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第三章 『現在の試練』
第50話 〜ランガの二つ名〜
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仲間になったランガにこれまであった経緯と事情を説明する。
ランガは静かにそれを聞いていたが、俺が話を終えるとすぐに口を開いた。
「ダンジョンの中に試練か……」
「なにか心当たりはないか?」
「一応それっぽい感じの場所のは2つ聞いたことがあるよ」
2つか……予想外の収穫だな。
「それでその場所はどこにあるの?」
隣でベッドに腰をかけているイヴが尋ねる。
「一つは、ここの隣街ラバドンの墓地でもう一つは……魔界にある竜の里だ」
ラバドンの墓地……
以前誰かに、歴代の勇者が眠っている場所だと聞いたことがある。
もう一つの場所は魔界。
しかもよりによって、竜の里か。
確か、魔界に唯一存在する亜人族の村で、その場所は六つの神器によって守られており、魔物が唯一入ることのできない神聖な領域だったっけ?
「ラバドンね」
イヴが隣で呟く。
その表情は心なしか曇って見えた。
「イヴ、その村に何かあるのか?」
「ええ。ラバドンは奴隷の所有が法的に認められている街よ」
奴隷の所有が認められている街か……
あまりいい気はしないな。
「じゃあライム、次の目的地はラバドンだな」
ランガが声をかけてくる。
「そうだな。冒険者ギルドで朝ごはんを食べてからこの街を出るか」
時間はもうすでに朝の7時15分、随分と話し込んでしまったようだ。
「分かったわ」
「了解」
俺たちは出発の準備をして、宿屋を後にした。
冒険者ギルドの扉を開け、食堂に向かう。
食堂では、多すぎでも、少なすぎでもないちょうどいい人数の兎人族が食事をとっていた。
席につき、店員に料理を注文する。
料理が出てくるのを待っている時間暇だったので、俺は気になっていたことを聞くことにした。
「なあ、イヴとランガってどんな仲なんだ?知り合いっぽいけど」
「そういえば、ライムにはまだ言っていなかったわね。私とランガは何回か同じパーティーを組んだことがあるのよ」
「ああ、僕もイヴも二つ名持ちだから、よく共同の依頼が冒険者ギルドから受注されたんだ」
なるほど、冒険者仲間だったのか。
どうりで、仲がいいわけだ。
「それで、ランガの二つ名はなんて言うんだ?」
イヴの二つ名は『赤髪の紅蓮』だ。
そのイヴとパーティーを組んでいたぐらいなのだから、ランガの二つ名も大層かっこいいものなのだろう。
「僕の?僕は『長耳の藍青』だよ」
『長耳の藍青』……なんか微妙な二つ名だな。
思っていたほど、カッコよくない。
「ライム?今、ださい二つ名だなって思っただろ?」
おっと、心の中で思っていたことが顔に出ていたみたいだ。
「イヴの二つ名に比べたら、いまいちパッとしないからな」
「そうなんだよね、僕も何度かギルドに二つ名の改名を要求したんだけど通らなくてさ」
ギルドもひどいな。
変えてやればいいのに。
「お待たせしました。〈ドラゴン肉の卵とじ〉と〈ニンジンのバーニャカウダ〉と〈朝の健康スムージー〉でございます」
注文した料理が運ばれて来た。
イヴが〈ドラゴン肉の卵とじ〉
ランガが〈ニンジンのバーニャカウダ〉
俺が〈朝の健康スムージー〉だ。
やっぱり朝はスムージーに限るからな。
それから俺たちは朝ごはんを食べ終え、冒険者ギルドの食堂を出た。
そして、ギルドの受付嬢のところへ向かう。
馬車を借りるためだ。
隣街ラバドンはこの街から結構離れているようで、馬車を使わないと一日で着けないらしい。
「馬車を借りたいんだけど、」
受付嬢に話しかける。
「どこまで向かうご予定ですか?」
「隣街のラバドンまでだ」
「かしこまりました。料金は金貨1枚です」
「分かった」
金貨を袋から1枚取り出し、受付嬢に渡す。
ピーターにアイテムを売っておいてよかった。
「それでは、18番の馬車をお使いください。こちらが荷台の鍵でございます」
受付嬢から鍵を受け取り、冒険者ギルドを出る。
これで準備は万端だ。
「それでライム、何番の馬車に乗るんだ?」
「18番の馬車だ」
「分かった。ところで、ライムは馬車の運転できるか?」
「出来るぞ」
勇者パーティーにいた時は嫌と言うほど、やらされたからな。
そのせいで、一時期のあだ名が『馬男』になったし。
「了解。じゃあ馬車の運転は僕とライムで交代しながらだね」
「分かった」
……あれっ?イヴは?
なんでイヴが交代のローテーションに入っていないんだ?
