世界が滅亡したので、獣人世界で幸せになります!〜番が三人いるんですが、女神様どういう事ですか!?〜

玉石 トマト

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本編

8 新たな召喚

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目が覚めた。

眦から涙が出ていて顔が冷たいのをグッと拭う。

前世ではいつもの事だったから少し落ち込むが気にならない。

入り口が薄暗くなっており日の出のようだ。

洞窟の明かりは消えていた。

体の調子も元に戻っている。

「『元気』スキルのおかげかな」

そんな異世界感に嬉しくなって起き上がって伸びをした。

「今日はいい天気だから畑を作ろう!あと川にも行きたいし」
「あ、その前に…」

『持ち物』ページを開き、昨日召喚したサイダーを取り出す。

画面に手を突っ込むと冷えたペットボトルの感触がして、それを難なく引っ張り出せた。

「やった!冷えてる!という事はやっぱり時間停止機能付きだ!」

昨日眠る間際に、明日試してみようと思ったのだ。

狼さんが出してくれた果実水も冷えていたし、異世界転生ではお馴染みだ。

サイダーを全部飲んだが、ペットボトルは消えなかったのでまた収納した。

今度は『豚こま肉50キロ』を召喚してみる。

ぽんっ

『豚こま肉』50キロ分であろう量が空きスペースに出現する。

前世のスーパーで売っている物が積み重なっている。

それを『持ち物』に入れると『プラスチック容器とラップに包まれた豚こま肉500g』『100』と枠に表示される。

続けて召喚と収納を繰り返し、数年は持つだろう量の肉や魚や米や野菜などを収納できた。

『持ち物』は同じ物はひと枠にまとめて種類毎に入る仕様になっており、大量の食べ物を入れても埋まらなかった。

高性能過ぎる。

だが『女神の気まぐれ』でスキルなどは変わってしまうので、今後をきちんと考えなければならない。

ふ、と自分の髪の毛が気になった。

昨日の情事で沢山汗をかいたし、あのあと狼さんが体は拭いてくれたが髪はそのままだったから。

そういえば果実水を飲んでる時に、髪の毛の匂いを異様に嗅いできた気がする。

とりあえずお風呂が入りたい。

「そうだ!」

と手を叩く。

(ええと、『暖かいお湯の入った猫足のバスタブ』ここら辺に出てこい!)

ぽんっ

「本当に出てきた」

未だに信じられないが、触れてみるとお湯の温度もちょうど良かった。

早速服を脱いでお湯に浸かる。

「はぁ~」

体の芯が解れるようにほっとした。

某会社のシャンプーとコンディショナー、ボディソープも召喚し、お風呂の中で体を洗う。

当然だがお湯が汚れてしまったので新しいお湯が欲しくなる。

お湯を持ち物に入れてみると『汚れたお湯』と枠に入る。

続けてその枠をタップしてみると、
『送還しますか?』の下に『○』『✖️』と画面に出てきた。

『○』を押すとお湯が消える。

「おぉ、こうやって送還するんだね」

自分で気付いて一つ一つ進んでいく事が楽しい。

でも送還したらどこに行くんだろうとか、『汚れ』って私の汗は体から出たもので召喚したものじゃないけど送還できるの?とか深く考えると、自分の存在まで考えなきゃいけなくなりそうで諦めた。


「ご都合主義で~す♪私が判断してま~す」

と女神様の声に似た空耳が聞こえた。


それから『このバスタブの半分くらいのお湯』を召喚し、泡の付いた体を清める。

『召喚』はすごいスキルだと思う。

これがあれば出来る事は山ほどある。

けれど、もしこのスキルが全く他に無いものなら、第三者に知られれば悪用されるかもしれない。

絶対に人に知られないように、またこの世界の文明を壊さないようにしていこうと思った。



お風呂を出て体を拭くとすごくさっぱりとした。

化粧水一式を出してお風呂上がりの保湿もちゃんとする。

新しい下着と新しい貫頭衣、綿の靴下と革のブーツを召喚し、身に付ける。

貫頭衣はこの時代に則した物なのだろう、と同じ物を召喚する。

昨日のブラは床に落ちて汚れてしまったから送還した。

これからの作業のため、服の上に膝まであるエプロンを着けた。

(髪の毛乾かしたいけどドライヤーは電気が必要だから、さすがに発電機とか出す訳にはいかないよね……)

