忘らるる聖女は氷の騎士の〇〇でしか力を発動できません

桜雨ゆか

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ルヴェルナの聖女 ✤

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「あっ……んっ、はぁっ……」

 レイアードの吐息が耳にかかり、背筋がぞくぞくと震える。

「あ、あの……。レイアード様、私……ッ、やっぱり……」

 アリシアは切羽詰まった声で訴えた。しかし、レイアードはそれを無視してさらに強く胸を揉みしだいた後、再び指先で先端をつまみ上げた。
 強い刺激にアリシアは大きく身体を震わせる。

「あッ……んふっ……んんんっ」

 高い声が出てしまい、慌てて口を塞ぐ。
 日常、絶対に出さないような声だ。
 アリシアはそれが恥ずかしくて、恥ずかしくて、だけど気持ちよくて。

「は、あ……んっ、はぁ……」

 どうしたらいいのかわからなくて怖くなった。

「アリシア様、痛くはないですか?」

 両方の乳房の先端を抓みながら、レイアードは身を屈めてアリシアと目線の高さを合わせた。
 正面から顔を覗きこまれたアリシアははくはくと唇を動かす。

「い、痛くはないですけどっ……」
「けど?」
「へ、へんな声が出ちゃって、恥ずかしいです……っ」

 アリシアが涙目になりながら言うと、レイアードは優しく微笑んだ。

「アリシア様、それは自然なことです。むしろ喜ばしいことなのですよ」

 レイアードの手が胸に伸びてきて、乳房の膨らみをなぞるように撫で回す。
 その感覚にアリシアはまた甘い吐息を漏らすが、それでも必死に耐えていた。しかし、レイアードの手の動きはさらに大胆になり、やがてその手が下腹部へと伸びてきた。

「あッ……!」

 その瞬間、びくりと大きく腰が跳ね上がる。
 レイアードの手はアリシアのへそ下あたりにぴたりと触れると、そこで止まった。

「……朝の清めはここまでです。少しずつわたしとあなたの波長を合わせていきましょう」
「え? あ……。は、はい……」

 レイアードの言葉にアリシアは小さく返事をした。

「ゆっくり深呼吸して……力を抜いてください」

 言われるままに大きく息を吸って吐くと、少しだけ楽になったような気がした。
 レイアードはゆっくりとアリシアから離れ、泉のふちに置いてあったカゴの中から大判の拭き布を持ってきた。

「こちらをお使いください」

 そう言ってレイアードは布を差し出した。アリシアはそれを受け取りながら、おずおずと彼に訊ねた。

「ありがとうございます。あの、このあと私は……」
「お部屋に着替えやお食事を持って行かせます。夜のお清めまでどうぞ自由にお過ごしください」
「……え? 夜ですか?」
「はい。日没後を予定しております。それまで、わたしも隣の部屋に控えておりますので、御用の際はお声をかけてくだされば――」
「いえ、そうじゃなくて……っ」

 アリシアは布を身体に巻き付けながらレイアードを見上げた。
 今みたいな出来事が夜にもまた行われるのだろうか?
 そう思うと、顔から火が出そうな気持ちになった。
 そんなアリシアの様子を知ってか知らずか、レイアードは淡々と続ける。

「アリシア様の身に危険が及ばないよう最大限の配慮をさせていただきますので、どうかご安心ください」
「夜のお清めっていったいなにを?」
「そうですね。先ほどもお伝えした通り、わたしを受け入れていただく準備ですね。――清めのあとは覚醒の儀でわたしの存在をあなたの身体に刻み込むことになります」
「そ、そう……ですか……」

 アリシアは俯きがちに答えた。しかし、そんな彼女の様子に構わずレイアードは続けた。

「――ところで、アリシア様。今、お身体に変化などは?」
「え? いえ、特になにも……」
「そうですか……。なにかこう力が湧き出てくる感覚などはありませんか?」
「えっと、その……いえ……。すみません……」

 レイアードに問われて考えてみたものの、特にこれといった変化はなかった。
 アリシアの答えを聞いてレイアードはしばらく黙り込んだ後、そうですか、と一つ息を吐き出した。
 なんだか落胆されたように感じられて、アリシアは居た堪れない気持ちになった。

「あの、なんだかごめんなさい……」
「……いえ。もしなにか変化があったらすぐに知らせてください」
「はい……」

 アリシアが申し訳なさげに頷くと、レイアードは別の布を腰に巻き、泉から上がって行った。

「それでは失礼します。また後ほど」

 レイアードが去った後、アリシアは大きく息を吐き出した。

(これからどうなるんだろう……? 来なきゃよかった……)

 不安な気持ちがどんどん大きくなっていき、胸が締め付けられるように痛んだ。


   ✢


 それからアリシアは部屋に戻り、食事を済ませると、神官たちが持ってきたルヴェルナの聖女についての書物を読むことになった。
 書物には穢れを払う聖女の伝説がいくつも記されていることのほか、覚醒の儀についての記載もあった。
 朝の清めと夜の清めを終えてから、初めて覚醒の儀に臨むということなどが書かれていた。

「ルヴェルナの聖女は騎士と、ま、ま、交わる、ことにより、聖力を得る……」

 アリシアはぶつぶつとつぶやいたあと、ぱたんと書物を閉じた。
 耳まで真っ赤に染めて、ふるふると首を振る。

(だめ、どうしよう、こんなことだって知ってたら来なかったのに!)

 書物を読み進めるうちに、アリシアの頭の中は疑問でいっぱいになっていった。
 書物の中には『ルヴェルナの聖女は、いと稀なる存在にして、情欲の昂ぶりや歓悦の極みを、聖なる力へと転じることを得たもう。彼の力、他に並ぶ者なしと謳われ、神々の恩寵を受けし者なり』と記されていた。
 読んだところで、はいそうですかと納得できるものでもない。

(帰りたい…………)

 そう思った途端、涙があふれてきた。
 どうして自分がこんな目に遭わねばならないのか――。
 アリシアはぽろぽろと涙を流しながら泣いた。
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