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朝、悠人は目を覚ますとすぐにふとんから跳ね起き、自分の机へと向かった。そこには、おととい、机の下から見つけた折り鶴が置いてあったが、それが小学六年のときに同級生の雨森真零からもらったものだったと、悠人は思い出した。
季節は秋で、時刻は夕暮れ、場所は小学校の校門を出たあたり。真零は悠人の手に折り鶴を渡して「じゃあ、さようなら」と言っていた。
雨森真零はその年の春、東京から転校してきた。都会の女の子らしく色白で、黒い髪が背中まで伸びていた。
席は近かったが、真零はいつも無口だったし、悠人も女子と親しく話すような性格ではなかった。住んでいる家がどこかすら、悠人は知らなかった。
だが、秋のある日、真零がその日をかぎりにまた急に東京に戻ることになったと朝の学活で発表され、その放課後、悠人は校門前で真零に呼び止められたのだった。
あれから二年。雨森真零はどうしているだろう。
東京で元気に暮らしているんだろうか。
それにしても、自分はどうしてこんなに大切な想い出をすっかり忘れてしまっていたんだろう。雨森真零のことも。折り鶴のことも……。
とにかく、あの暦屋に行ってお礼を言わなくては。
悠人は、朝食を終えてすぐに家を出た。商店街を路地へと入り、三度曲がって暦屋に着く。
店の戸に手をかけると、まるで自動ドアのように戸が先にガラガラと開き、そこから自分と同じくらいの歳の少女が大きなバッグをかかえて出てきた。
「あっ、ごめん」
ぶつかりかけた悠人は、あわててあやまった。
少女は明るい茶色のショートヘアで、Tシャツにジーンズという服装をしている。初めて見るから、この町の住人はなさそうだ。
ただ、そのきりりとしたまなざしは誰かに――知っている誰かに似ているような気がした。
季節は秋で、時刻は夕暮れ、場所は小学校の校門を出たあたり。真零は悠人の手に折り鶴を渡して「じゃあ、さようなら」と言っていた。
雨森真零はその年の春、東京から転校してきた。都会の女の子らしく色白で、黒い髪が背中まで伸びていた。
席は近かったが、真零はいつも無口だったし、悠人も女子と親しく話すような性格ではなかった。住んでいる家がどこかすら、悠人は知らなかった。
だが、秋のある日、真零がその日をかぎりにまた急に東京に戻ることになったと朝の学活で発表され、その放課後、悠人は校門前で真零に呼び止められたのだった。
あれから二年。雨森真零はどうしているだろう。
東京で元気に暮らしているんだろうか。
それにしても、自分はどうしてこんなに大切な想い出をすっかり忘れてしまっていたんだろう。雨森真零のことも。折り鶴のことも……。
とにかく、あの暦屋に行ってお礼を言わなくては。
悠人は、朝食を終えてすぐに家を出た。商店街を路地へと入り、三度曲がって暦屋に着く。
店の戸に手をかけると、まるで自動ドアのように戸が先にガラガラと開き、そこから自分と同じくらいの歳の少女が大きなバッグをかかえて出てきた。
「あっ、ごめん」
ぶつかりかけた悠人は、あわててあやまった。
少女は明るい茶色のショートヘアで、Tシャツにジーンズという服装をしている。初めて見るから、この町の住人はなさそうだ。
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