「私は馬車を運転できないからよ!」
俺がそう思っているのを読み取ったのか、イヴが不満そうな顔で言った。
「そうなのか?」
「ええ、どれだけ練習しても上手くいかなかったわ」
うん……それなら仕方ないな。
「じゃあ、まずは僕が馬車の運転をするよ」
ランガがそう言うので、お言葉に甘えて俺とイヴは馬車の荷台に入った。
少し狭いな。
ピーターに乗せてもらった時の馬車と比べて中の容積は小さかった。
「狭いわね」
イヴが隣で不平を漏らす。
それには俺も同感だ。
「じゃあ、行くよ!」
そのランガの掛け声と共に、馬車は動き出した。
ランガは静かにそれを聞いていたが、俺が話を終えるとすぐに口を開いた。
「ダンジョンの中に試練か……」
「なにか心当たりはないか?」
「一応それっぽい感じの場所のは2つ聞いたことがあるよ」
2つか……予想外の収穫だな。
「それでその場所はどこにあるの?」
隣でベッドに腰をかけているイヴが尋ねる。
「一つは、ここの隣街ラバドンの墓地でもう一つは……魔界にある竜の里だ」
ラバドンの墓地……
以前誰かに、歴代の勇者が眠っている場所だと聞いたことがある。
もう一つの場所は魔界。
しかもよりによって、竜の里か。
確か、魔界に唯一存在する亜人族の村で、その場所は六つの神器によって守られており、魔物が唯一入ることのできない神聖な領域だったっけ?
「ラバドンね」
イヴが隣で呟く。
その表情は心なしか曇って見えた。
「イヴ、その村に何かあるのか?」
「ええ。ラバドンは奴隷の所有が法的に認められている街よ」
奴隷の所有が認められている街か……
あまりいい気はしないな。
「じゃあライム、次の目的地はラバドンだな」
ランガが声をかけてくる。
「そうだな。冒険者ギルドで朝ごはんを食べてからこの街を出るか」
時間はもうすでに朝の7時15分、随分と話し込んでしまったようだ。
「分かったわ」
「了解」
俺たちは出発の準備をして、宿屋を後にした。
冒険者ギルドの扉を開け、食堂に向かう。
食堂では、多すぎでも、少なすぎでもないちょうどいい人数の兎人族が食事をとっていた。
席につき、店員に料理を注文する。
料理が出てくるのを待っている時間暇だったので、俺は気になっていたことを聞くことにした。
「なあ、イヴとランガってどんな仲なんだ?知り合いっぽいけど」
「そういえば、ライムにはまだ言っていなかったわね。私とランガは何回か同じパーティーを組んだことがあるのよ」
「ああ、僕もイヴも二つ名持ちだから、よく共同の依頼が冒険者ギルドから受注されたんだ」
なるほど、冒険者仲間だったのか。
どうりで、仲がいいわけだ。
「それで、ランガの二つ名はなんて言うんだ?」
イヴの二つ名は『赤髪の紅蓮』だ。
そのイヴとパーティーを組んでいたぐらいなのだから、ランガの二つ名も大層かっこいいものなのだろう。
「僕の?僕は『長耳の藍青』だよ」
『長耳の藍青』……なんか微妙な二つ名だな。
思っていたほど、カッコよくない。
「ライム?今、ださい二つ名だなって思っただろ?」
おっと、心の中で思っていたことが顔に出ていたみたいだ。
「イヴの二つ名に比べたら、いまいちパッとしないからな」
「そうなんだよね、僕も何度かギルドに二つ名の改名を要求したんだけど通らなくてさ」
ギルドもひどいな。
変えてやればいいのに。
「お待たせしました。〈ドラゴン肉の卵とじ〉と〈ニンジンのバーニャカウダ〉と〈朝の健康スムージー〉でございます」
注文した料理が運ばれて来た。
イヴが〈ドラゴン肉の卵とじ〉
ランガが〈ニンジンのバーニャカウダ〉
俺が〈朝の健康スムージー〉だ。
やっぱり朝はスムージーに限るからな。
それから俺たちは朝ごはんを食べ終え、冒険者ギルドの食堂を出た。
そして、ギルドの受付嬢のところへ向かう。
馬車を借りるためだ。
隣街ラバドンはこの街から結構離れているようで、馬車を使わないと一日で着けないらしい。
「馬車を借りたいんだけど、」
受付嬢に話しかける。
「どこまで向かうご予定ですか?」
「隣街のラバドンまでだ」
「かしこまりました。料金は金貨1枚です」
「分かった」
金貨を袋から1枚取り出し、受付嬢に渡す。
ピーターにアイテムを売っておいてよかった。
「それでは、18番の馬車をお使いください。こちらが荷台の鍵でございます」
受付嬢から鍵を受け取り、冒険者ギルドを出る。
これで準備は万端だ。
「それでライム、何番の馬車に乗るんだ?」
「18番の馬車だ」
「分かった。ところで、ライムは馬車の運転できるか?」
「出来るぞ」
勇者パーティーにいた時は嫌と言うほど、やらされたからな。
そのせいで、一時期のあだ名が『馬男』になったし。
「了解。じゃあ馬車の運転は僕とライムで交代しながらだね」
「分かった」
……あれっ?イヴは?
なんでイヴが交代のローテーションに入っていないんだ?
「私は馬車を運転できないからよ!」
俺がそう思っているのを読み取ったのか、イヴが不満そうな顔で言った。
「そうなのか?」
「ええ、どれだけ練習しても上手くいかなかったわ」
うん……それなら仕方ないな。
「じゃあ、まずは僕が馬車の運転をするよ」
ランガがそう言うので、お言葉に甘えて俺とイヴは馬車の荷台に入った。
少し狭いな。
ピーターに乗せてもらった時の馬車と比べて中の容積は小さかった。
「狭いわね」
イヴが隣で不平を漏らす。
それには俺も同感だ。
「じゃあ、行くよ!」
そのランガの掛け声と共に、馬車は動き出した。
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