勇者パーティーの仲間に裏切られたので、信頼できる仲間達と共に復讐したいと思います〜相反する2つの固有スキル【借用】と【奪取】が最凶だった件〜

赤星怜

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第一章 裏切りと『力の試練』

第21話 〜試練〜

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 響いてきた声はしわがれているようでダンディーな声だった。

「ようこそ、挑戦者よ。よくぞ我の『力の試練』を突破した。見事だったぞ」

「挑戦者?力の試練?突破?」

 急に響く声に驚き、オウム返しにして聞き返すが、俺の問いに答えが返ってくることはなかった。
 どうやら、こちらの質問には答えてくれないようだ。
 なぜだろうと疑問に思っていると、その答えは次の瞬間に明らかになった。

「我の声は事前に録音されたものだ。だからお主の問いに答えることはできない。だが、これから我の話すことでお主の問いは解決するだろう」

 確信めいた絶対的な自信がその言葉から感じられる。
 その言葉を聞いて、俺たちは口を閉じた。
 声は続けて響く。

「まずお主の一つ目の疑問であろうこの場所について話すぞ」

「この場所は我が試練をクリアした者のために作った特別な空間だ。この空間はお主の住んでいる世界とは別の空間にある」

「試練?」

「次にお主らは試練とは何かと思っただろう?よって次は試練について話していこう」

「この森は【禁忌の森】と呼ばれているのだが、もともとこの場所は、勇者が魔王を倒すための力を得る場所だったのだ」

「……え?」

「かつての勇者は今の勇者よりも強くなかった。そのため、魔王を倒すには力不足だった。ゆえに、かつての勇者は、魔王を倒すためにはどこかで力を得る必要があった。その力を得る場所がここだったのだ」

「お主はこの場所に来る途中で疑問に思っただろう?『なぜこの森はこんなにも敵の強さが段々と強くなっていたり、休憩する場所が多いのだろう』と。それは、そうしないとかつての勇者がすぐに死んでしまうからだ。段々と敵の強さを強くしていったのも、休憩する場所の数が多かったのもそれが理由じゃ」

「じゃあ、ここでまたお主は疑問に思ったはずじゃ」

「この試練を突破することでどうやって力を得れるのだろう、と」

「その答えはお主の右手にある。見てみよ」

 響いてくる声に従い右手を見ると、右手の手の甲に狼の顔のような紋章が描かれていた。

「お主の右手には【狼王の紋】が刻まれていたはずじゃ。これは狼王ボルト・アポカリプスを倒した証であって、お主の力を1段階あげるものなのだ。まあ気になるなら後で【鑑定書】でも使ってお主のパラーメーターでも見てみよ」

「そこで、お主にはこんな疑問が浮かび上がったはずじゃ」

「さっき、この声の主は『力の試練』って言ったけど、他にも試練があるのだろうか、と」

「その答えはもちろんあるじゃ」

「試練は全部で5つある」

「1つ目はこの我の試練。『力こそ全て、世の流れは力で決まる』略して『力の試練』じゃ。さっきも言ったが、この試練のクリア目標である狼王ボルト・アポカリプスを倒したら、報酬として【狼王の紋】が与えられることになっておる」

「2つ目は『過去とは現在への軌跡、今の自分が存在するのは過去の自分がいてのこと』略して『過去の試練』じゃ。もらえる報酬とクリア目標はその試練に行った時のお楽しみじゃ。これから我が言う試練は全てそうじゃがな」

「3つ目は『現在の自分の在り方、自分の存在意義の定義』略して『現在の試練』じゃ」

「4つ目は『未来とは理想、それとも現在からの繋がり?答えは……』略して『未来の試練』じゃ」

「5つ目は『存在と存在を繋ぎ、それらを強固なものとする信頼』略して『信頼の試練』じゃ」

「そう、かつての勇者はこの五つの試練を全てクリアして全ての紋章を手に入れてから魔王と戦っていたのじゃ。まあ今の勇者はこんな試練を受けなくても強いみたいじゃがの」

「そして、最後にお主は思ったはずじゃ。ここまでのことを知っているこいつはいったい何者なのだろう?と」

「そうじゃな、答えてあげたいが、我がその質問に答えることはできない。それを言うことはこの世界のタブーに触れることになるからじゃ。だが、そうは言ってもお主は納得しないじゃろう。だから少しヒントをやろう、我の正体に関するキーワードは」

「闇の女神テネブラ……じゃ」

 ……ドクン……

 その言葉を聞いて心臓が飛び跳ねる。
 俺を救った存在でありながらこの世界のタブーに関わっている存在。
 改めて俺はテネブラの存在感の大きさを実感した。

「これで我が話せることは終わりじゃ。隣の魔法陣に触れれば、お主が次に行くべき最善な場所は転移するようになっておる」

 その言葉を最後に無機質な空間から声は響かなくなった。
 気づけば、確かに俺の隣に少し小さい魔法陣が浮かび上がっている。

『なるほど、こんな事情があったんだね』

『私も……初めて知った』

「大精霊のサラとミューも知らなかったのか?」

『うん。ボク達も勇者はもともと最強な存在っていうイメージだったからね』

『うん……だから多分この試練は……私たちが生まれるよりも……もっと前のもの』

「そうなのか……」

 二人に返事をしつつ俺は自分に”鑑定”を使う。
 右手の【狼王の紋】の効果を知りたかったからだ。

「”鑑定”」

 ~~~~~~~

 名前:ライム・ベットレイド 性別:男
 役職:精霊術師
 固有スキル:借用、奪取
 奪取したスキル:鑑定、気配感知、多重詠唱マルチプル、底力

 筋力:A(+)   魔法耐性:A
 魔力:SS  物理耐性:A(+)
 瞬発力:A(+)  体力:AA(+)

 ~~~~~~~

 パラーメーターを見ると、プラスと書かれているところが4つ増えている。
 おそらくこれが【狼王の紋】の効果なのだろう。
 奪取したスキルに”底力”が加わっているのは、俺が魔法陣に乗る前に狼王ボルト・アポカリプスの首で固有スキル”奪取”を発動したからだ。

 それから俺はサラとミューの3人で魔法陣にのった。
 視界がまた真っ白な光で埋め尽くされていく。
 そして、その光が晴れると俺たちは【禁忌の森】の外に出ていた。
 どうやら、この森の外が俺たちにとっての一番最適な場所らしい。

 そこで、俺達はひとまず近くの村に行こうと目標を立て、【禁忌の森】と反対の方角へ進んでいった。
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