勇者パーティーの仲間に裏切られたので、信頼できる仲間達と共に復讐したいと思います〜相反する2つの固有スキル【借用】と【奪取】が最凶だった件〜

赤星怜

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第三章 『現在の試練』

第48話 〜【武器覇者】〜

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 21時50分、約束の時間の10分前だ。
 隣ではイヴがぐっすり眠っているため、静かに起き上がりベッドから出る。
 そして、音を立てないように慎重にドアを開き、中央広場へ向かう。

 21時55分、ようやく中央広場に辿り着いた。

「早かったね。まだ集合時間の5分前だよ?」

 暗闇から突如声がかけられる。
 声の方へ振り向くと、暗闇の中にかすかに影が見えた。
 あれが声の主か?
 影が俺の方に近づいてくる。
 やがて、月明かりによってその姿があらわになった。

 青色の髪に長い耳、性別は男、武器の類は何一つ持っていない。
 戦闘目的じゃないのか?

「お前が、俺に声をかけてきた冒険者か?」

「そうだよ」

「俺に何のようだ?できれば早く済ませて寝たいのだが」

 単刀直入に要求を聞く。
 中央広場という人目につく場所での話し合いは極力避けたかった。

「要求ね。その前に一つ確認させてほしい。君は勇者パーティーのライムだよね?」

 俺が勇者パーティーの一員だったことを確信している目。
 誤魔化すことは不可能か。

「どうしてそう思う?」

「僕は耳がいいからね。君達の会話を遠くから聞かせてもらった」

 なるほどな。
 確かにイヴとそんな会話をした気もするし、聞かれていても別段おかしいわけじゃない。

「それで、目的はなんだ?確認したかっただけじゃないだろ?」

「ああ。僕の要求はただ一つ。アランの居場所を教えろ」

 アランの居場所?
 もちろん俺はそんなの知らない。

「知らないぞ。俺はもう勇者パーティーの一員じゃないからな」

「虚言を吐くな」

「いや、本当に知らないんだ」

「意地でも教えてくれないってことか」

 不穏な空気が中央広場に流れる。
 この流れは前にも体験したことがあるぞ。

「なら仕方ない。力づくで聞くまでだよ」

 目の前にいる男が戦闘態勢に入る。
 やっぱりこうなったか。
 嫌な予感はしてた。
 イヴの時もそうだったからな。
 だが、こうなった以上戦うしかないだろう。

(”鑑定”)

 ~~~~~~~

 名前:ランガ・クーフーリン 性別:男
 種族:兎人族
 状態:”先祖返り【神耳】”(意識をすれば、遠くの音を拾うことができる)
 役職:戦士
 固有スキル:武器覇者ウェポンマスター(あらゆる武器を自在に扱うことができる)
 筋力:SS  魔法耐性:AA
 魔力:A   物理耐性:S
 瞬発力:S  体力:S

 ~~~~~~

 この男、強いな。イヴといい勝負かもしれない。
 パラメーターもそうだが、何より固有スキルが厄介だ。

「じゃあ行くよ」

 目の前にいる男が腰につけている袋の中から剣を2本取り出した。
 あの袋、見たことがある。
 アストロとセレンが同じものを持っていたな。
 確か名前は、【絶対収納袋】だったか?
 効果は、ある一定の大きさのものなら無限に収納できるだった気がする。

 二つの剣が俺の眼前に迫る。
 速いな。イヴと同じぐらいの速度だ。
 俺はそれを体をのけぞらせて躱す。

 そして……

「顕現せよ、風の大精霊シルフ」

「任せてなのですよ!」

 シルフを顕現させた。
 主な目的は二つ。
 戦闘音の消滅と、自力の強化だ。

「風精霊魔法”無音結界”」

 中央広場を風の結界でつつみ、音が漏れないようにする。

「黒龍流”居合一閃”」

 目の前の男が剣を一本捨て、もう一本を深く構える。
 全身に寒気が走る。
 この攻撃はやばい。

「風精霊魔法” 送運の風ウィンドシップ”」

 危険を察知し、風で自分の速度を上げてからすぐにその場から退く。
 だが、次の瞬間、風を切る音とともに俺の頬がすっぱりと切れた。
 頬から血が垂れる。

 危なかった。あと少し判断を遅くしていたら、完全に首が切れていただろう。
 油断はしていない。だが相手に対する認識が甘かった。
 これは全力を出すしかないな。

「シルフ、力を借りるぞ」

「分かったのですよ」

借用レンタル

 確認をとってから、シルフと唇を合わせる。
 緑のオーラが体の中に入ってくる。
【狼王の紋】と【竜王の紋】を得たことによる影響なのか、体への負担はそれほどなかった。

「黒龍流”居合一閃”」

 目の前の男が同じ技を放つ。
 だが、その技はもう見切った。
 精霊魔法を使い対抗する。

「風精霊魔法”鋭利閃風えいりせんふう”」

 風の刃と相手の剣がぶつかり合う。
 そして互いに攻撃を打ち消しあった。

「青龍流”百花繚乱”」

 無数の剣撃が飛んでくる。
 だが、俺はそれに対して何もしなかった。
 ”気配感知”にある反応を感じたからだ。

 俺の目の前に影が入り込み、無数の剣撃をすべて捌いた。
 美しい剣筋。
 そう、イヴだ。
 イヴが俺の方を見て声をかける。

「どうしてライムがこんなところにいるのよ」

「そこにいる男に呼び出されたからな」

「それは別にいいわよ。そんなことより、どうして私を起こしてくれなかったのよ。私たちは同じパーティーじゃないの?」

「そうだな。次からは気をつけるよ。それより、どうして俺が戦っていることが分かったんだ?」

 音は完全に遮断できていたはずだ。

「多分私しか気づいていないけど、魔力の流れが急に大きくなったからね」

「なるほどな」

 そういうことか。
 俺がシルフから力を借りたことで俺の魔力量が格段に上がり、それが周囲の魔力の流れを乱れさせたんだな。

「それより、ライムは誰と戦っていたの?」

「あの男だぞ」

 目の前にいる男を指す。
 イヴはその方向を見て驚愕の表情を浮かべた。

「あなた、ランガじゃないの」

「君はイヴじゃないか?どうしてこんなところにいるんだ?」

「それは私が聞きたいわよ。どうしてあなたがライムと戦っているのよ」

 二人が急に話し始めた。
 知り合いなのか?

「それは、そこにいる男にアランの居場所を聞くためだ」

「アラン?それって勇者パーティーの?」

「ああ。そいつが俺は勇者パーティーのメンバーじゃないって虚言を吐いたから、力づくで聞こうとしたんだ」

 その言葉を聞いて、イヴがため息をつく。

「はぁー、ライムの言っていることは本当よ」

「は?」

「いつ人がここにくるかも分からないから、ひとまず宿に行きましょう。そこで説明するわ。別にいいわよね、ライム?」

 イヴが俺に確認をとってくる。
 それに頷き、肯定の意を示す。
 なんか誤解されているみたいだし、今後絡まれたりしたら面倒だからな。

「ランガもいいわよね?」

「ああ、分かったよ」

 ランガと呼ばれた男もしぶしぶ頷く。

「決定ね。じゃあ、宿に戻りましょう」

 今後のことも決まったみたいだな。
 二人が宿屋へ向かうのを確認してから、中央広場にかけている無音結界を解除する。

(シルフ、力を貸してくれてありがとう)

(お安い御用なのです!また呼んでなのですよ)

返却リターン

 シルフにお礼を言ってから力を返す。

 その後、シルフには精霊界に帰ってもらい、俺は二人の後を追って、宿屋へ戻った。
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