残念だがしょうがないと諦めようと思ったが、髪の毛の自然乾燥は傷みの原因になるし猫っ毛だからボサボサになるのだ。

(でも…使った後にちゃんと送還すれば大丈夫かな…)

心の中の悪魔が軍配を上げた。




早速畑を作ろうと『初めての畑作り』と題された本を召喚し、読み込む。

(電子書籍みたいにボードに表示されると良いのにな)

もしかしてと本を『持ち物』に入れた後、その枠をタップしてみると電子版になった。

「うわ、すごいよ、本当に出来たよ」

手の込みように感動する。

これで風に煽られてページを戻したりと、無駄に動かなくて済むから嬉しい。




スコップや鍬などを『持ち物』に入れて外に出ると、日差しが眩しかった。

空を見上げると昨日は気付かなかったが太陽が2つ並んでいた。

一つは小さく寄り添うようで、まるで夫婦のようだ。

スッと突然目の前にボードが開く。

『召喚』ページが開かれている。

魔法陣が再び虹色に輝いていた。

「また?!」

(もしかして外に出ると召喚しちゃうとか?)

地面に召喚魔法陣が浮き上がるとボードが消える。

風に煽られ、眩しさに腕で目を覆った。



「…は?」

重低音で野太い声がする。

見ると大柄な男がいた。

褐色の肌で体のがっしりとした男だ。

身長は昨日の狼さんより頭一つ大きく、ピアスが付いた両耳は牛のように長く若干垂れている。

肌よりも濃い褐色の髪は後ろで三つ編みにされ、肩甲骨まである。

顔のパーツで特徴的なのは、パッチリとした海のように青い瞳の目。

さらにその目の周りにはまつ毛がたっぷりと生え揃っていて、より目を強調していた。

髭は長く伸びていて髪と同じように三つ編みにされている。

髭で顔の全容は分からないが、堀が深く整っていると思う。

尻尾からして牛獣人うしじゅうじんだろう。

「………」

「………………」

「………………………」

私を見た牛獣人はカチリと固まったままだ。

「…あの?」

こちらから声を掛けてみる。

私は(ちゃんとブラを着けてるよな)と、思わず後ろ手にホックを探る。

今朝ちゃんと上下とも着けたので大丈夫だ。

ちなみに、パイパンになっていた。

髪と眉毛以外全身ツルツルだ。

前世では全身脱毛してないし、女神様の仕業だと思う。

(いや、嬉しいけどね、下までツルツルにしなくても…)

「あ、あぁ、すまない、女性がいきなり現れたから…」

とバツが悪そうに言う彼は若干顔が赤かった。

「そうなんですね…」

会話が終わるが、コミュ障なんてこんなものだ…。

「あ、とその、ここはどこだろうか、俺は朝の修練中だったのだが…」

こちらをチラチラと見ながら、彼はオドオドと聞いてくる。

(女性が苦手なのかな?)
(それとも私の顔が平たいせい…?)

「…ここがどこかは私にも分からないんですが、あなたを私が召喚してしまったようです」

「え、……まさかまた羊か?」

「はい??」

「…いや、何でもない」

「えと、送り返すのは12時間経たないとダメみたいで、申し訳ないのですが……」
「洞窟の中は魔物が入らないみたいなので、そちらで寛いで待っていてください」

と洞窟を手で示して勧める。

「…いや、何かして欲しくて喚んだのだろう?…畑作りか?」

「あ、はい…初めてなんですけど、自給自足しようと思って」

そういう事にしておこう。

「じゃあ俺も手伝う、待つのは性に合わないからな」

体を動かしてたいんだ、と彼は笑った。

くしゃりとパッチリお目々が細められると、色気があって可愛くて少しどきっとする。

頬に集まる熱を誤魔化すように、「ありがとうございます!」とみのりは頭を下げた。

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