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第二章 『過去の試練』
第28話 〜荒れ果てた村〜
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ミューが精霊界に帰ってから、俺とサラは2人で次の試練の情報を集めるために、村を探す旅に出た。
しばらく何もない草原を歩いていると、一つの集落が見えてきた。
『ライムくん!村が見えてきたよ!』
サラが俺に声をかける。
長いこと歩いていてようやく見つけた村だからか、その声は心なしか嬉しそうに聞こえた。
だが、そこで俺はあることに気づいてしまった。
不思議なことに村と思われる場所には魔力反応がひとつしかなかったのだ。
「ああ、そうだな。それにしても何か様子がおかしくないか?」
『どういうこと?』
「”気配感知”に反応している魔力反応が一つしかないんだ。村なら、たくさんあってもいいはずなのに」
『そうなの?』
「ああ」
『何か嫌な予感がするね』
「ああ。急いだほうがいいかもしれない」
嫌な予感を感じとり、村と思われる場所に走って向かう。
近づけば近づくほど、”気配感知”が敏感に働くが、相変わらず反応している魔力反応は一つだけだった。
やがて村に辿り着き、俺とサラは言葉を失った。
目に写るのはまるで地獄絵図だった。
建物はほとんど焼け、倒壊しており、原型をとどめていない。
そこに住んでいた村人と思われる人たちも、全員が地面にうつ伏せに倒れていた。
辺りには異臭が漂っており、それがより一層目の前の景色の生々しさを強調していた。
「おいおい、これはどうなっているんだ?」
目の前に景色を見て、自然と言葉が漏れる。
疑問を感じずにはいられなかった。
その時、唯一、”気配感知”に魔力反応のあった女が声をかけて来た。
「ふざけるなよ!お前らがやったんだろうが!」
目の前にいる女が怒鳴る。
「……は?俺は今来たばっかりだぞ?何を言っているんだ?」
何を言っているのか理解できず、聞き返す。
俺は今来たばかりで、この村の事情をしらない。
それなのにこの女はあたかも俺がしたかのような態度をとっている。
どういうことだ?
隣にいるサラも首を傾げている。
考えを巡らせた瞬間、目の前から女から攻撃が飛んできた。
それを間一髪でかわす。
中段の飛び蹴り。おそらく、勇者パーティーの時の俺では、避けられなかっただろう。
女は自分の攻撃を避けられたことに少し驚愕の表情を浮かべたあと、俺から距離をとった。
突然、女の目が光る。
何をしているんだ?
「今の実力では互角なのね」
何かを呟いているが、声が小さくて聞こえない。
「”鬼化”」
女が何かを唱えると、女の周囲の魔力が一気に膨張した。
自分と同じ人族だと思っていたその女の頭から、鬼のような角が生える。
見に纏っている魔力も格段に上がっていた。
そして、次の瞬間俺は後方に吹き飛ばされていた。
腹の部分に蹴りを入れられたのだ。
サラが心配して近くに駆け寄ってくる。
『ライムくん、大丈夫?』
「俺は大丈夫。それより何で俺を攻撃するんだろう?」
『分からないけど、何かを勘違いしているのかも』
「じゃあとりあえず無力化にするか」
『うん。それがいいと思うよ』
サラと唇を重ねる。
(”借用”)
サラと一体化する。
目の前の女の蹴りを避けてから、”鑑定”を使った。
「”鑑定”」
~~~~~~~
名前:イヴ・トリメア 性別:女
種族:鬼人族
状態:”鬼化”・”先祖返り【真理眼】”(真理眼…対象に関する情報を細かく見ることができる。”鑑定”の上位互換)
役職:剣士
固有スキル:鬼化
筋力:S 魔法耐性:A
魔力:SS 物理耐性:AA
瞬発力:S 体力:S
~~~~~~~
【狼王の紋】を得たことによる影響なのか、たまたま成長したのかは分からないが、”鑑定”で得られる情報が増えていた。
それにしても、この女は何者だ?
明らかに次元の違う強さだ。
おそらく固有スキルを使っていない俺だったら、15秒もたないだろう。
それほど目の前にいる女のステータスは異常だった。
女はその後も何度か、パンチや蹴りを放ったが俺に当てることはできなかった。
女よりも今の俺の方が強いのだから当たり前のことだ。
「炎極級魔法”鬼火”」
女は物理攻撃では俺に敵わないと悟ったのか、巨大な青白い炎を出現させ、それを俺に放った。
凄まじい威力だな。
「炎精霊魔法奥義”炎拳”」
普通の精霊魔法では対抗できないと思い、すぐさま奥義で対抗する。
俺の拳と青白い炎がぶつかり合い、威力をお互いに打ち消し合った。
女はそれを見て動揺した。
その隙をつき、俺は女の首に飛び蹴りを放ち、意識を刈り取った。
(その子、なかなかに強かったね)
(ああ、そうだな)
(……歯切れが悪いね。何か思うところでもあった?)
(戦ってみてわかったんだが、この女は何かに駆られて戦っているように見えた)
(何か?)
(ああ、放たれる攻撃一つ一つにしっかりとした殺意がこもっていて、どれも直撃すると即死するぐらいの威力だった)
(何か恨まれるようなことでもしたの?)
