勇者パーティーの仲間に裏切られたので、信頼できる仲間達と共に復讐したいと思います〜相反する2つの固有スキル【借用】と【奪取】が最凶だった件〜

赤星怜

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第一章 裏切りと『力の試練』

第26話 〜勇者編5:次なる刺客〜

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 ある魔界の一角に、8人の魔族が集まっていた。
 そこへ、影が戻ってくる。

「アガリアレプト、早かったですね」

 華奢な体つきの魔族が、影に向かって口を開いた。

「結果は言わニャくても分かると思うけど、アドラメレクが勇者に倒されたニャ」

 影の中からふさふさの耳が生えた魔族が顔を出す。

「それは、おじさんも少し予想外だったね。アドラメレク君ならもう少しつと思ったんだけど」

「勇者もなかなか強いようじゃのー」

「アガリアレプト、どうやってアドラメレクは倒されたのだ?」

「簡単ニャンよ。勇者のもつ聖剣で一撃ニャ」

「へ~、それは興味深いわね~。アガリアレプトちゃん、もう少し詳しく教えてくれる?」

「いいニャンよ。アドラメレクは勇者の”秘奥義”っていうのにやられたのニャ」

「あら、勇者については結構知っているつもりだったのに、そんなの聞いたことがないわね~」

同意ドウイ

「僕もそんなの聞いたことがないよー」

「私、聞いたこと、ない」

「私も聞いたことがないですね」

「我もないな」

「わしもないの~」

「……」

「ディアボロス様は何か知らニャいのですか?」

「おじさんは知ってるし、それと戦ったこともあるよ」

 中年のおじさんのような見た目をした魔族が答える。

「え?そうニャのですか?」

「うん。といってもおじさんも戦ったのはだいぶ前だから、あんまり覚えてないけどね」

「あら~、ディアボロス様はいいわね~」

「本当に羨ましいよ!」

「さすがでございます」

同意ドウイ

「ディアボロス様、さすが、すごく、強い」

「やはり第1席はさすがだな。我も精進しなければ」

「そうじゃの~、わしも頑張らんといかんな」

「ねえねえ、そんなことより、今度勇者を倒しにいくのは僕でもいい?」

「ベーレ、今の話を聞いていたのですか?」

「うん?聞いていたよ!もう、腕がうずいてきちゃって我慢できなくなっちゃった」

 嬉しそうな顔をして、少年の魔族が口を開いた。

「そう、ですか」

 華奢な体の魔族は諦めた様に肩を落とす。
 それに追い討ちをかけるように、もう一人魔族が口を開いた。
 しわがれた声があたりに響く。

「わしも行っていいかのー?」

「ボティスも行くのですか?」

「そうじゃのー。やっぱりいくつになっても戦いは楽しみじゃわい」

 小柄な老人の魔族は指を鳴らす。

「では、今度は二人で勇者を倒しにいくということで。頼みましたよ。第8席ベーレ、第7席ボティス」

「任せてよ!」

「わしに任せておけ」

 魔界から二つの人影が消え、7人の影が残った。

「さーて、どうなるかなー?」

 中年のおじさんのような見た目をした魔族が呟いた。

「ディアボロス様はどうなるとお思いですか?」

「おじさんはね、多分ベーレとボティスは8割の確率で負けると思うよ」

「それはどうしてなのだ?」

 青年の見た目をした魔族が尋ねる。

「だって、おじさんがかつて一度だけ戦った時の勇者は相当強かったからね。それに、今代の勇者は今までのどの勇者よりも強いみたいだし」

「あら~、じゃあ今回もアガリアレプトが魔石を拾う羽目になりそうね~」

同意ドウイ

「仕方ない、二人共、楽しそうだった」

「では、今回も頼みますね。アガリアレプト」

「任せてください、アルシエル様」

 影から顔だけを出していた魔族はそのまま中に潜っていった。
 そしてその場には6人の影が残った。

「楽しんでおいで、ベーレ、ボティス」

 中年のおじさんのような魔族は小さく呟くように口を開いた。
 その声は確かに魔界の一角に響き渡った。



 一方その頃、魔王10幹部の一人であるアドラメレクを倒した勇者達はもう一つの目的を果たすために、鬼人族の村へ戻った。

 すると案の定、鬼人族達はたくさんの魔物に襲われており、村は悲惨な状態になっていた。
 だが、それでも鬼人族達は必死に抵抗しており、たくさんの魔物相手に奮闘している。

