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良いダイエットがあると言われて聞いてみたらセ◯クスはスポーツと言われました。
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しおりを挟む龍の王エルバは自分の執務室で、意匠の施された重厚なイスに凭れて天を仰いでいた。
女性に拒絶されるのは初めてだった。
それも番に。
ショック過ぎて自分がどうやって部屋を出て来たのかも記憶に無い。
「番って何ですか?」と問い掛けてきた涙目の彼女が思い浮かんだ。
ふにふにとした頬が涙で濡れていて、舐めたら甘そうだなと思う。
実際、その泣き顔に股間のモノが反応していたけれど、傷付けたくは無かったから我慢してしまったのが良かったのか悪かったのか。
「はは、…」
自分にも番との初めてを大切にしたいと言う可愛げもあったのだなと苦笑する。
シーツで隠していたがその間から少しだけ見えた体はムチムチとしていて柔らかそうで、噛み付きたいと唾を飲み込んでいたのに寸前でお預けだなんて酷い。
それに『番が何なのか』答えを出さない限り会ってもくれないなんて。
「……俺だって分からない」
腕で目を覆い「はぁ」と溜息を吐く。
彼女と他の女とは何が違うのだろうか。
彼女よりも顔もスタイルも美しい女なんていくらでもいた。
皆何も言わずに自分から足を開いて来たし、そんな女達と狂宴だってして来た。
精通してから有り余る性欲を発散させるために体を重ねてきたのは、龍人は性欲が強いからだ。
寿命が長い分、子が出来にくいためと考えられている。
番が龍人以外の場合、子はその番の特徴を受け継ぐ事が多く、龍人の生まれる確率は低いのだが…話が逸れた。
そんな一時の女達には無い物といえば、リビアの温かな体に触れていると、匂いを嗅いでいると、声を聞いていると、恥ずかしげな仕草を見ていると、体も心も満たされるように感じる事だ。
それは『番』だからでは駄目なのだろうか。
「膣も柔らかそう…」
ムチムチとした体はどこもかしこも柔らかく暖かくて、膣はさらに包み込んでくれそうだ。
(無理矢理したら絶対嫌われてしまうだろうな…でも、優しいリビアはもしかしたら許してくれる?)
そんな考えが浮かぶけれど、また嫌だと拒絶させたら耐えられるか分からないから諦める。
彼女の優しい性格も好ましい。
少し気を遣い過ぎる気はあるが、見ていると彼女なりに人の事を見て考えているのだなと思うし、(俺以外には)誠実に向き合っていると思う。
そして未だみのりさんと話した時にしか見せてはくれないが、はんなりと微笑む彼女はとても美味しそうだった。
「あー、本当何なんだろう」
彼女の求める答えとは。
このまま彼女に会えもしない触れられもしないだなんて、渇望に狂ってしまう気さえする。
「猿の王もこんな苦労したの?」
龍人は他の獣人とは違い、感情に忠実で複雑な感性を持ち合わせてはいない。
力が全てで、ヤりたいからヤる。
他国の王と渡り合うために培った交渉術も役に立ちそうにない。
「どうしようかなぁ」
エルバは悩んだ時に必ず行う癖がある。
椅子から立ち上がり、向かった先は屋敷の裏にある洞窟だった。
敷地内にある広大な森の中、何も無かった絶壁の岩壁を自身の吐いた火炎で溶かして開けた穴だ。
そこに入って行ったエルバの姿は、紅の龍へと姿を変える。
赤よりも濃く暗い紅の鱗が全身を覆い、全てを一飲みにしてしまいそうな口には鋭い牙がびっしりと生えていた。
大きな前足には鋭い爪があり、彼は物憂げに猛禽類の様な瞳を瞼で隠し、組んだ前足の上に頭を載せて丸くなる。
背には折り畳まれた蝙蝠の様な翼があった。
龍人には、龍になれるという秘密がある。
龍人は獣人ではなく龍が人となった種族だ。
何故秘密かと言うと、龍の姿は人に恐れられるから。
この眼を見て、顔を逸らす彼女を思い出す。
(彼女は俺が怖いのだろうか、ならばこの姿を見せたら…)
「はぁ」
エルバは龍となり大きくなった溜息を吐き出して、考えるのに打ってつけな空間で一人、リビアの問い掛けの答えを考えていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この屋敷に私がお世話になって、早二ヶ月が経とうとしている。
日々、各国の復興の手伝いや怪我や病気の人や生き物を癒したり、植物を活性化させたりして、忙しいが充実した毎日を送らせてもらっている。
エルバ様の「番」を拒絶した後私は屋敷を出ようとしたけれど、引き止められて結局甘えてしまっている。
都合が良いなと思うけれど、彼に報いるためにも復興の手伝いを頑張ろうと思った。
そして赴いた先の人々の反応は皆それぞれで、「頑張って」と声を掛けてくれる人も居れば、「お前のせいで家畜が死んじまった」と冷たく言ってくる人もいる。
だが、それは私が甘んじて受けなければならない事だ。
(彼らに苦境を強いて傷付けてしまった私を、彼らは責める権利があるのだから)
と直接的に手を出されたりはしていない事に、魔王となった過去を持つリビアは寧ろ彼らに敬意すら感じた。
そんな彼らのためと思うと頑張れた。
世界は家畜が死んでしまい、生活に支障を来している人には補助金や食糧支援を行なっている。
