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2章 貴族の生活

21.私だけの…(後)

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 ある日、貴族、王族を集めたパーティーに呼ばれたキレイヌ家。
 先日、貴族関係の人間の間にて商会が調合した薬が評判を呼んだ事で、キレイヌ家はその功績に敬意を込めて呼ばれたのだった。
 勿論、そのパーティーにはテレシーもいた。
 だが当然彼女はそこでも、ただ1人でいた。
 会場には同世代の子供は何人もいたが、テレシーには話しかける勇気が無かった。

(やっぱり、私には無理よ…)

 ただ1人で食事をしていたテレシー…。
 ミーシアはそれをただ、見守るしか出来なかった。友達作りを手伝うと言うのは、ミーシアにとって"テレシーの邪魔をするようなもの"だと考えていたからであったから。

 そんな時だった…

「ねえ、これ一緒に食べよ!」
「え?」

 独りで食事をしているテレシーの前に、ある少女がクッキーを持って話しかけてきた。

「私リタ!!あなたは?」
「えっ、わ、私?」

 その少女こそ、であった。
 突然初めて会う少女に声をかけられたテレシー。
 しかし、見るからに同世代だったゆえに勇気を出して話した。

「わ、私、テレシー…よ、よろしく…」

 勇気を出したテレシーは意外にもリタと色々と話があった事もあり、テレシーはいつの間にかリタとの話に夢中になっていて、さっきまでの恥ずかしい想いが薄らっていた。

「えへへ、リタちゃんって面白いね…」
「"リタ"でいいよ!私もあなたの事、"テレシー"って呼ばせて!」
「…うん、リタ…」
「うふふ!テレシー!」

 互いに名前を呼び合った事をテレシーはまたも照れを見せたが、さっきまでよりは薄い照れであった。

 場所をバルコニーに移して2人は会話を続けた。

 リタは自分の魔力が少ない事をテレシーに伝え、テレシーは驚いたが…

「でもね、お父様とお母さまはね…『リタは優しいから気にしなくていいよ…』て慰めてくれたの!」

 テレシーは確信した。『まさにリタはその通りだ』と、彼女の優しさは自身の心に染みわたり、それは彼女の中で徐々に「特別な想い」に変わって来たのだった。

 ーー時は戻って現在

(あの日からリタは私の…私だけの特別な女の子になった…もうこの想いは止めることは出来なくなった…)

 そう思い、テレシーも眠りにつくのだった。

 ーー翌日
 いよいよキレイヌ家は帰る事になった。
 ガイアとグルワは、堅い握手を交わした。

 そして、テレシーとリタは…。

「テレシー、昨日は楽しかったわ!またね!」
「うん!リタも…頑張ってね!」

 挨拶を交わした2人。キレイヌ家を乗せた馬車はアスタルト家に見送られながら発車していった。

 テレシーはふと考えていた。

 自分のリタに対する想いはまだ打ち明けない事を。
 そして、リタの義弟となったティオをライバルと認識した事を…。

 そんな想いを抱き、テレシーも心に誓うのだった。
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