 そんな時、ある一人の鬼人族が勇者が戻ってきたことに気づいた。

「おい、みんなー!勇者様が戻ってきたぞー!」

 その声を聞いて、あちこちで歓声が上がる。
 勇者が戻ってくるまで魔物な猛攻を耐え切ったのだから、当然のことだろう。
 勇者レオの元へ村長が近づいてくる。

「勇者様、どうやらあの魔道具は壊れていたようで、今この村は魔物に襲われています。どうかお助けください」

「分かった。今から全員を苦しみから解放してやる」

 レオは村長に返事をしてから、ティナにコソッと耳打ちをした。

「ティナ、さっきの買い物で『超級炎魔法の書』の手に入れたんだろ?」

「そうだけど、それがどうかしたの?」

「その魔法、試しに打ってみたくないか?」

「もしかして……でも、それだと何人か逃げちゃう人が出るよ?」

「そこは俺がなんとかしてやる……じゃあやるぞ」

 レオは奮闘している鬼人族に叫ぶ。

「今から魔物を倒す魔法を放つ。お前達に当てたくないから全員中央付近にいてくれ」

 鬼人族達はその言葉に従い、全員が村の中央付近に固まった。
 レオはそれを確認してから、聖剣を腰から抜いた。

「第5の秘奥義”聖界”」

 レオが奥義を使うと、村全体が巨大な結界に包まれた。
 もちろん
 鬼人族達から動揺の声が上がる。

「勇者様、これでは私たちにも魔法が当たってしまいます」

「何を言っている。俺は言っただろ。『苦しみから解放してやる』って」

「勇者様……まさか!?」

「ようやく気づいたのか?そうだ、お前達は今から死ぬことで苦しみから解放される」

「勇者様ー!?」

「……嘘!?」

 村の中央から悲鳴が上がる。

「ティナ、やっていいぞ」

「うん!超級炎魔法”灼熱の渦しゃくねつのうず”」

 村の中心部に巨大な炎の竜巻が現れる。
 そしてそれは、鬼人族と魔物を同時に焼き尽くしていった。
 鬼人族の何人かは逃れようと村の外へ出ようとするが、レオの結界に阻まれてそうすることも叶わない。
 ……まるで地獄絵図だ。
 レオ達はその様子をさも当然のように眺める。
 しばらくして、中から音が聞こえなくなると、レオは結界を解いた。
 村の中は丸投げの魔物の死骸と、鬼人族の死体で溢れかえっている。

「目的は達成した。帰るぞ」

 レオは鬼人族の死体を軽く見てから、みんなに声をかけた。

「分かった!」

「ええ。わかりました」

「チッ、焦げ臭いな」

「早く行こうぜ」

「これは異臭……」

 全員がレオの言葉に返事し、村を去っていくレオの後をついて行った。



 レオ達が去っていた後の鬼人族の村に微かに息をする少女がいた。
 その少女は全身に瀕死の重傷を負いながらも、何があったのか記録を残すために固有スキルを使用する。

「固有スキル”伝達トランスファー”」

 すると次の瞬間、少女の握っている剣が一瞬だけ黄色く光った。
 少女はそれを見て安心した後、か細い声で呟きながら地面に倒れた。

「……お姉ちゃん……大好きだよ。私の分まで生きてね」

 その少女はもう息をしていなかった。
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