補助金は各国が出し、食糧支援はみのりさんが召喚した食糧や、同じく彼女が召喚した成長が速く実りが多い植物から収穫した物を渡している。
その植物の苗も渡し、龍人達が支援先で苗植えを手伝っている。
皆に助けられているなと感謝すると同時に、自分がしてしまった事の尻拭いを他人に頼るしかない自分が許せなくなる時があった。
それを時々会うようになったみのりさんに相談した所、
「魔王になってしまったのはリビアさんのせいでは無いけど、自分を責める気持ちも分かる」
「でも人一人が出来る事には限界があるから、リビアさんはリビアさんに出来る形で手伝っていけば良いんだよ」
「自分が出来る事を一生懸命やってれば、ちゃんと周りの人は見てくれてるから」
と言われて、ちょっとだけ自分を許せるようになった。
「番達の受け売りだけど」と言う彼女も、私と同じ様に思って相談した事があったのだろう。
それからは卑屈になっても何にもならないからと、申し訳ないと思う度に彼女の言葉を思い出して、私が出来る事をもっと一生懸命やろうと考えるようになった。
その内冷たかった人達の態度が変わってきて、ぶっきら棒だけれど「ありがとう」と言われたり、お礼にと畑で採れた野菜をくれるようになって、それがとても嬉しくて益々頑張ろうと思えた。
一緒に復興を手伝う龍人達は血の気は多いけれど、とても気の良い人達だ。
時々「嬢ちゃん美味そうだな」と言ってきて、やはり彼らには私は食糧にでも見えてるのかなと冷や汗をかいた。
その後、「冗談だ」と苦笑する彼らの視線の先には、いつも仮面をつけたエル様がいた。
エル様は私が答えを出すまでエルバ様に会わないと言ってしまったから、本当は一緒に来る予定だったエルバ様の代わりに彼が付けてくれた護衛だ。
紅の暗い髪に仮面から見える紅の瞳はエルバ様と同じで、頭二つ分高い身長も同じだ。
近親者らしい。
最初、私に「エルと呼んで欲しい」と彼は言ったけれどそんな事とても恐れ多くて、他の龍人皆んなも『エル様』と言うから私もそう呼んでいる。
彼はとても優しく紳士的で、その身のこなしは優雅なのにどの龍人よりも強いらしい。
エルバ様と瓜二つな彼を見ると、何故か胸が苦しくなった。
彼は褒め上手でもある。
小さな事でも褒めてくれるし、その褒め方が上手なのだ。
褒め過ぎるでもなく適切に褒めてくれる。
そんな彼に褒められるのが嬉しくて益々精力的に頑張ってしまい、二日前、私はとうとう倒れてしまった。
ここ二ヶ月の間、空いた時間にダイエットもしていたから無理をしていたらしい。
ダイエットはみのりさんにアドバイスを貰って自分なりにしていたのだが、私はどうもやり過ぎてしまうようだ。
最初は順調に減っていたのに途中から減らなくなってしまって、焦ってご飯を言われたよりも少なくしたり、運動も無理して多くやっていた。
ベッドで寝込んでいる時に、お見舞いに来てくれたみのりさんに「私の教え方が悪かった」と謝られてしまった。
「一人だとやり過ぎてしまったり、難しいから誰かと一緒にやると良いよ」と言われて、じゃあアンナさんにお願いしようかなと思った。
アンナさんは私が侍女を付けなくて良いと断った際に、「そういう訳にはいきません、せめても一人だけでも」と付いてくれたのが彼女で、とてもハキハキとしていて気持ちの良い人だ。
それから一週間、すっかり体調も元に戻ったけれど、「復興の方はしばらく休んだ方が良い」とエル様に言われたから、やる事も無くてダイエットを再開する事にした。
アンナさんや他の屋敷で働く人達に「仕事を下さい」と言っても門前払いだし。
寝込んでいる間に、アンナさんやエル様に甲斐甲斐しく世話を焼かれて体重が戻ってしまっていた。
エル様が一緒の時は止められるから、居ない時に内緒でランニングしている。
(こんなにやる気が出るなんて初めて)
最近、何故かとても活力が湧いて来るようになった。
料理長さんは私のダイエットを考えた美味しい食事を作ってくれるし(停滞期でご飯を食べて無かった事を知った彼にはとても怒られた)、エル様やアンナさん、龍人達は皆気が良くて優しい。
時々みのりさんに会って色々話す時間は癒しの時間だ。
私今幸せなんだなぁ、と実感している。
唯一、エルバ様の事だけが心に伸し掛かってくるけれど。
(彼と向き合うためにもダイエットを頑張るんでしょ!)
暗くなる気持ちを振り払う様に、準備運動を開始する。
密かに目標を立てていた。
それは、拒絶してしまった彼に綺麗になった自分で会う事。
そして、ちゃんと彼と向き合って、とにかく話をしようと思っている。
彼を知って私も知ってもらって、それで関係を進められれば良いし駄目なら彼に惹かれる気持ちも諦められるから。
『番』の答えも自分なりに出せると良いなと思っている。
最近のランニングコースは屋敷の裏にある森の中で、綺麗に整地されている登りの一本道を辿って絶壁にある洞窟までの往復だ。
人の目が無いため良く使っている。
今日も洞窟まで着いて、額や首筋に浮かんだ汗を持参したタオルで拭った。
はぁ、はぁ、と呼吸を整えながら、いつも涼んでいる洞窟に一歩入った時、
ニュッ
紅の何かが、私の胸元を引っ張った。
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