転生しようとしたら魔族に邪魔されて加護が受けられませんでした。おかげで魔力がありません。

ライゼノ

文字の大きさ
上 下
33 / 72
師弟編

第32話 褒められるとやっぱり照れますね。

しおりを挟む
そのような形で俺とナキは宿から追い出された。
去り際にナシュが「これで堂々とサボれるにゃ。」とかいっていたが・・・まぁいいだろう。
問題は俺の横にいる人物だ。


「あの・・・よかったんです?その・・・初対面の俺なんかについてきて。」


自虐的かもしれないが俺の見た目はそんなに頼もしくは見えないだろう。
するとナキはにっこりとほほ笑むと頷いた。


「はい!・・・実は・・・昨日父にティアドラ様とシリウス様については聞いておりました。シリウス様は私とも年齢が近いとのことでしたので・・・少々人と話すのは苦手な私ですが・・・お話してみたいと思っていたのです。それに先ほども言いましたように依頼がどのようなものか確かめたかったのです。」


「そうなんだ・・・トキハさんはなんて言ってたんです?」


それ程話した記憶もないのだがトキハさんはどのように俺を評価したのだろう。


「ティアドラ様の弟子とは思えない程優しい方・・・とのことです。」


またしてもにっこりとほほ笑んだ。
その可愛さに俺も思わず赤面してしまう。


「ティアドラも・・・優しいんだけどな。」


俺はそういって恥ずかしさを隠すように顔を背ける。
まぁ実際・・・優しいんだけど。


「ナキさんは・・・どうして冒険者に?」


一見するとナキはあまり争いごとや戦闘が好きそうに見えない。
まさかこの見た目で武闘派なのか・・・?


「父が昔冒険者でしたので・・・私が幼い頃、毎晩寝るときに父の冒険譚を聞かされて・・・私もそのような冒険に憧れましたので父になんとか言って冒険者登録をさせてもらったのです。・・・一度も依頼を受けることは許されませんでしたが。」


そういって目を伏せる。
箱入り娘なんだな。
・・・ちゃんとナシュはトキハさんに言ったのだろうか。
今さらながら不安になる。


城門から出るまでの最中このように話していくことで、まだ若干の緊張は取れないが少しづつ互いに話せるようになっていた。
ちなみにナキから年齢も近いことだし敬称も敬語も不要だと言われた。
ナキは相変わらず俺のことをシリウス様と呼ぶし敬語なのだけど。


「それで・・・青ツユクサでしたっけ?依頼内容は。」


城門を真っ先に出たナキは振り返り、俺に尋ねてくる。


「うん、そうだね。早速探してみようか。」


俺は首肯すると辺りを見渡す。
今日はいい天気だ。風も少し吹いており心地よい。周りの草原から草がなびく音がする。
街道上には人が点在しているが他に魔物といった生き物は見受けられない。
これは簡単に探せそうだな。


「探すと言ったって・・・どのように探せばいいのでしょうか。」


ナキが首を傾げる。
俺は目を瞑ると鼻から空気を大きく吸う。


「あの・・・シリウス様?」


俺の行動をきょとんとした顔で見つめるナキ。


「・・・こっちの方だね、行こうか。」


俺は南の方角を指さすとそちらの方へ向けて歩いていく。


「え?どういうことです?・・・待ってください!シリウス様!」


ナキは慌てて俺の後を追うのだった。





「本当にあった・・・。」


俺達は近くにある小高い丘の上に居た。
しゃがんでいる俺の眼前には青ツユクサが3本生えていた。


「お、中々品質よさそうだね。これだといい回復薬が出来そうだ!」


俺は目を輝かせて青ツユクサを採取していく。


「どうしてここに青ツユクサがあるってわかったんですか。」


不思議そうに首を傾げるナキ。


「うーん・・・なんていうか匂いで分かるんだよね。ほら、青ツユクサって少し甘い匂いがするでしょ?」


ナイフを取り出し青ツユクサを1本切り取り、ナキに渡す。
受け取ったナキはその青ツユクサの匂いを嗅ぐ。


「スンスン・・・。言われてみれば・・・仄かに・・・匂う・・・ごめんなさい、分からないです。」


彼女は少し申し訳なさそうな顔になる。


「そんな顔しなくても大丈夫だよ、ティアドラも分らないって言ってたし・・・なんでだろ?まぁいいや、他にも青ツユクサありそうだし、じゃんじゃん採取しようか。」


俺の言葉にナキはにっこりとほほ笑んだ。


「はい!」


「それじゃ、次はどこに・・・あ!」


俺はゴソゴソと懐をあさる。取り出したのは・・・図鑑だ。
図鑑を開き、とある所を指さす。


「ナキ、これを見てみて。」


ナキが俺の横から図鑑をのぞき込む。


青ツユクサ
見た目の特徴 広い葉、青色
分離時の効果 青:魔力回復 ★☆☆☆☆
        緑:体力回復 ★☆☆☆☆
主な生息地  風通しの良い、日の当たる場所に群生


「これって・・・図鑑ですか?」


「うん。ほら、ここ。青ツユクサって風通しが良くて日の当たるところに生えてることが多いんだ。だからそのあたりを探してみようか。」


「なるほど。このような図鑑があるのですね。すごく便利です。」


どうやらナキはこの図鑑が書店で売っているものと勘違いしたようだ。


「いや、これは俺とティアドラで作ってるんだ。・・・まだ途中なんだけどね。」


俺がそう言うとナキの目が真ん丸に見開かれる。


「すごいです!こんなにたくさんの植物の効果とか生息地とか!シリウス様は学者様なのですね!」


学者ではないのだが・・・照れる。
彼女の顔を見ると満面の笑みで俺を見ていた。
・・・恥ずかしい。


「う・・・さ、さぁ!ナキはどっちの方に行けばあると思う?」


俺は話の方向を変えるためにナキに尋ねる。


「えーと・・・自信はないんだけど・・・あちらでしょうか?」


ナキは少し離れた小高い丘を指さす。
うん、あそこにもありそうだな。
俺はナキに向かって頷くとその丘へと歩いて行った。


その後1時間程で30本程採取することができた。
初めての依頼は割と簡単だったね。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺おとば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

処理中です...