔法が得意
 ・子供や動物が好き
 ・両親、兄2人、姉1人、義弟1人の7人家族
 ・家族との仲は良好
 ・義弟が好き

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「あの?それは?」
「これは私の魔法です」

 校長の魔法…それは『他者のステータスを見る事が出来る』と言うもの。
 校長のステータスに関するこの魔法はその人物のあらゆるデータを覗く事が出来るという優れもの。
 見方によっては他者のステータス=情報を見ると言うのはあまり良いものではないが、校長からしたらこの魔法は学院に入る人物を見極めるのには必要なものでもあった。
 この魔法によってリタのステータスを確認した為に、唐突に「学院に入りたい理由」のみを聞いたのだった。

 その事を理解したリタではあったが…正直に話し始めた。

「………友達が…私の大切な友達がこの学院に入ると聞いたので、私も一緒に入りたいと思いました!」
「…?」
「それだけではありません!」
「?」
「私は今まで、が原因で、家族に迷惑をかけ続けてきました…でも、それでも家族は私を愛してくれました!それに、私も家族を愛してます!新しく愛する家族が増えたので、今度は私が頑張りたいんです!」
(新しく愛する家族が増えた?そう言えば…)

 校長はリタのステータスの家族の欄に『義弟』が入っていた事を思い出して察した。

 そして…。

「なるほど…君の熱意は理解しました、面接は以上です」
「え?終わりですか!?」

 面接は終わり、リタは気がつくと元の明るい場所にいた。

「あれ?私?」
「お姉ちゃん!」
「ティオ!」

 元いた場所にはティオがいて自分の帰りを待っていたかのように明るい笑顔で抱きついて来た。

「では次、ティオ・アスタルトさん!どうぞ!」
「え?僕?」

 次はティオが面接を受ける番だった。

 そして今度はティオが暗い面接の部屋にいた。
 暗い場所に送られてびっくりしたが、教師陣を見た途端に背筋が凍ってしまった。

「それでは、これより面接を始めます」
「はい」

 校長は先ほどのリタの時と同じようにしてティオのステータスを確認した。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ティオ・アスタルト

 ・11歳
 ・2月20日生
 ・竜人(亜獣人)
 ・領主アスタルト家3男(養子)
 ・炎魔法が得意
 ・食べる事が好き
 ・養父母、義兄2人、義姉2人の7人家族
 ・義姉が好き

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「なるほど、ティオ・アスタルト…君は何故我が校を選んだのですか?」
「え?」

 リタの時と同じようにティオを唐突な質問に驚いていた。

 いきなりすぎる質問ではあった者の、ティオは既に答えを見つけていた。

「今の幸せを続けたいからです!」
「今の幸せ?」

 紅葉は何を言っているのか分からないかのような感じになっていた。

 しかし、ティオの表情は真剣だった。

「僕はかつて、酷い想いをしておりました、家族の事も良く知らず、何処なのか分からない所で過ごして…」
「…」
「でも、今の家族が僕を拾ってくれて今僕はとっても幸せなんです!この学院を勧めてくれたのも今の家族で、勧めてくれた事を無駄にしたくないのです!」

 校長は黙り込んでいた。

 そして、面接は終わった。

 リタの時と同じくティオも元いた場所にいつの間にか戻っていた。

 そして試験の結果は後日。

 後日明らかになるのだった。
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