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本編
23 ※ 狼に堕ちた
しおりを挟むリアンは、飛空艇が発する人工的な光で目が覚めた。
(寝ていたか)
夜なのだろう窓の外は暗いが、光は動きながら辺りを照らしている。
飛空艇を定期的に照らし、異常が無いかを調べているのだ。
「っ、」
小さく苦しげな声が側から聞こえた。
腕の中のみのりはこちらに背を向けて未だ寝ているようだが、覗き込むようにして見ると、その顔はやや眉が顰められている。
悪い夢でも見ているのだろうか。
「ぃ、や、」
みのりが体を強張らせて、眦から涙を溢れさせた。
どんな夢が彼女を苦しめているのか。
悪い夢から守りたくて、抱き締める腕に力を入れ、その涙を吸う。
「……たすけて…」
「みのり」
そう呟いたみのりに、堪らずその顔をこちらに向かせて名前を呼ぶ。
薄らと涙の溜まった目を開けて、俺の顔を見た彼女は微笑んだ。
「愛してるなんて……嘘だよね?」
「!」
その声は小さく掠れているが、はっきりと聞こえた。
ピシリと体が固まる。
何故彼女は突然俺の愛を嘘だと言っているのか。
夢現の状態が、本心から出た言葉だと伝えているようだ。
俺に残酷な事を言った彼女は、再び眠りの中に戻っている。
(なんで、疑っている?)
三週間必死に探してはやる気持ちを抑えて仕事も全て終わらせて、抑制薬を飲みながら一人、彼女を想って自慰で終わらせる毎日。
再会した時には彼女に番が複数という事実に絶望させられ、その浮気もあれだけの交わりで許したというのに。
それらを彼女が分かるはずもないとは思うが、みのりは俺が彼女に喚ばれるのを心待ちにしていた間他の男に慰めてもらっていたと思うと、段々と胸の中で遣る瀬無さや怒りが溢れ出てくる。
(そんなに俺が信じられないのか……他の男の方が良かったのか…)
その思いは体中を巡り、黄金色の瞳に獰猛な色が浮かぶ。
普段はあまり変わることの無いそれは、みのりに対してだけはよく激しい感情が混じる。
(そうかよ…なら、)
「みのり、愛してる」
追い詰めた獲物を狩る時のような、獰猛な顔をしながら愛を呟く。
だが、その声はどこか悲しげだった。
そんな想いを抱いているとは思えないくらい、リアンは優しくみのりのうなじを甘噛みする。
他の噛み跡を消すかのように、何度も舐めたり吸ったりと愛撫していく。
「ん、」
彼女が嫌がるように身を小さく捩るのを許さず、甘噛みを繰り返しながら手を胸の膨らみに這わせ二つの突起をクリクリと触る。
みのりは通常でも乳首が立っているようで、寝ていてもそれがシュミーズを押し上げていた。
初めて会った時は破廉恥な女だと思ったが、体質ならば仕方がないなと自分のした事を棚に上げて考える。
考えながらも、乳首をシュミーズ越しに擦り続けた。
「ん、ぁ」
みのりはその手から逃げるように体を押し付けてくる。
自身の硬くなった雄が柔らかな肉に押し当てられ、自分もさらに腰を突き出して、雄をその肉に埋めるように擦り付けた。
寧ろ起きてしまえばいい、と乳首を優しくも強めに刺激していく。
摘み上げて先端を引っ掻き、コリコリとつねり引っ張り上げる。
「ふぁ♡」
みのりの体が熱を持ち始め、乳首を弄る手に小さな手が添えられるが、離そうとはしてこない。
刺激する度にピクピクと震えている。
彼女が両膝を擦り合わせているのに気づき、寝巻きから既に腹に付くくらい勃ち上がったモノを取り出し、みのりの股の間に差し入れる。
何の隔たりも無いそこはしとどに濡れていた。
「っ♡」
いきなり熱い棒が陰部を擦りながら、股の間に入ってきた事に驚いたようだ。
クリをかすめたのか、ビクリと大きく尻を震わす。
「ぁ、?」
みのりは快感に徐々に目が覚めた。
うなじがとても熱くて、乳首が気持ち良い。
股の間がおそらく自分の愛液で濡れていて、重量のありそうな太く熱いモノが挟まっていた。
それがゆるゆると前後に動いては、時折隘路を割りクリを掠めていく。