(何もしてないぞ。だから俺も何で急に襲われたのか分からないんだ)
(なるほどね。じゃあ、とりあえずその女の子が起きてからまた話し合おうか)
(ああ。そうだな)
(”返却”)
サラに力を返してから、俺は今も自分のそばで倒れている女を見る。
その女は何かを呟きながら、涙を流していた。
「リリア、リリア」
何やら深い事情があるようだ。
俺はその女が起き上がるのをそばで待つことにした。
しばらく何もない草原を歩いていると、一つの集落が見えてきた。
『ライムくん!村が見えてきたよ!』
サラが俺に声をかける。
長いこと歩いていてようやく見つけた村だからか、その声は心なしか嬉しそうに聞こえた。
だが、そこで俺はあることに気づいてしまった。
不思議なことに村と思われる場所には魔力反応がひとつしかなかったのだ。
「ああ、そうだな。それにしても何か様子がおかしくないか?」
『どういうこと?』
「”気配感知”に反応している魔力反応が一つしかないんだ。村なら、たくさんあってもいいはずなのに」
『そうなの?』
「ああ」
『何か嫌な予感がするね』
「ああ。急いだほうがいいかもしれない」
嫌な予感を感じとり、村と思われる場所に走って向かう。
近づけば近づくほど、”気配感知”が敏感に働くが、相変わらず反応している魔力反応は一つだけだった。
やがて村に辿り着き、俺とサラは言葉を失った。
目に写るのはまるで地獄絵図だった。
建物はほとんど焼け、倒壊しており、原型をとどめていない。
そこに住んでいた村人と思われる人たちも、全員が地面にうつ伏せに倒れていた。
辺りには異臭が漂っており、それがより一層目の前の景色の生々しさを強調していた。
「おいおい、これはどうなっているんだ?」
目の前に景色を見て、自然と言葉が漏れる。
疑問を感じずにはいられなかった。
その時、唯一、”気配感知”に魔力反応のあった女が声をかけて来た。
「ふざけるなよ!お前らがやったんだろうが!」
目の前にいる女が怒鳴る。
「……は?俺は今来たばっかりだぞ?何を言っているんだ?」
何を言っているのか理解できず、聞き返す。
俺は今来たばかりで、この村の事情をしらない。
それなのにこの女はあたかも俺がしたかのような態度をとっている。
どういうことだ?
隣にいるサラも首を傾げている。
考えを巡らせた瞬間、目の前から女から攻撃が飛んできた。
それを間一髪でかわす。
中段の飛び蹴り。おそらく、勇者パーティーの時の俺では、避けられなかっただろう。
女は自分の攻撃を避けられたことに少し驚愕の表情を浮かべたあと、俺から距離をとった。
突然、女の目が光る。
何をしているんだ?
「今の実力では互角なのね」
何かを呟いているが、声が小さくて聞こえない。
「”鬼化”」
女が何かを唱えると、女の周囲の魔力が一気に膨張した。
自分と同じ人族だと思っていたその女の頭から、鬼のような角が生える。
見に纏っている魔力も格段に上がっていた。
そして、次の瞬間俺は後方に吹き飛ばされていた。
腹の部分に蹴りを入れられたのだ。
サラが心配して近くに駆け寄ってくる。
『ライムくん、大丈夫?』
「俺は大丈夫。それより何で俺を攻撃するんだろう?」
『分からないけど、何かを勘違いしているのかも』
「じゃあとりあえず無力化にするか」
『うん。それがいいと思うよ』
サラと唇を重ねる。
(”借用”)
サラと一体化する。
目の前の女の蹴りを避けてから、”鑑定”を使った。
「”鑑定”」
~~~~~~~
名前:イヴ・トリメア 性別:女
種族:鬼人族
状態:”鬼化”・”先祖返り【真理眼】”(真理眼…対象に関する情報を細かく見ることができる。”鑑定”の上位互換)
役職:剣士
固有スキル:鬼化
筋力:S 魔法耐性:A
魔力:SS 物理耐性:AA
瞬発力:S 体力:S
~~~~~~~
【狼王の紋】を得たことによる影響なのか、たまたま成長したのかは分からないが、”鑑定”で得られる情報が増えていた。
それにしても、この女は何者だ?
明らかに次元の違う強さだ。
おそらく固有スキルを使っていない俺だったら、15秒もたないだろう。
それほど目の前にいる女のステータスは異常だった。
女はその後も何度か、パンチや蹴りを放ったが俺に当てることはできなかった。
女よりも今の俺の方が強いのだから当たり前のことだ。
「炎極級魔法”鬼火”」
女は物理攻撃では俺に敵わないと悟ったのか、巨大な青白い炎を出現させ、それを俺に放った。
凄まじい威力だな。
「炎精霊魔法奥義”炎拳”」
普通の精霊魔法では対抗できないと思い、すぐさま奥義で対抗する。
俺の拳と青白い炎がぶつかり合い、威力をお互いに打ち消し合った。
女はそれを見て動揺した。
その隙をつき、俺は女の首に飛び蹴りを放ち、意識を刈り取った。
(その子、なかなかに強かったね)
(ああ、そうだな)
(……歯切れが悪いね。何か思うところでもあった?)
(戦ってみてわかったんだが、この女は何かに駆られて戦っているように見えた)
(何か?)
(ああ、放たれる攻撃一つ一つにしっかりとした殺意がこもっていて、どれも直撃すると即死するぐらいの威力だった)
(何か恨まれるようなことでもしたの?)
(何もしてないぞ。だから俺も何で急に襲われたのか分からないんだ)
(なるほどね。じゃあ、とりあえずその女の子が起きてからまた話し合おうか)
(ああ。そうだな)
(”返却”)
サラに力を返してから、俺は今も自分のそばで倒れている女を見る。
その女は何かを呟きながら、涙を流していた。
「リリア、リリア」
何やら深い事情があるようだ。
俺はその女が起き上がるのをそばで待つことにした。
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