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良いダイエットがあると言われて聞いてみたらセ◯クスはスポーツと言われました。

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エルバ様に抱き寄せられて転移した先にはスイさん一家がいた。

土の上で三人は跪いたまま肩を押さえつけられている。

スイさんとルルさんは顔面蒼白だが、イアンくんは私の姿を見つけた瞬間に睨みつけてきた。

「っ」

思わずビクリと体が強張った。

そんな私を囲う腕に力を入れたエルバ様は、おもむろに指を鳴らす。

パチン

最初彼が魔法を使ったのは分かったが、一体何をしたのかは分からなかった。

彼が私の前で魔法を使う時には景色が変わったり、何かが浮いたりと変化があったのだが今回は何も起きない。

(……?)

不思議に頭を捻っていると、

「…ぅ…ぅ…」

イアンくんからくぐもった声が聞こえてきた。

そこにいる全員の視線が彼に集まる。

前を見つめたままの彼の瞳はぼんやりとしていて、焦点が合っているようで合っていなかった。

彼はまるで白昼夢を見ているかのようだ。

「エルバ様…彼は?」

「催眠魔法の一種だよ」
「ちょっとした夢を見てもらっている、君を理解出来る様な、ね」
「大丈夫、全てじゃない、少しだけだ」
「彼の君への侮辱や心にもない謝罪を聞くよりも、この方がよっぽど効率的だろう?」

「そんなに時間は掛からない」と言う彼はいつも通りニコニコとはしているが、三日月に細められた眼には酷薄さが窺えた。

(催眠?……何を見せているの?)

彼の言った事が良く分からない。

「やめろ……ぅ、ぐ…」

でもイアンくんの様子から、良くない事とは分かった。

(…少しだけ??)

夢を見させられているイアンくんは初め顔を赤くして怒ったかと思うと、今度は青くなったり呻いたり泣いたりとしている。

どうにかしなければ、と焦りに胸が早鐘を打った。

イアンくんに掛かっている催眠魔法とはどういった物なのか。

数年前に開発されたとは聞いているし、授業でも触れていたのを必死に思い出す。

優良だけれども人を思うまま扱えるそれは強力過ぎて、詳細については秘匿されている。

使うには国の許可が必要で使い手は殆どいないため、エルバ様が使える事に少しだけ驚いた。

そして彼の言った「私を理解出来る様な」というのは、私の過去を再現して見せているのだろうか。

それは第三者としてただ見るだけの物なのか、それとも、他人の経験をその感情まで追体験させる物なのか。

イアンくんの反応を見ると後者な気がした。

側にいるスイさんとルルさんは龍人達に抑えられながら、顔を青ざめさせてそんな息子の姿を見ている。

尋常ではない事が分かるのだろう。

「ば、罰は私が受けますから!どうか息子を赦してください!」

「おやめください!」と二人は必死にエルバ様に頼んでいる。

その間もイアンくんの反応は止まる事なく弱くなっていく。

その変化が怖くて、私は彼が壊れてしまうのでは無いかと必死に静止を願った。

「エルバ様、もう十分です、やめてください!」

もし本当に私の過去を見せているのなら、過去に、私は死を望んでいたのだから。

イアンくんが私のようになるかは分からないけれど、もしそうなってしまったらと考えると体から血の気が引いていく。

「やめてください!お願いします!」

「まだだ」

私を囲う腕は優しいのに、いつもの彼ではなかった。

イアンくんを見る彼の眼は、まるで汚らしい物を見るような……私を虐めていた、他人の眼に似ていた。



そして、イアンくんの顔から全ての感情が抜け落ちた。



「や、めて…やめて!!!!!」



叫びながら彼の腕から抜け出し、イアンくんに駆け寄りその体を抱き締める。

魔法の無効化を強く願った。

魔王の時に魔法は全て無効化していたから、もしかしたらと思った。

ふ、と彼の体から力が抜けた。

彼が解放された事が伝わってきてほっと胸を撫で下ろすが、何故もっと早く気付かなかったのかと後悔が湧き上がる。

「…っ!」

次の瞬間、彼の絶望も伝わってきた。

過去の感覚が蘇る。

希望の何もない、過去の絶望が。

引き摺られそうになるけれど、抱き締めた時に作り上げた御手の揺籠に全力で魔力を送る。

女神様から与えられた『癒し』には心の傷にも効果があるのを、以前エルバ様が気付いてくれていた。

(エルバ様…)

彼がどうしてこんな事をしたのかは分かる。

彼の瞳には彼らには無かった怒りがあった。

私を甚振る人達の瞳の奥にあるのは嫌悪や侮蔑や嘲りだったから、先程の彼の眼は彼らとは似て非なる物だ。

(後で話し合わないと…でもまずは、彼を私と同じには絶対にしない)

私の痛みは私だけの物で良いのだから。

他の人はこんな痛みなんて経験しなくて良い。

私以外の人は皆んな、あんな理不尽を経験する事無く、生まれてから死ぬまでずっと幸せなままで良い。

腕の中の彼が穏やかに眠るまで、魔力を送り続けた。











眠る男を両親と共に解放し、あの男の元から戻ってきたリビアを有無を言わさず腕の中に閉じ込める。

救うためとはいえ、彼女に抱き締められる男への嫉妬に胸を焦がす俺は随分と心が狭くなった。

俺の腕の中から彼女が抜け出した光景が蘇る。

あの男にした事は後悔など露程もしていないが、彼女の先程の必死な様に見限られてしまったかと焦燥に駆られる。

逃がさないようにといつもよりも腕に力を込めたが、苦しくは無いだろう。

腕の中の彼女を窺うと、ピンクブロンドが見上げてきた。

いつもよりも強い眼差しをしている。

不安が頭を過ぎった。

彼女が俺から離れるつもりは無いとは思うが、もしそうしたいと望まれたらどうしようか。

趣味では無いが鎖でも付けて、二度と誰にも傷付けられないように、離れられないように閉じ込めようか。

「…エルバ様が、私のためにとした事とは分かります」
「ですが、もう二度としないでください」

見上げる彼女がそう言うのに、そんな思考から切り離される。

「私は私のような痛みを知る人を一人として作りたくありません」
「もし次に同じような事があったら…例えそれ以上に私が傷付けられたとしたら、その時は一緒にどうするかを考えてくれませんか?」

真剣に話す彼女にほっとした。

俺と彼女の意に沿わない事をしなくて済んだ。

彼女は向き合おうとしてくれている。

「…あぁ、そうすると約束するよ」

微笑みを浮かべて約束の言葉を使う。

もう二度と誰にも彼女を傷付けさせなければ良い。

復興もあと少しで終わる。

政の間は屋敷の外には出さない。

聖域の手伝いも共に行こう。

(俺二度としないよ)

そう心の中で約束する。

やり方はいくらでもある。

既に先程の催眠魔法は拷問にも使われている。

発明したのはあの甥っ子達で彼ら以上の使い手はいないし、誰でも使える訳では無いが数少ない使い手を龍の国では囲っている。

この時代の政には善も悪も無い。

その事を彼女は知らなくて良い。

俺が用意した綺麗な世界で、彼女は綺麗な物だけを見ていれば良い。

その事実をいつか彼女が知ったら、どう思うだろうか。

今回の様に赦してくれるのか、それとも離れてしまうのか。

(それでも離せないんだ、ごめんね)

エルバは感情を匂わせない笑みを浮かべて指を鳴らした。

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