「ぁ♡ぁ♡」
寝惚けた頭と体は動きが鈍く、その気持ち良さを素直に受け入れてしまう。
後ろから大きくて熱い体に抱き締められて、暖かい手で性感帯を愛撫されるのが気持ち良いのと同時に心地良い。
「っ♡」
快感で声が出るが、掠れているため音にならなかった。
それもそのはずで、一日中狼さんとしていたのを思い出し、後ろの温もりが恐らく彼だと気付いた。
「狼さん?」
声を絞り出して心の中での呼び方で呼ぶと、ピタリと彼の動きが止まる。
上体を上向かされ目が合った。
部屋の中は窓からの光で少しだけ明るく、彼の表情が分かる。
相変わらずの美形で、灰色の髪と耳が綺麗で可愛い。
少し罰が悪そうに、
「リアンだ、マクシミリアンだが、リアンと呼んでくれ」
と名乗られた。
やっと彼の名前を知ることが出来たと嬉しくなるが、あんなにエッチをしてしまってから今更知ったな、と前世では考えられない体験に笑えてくる。
「ふふ、リアンさん?」
何だか可笑しくて、笑ったままでその名前を呼んでみた。
「ああ」
彼も同じように思ったのか笑っていた。
黄金色の目が優しげに細められ形の良い薄い唇が弧を描く。
その色気のある微笑みに胸が高鳴った。
(美形の笑いって破壊力すごい)
「声が掠れているな…」
リアンさんはそう言って私の頭を撫でた後、パチンと指を鳴らす。
以前に見たようにベッドの側に置いてあったピッチャーからグラスに一人でに中身が注がれ、グラスが彼の手に収まった。
それを一口あおった彼の顔が近づき、何をするのか分かってしまう。
「ぁ、じ、自分で」
飲めると言う前に、唇を覆うようにして彼のが重ねられる。
口を開くように促され、彼の舌が水を渡すように喉の奥に差し入れられた。
「ん、」
こくこくと喉が鳴ってしまうのが恥ずかしかった。
その後も世話を焼く親鳥のように口移しを何度もされ、もう飲めないと訴えてやっと解放される。
恥ずかしくて目を合わせられない。
「みのり、名前も名乗っていなかったのは俺が悪いが、俺がみのりを愛している事は信じてくれ」
突然とても真剣な表情でリアンさんが言うのに、言葉を失ってしまう。
「…本当、だったの?」
三週間前に会ったきりで、その時なんていきなり現れて襲われて、突然消えて、まるで嵐のようだった。
たったそれだけの関わりだけで、彼の中に愛が芽生えるものなのだろうか。
(番だから?)
「本当だ、みのりを初めて見た時から…一目惚れだったんだ」
リアンが、自分で言って初めて気付いたように頬を染めて言う。
その言葉と彼の様子に、みのりの頬にも熱が上り胸がドクンと跳ね上がる。
「俺はこれが最初で最後の恋だ、みのりに恋をして、愛してしまった」
そう言う彼の顔は真剣で、赤く染まっていて、嘘のようには思えない。
「この三週間、みのりに会うためにあの洞窟を探し出して、俺の持てる力全てを使って迎えに来たんだ」
「愛してる…同じ思いを返してくれなくても良い、だが、いつか必ず振り向かせるから」
綺麗な黄金色の瞳に見つめられながら、壊れ物を扱うかのように頬を撫でられる。
「っわ、分かったから」
すごく嬉しい事を言ってくれているのだが焦る。
頬を撫でられる度にそこからピリピリとした感覚が首筋まで伝わってきて、膝をモジッとしてしまったら、股にまだリアンさんのモノが挟まっているのを意識してしまったから。
「誘っていると都合よく思って、みのりの初めてを失わせてしまったが…」
「やり直しても良いか?」
彼もみのりがその刺激で感じている事に気付いたのだろう、纏う雰囲気が色気を増した。
低く艶のある声でそんな事を言われたら堕ちるしかない。
それが番うという事なのだと、魂で感じてしまった。
(…もう体だけじゃなくて、心もリアンさんを受け入れてる……)
そう思ったみのりは、リアンの問い掛けにコクンと頷いた。
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