勇者パーティーの仲間に裏切られたので、信頼できる仲間達と共に復讐したいと思います〜相反する2つの固有スキル【借用】と【奪取】が最凶だった件〜

赤星怜

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第二章 『過去の試練』

第34話 〜馬鹿な奴ら〜

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 現在、俺の目の前には体の半分を失ったワイバーンが見るも無惨な形で横たわっている。
 隣では、イヴが満足げな表情で手をパンパンと払っていた。

 結果だけを言えば、イヴとワイバーンの対決は10秒もかからず、イヴの圧勝で終わった。
 イヴがワイバーンの突進を躱してすぐ、体の半分を魔法で吹き飛ばしたのだ。

「なあイヴ、何の魔法を使ったんだ?」

「ただの風属性の中級風魔法よ」

 中級の魔法であの威力……化け物だな。

「また何か失礼なこと考えていたでしょ?」

 イヴがジト目をして俺を見つめる。

「いや、そんなことないぞ。それより、俺もやるべきことをやらないとな」

 イヴの言葉に誤魔化しつつ返答し、ワイバーンの前に立つ。
 そして……

「”奪取ロブ”」

 固有スキルを発動させた。

 ~~~~~~

 奪ったロブスキル:”金剛”(魔力を常に身体中に流すことで、体の強度を上げることができる。また、集中して特定の箇所に魔力を流せば、その部分をより強固にすることができる)

 ~~~~~~

 黒いオーラが俺の体の中に入ってくる。

「ライムもこれで私の実力がある程度は分かったかしら?」

 頭の中に流れてきた情報が消えると同じタイミングでイヴが話しかけてきた。

「ああ。イヴの魔法の腕は控えめに言って天才だな」

 俺の奥義と同じ威力の魔法を放つことができ、AA級の魔物ごときなら、中級魔法で討伐することができる。
 イヴは紛れもない魔法の天才と言えるだろう。

「そうでしょ!よかったわ。ライムにやられっぱなしでいいところがなかったもの」

「そんなことはないと……」

『そんなことはないと思うぞ』と言いかけて、俺は口をつぐんだ。
 イヴが俺を見つめ、無言の圧力をかけていたからだ。

「じゃあ、ギルドに戻るか」

「ええ」

 そして、俺たちは狐女に依頼達成を報告するために、冒険者ギルドに向かった。




 冒険者ギルドに入り、まず受付嬢の元へ向かった。
 無許可でギルド長室に入ることはできないからな。

「ギルド長に会いたいのだが」

 受付嬢に声をかける。

「ライム様ですね。ギルド長から部屋へ通せと伺っております。こちらへどうぞ」

 受付嬢は顔色ひとつ変えずに、俺たちを案内した。
 どうやら、俺たちがすぐに戻ってくることは予測済みだったみたいだ。
 相変わらず食えない女だな。

 扉を開けて中に入ると、中からすぐに声がかかった。

「お疲れ様。貴方達なら、すぐにやり遂げてくれると思っていたわよ」

「そうか。じゃあ、早く報酬をくれ。すぐにこの街を出ていきたい」

「まるでこの街が嫌いみたいな、悲しいことを言うのね」

「ほとんどの原因はお前だけどな」

「そうね!」

 ラピスは嬉しそうに笑いながら、俺に報酬である金貨10枚を渡す。

「じゃあ、俺たちはもう行く」

 報酬をもらった以上、ここに用はなかった。

「ライム、イヴ」

 ギルド長室のドアに手をかけた時、また背中に声がかかった。

「街を出る時には気をつけなさいよ。まあ、貴方達なら大丈夫だと思うけどね」

「分かった」

 返事をしてから、ギルド長室を出る。

「どういうことなのかしら?」

「さあな。まあ、街を出るときには分かるだろう」

「これから、火山へ向かうのね?」

「ああ。あの女のせいで少し予定が遅れたからな」

「分かったわ」

 今後の予定を話しながら、街の門を出ようとしたその時、俺の”気配感知”に7人の人間の気配が反応した。
 どうやら、7人とも俺たちには明確な敵意を持っているようだ。

【狼王の紋】の影響なのか、”気配感知”の能力も”鑑定”と同様に向上しており、敵意の有無も判別できるようになっていた。

「イヴ、近くで、7人の人間が俺たちに敵意を抱いている」

 短くイヴに声をかける。
 イヴは少し驚いた後、頷いた。

「気づいていないふりをして、おびき出しましょう」

「そうだな」

 敵意を持った人間を釣るために、俺たちはそのまま目的地である火山に向かうことにした。
 それからしばらく歩き、何もない荒野に出た。

 その時、後ろから俺たちに声がかかった。
 どうやら、上手く釣れたみたいだ。

「なあ、冒険者ギルドではよくもやってくれたな」

 振り返って顔を確認すると、そこには冒険者ギルドで気絶させたはずの鹿3人と見知らぬ顔の4人の男がいた。

「お返しにと言っては何だが、その女をよこさないか?」

「今度は俺たちより強い冒険者もいるんだぜ」

 3馬鹿はもちろん、他の4人の冒険者も自分の勝利を過信しているのか、ニタニタと笑っている。
 またか、本当に馬鹿な奴らだ。
 隣をチラッと見ると、イヴの目が完全に据わっていた。
 これは……アイツらがヤバいな。

「中級土魔法”砂塵さじん”」

 イヴが隣で魔法を唱えている。

 すると次の瞬間、辺り一帯が巨大な砂嵐に包まれ、7人の男達が砂嵐に飲み込まれて、消えていった。
 よほど、運が良くないと生き残れないだろう。

「ライム、行きましょう」

 イヴが何事なかったかのように俺に声をかけた。

「ああ」

 こうして、俺たちは馬鹿も撃退し、次の目的である火山に向かった。
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